転生死神ちゃんは毎日が憂鬱なのDEATH

小坂みかん

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* 死神生活ニ年目 *

第178話 死神ちゃんとマリアッチ②

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 〈担当の冒険者達ターゲット〉を求めて死神ちゃんがダンジョン内を彷徨っていると、簡易キャンプを張って休憩中のパーティーと遭遇した。メンバーのうちの一人がどうやら吟遊詩人のようで、休憩中の手慰みがてら回復の意も込めて音楽を奏でていた。

 〈担当の冒険者達ターゲット〉を求めて死神ちゃんがダンジョン内を彷徨さまよっていると、簡易キャンプを張って休憩中のパーティーと遭遇した。メンバーのうちのひとりがどうやら吟遊詩人のようで、休憩中の手慰みがてら回復の意も込めて音楽を奏でていた。


「うーん、久々に聞いたが、やっぱりギターはいいなあ。俺も弾きたくなってきた」

「おお、お嬢ちゃん! めちゃめちゃ久しぶりだなあ! ミニギター、あるぜ。弾くかい?」


 吟遊詩人は演奏の手を止めると、ギターを丁寧に脇へと置いてポーチの中からミニギターを取り出して死神ちゃんに手渡した。楽しそうにギターの調弦をし始めた死神ちゃんの頭を彼がポンポンと撫でると、腕輪からステータス妖精さんがノリノリで飛び出してきた。





* 吟遊詩人の 信頼度が 3 下がったよ! *


 吟遊詩人が顔をしかめて仲間を見やると、仲間がじっとりとした目で彼を見つめていた。


「前にも似たようなことがあった気がするんだけれど、お前の女好きって、やっぱり幼女もカバーしていたのか……」

「いやいや、ちょっと待てよ! その〈前にもあった、似たようなこと〉のお相手がまさしくこのお嬢ちゃんだから! そもそも、このお嬢ちゃん、死神だろう!?」

「だったら、何で頭撫でるなんていう〈自らとり憑かれに行く行為〉を行ったんだよ」

「いやだって、ギターの分かる相手なんてそうそういないから、嬉しくなっちゃうだろうが!」


 吟遊詩人の彼――興行の旅の果てにこの地へと流れ着いたマリアッチは、喧々囂々と仲間とやりあった。死神ちゃんが苦笑いでそれを眺めていると、彼の秘密兵器であるギターケース型ロケットランチャーの弾丸製作を手がけている錬金術師が、死神ちゃんの分の茶菓子と飲み物を用意してお裾分けしてくれた。死神ちゃんはギターと引き換えにそれをありがたく受け取ってもくもくと口に運びながら、マリアッチに向かって尋ねた。


「お前、〈暗闇の図書館〉には辿り着くことはできたのか? たしか、本屋を経営する愛するハニーのために、リサイクル本を求めて目指してたよな?」

「お嬢ちゃん、よく覚えてるなあ! 残念ながら、まだ図書館には辿り着けていないんだよ。でも、冒険者やってるおかげで珍しい品を手に入れることが多くて、それを売り払った金で他国の希少本なんかを取り寄せたりできてよお。俺のハニーの本屋は今じゃ、首都にある貴族様お抱えの本屋よりも珍しい品で溢れているぜ!」


 そう言ってギターをポロポロと鳴らしながら、彼はニヤリと笑った。現在も探索の目標を〈暗闇の図書館〉にしつつ、ダンジョン内でアイテムとして産出される本の収集なども行っているそうだ。
 休憩を終えると、一行は死神祓いをすべく一階を目指して歩き出した。道中、度々モンスターと遭遇して戦闘を行ったのだが、マリアッチが情熱的な演奏で場を盛り立て、仲間達の攻撃力を引き上げていた。また、強敵に対しては必殺のギターケースランチャーをお見舞して多大なる貢献をしていた。しかし、彼らの帰路の旅は順風満帆とは行かず、あと少しで上階へと上がる階段というところで、彼らはマリアッチの力強いアシストでも歯の立たない敵と遭遇してしまった。

 最初、マリアッチは支援のための演奏に徹していた。しかし、前衛職の面々が押され気味になってくると、可能な限り攻撃にも加わった。それでも活路が見いだせず、彼らは焦りを見せ始めた。
 リーダー格の前衛は意を決すると、マリアッチに声をかけた。すると、マリアッチは手にしていたギターをポーチにしまいながら、仲間たちに声をかけた。


