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* 死神生活三年目&more *
第257話 死神ちゃんと寝不足さん③
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死神ちゃんはダンジョンに降り立ち、地図を確認して首をひねった。どうやら〈担当のパーティー〉は、アスフォデルのアジトにいるらしいからだ。あの花たちのアジトも、根菜の巣同様に〈知る人ぞ知る〉という感じのため、それほどまで冒険者たちには知られていないはずである。もしや、また何か新規でビジネスでも始めたのだろうか。死神ちゃんは取り急ぎ、アジトへと向かった。
アジトに到着し、隠し扉をすり抜けて中に入ると、アスフォデルのお嬢が血相を変えて勢い良く立ち上がった。
「いくらお金を積まれても、もう無理ですわ!」
「そんなこと言わないで、後生ですから!」
ソファーに座っていた客人は、立ち上がったお嬢を必死に拝み倒していた。その客人が、どうやら死神ちゃんのターゲットのようだった。死神ちゃんは彼らに近づいていくと、「おう、揉め事か?」と声をかけた。お嬢が助けを求めるように視線を投げて寄越し、客人がきょとんとした顔で振り返ってきた。その客人である男性を見て、死神ちゃんは素っ頓狂な声を上げた。
「お前、寝不足執事じゃあないか! 久しぶりだなあ。どうしたんだよ、こんなところで」
「おやおや、これは。お嬢さん、お久しぶりです。あなたからもどうか、アスフォデルさんにお願いをしてはくれませんか?」
「いえいえ、お嬢様。それはこちらのセリフですわ。お嬢様からもどうか、執事さんにお断りをしてはもらえませんか?」
「ちょっと待てよ、二人とも。話がさっぱり見えないんだが」
執事とお嬢から同時に縋りつかれ、死神ちゃんは困惑した。すると、執事が疲れ切って青ざめた顔を一層青くしてため息をついた。
彼はとある貴族の家に仕える執事で、そこの三男坊が冒険者としてこのダンジョンにやって来ている。彼の寝不足は主にこの三男坊のせいで引き起こされていた。というのも、三男坊は〈M奴隷〉という特殊な性癖の持ち主で、今まではそれを両親に隠していたにもかかわらず、それが露呈してからは家でも堂々と変態プレイを楽しむようになってしまったのだ。さらに、三男坊に縁談話が持ち上がったものの、彼の性癖について知った相手方から〈彼ではなく、次男となら考える〉という答えをもらってしまったのだが、お相手の彼女は彼同様にダンジョンにて冒険者として活動しており、その彼女とダンジョン内で出会った三男坊が気に入ってしまい、そのせいで〈では、次男と〉とはすんなりといかなくなった。それも、執事である彼の寝不足の要因となっていた。
「よくもまあ、破断にならずに平行線を保てているよな、この縁談話……」
「いっそ破断してくれたほうが、ありがたいのですが……。平行線なまま、坊っちゃんのストーカー具合が加速度的に進んでおりまして」
「何だよ、お嬢様を付け狙い始めたか」
「そうなんです、そうなんです。無視をされては喜び、蔑まれては喜び。逆に相手にしてやったほうが興味を失ってくれるかもということで、普通に笑いかけてもらったら、それはそれで喜んで。おかげさまで、あちらのお嬢様も、私ども使用人たちも、すっかりと疲れてしまいまして。それでまたひどく寝不足になったものですから、定期的にアスフォデルさんに睡眠薬を処方してもらっていたのですが」
「もう、これ以上効果を強くしてしまうと、彼、死んでしまいますわ。ですから、これ以上はどれだけお金を積まれても、お薬を作って差し上げることはできませんの」
「そんなこと、言わないでくださいよ! 私、何が何でも眠りたいんです!」
「駄目です、永遠の眠りについてしまいますわ!」
アスフォデルと寝不足さんが押し問答を始めると、死神ちゃんは呆れて口をあんぐりとさせた。そして死神ちゃんはポツリと、呻くように呟いた。
「食事療法とかマッサージとかで、ストレスを緩和させたり体質改善をしたりしたほうがいいんじゃあないか?」
