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聖女の夜、契約の刻_ライアス
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それは、突然だった。
「……レイナ様。“選ばなければならない時”が来ました」
静かに差し込む夕暮れの光の中、ミリアは神妙な面持ちで言った。
目の前の古い魔導書のページには、黄金色の紋章と、そこに浮かぶ3本の線――まるで運命を分かつように。
「契約……ですよね」
レイナは小さく息を呑む。
「聖女の変化が最終段階に入ろうとしています。このままでは……力が暴走し、あなた自身を壊すかもしれません。ですが……」
ミリアは一呼吸置き、言葉を選ぶように続けた。
「かつて、唯一、聖女の暴走を止めたとされる方法があります。“複数契約”です」
「複数……って、つまり……3人と……?」
「はい。通常は禁忌とされてきましたが、あなたの魂は特別です。3人の“強い愛”を受け入れれば、力は“祝福”として昇華する」
「……そんなの、簡単に選べないよ」
レイナは小さく俯いた。
「この力が“聖女としての使命”だって、分かってる。でも……それで、誰かをただ“使う”みたいな選び方なんて、したくない……」
喉が詰まって、言葉が出なかった。
レイナは、自分でも知らぬ間に、誰よりも強く、愛を欲していた。
でもそれが“聖女としての力に影響されている”と言われたら――自分の気持ちすら、信じられなくなる。
そんなときだった。
「……何を迷っている?」
扉の陰から現れたのは、ライアスだった。
「……聞いてたの?」
「ああ。けど、黙っていられなかった」
彼はゆっくり近づき、レイナの目の前に膝をついた。
「俺は、お前の“聖女の力”に惹かれてるわけじゃない。……お前自身を見てる。ずっと、最初から」
「……ライアス様……」
「選ばなくてもいい。苦しむなら、抱え込むな。俺たちが、全部受け止める。……たとえ、その想いが、3人に向いていたとしても」
その瞬間、張り詰めていたレイナの胸が、ふっと緩んだ。
(……なんで、こんなに優しいの? ズルいよ……)
カインも、ジークも。
誰か一人だけを選ぶことが、もうできないと気づいていた。
「……私、やっと分かったの。本当は好きになっちゃったんだ、みんなを」
「レイナ様……」
ミリアが目を伏せながらも、微笑んだ。
「それが“あなたの選択”なら――神も、この世界も、必ず祝福してくれるはずです」
満月の夜。
純白の祭壇に、レイナは座っていた。纏うのは聖女の儀礼衣。肌が透けるほど薄く、神聖でありながら、どこか背徳的でもあった。
(心臓が、壊れそうなくらいドキドキしてる……)
だが、迷いはなかった。
これは、自分が選んだこと。逃げないって、決めたから。
最初に現れたのは、ライアスだった。
銀の髪、氷のように透き通る青い瞳。
けれどその瞳が、今はただひとりの女を見つめて、静かに熱を孕んでいる。
「……レイナ」
名前を呼ばれただけで、身体がきゅっと熱を持った。
ただまっすぐに、彼は歩み寄ってきて、そっと手を取る。
「本当に……いいのか? お前の身体と魂、全部、俺に預けてくれるのか?」
その声は、いつものように低く抑えられていたけれど――震えていた。
不器用な男が、必死に理性を保ちながら愛を伝えようとしている、それだけで胸が苦しくなる。
「……ライアス様となら、大丈夫。私は……全部、あなたに捧げたい」
そう告げた瞬間、彼の瞳がほんの少し揺れた。
「……なら、奪う」
レイナの身体を抱きしめた瞬間、空気が変わった。
一切の迷いを断ち切るように、彼の唇がレイナの唇を奪った。
(ふぁ……んっ……あ、熱い……)
最初は優しかったキスは、すぐに深く、激しく変わっていく。
舌がねっとりと絡みつき、唇の裏を撫でまわされるたび、背筋にぞくりとした電流が走った。
「……もっと感じていい。遠慮するな」
彼の声は低く、命令のように甘やかだ。
儀礼衣の紐がほどかれ、布が音もなく滑り落ちる。
肩が露わになり、胸が、腰が、彼の視線にさらされていく。
(見られてるだけなのに……身体が勝手に熱くなる……)
「触れていいか?」
「は、はい……」
許しの言葉と同時に、ライアスの手が頬から首筋へ、鎖骨へと滑っていく。
