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* 死神生活三年目&more *
第288話 死神ちゃんと農家⑨
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死神ちゃんはダンジョンに降り立つと、地図を頼りに〈担当のパーティー〉を探し彷徨った。そして瓦礫の一部として地面に突き立つように存在するとある壁の前までやって来ると、壁に小さな穴が開いていることに気がついた。その穴の下には、何故か桶が置いてあった。壁越しに気配を感じた死神ちゃんは、その小さな穴を覗き込んだ。
「ぎゃあああああああ!」
「いやああああああ!? ……って、なーんだ、死神ちゃんじゃーん! てっきり、他の冒険者を殺っちゃったかと思って焦ったよー!」
穴から急に槍が飛び出してきて顔を貫通したことに死神ちゃんが驚いて絶叫すると壁の裏からも絶叫が上がり、その直後、瓦礫から羊角を有した南瓜頭がひょっこりと現れた。死神ちゃんが文句を吐き散らしながら怒り顔で南瓜を叩くと、目のようにくり抜かれた部分からビームが放たれた。ビームに貫かれた死神ちゃんは再び悲鳴を上げ、持ち主は悪びれもせずあっけらかんと「ごめんねー」と笑った。
彼女はこのダンジョンで度々迷惑行為を働いているものの、ビット所長の「面白い逸材だ」という鶴の一声により野放しとされているノームの農婦だ。不思議生物をうっかり生み出したり危険物を製造したりと迷惑の絶えない彼女のせいで、このダンジョンの入口にはギルドからのお知らせ掲示板が立ち並んでいる。死神ちゃんは彼女を睨みつけると、「また何か植えにでも来たのか」と吐き捨てるように言った。すると彼女は笑いながら〈またまた、そんなわけ無いでしょ〉とでも言いたげに手のひらを振り下ろした。
「いやだなあ。そんな、四六時中どこかしらに作付けしてるわけないでしょうが」
「四六時中してくれてるから、そう尋ねているんだろうが。――たしか、去年の今頃は〈飲めばたちまち胸がデカくなる豆乳を作る〉とか何とか言って、大豆植えてたよな。またそれか?」
「違う違う。そうじゃないよ。今日はね、肥料の研究に来たんだよ」
「肥料? 何でまた」
死神ちゃんが怪訝そうに目を細めると、農家は神妙な面持ちで「もうじき、秋ですね」と言った。死神ちゃんが適当に相槌を打つと、彼女は握り拳で捲し立てた。
「秋といえば、何があると思いますか? ――そう! マンドラゴラ品評会です! 今年こそ! 今年こそ私は、あの人間に勝ちたい! だってね、豊穣神に愛されしノーム族の沽券に関わるんですよ! 何故、私は人間ごときに勝つことができないのか!」
「そりゃあ、お前。豊穣神が呆れるほどの、変な挑戦をしまくるからなんじゃあないのか?」
「何を仰る! 品種改良というものはですね、常に挑戦なんですよ!? ――というわけで、マンドラゴラのお育ても大詰めなので、ここで一気に素晴らしいマンドラゴラに仕上げるべく、スペシャルな肥料を誠意研究開発中なわけですよ! ぶっちゃけ、マンドラっちを連れて出場できたら、こんな労力要らないんだけどね! でも、何故だか駄目らしいからね!」
死神ちゃんがぼんやりと相槌を打つと、彼女は得意げに胸を張って「肥料の作り方、知ってる?」と続けた。そして延々とうんちくを垂れ、フンと力強く鼻を鳴らすとドヤ顔で言い放った。
「つまり! 発酵した死骸というのは、とても有益なんだよ!」
「それと壁の小さな穴と、どう関係があるっていうんだよ?」
「まあまあ、見ててよ。凄いんだからさあ」