「しかしながら、ご主人様が王家御用達のサロンのセラピストを呼びつけて、私ども使用人たちも含めて施術を受けたのですが。これがどうにも効いている気がしなくて」
「だったら、ダンジョン内のサロンに通えばいいじゃあないか。神の手にかかれば、イチコロだろ」
死神ちゃんがそう言うと、寝不足さんは〈それだ!〉と言わんばかりにハッと目を見開いた。
そんなこんなで、寝不足さんは五階のサロンを目指して探索を行う決意をした。しかしながら、彼はまだ三階から下へは降りたことがないため、彼にとって四階以降は未知のゾーンだった。死神ちゃんは時間のかかる探索作業に付き合いきれないと思い、〈自分は死神だから、探索を行うなら一階で祓ってからにして欲しい〉ということを伝えた。だが、寝不足さんは冗談を言われていると思ったのか、笑って取り合おうともしなかった。むしろ、誰か一緒に来てくれる人がいないと途中で寝てしまいそうだからと同伴を依頼してきた。――四階に降りれば火吹き竜などの獰猛なモンスターが闊歩し、いたるところに罠が設置されている。どうせ寝ぼけ眼でフラフラと、モンスターか罠のどちらかに突っ込んでいってくれて終わるだろう。死神ちゃんはそのように無理やり自分を納得させて、彼のあとをついていった。
しかし、彼は中々死ななかった。彼は〈姿くらまし〉を駆使してモンスターの合間を丁寧に縫って歩き、罠も絶妙に回避していた。思わず、死神ちゃんは唖然として「何で死なないんだ」とこぼした。
「こう見えて、私は敏腕執事ですからね」
「前回アスフォデルのところまで行ったときは、俺に何度となく叩き起こされながら必死にはって行ったっていうのに。何で今日はそんなにも足取りが軽やかなんだよ」
「眠れなさすぎてハイになっているんですかね」
「俺としては、そのまま灰になって頂きたいんだが」
「またまた、死神のようなことを仰る。冗談が過ぎますよ。――あ、しまった!」
死神ちゃんとのおしゃべりに気を取られ、彼はうっかり罠に嵌ってしまった。しかし、プシューという音がして彼は何らかのガスにまみれたのだが、彼の身に何かが起こるということは特にはなかった。彼は眉根を寄せると、首を傾げて「これは何の罠だ?」と呟いた。
すると、そこに山羊頭の赤い悪魔がやってきた。寝不足さんは恐怖に満ちた悲鳴を上げ、腰を抜かして尻もちをついた。もはやこれまでと目を閉じた彼は、自分の身に何も起きないことをおかしいと思い、そっと目を開いた。目の前では、赤いアイツが気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「えっ、あれっ、寝てる……?」
「おお、すごい。モンスターも、睡眠罠で眠るんだな」
「えっ、これ、今私が噴霧を受けているこれ、睡眠罠なんですか!?」
寝不足さんは愕然と肩を落とすと、悲しげに顔を歪ませて叫んだ。
「どうして! 私は、眠れないんですか! モンスターでさえ、こんなにも気持ちよさそうに眠っているのに!」
「すごいよな。もはや、罠の強制睡眠ですら効かないだなんてな」
死神ちゃんが同情するように声を落とすと、彼は目に涙を浮かべて赤いアイツに八つ当たりを始めた。寝不足でハイ状態であるがために、寝不足さんは手加減一切無しで攻撃をし続けた。火事場の馬鹿力とでもいうべきか、どの一撃も赤いアイツに大ダメージでクリンヒットした。そんな攻撃を受けてもなお赤いアイツは起きることはなく、それがまた羨ましいのか悔しいのか寝不足さんの攻撃の手に力が加わり、とうとう赤いアイツは一度も目覚めることがないままアイテムへと姿を変えた。
それと同時に、寝不足さんも力尽きた。どうやら寝不足によって体力が減退していたうえに、ハイになっていたがためにそれとは気づかず、そのせいで今の八つ当たりで僅かに残っていた〈なけなしの体力〉を使い果たしてしまったらしい。円錐形に降り積もった灰の上にぼんやりと現れた彼の霊体はしょんぼりと肩を落とすと、三階に向かって戻っていった。