「とびきりシビれる演奏、いっちょかましてやろうじゃあないの! お前ら、準備はいいか!?」


 彼はギターの代わりに取り出したバンジョーを肩にかけながら、何故か鼻栓をした。彼の仲間達はモンスターから距離を取って武器を一旦収めると、鼻栓と耳栓を装着した。その様子を死神ちゃんが訝しげに眺めていると、彼らはハンドサインで会話し始め、再び戦闘に戻っていった。
 マリアッチはニヤリと笑うと得意気にバンジョーを掻き鳴らした。奏でられた音を耳にした途端、死神ちゃんはおええと盛大にえずいた。


「何で……。どうしてこんなことが……」

「どうだ、シビれるだろう!?」

「ああ、すごく痺れてるよ……。あまりの臭さに、鼻どころか舌までもが麻痺してな……」


 一生懸命に鼻を摘んで目尻に涙を浮かべながら、死神ちゃんはやっとの思いでそう答えた。
 彼らが相対していたモンスターたちはあまりの臭気に戦力を削がれ、ヘロヘロと膝をついていた。その隙を狙って彼らは一気に畳み掛けた。

 何でも、このバンジョーはマリアッチがダンジョン探索で手に入れた希少品のひとつだそうで、音色が臭いへと変換されるのだそうだ。だから、仲間たちは巻き添えを食らわないようにと鼻栓と、さらには念のために耳栓もしていたのだ。


「おっもしろいよなあ。俺のギターケースよりも想像の斜め上を行く品だよ、こりゃあ。一体、誰がこんなおもしろいもんを考えて作ってるんだろうなあ」


 笑いながら、彼はなおもバンジョーを奏で続けた。すると、累々と倒れ伏すモンスターたちに折り重なるように、仲間が数人倒れ込んだ。どうやら彼らは、戦闘が終わったことに安堵して、いまだマリアッチが演奏を続けているとは思わずに鼻栓を外したらしい。


「お前……モンスターが膝をついたら……そのバンジョーでの演奏はやめろって……言ってあっただろう……」


 息も絶え絶えにそういう仲間に駆け寄ってマリアッチが必死に謝罪していると、彼の視界に入らない場所で倒れ込むまいと踏ん張っていた仲間がぐらりと身を揺らした。仲間はそのまま、マリアッチの背中にぶつかる形で倒れ込んだ。
 思いもよらぬ衝撃を受けて、マリアッチの肺の中の息は一気に体外へと押し出された。その拍子に、彼の鼻栓はポンと勢い良く外れた。


「ぐああああ! ヤバイ臭い! 鼻が曲がる! 舌が痺れる! うええええ、死ぬほどくせえええええ……」


 そのまま、彼はひどい悪臭に悶えて灰と化した。死神ちゃんはヘロヘロと壁に向かって歩くと、そのまま壁の中へと倒れ込んだ。



   **********



 倒れ込んだはずの死神ちゃんが、床と接する衝撃を感じることはなかった。待機室に姿を現すのと同時に、誰かが抱きとめてくれたのだ。ぼんやりとした頭で見上げたそこには、骸骨姿のマッコイがいた。


かおるちゃん、大丈夫?」

「あー……うん……。ありがとう……。ていうか、お前、臭い平気なのか?」

骸骨この姿でいれば耐性があるのよ。じゃないと、仕事にならないでしょう?」


 死神ちゃんが周りを見渡してみると、全員しっかりとローブを着込んでいた。どうやら死神ちゃんの様子を見て、いつぞやのシュールストレミングと〈蠢くヘドロクレイウーズ〉の一件のときよりも危険そうだと思い、みんな慌ててローブを着込んだらしい。
 死神ちゃんは情けない顔を浮かべると、目尻に涙を浮かべて目を細めた。


「この前のウーズのときにも思ったんだが、どうして俺にはモンスターや冒険者由来の臭いや音が結構ダイレクトに来るんだよ。ダンジョン環境由来のものだとわりと平気なのにさ」

「コミュニケーションが取れることの副産物なのかしらねえ……。――もう少しどうにかならないか、ビット所長に聞いてみましょうか。とりあえず、医務室に行きましょう。このまま勤務に戻るには、つらいでしょう?」


 そう言って、マッコイは死神ちゃんを抱き上げた。
 後日聞いたところによると、あの楽器の臭さはさすがに調整ミスだったそうだ。発案者の天狐は死神ちゃんに謝罪の言葉を述べると、九本の尻尾をへにゃりとさせ、しょんぼりと耳を垂れた。


「おもしろいと思って勢いで作ったのじゃが、勢いだけでは駄目じゃのう……。そもそも〈攻撃対象にだけダメージがいく音〉というものを、まずは編み出さねばならぬのう……」