そう言って悪い笑みを浮かべてクフクフと笑うと、彼女は瓦礫から這い出て辺りをウロウロと彷徨った。すると、どこからともなくゾンビが集まってきた。思わず死神ちゃんはギョッと目を剥いたが、農家はそれに構うことなく壁の前に手早くデコイを設置すると慌てて壁の内側へと回り込んだ。そして小さな穴に槍を刺し通すと、一心不乱に出し入れした。しばらくすると、ゾンビの呻き声は止み、辺りに静寂が戻ってきた。死神ちゃんはなおも目を見開いたまま、眉根を寄せて呻くように言った。
「おかしいだろ……。このゾンビ、動きが速すぎやしないか……?」
「すっごい速いよねえ。速すぎて、もう笑うしかないくらい速いよねえ。ここら一帯のゾンビは、どれもああいう感じで俊敏なんだよ」
「ゾンビの概念を覆す速さだろ!」
「きっと、活きが良いんだよ。それで、そんな新鮮なゾンビなら、とてもいい肥料になってくれると思って。ここでこうやって狩ってるってわけ」
彼女は「あっ」と声を上げると、再び瓦礫から飛び出していった。そしてゾンビを集めてくると、先ほどと同じ流れてゾンビ狩りを行った。壁の裏側に座り込んでいた死神ちゃんは、狩りの回数が重ねられるごとにやつれていった。とうとう耐えきれなくなった死神ちゃんは、何回目かの狩りの時に小さく声を震わせた。
「なあ、どうしてお前は平気なんだよ」
「何が?」
「こう、凄まじい勢いで壁に何かがぶつかってきて、腐敗臭がムンムン漂ってきて。さらにはビチャビチャニチャニチャ聞こえてくる合間に、ウエ゛エ゛ウオ゛オ゛って合いの手が入るとかさ。しかも、こんな薄暗がりで」
「何、死神ちゃん、怖いの?」
ニヤニヤと笑みを浮かべる農家に、死神ちゃんは青ざめた顔を苦々しげに歪めて向けた。
「いや、それはないが。何ていうか、当分肉は食いたくない感じだな」
「死神のくせに、意外と繊細なんだね」
「俺、スナイプ専門だから。直接こういうのは、ちょっと……」
農家は「スナイプ?」と言うと、不思議そうに首を傾げた。死神ちゃんは〈今のは忘れろ〉と言いたげに手を振ると、空いた片手で口元を押さえて小さくえずいた。すると、槍を忙しなく動かしながら農家がにこやかに笑った。
「私は農家だからね。畑に降りてきたイノシシ捌いて食べるし。飼ってる鶏も絞めて頂くことあるし。――アルファーにブラーボ。それから、チャーリー……。みんな、美味しかったなあ」
「フォネティックかよ。そもそも、食用の家畜に名前つけるなよ。情が湧くだろうが」
恍惚の表情で虚空を見つめつつも槍を動かしていた農家は、死神ちゃんにツッコまれるときょとんとした顔で小首を傾げた。死神ちゃんは呆れ果てて閉口すると、フンと鼻を鳴らした。そして死神ちゃんはそのまま、真顔で農家をじっと見つめた。彼女は戸惑って変な声を上げると、槍を穴から引き抜きながら不安げに「何?」と声を上ずらせた。死神ちゃんはゆっくりはっきりと、彼女を見据えて言った。
「ところで、お前のやっていることは徒労じゃあないのか? ダンジョンのモンスターは討伐後、死骸は残らずアイテムへと姿を変えるだろ」
「ハッ! しまった! えっ、じゃあ、桶の中には何も入ってない!?」
彼女は愕然とすると、慌てて桶の中を覗きに行った。中にはもちろん、肥料となりそうなものなど入ってはいなかった。桶の中に転がるそこそこの金とアイテムを見つめながらギャアギャアとうるさく騒ぎ立てる農家に呆れ返ると、死神ちゃんは頬を引きつらせた。
「ノームは、他の種族と比べて抜けてるヤツが多い印象があるんだが。ここまで馬鹿なヤツは初めて見たかもしれないわ」
「なあっ!?」
「あ、馬鹿だから〈ギルドとのお約束〉も守らずにダンジョン内で農耕するのか。それとも、やっぱりその被ってる南瓜の呪いなのか? 脳みそが南瓜にすり替わってやしないか?」
「今日は! いつにも増して! 口が悪い! 誰がバカボチャだって!? しかもウエ゛エ゛とか煽るような声まで上げて!」
「誰もそんなことは言ってないだろうが。あと、俺は煽り声なんて上げちゃあいないぜ」