**********
死神ちゃんは待機室に戻ってくるなり、グレゴリーのもとへと歩み寄った。そして彼を見上げると、死神ちゃんは眉根を寄せて首をかしげた。
「モンスターまで睡眠罠で眠ってしまうのは、まずいんじゃあないですか? あれ、ハメ狩りができてしまいますよね。手軽に経験値もアイテムも稼げて、冒険者に有利に働いてしまいますよ」
「おう、小花。そういうことを言い出すってことは、お前、すっかりとデバッグ慣れしてきたな。どんだけ七階に通いつめているんだよ」
「冒険者体験できるの、意外と楽しくて。どこかに遊びに行く代わりに、フラッと行ってしまうんですよね。あと、肉いっぱい食いたいですし」
死神ちゃんが苦笑いを浮かべると、グレゴリーはゲラゲラと笑いだした。そしてうんうんと頷きながら「たしかに、いいよな。肉パ」と笑いで声を震わせた。
「そういう俺も、肉のために足繁く通っているよ。美味いよなあ、特にハツが!」
死神ちゃんはギョッとして頬を引きつらせた。凄まじくドロップしないのだが、もしやすでに必要数を入手できているため、不要分を食べているのか。それとも、リドル品だと気づかずに食べてしまっているのか。どちらにしても、恐ろしい話だった。
グレゴリーは不思議そうに目を瞬かせると、小首を傾げて「どうした?」と言った。何でもないと返して死神ちゃんが目を逸らすと、グレゴリーは再び目を瞬かせた。そして頭をボリボリと掻くと、「まあ、いいや」と言いながら睡眠罠の件は上に報告しておくと請け負ってくれた。
後日聞いたところによると、寝不足さんは無事にサロンに到達し、健やかな眠りを得ることができたらしい。彼は快適な睡眠のためにサロンの常連となったそうなのだが、〈眠りたい〉という目的のためだけにやって来ているため、ダンジョン踏破などというものは全くもって念頭にはないという。正直、M奴隷三男坊よりも彼のほうが探索が進んでいるだけに、死神ちゃんは「勿体無いなあ」と思ったのだった。
――――なお、毎回、ご当主や同僚、部下の睡眠のためにサロンで金に糸目を付けずアレコレと買い物までしていくという。そして、他の貴族連中にもサロンの素晴らしさが口コミで広がったので、どの貴族の家の冒険者たちも攻略の目的が〈富と名声〉から〈サロン〉へとシフトしつつあるらしい。サロン本来の存在理由である〈冒険者の足止め〉の効果は抜群のようDEATH。
アジトに到着し、隠し扉をすり抜けて中に入ると、アスフォデルのお嬢が血相を変えて勢い良く立ち上がった。
「いくらお金を積まれても、もう無理ですわ!」
「そんなこと言わないで、後生ですから!」
ソファーに座っていた客人は、立ち上がったお嬢を必死に拝み倒していた。その客人が、どうやら死神ちゃんのターゲットのようだった。死神ちゃんは彼らに近づいていくと、「おう、揉め事か?」と声をかけた。お嬢が助けを求めるように視線を投げて寄越し、客人がきょとんとした顔で振り返ってきた。その客人である男性を見て、死神ちゃんは素っ頓狂な声を上げた。
「お前、寝不足執事じゃあないか! 久しぶりだなあ。どうしたんだよ、こんなところで」
「おやおや、これは。お嬢さん、お久しぶりです。あなたからもどうか、アスフォデルさんにお願いをしてはくれませんか?」
「いえいえ、お嬢様。それはこちらのセリフですわ。お嬢様からもどうか、執事さんにお断りをしてはもらえませんか?」
「ちょっと待てよ、二人とも。話がさっぱり見えないんだが」
執事とお嬢から同時に縋りつかれ、死神ちゃんは困惑した。すると、執事が疲れ切って青ざめた顔を一層青くしてため息をついた。
彼はとある貴族の家に仕える執事で、そこの三男坊が冒険者としてこのダンジョンにやって来ている。彼の寝不足は主にこの三男坊のせいで引き起こされていた。というのも、三男坊は〈M奴隷〉という特殊な性癖の持ち主で、今まではそれを両親に隠していたにもかかわらず、それが露呈してからは家でも堂々と変態プレイを楽しむようになってしまったのだ。さらに、三男坊に縁談話が持ち上がったものの、彼の性癖について知った相手方から〈彼ではなく、次男となら考える〉という答えをもらってしまったのだが、お相手の彼女は彼同様にダンジョンにて冒険者として活動しており、その彼女とダンジョン内で出会った三男坊が気に入ってしまい、そのせいで〈では、次男と〉とはすんなりといかなくなった。それも、執事である彼の寝不足の要因となっていた。