「もふよ、しかしながら着眼点はとても素晴らしいと私は思っている。例えばだな――」


 天狐に励ましの言葉をかけるや否や、どこぞのマッドサイエンティストが金色ボディーをテカらせ、目をピカピカと興奮気味に光らせながら捲し立て始めた。天狐はそれを〈何かよく分からないけど、すごい!〉というキラキラとした目で聞いていた。死神ちゃんは頬を引きつらせながら「〈親戚の子供達に悪知恵を吹き込む、しかしながらその子供たちに大人気の、困ったおじさん〉というのは、こういう感じなのかな」と二人を眺め見たのだった。




 ――――お子様のインスピレーションは無限大。その破壊力も無限大だったのDEATH。
「うーん、久々に聞いたが、やっぱりギターはいいなあ。俺も弾きたくなってきた」

「おお、お嬢ちゃん! めちゃめちゃ久しぶりだなあ! ミニギター、あるぜ。弾くかい?」


 吟遊詩人は演奏の手を止めると、ギターを丁寧に脇へと置いてポーチの中からミニギターを取り出して死神ちゃんに手渡した。楽しそうにギターの調弦をし始めた死神ちゃんの頭を彼がポンポンと撫でると、腕輪からステータス妖精さんがノリノリで飛び出してきた。


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* 吟遊詩人の 信頼度が 3 下がったよ! *


 吟遊詩人が顔をしかめさせて仲間を見やると、仲間がじっとりとした目で彼を見つめていた。


「前にも似たようなことがあった気がするんだけれど、お前の女好きって、やっぱり幼女もカバーしていたのか……」

「いやいや、ちょっと待てよ! その〈前にもあった、似たようなこと〉のお相手がまさしくこのお嬢ちゃんだから! そもそも、このお嬢ちゃん、死神だろう!?」

「だったら、何で頭撫でるなんていう〈自らとり憑かれに行く行為〉を行ったんだよ」

「いやだって、ギターの分かる相手なんてそうそういないから、嬉しくなっちゃうだろうが!」


 吟遊詩人の彼――興行の旅の果てにこの地へと流れ着いたマリアッチは、喧々囂々と仲間とやりあった。死神ちゃんが苦笑いでそれを眺めていると、彼の秘密兵器であるギターケース型ロケットランチャーの弾丸製作を手がけている錬金術師が、死神ちゃんの分の茶菓子と飲み物を用意してお裾分けしてくれた。死神ちゃんはギターと引き換えにそれをありがたく受け取ってもくもくと口に運びながら、マリアッチに向かって尋ねた。


「お前、〈暗闇の図書館〉には辿り着くことは出来たのか? たしか、本屋を経営する愛するハニーのために、リサイクル本を求めて目指してたよな?」

「お嬢ちゃん、よく覚えてるなあ! 残念ながら、まだ図書館には辿り着けていないんだよ。でも、冒険者やってるおかげで珍しい品を手に入れることが多くて、それを売り払った金で他国の希少本なんかを取り寄せたり出来てよお。俺のハニーの本屋は今じゃ、首都にある貴族様お抱えの本屋よりも珍しい品で溢れているぜ!」


 そう言ってギターをポロポロと鳴らしながら、彼はニヤリと笑った。現在も探索の目標を〈暗闇の図書館〉にしつつ、ダンジョン内でアイテムとして産出される本の収集なども行っているそうだ。
 休憩を終えると、一行は死神祓いをすべく一階を目指して歩き出した。道中、度々モンスターと遭遇して戦闘を行ったのだが、マリアッチが情熱的な演奏で場を盛り立て、仲間達の攻撃力を引き上げていた。また、強敵に対しては必殺のギターケースランチャーをお見舞して多大なる貢献をしていた。しかし、彼らの帰路の旅は順風満帆とは行かず、あと少しで上階へと上がる階段というところで、彼らはマリアッチの力強いアシストでも歯の立たない敵と遭遇してしまった。

 最初、マリアッチは支援のための演奏に徹していた。しかし、前衛職の面々が押され気味になってくると、可能な限り攻撃にも加わった。それでも活路が見いだせず、彼らは焦りを見せ始めた。
 リーダー格の前衛は意を決すると、マリアッチに声をかけた。すると、マリアッチは手にしていたギターをポーチにしまいながら、仲間達に声をかけた。


「とびきりシビれる演奏、いっちょかましてやろうじゃあないの! お前ら、準備はいいか!?」


 彼はギターの代わりに取り出したバンジョーを肩にかけながら、何故か鼻栓をした。彼の仲間達はモンスターから距離を取って武器を一旦収めると、鼻栓と耳栓を装着した。その様子を死神ちゃんが訝しげに眺めていると、彼らはハンドサインで会話し始め、再び戦闘に戻っていった。
 マリアッチはニヤリと笑うと得意気にバンジョーを掻き鳴らした。奏でられた音を耳にした途端、死神ちゃんはおええと盛大にえずいた。