農家はムッとしながらも、恐る恐る後ろを振り返った。すぐ背後には、ほどよく発酵したヤツが差し迫っていた。彼女が盛大に悲鳴を上げると、それに呼応するように南瓜がビームを乱射した。そのせいで側の瓦礫が崩れ、彼女はゾンビもろとも埋葬された。死神ちゃんはため息をつくと、その場からスウと姿を消した。
**********
死神ちゃんが待機室に戻ってくると、ビットが仁王立ちで待ち構えていた。彼はカタカタと震えると、死神ちゃんの両肩を力強く掴んで目をチカチカとさせた。
「何故! 南瓜を持ち帰れるよう配慮して! 灰化させなかったのだ!」
「あの怪しい南瓜を手に入れること、まだ諦めていなかったんですか! ていうか、そんな業務外のこと、期待しないでくださいよ!」
死神ちゃんが素っ頓狂な声を上げると、ビットはムウと唸って目の光をフェードアウトさせた。しかし直後、彼の目は煌々と光り輝いた。何となく嫌な予感がして、死神ちゃんは思わず苦い顔を浮かべた。ビットはそれに構うことなく淡々と話し始めた。
「秋の収穫祭だ」
「はい?」
死神ちゃんが眉間のしわをさらに深くすると、ビットの口ぶりに熱が帯び出し、そして速度もどんどんと上がっていった。
「去年あの女が起こした南瓜の精騒動がきっかけで、街では仮装大会などを行って収穫祭を一大イベントにしたそうではないか。それに乗じて、再びダンジョン内で南瓜を作らせようではないか」
「はあ? ていうか、そんなの、わざわざあいつに作らせないで、所長とアディで作ればいいじゃあないですか。俺、一応、あのときにあいつが作った南瓜は持ち帰りましたよね? それを元に作れないんですか?」
「お前が持ち帰ってくれた物では、あの女が被っているような物はできなかったのだ。つまり、何故か我々では再現がとれぬのだ。あの女、確実に豊穣神に祝福されているぞ。――バレンタインでコラボイベントを行った実績もあるからな、今度も上手くやれるだろう。すぐさま、ギルド側に打診せねば」
ビットは一人うなずくと、颯爽と待機室から出ていった。死神ちゃんは口をあんぐりとさせて硬直したまま、この世界の豊穣神の趣味嗜好を疑ったのだった。
――――しかしながら、マンドラゴラ品評会ではまたもや銀止まりだったそうDEATH。
「ぎゃあああああああ!」
「いやああああああ!? ……って、なーんだ、死神ちゃんじゃーん! てっきり、他の冒険者を殺っちゃったかと思って焦ったよー!」
穴から急に槍が飛び出してきて顔を貫通したことに死神ちゃんが驚いて絶叫すると壁の裏からも絶叫が上がり、その直後、瓦礫から羊角を有した南瓜頭がひょっこりと現れた。死神ちゃんが文句を吐き散らしながら怒り顔で南瓜を叩くと、目のようにくり抜かれた部分からビームが放たれた。ビームに貫かれた死神ちゃんは再び悲鳴を上げ、持ち主は悪びれもせずあっけらかんと「ごめんねー」と笑った。
彼女はこのダンジョンで度々迷惑行為を働いているものの、ビット所長の「面白い逸材だ」という鶴の一声により野放しとされているノームの農婦だ。不思議生物をうっかり生み出したり危険物を製造したりと迷惑の絶えない彼女のせいで、このダンジョンの入口にはギルドからのお知らせ掲示板が立ち並んでいる。死神ちゃんは彼女を睨みつけると、「また何か植えにでも来たのか」と吐き捨てるように言った。すると彼女は笑いながら〈またまた、そんなわけ無いでしょ〉とでも言いたげに手のひらを振り下ろした。
「いやだなあ。そんな、四六時中どこかしらに作付けしてるわけないでしょうが」
「四六時中してくれてるから、そう尋ねているんだろうが。――たしか、去年の今頃は〈飲めばたちまち胸がデカくなる豆乳を作る〉とか何とか言って、大豆植えてたよな。またそれか?」
「違う違う。そうじゃないよ。今日はね、肥料の研究に来たんだよ」
「肥料? 何でまた」
死神ちゃんが怪訝そうに目を細めると、農家は神妙な面持ちで「もうじき、秋ですね」と言った。死神ちゃんが適当に相槌を打つと、彼女は握り拳で捲し立てた。