「よくもまあ、破断にならずに平行線を保てているよな、この縁談話……」
「いっそ破断してくれたほうが、ありがたいのですが……。平行線なまま、坊っちゃんのストーカー具合が加速度的に進んでおりまして」
「何だよ、お嬢様を付け狙い始めたか」
「そうなんです、そうなんです。無視をされては喜び、蔑まれては喜び。逆に相手にしてやったほうが興味を失ってくれるかもということで、普通に笑いかけてもらったら、それはそれで喜んで。おかげさまで、あちらのお嬢様も、私ども使用人たちも、すっかりと疲れてしまいまして。それでまたひどく寝不足になったものですから、定期的にアスフォデルさんに睡眠薬を処方してもらっていたのですが」
「もう、これ以上効果を強くしてしまうと、彼、死んでしまいますわ。ですから、これ以上はどれだけお金を積まれても、お薬を作って差し上げることはできませんの」
「そんなこと、言わないでくださいよ! 私、何が何でも眠りたいんです!」
「駄目です、永遠の眠りについてしまいますわ!」
アスフォデルと寝不足さんが押し問答を始めると、死神ちゃんは呆れて口をあんぐりとさせた。そして死神ちゃんはポツリと、呻くように呟いた。
「食事療法とかマッサージとかで、ストレスを緩和させたり体質改善をしたりしたほうがいいんじゃあないか?」
「しかしながら、ご主人様が王家御用達のサロンのセラピストを呼びつけて、私ども使用人たちも含めて施術を受けたのですが。これがどうにも効いている気がしなくて」
「だったら、ダンジョン内のサロンに通えばいいじゃあないか。神の手にかかれば、イチコロだろ」
死神ちゃんがそう言うと、寝不足さんは〈それだ!〉と言わんばかりにハッと目を見開いた。
そんなこんなで、寝不足さんは五階のサロンを目指して探索を行う決意をした。しかしながら、彼はまだ三階から下へは降りたことがないため、彼にとって四階以降は未知のゾーンだった。死神ちゃんは時間のかかる探索作業に付き合いきれないと思い、〈自分は死神だから、探索を行うなら一階で祓ってからにして欲しい〉ということを伝えた。だが、寝不足さんは冗談を言われていると思ったのか、笑って取り合おうともしなかった。むしろ、誰か一緒に来てくれる人がいないと途中で寝てしまいそうだからと同伴を依頼してきた。――四階に降りれば火吹き竜などの獰猛なモンスターが闊歩し、いたるところに罠が設置されている。どうせ寝ぼけ眼でフラフラと、モンスターか罠のどちらかに突っ込んでいってくれて終わるだろう。死神ちゃんはそのように無理やり自分を納得させて、彼のあとをついていった。
しかし、彼は中々死ななかった。彼は〈姿くらまし〉を駆使してモンスターの合間を丁寧に縫って歩き、罠も絶妙に回避していた。思わず、死神ちゃんは唖然として「何で死なないんだ」とこぼした。
「こう見えて、私は敏腕執事ですからね」
「前回アスフォデルのところまで行ったときは、俺に何度となく叩き起こされながら必死にはって行ったっていうのに。何で今日はそんなにも足取りが軽やかなんだよ」
「眠れなさすぎてハイになっているんですかね」
「俺としては、そのまま灰になって頂きたいんだが」
「またまた、死神のようなことを仰る。冗談が過ぎますよ。――あ、しまった!」
死神ちゃんとのおしゃべりに気を取られ、彼はうっかり罠に嵌ってしまった。しかし、プシューという音がして彼は何らかのガスにまみれたのだが、彼の身に何かが起こるということは特にはなかった。彼は眉根を寄せると、首を傾げて「これは何の罠だ?」と呟いた。
すると、そこに山羊頭の赤い悪魔がやってきた。寝不足さんは恐怖に満ちた悲鳴を上げ、腰を抜かして尻もちをついた。もはやこれまでと目を閉じた彼は、自分の身に何も起きないことをおかしいと思い、そっと目を開いた。目の前では、赤いアイツが気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「えっ、あれっ、寝てる……?」