「何で……。どうしてこんなことが……」

「どうだ、シビれるだろう!?」

「ああ、すごく痺れてるよ……。あまりの臭さに、鼻どころか舌までもが麻痺してな……」


 一生懸命に鼻を摘んで目尻に涙を浮かべながら、死神ちゃんはやっとの思いでそう答えた。
 彼らが相対していたモンスター達はあまりの臭気に戦力を削がれ、ヘロヘロと膝をついていた。その隙を狙って彼らは一気に畳み掛けていた。

 何でも、このバンジョーはマリアッチがダンジョン探索で手に入れた希少品の一つだそうで、音色が臭いへと変換されるのだそうだ。だから、仲間達は巻き添えを食らわないようにと鼻栓と、更には念のために耳栓もしていたのだ。


「おっもしろいよなあ。俺のギターケースよりも想像の斜め上を行く品だよ、こりゃあ。一体、誰がこんなおもしろいもんを考えて作ってるんだろうなあ」


 笑いながら、彼はなおもバンジョーを奏で続けた。すると、累々と倒れ伏すモンスター達に折り重なるように、仲間が数人倒れ込んだ。どうやら彼らは、戦闘が終わったことに安堵して、いまだマリアッチが演奏を続けているとは思わずに鼻栓を外したらしい。


「お前……モンスターが膝をついたら……そのバンジョーでの演奏はやめろって……言ってあっただろう……」


 息も絶え絶えにそういう仲間に駆け寄ってマリアッチが必死に謝罪していると、彼の視界に入らない場所で倒れ込むまいと踏ん張っていた仲間がぐらりと身を揺らした。仲間はそのまま、マリアッチの背中にぶつかる形で倒れ込んだ。
 思いもよらぬ衝撃を受けて、マリアッチの肺の中の息は一気に体外へと押し出された。その拍子に、彼の鼻栓はポンと勢い良く外れた。


「ぐああああ! ヤバイ臭い! 鼻が曲がる! 舌が痺れる! うええええ、死ぬほどくせえええええ……」


 そのまま、彼はひどい悪臭に悶えて灰と化した。死神ちゃんはヘロヘロと壁に向かって歩くと、そのまま壁の中へと倒れ込んだ。



   **********



 倒れ込んだはずの死神ちゃんが、床と接する衝撃を感じることはなかった。待機室に姿を現すのと同時に、誰かが抱きとめてくれたのだ。ぼんやりとした頭で見上げたそこには、骸骨姿のマッコイがいた。


かおるちゃん、大丈夫?」

「あー……うん……。ありがとう……。ていうか、お前、臭い平気なのか?」

「骸骨姿でいれば耐性があるのよ。じゃないと、仕事にならないでしょう?」


 死神ちゃんが周りを見渡してみると、全員しっかりとローブを着込んでいた。どうやら死神ちゃんの様子を見て、いつぞやのシュールストレミングと〈蠢くヘドロクレイウーズ〉の一件の時よりも危険そうだと思い、みんな慌ててローブを着込んだらしい。
 死神ちゃんは情けない顔を浮かべると、目尻に涙を浮かべて目を細めた。


「この前のウーズの時にも思ったんだが、どうして俺にはモンスターや冒険者由来の臭いや音が結構ダイレクトに来るんだよ。ダンジョン環境由来のものだと平気なのにさ」

「コミュニケーションが取れることの副産物なのかしらねえ……。――もう少しどうにかならないか、ビット所長に聞いてみましょうか。とりあえず、医務室に行きましょう。このまま勤務に戻るには、辛いでしょう?」


 そう言って、マッコイは死神ちゃんを抱き上げた。
 後日聞いたところによると、あの楽器の臭さはさすがに調整ミスだったそうだ。発案者の天狐は死神ちゃんに謝罪の言葉を述べると、九本の尻尾をへにゃりとさせ、しょんぼりと耳を垂れた。


「おもしろいと思って勢いで作ったのじゃが、勢いだけでは駄目じゃのう……。そもそも〈攻撃対象にだけダメージがいく音〉というものを、まずは編み出さねばならぬのう……」

「もふよ、しかしながら着眼点はとても素晴らしいと私は思っている。例えばだな――」


 天狐に励ましの言葉をかけるや否や、どこぞのマッドサイエンティストが金色ボディーをテカらせ、目をピカピカと興奮気味に光らせながら捲し立て始めた。天狐はそれを〈何かよく分からないけど、すごい!〉というキラキラとした目で聞いていた。死神ちゃんは頬を引きつらせながら「〈親戚の子供達に悪知恵を吹き込む、しかしながらその子供達に大人気の、困ったおじさん〉というのは、こういう感じなのかな」と二人を眺め見たのだった。




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