「秋といえば、何があると思いますか? ――そう! マンドラゴラ品評会です! 今年こそ! 今年こそ私は、あの人間に勝ちたい! だってね、豊穣神に愛されしノーム族の沽券に関わるんですよ! 何故、私は人間ごときに勝つことができないのか!」
「そりゃあ、お前。豊穣神が呆れるほどの、変な挑戦をしまくるからなんじゃあないのか?」
「何を仰る! 品種改良というものはですね、常に挑戦なんですよ!? ――というわけで、マンドラゴラのお育ても大詰めなので、ここで一気に素晴らしいマンドラゴラに仕上げるべく、スペシャルな肥料を誠意研究開発中なわけですよ! ぶっちゃけ、マンドラっちを連れて出場できたら、こんな労力要らないんだけどね! でも、何故だか駄目らしいからね!」
死神ちゃんがぼんやりと相槌を打つと、彼女は得意げに胸を張って「肥料の作り方、知ってる?」と続けた。そして延々とうんちくを垂れ、フンと力強く鼻を鳴らすとドヤ顔で言い放った。
「つまり! 発酵した死骸というのは、とても有益なんだよ!」
「それと壁の小さな穴と、どう関係があるっていうんだよ?」
「まあまあ、見ててよ。凄いんだからさあ」
そう言って悪い笑みを浮かべてクフクフと笑うと、彼女は瓦礫から這い出て辺りをウロウロと彷徨った。すると、どこからともなくゾンビが集まってきた。思わず死神ちゃんはギョッと目を剥いたが、農家はそれに構うことなく壁の前に手早くデコイを設置すると慌てて壁の内側へと回り込んだ。そして小さな穴に槍を刺し通すと、一心不乱に出し入れした。しばらくすると、ゾンビの呻き声は止み、辺りに静寂が戻ってきた。死神ちゃんはなおも目を見開いたまま、眉根を寄せて呻くように言った。
「おかしいだろ……。このゾンビ、動きが速すぎやしないか……?」
「すっごい速いよねえ。速すぎて、もう笑うしかないくらい速いよねえ。ここら一帯のゾンビは、どれもああいう感じで俊敏なんだよ」
「ゾンビの概念を覆す速さだろ!」
「きっと、活きが良いんだよ。それで、そんな新鮮なゾンビなら、とてもいい肥料になってくれると思って。ここでこうやって狩ってるってわけ」
彼女は「あっ」と声を上げると、再び瓦礫から飛び出していった。そしてゾンビを集めてくると、先ほどと同じ流れてゾンビ狩りを行った。壁の裏側に座り込んでいた死神ちゃんは、狩りの回数が重ねられるごとにやつれていった。とうとう耐えきれなくなった死神ちゃんは、何回目かの狩りの時に小さく声を震わせた。
「なあ、どうしてお前は平気なんだよ」
「何が?」
「こう、凄まじい勢いで壁に何かがぶつかってきて、腐敗臭がムンムン漂ってきて。さらにはビチャビチャニチャニチャ聞こえてくる合間に、ウエ゛エ゛ウオ゛オ゛って合いの手が入るとかさ。しかも、こんな薄暗がりで」
「何、死神ちゃん、怖いの?」
ニヤニヤと笑みを浮かべる農家に、死神ちゃんは青ざめた顔を苦々しげに歪めて向けた。
「いや、それはないが。何ていうか、当分肉は食いたくない感じだな」
「死神のくせに、意外と繊細なんだね」
「俺、スナイプ専門だから。直接こういうのは、ちょっと……」
農家は「スナイプ?」と言うと、不思議そうに首を傾げた。死神ちゃんは〈今のは忘れろ〉と言いたげに手を振ると、空いた片手で口元を押さえて小さくえずいた。すると、槍を忙しなく動かしながら農家がにこやかに笑った。
「私は農家だからね。畑に降りてきたイノシシ捌いて食べるし。飼ってる鶏も絞めて頂くことあるし。――アルファーにブラーボ。それから、チャーリー……。みんな、美味しかったなあ」
「フォネティックかよ。そもそも、食用の家畜に名前つけるなよ。情が湧くだろうが」