「おお、すごい。モンスターも、睡眠罠で眠るんだな」
「えっ、これ、今私が噴霧を受けているこれ、睡眠罠なんですか!?」
寝不足さんは愕然と肩を落とすと、悲しげに顔を歪ませて叫んだ。
「どうして! 私は、眠れないんですか! モンスターでさえ、こんなにも気持ちよさそうに眠っているのに!」
「すごいよな。もはや、罠の強制睡眠ですら効かないだなんてな」
死神ちゃんが同情するように声を落とすと、彼は目に涙を浮かべて赤いアイツに八つ当たりを始めた。寝不足でハイ状態であるがために、寝不足さんは手加減一切無しで攻撃をし続けた。火事場の馬鹿力とでもいうべきか、どの一撃も赤いアイツに大ダメージでクリンヒットした。そんな攻撃を受けてもなお赤いアイツは起きることはなく、それがまた羨ましいのか悔しいのか寝不足さんの攻撃の手に力が加わり、とうとう赤いアイツは一度も目覚めることがないままアイテムへと姿を変えた。
それと同時に、寝不足さんも力尽きた。どうやら寝不足によって体力が減退していたうえに、ハイになっていたがためにそれとは気づかず、そのせいで今の八つ当たりで僅かに残っていた〈なけなしの体力〉を使い果たしてしまったらしい。円錐形に降り積もった灰の上にぼんやりと現れた彼の霊体はしょんぼりと肩を落とすと、三階に向かって戻っていった。
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死神ちゃんは待機室に戻ってくるなり、グレゴリーのもとへと歩み寄った。そして彼を見上げると、死神ちゃんは眉根を寄せて首をかしげた。
「モンスターまで睡眠罠で眠ってしまうのは、まずいんじゃあないですか? あれ、ハメ狩りができてしまいますよね。手軽に経験値もアイテムも稼げて、冒険者に有利に働いてしまいますよ」
「おう、小花。そういうことを言い出すってことは、お前、すっかりとデバッグ慣れしてきたな。どんだけ七階に通いつめているんだよ」
「冒険者体験できるの、意外と楽しくて。どこかに遊びに行く代わりに、フラッと行ってしまうんですよね。あと、肉いっぱい食いたいですし」
死神ちゃんが苦笑いを浮かべると、グレゴリーはゲラゲラと笑いだした。そしてうんうんと頷きながら「たしかに、いいよな。肉パ」と笑いで声を震わせた。
「そういう俺も、肉のために足繁く通っているよ。美味いよなあ、特にハツが!」
死神ちゃんはギョッとして頬を引きつらせた。凄まじくドロップしないのだが、もしやすでに必要数を入手できているため、不要分を食べているのか。それとも、リドル品だと気づかずに食べてしまっているのか。どちらにしても、恐ろしい話だった。
グレゴリーは不思議そうに目を瞬かせると、小首を傾げて「どうした?」と言った。何でもないと返して死神ちゃんが目を逸らすと、グレゴリーは再び目を瞬かせた。そして頭をボリボリと掻くと、「まあ、いいや」と言いながら睡眠罠の件は上に報告しておくと請け負ってくれた。
後日聞いたところによると、寝不足さんは無事にサロンに到達し、健やかな眠りを得ることができたらしい。彼は快適な睡眠のためにサロンの常連となったそうなのだが、〈眠りたい〉という目的のためだけにやって来ているため、ダンジョン踏破などというものは全くもって念頭にはないという。正直、M奴隷三男坊よりも彼のほうが探索が進んでいるだけに、死神ちゃんは「勿体無いなあ」と思ったのだった。
――――なお、毎回、ご当主や同僚、部下の睡眠のためにサロンで金に糸目を付けずアレコレと買い物までしていくという。そして、他の貴族連中にもサロンの素晴らしさが口コミで広がったので、どの貴族の家の冒険者たちも攻略の目的が〈富と名声〉から〈サロン〉へとシフトしつつあるらしい。サロン本来の存在理由である〈冒険者の足止め〉の効果は抜群のようDEATH。
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