恍惚の表情で虚空を見つめつつも槍を動かしていた農家は、死神ちゃんにツッコまれるときょとんとした顔で小首を傾げた。死神ちゃんは呆れ果てて閉口すると、フンと鼻を鳴らした。そして死神ちゃんはそのまま、真顔で農家をじっと見つめた。彼女は戸惑って変な声を上げると、槍を穴から引き抜きながら不安げに「何?」と声を上ずらせた。死神ちゃんはゆっくりはっきりと、彼女を見据えて言った。
「ところで、お前のやっていることは徒労じゃあないのか? ダンジョンのモンスターは討伐後、死骸は残らずアイテムへと姿を変えるだろ」
「ハッ! しまった! えっ、じゃあ、桶の中には何も入ってない!?」
彼女は愕然とすると、慌てて桶の中を覗きに行った。中にはもちろん、肥料となりそうなものなど入ってはいなかった。桶の中に転がるそこそこの金とアイテムを見つめながらギャアギャアとうるさく騒ぎ立てる農家に呆れ返ると、死神ちゃんは頬を引きつらせた。
「ノームは、他の種族と比べて抜けてるヤツが多い印象があるんだが。ここまで馬鹿なヤツは初めて見たかもしれないわ」
「なあっ!?」
「あ、馬鹿だから〈ギルドとのお約束〉も守らずにダンジョン内で農耕するのか。それとも、やっぱりその被ってる南瓜の呪いなのか? 脳みそが南瓜にすり替わってやしないか?」
「今日は! いつにも増して! 口が悪い! 誰がバカボチャだって!? しかもウエ゛エ゛とか煽るような声まで上げて!」
「誰もそんなことは言ってないだろうが。あと、俺は煽り声なんて上げちゃあいないぜ」
農家はムッとしながらも、恐る恐る後ろを振り返った。すぐ背後には、ほどよく発酵したヤツが差し迫っていた。彼女が盛大に悲鳴を上げると、それに呼応するように南瓜がビームを乱射した。そのせいで側の瓦礫が崩れ、彼女はゾンビもろとも埋葬された。死神ちゃんはため息をつくと、その場からスウと姿を消した。
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死神ちゃんが待機室に戻ってくると、ビットが仁王立ちで待ち構えていた。彼はカタカタと震えると、死神ちゃんの両肩を力強く掴んで目をチカチカとさせた。
「何故! 南瓜を持ち帰れるよう配慮して! 灰化させなかったのだ!」
「あの怪しい南瓜を手に入れること、まだ諦めていなかったんですか! ていうか、そんな業務外のこと、期待しないでくださいよ!」
死神ちゃんが素っ頓狂な声を上げると、ビットはムウと唸って目の光をフェードアウトさせた。しかし直後、彼の目は煌々と光り輝いた。何となく嫌な予感がして、死神ちゃんは思わず苦い顔を浮かべた。ビットはそれに構うことなく淡々と話し始めた。
「秋の収穫祭だ」
「はい?」
死神ちゃんが眉間のしわをさらに深くすると、ビットの口ぶりに熱が帯び出し、そして速度もどんどんと上がっていった。
「去年あの女が起こした南瓜の精騒動がきっかけで、街では仮装大会などを行って収穫祭を一大イベントにしたそうではないか。それに乗じて、再びダンジョン内で南瓜を作らせようではないか」
「はあ? ていうか、そんなの、わざわざあいつに作らせないで、所長とアディで作ればいいじゃあないですか。俺、一応、あのときにあいつが作った南瓜は持ち帰りましたよね? それを元に作れないんですか?」
「お前が持ち帰ってくれた物では、あの女が被っているような物はできなかったのだ。つまり、何故か我々では再現がとれぬのだ。あの女、確実に豊穣神に祝福されているぞ。――バレンタインでコラボイベントを行った実績もあるからな、今度も上手くやれるだろう。すぐさま、ギルド側に打診せねば」
ビットは一人うなずくと、颯爽と待機室から出ていった。死神ちゃんは口をあんぐりとさせて硬直したまま、この世界の豊穣神の趣味嗜好を疑ったのだった。
――――しかしながら、マンドラゴラ品評会ではまたもや銀止まりだったそうDEATH。
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