彼の指先は驚くほど丁寧で、慎重だった。
「震えてるな。……でも、逃げない。偉い」
「……逃げたくないの。あなたに……愛してほしいから」
彼は静かに微笑んだ。
そのまま、胸元に口づけを落とし、舌で弧を描くように柔らかくなぞる。
「……ライアスさま……ぁ……や、あんっ……」
腰を抱かれ、太ももを持ち上げられ、ゆっくりと、深く――彼が入ってくる。
痛みはなかった。
それどころか、氷のように冷たい騎士の愛が、全身を火照らせるほど熱かった。
「全部、俺のものにする。もう、誰にも渡さない」
彼の言葉が、その動きが、まるで誓いのように心に刻まれていく。
レイナの背には、金色の契約紋がゆっくりと浮かび上がっていた。
「……レイナ様。“選ばなければならない時”が来ました」
静かに差し込む夕暮れの光の中、ミリアは神妙な面持ちで言った。
目の前の古い魔導書のページには、黄金色の紋章と、そこに浮かぶ3本の線――まるで運命を分かつように。
「契約……ですよね」
レイナは小さく息を呑む。
「聖女の変化が最終段階に入ろうとしています。このままでは……力が暴走し、あなた自身を壊すかもしれません。ですが……」
ミリアは一呼吸置き、言葉を選ぶように続けた。
「かつて、唯一、聖女の暴走を止めたとされる方法があります。“複数契約”です」
「複数……って、つまり……3人と……?」
「はい。通常は禁忌とされてきましたが、あなたの魂は特別です。3人の“強い愛”を受け入れれば、力は“祝福”として昇華する」
「……そんなの、簡単に選べないよ」
レイナは小さく俯いた。
「この力が“聖女としての使命”だって、分かってる。でも……それで、誰かをただ“使う”みたいな選び方なんて、したくない……」
喉が詰まって、言葉が出なかった。
レイナは、自分でも知らぬ間に、誰よりも強く、愛を欲していた。
でもそれが“聖女としての力に影響されている”と言われたら――自分の気持ちすら、信じられなくなる。
そんなときだった。
「……何を迷っている?」
扉の陰から現れたのは、ライアスだった。
「……聞いてたの?」
「ああ。けど、黙っていられなかった」
彼はゆっくり近づき、レイナの目の前に膝をついた。
「俺は、お前の“聖女の力”に惹かれてるわけじゃない。……お前自身を見てる。ずっと、最初から」
「……ライアス様……」
「選ばなくてもいい。苦しむなら、抱え込むな。俺たちが、全部受け止める。……たとえ、その想いが、3人に向いていたとしても」
その瞬間、張り詰めていたレイナの胸が、ふっと緩んだ。
(……なんで、こんなに優しいの? ズルいよ……)
カインも、ジークも。
誰か一人だけを選ぶことが、もうできないと気づいていた。
「……私、やっと分かったの。本当は好きになっちゃったんだ、みんなを」
「レイナ様……」
ミリアが目を伏せながらも、微笑んだ。
「それが“あなたの選択”なら――神も、この世界も、必ず祝福してくれるはずです」
満月の夜。
純白の祭壇に、レイナは座っていた。纏うのは聖女の儀礼衣。肌が透けるほど薄く、神聖でありながら、どこか背徳的でもあった。
(心臓が、壊れそうなくらいドキドキしてる……)
だが、迷いはなかった。
これは、自分が選んだこと。逃げないって、決めたから。
最初に現れたのは、ライアスだった。
銀の髪、氷のように透き通る青い瞳。
けれどその瞳が、今はただひとりの女を見つめて、静かに熱を孕んでいる。
「……レイナ」
名前を呼ばれただけで、身体がきゅっと熱を持った。
ただまっすぐに、彼は歩み寄ってきて、そっと手を取る。
「本当に……いいのか? お前の身体と魂、全部、俺に預けてくれるのか?」
その声は、いつものように低く抑えられていたけれど――震えていた。
不器用な男が、必死に理性を保ちながら愛を伝えようとしている、それだけで胸が苦しくなる。
「……ライアス様となら、大丈夫。私は……全部、あなたに捧げたい」
そう告げた瞬間、彼の瞳がほんの少し揺れた。
「……なら、奪う」
レイナの身体を抱きしめた瞬間、空気が変わった。
一切の迷いを断ち切るように、彼の唇がレイナの唇を奪った。
(ふぁ……んっ……あ、熱い……)
最初は優しかったキスは、すぐに深く、激しく変わっていく。
舌がねっとりと絡みつき、唇の裏を撫でまわされるたび、背筋にぞくりとした電流が走った。
「……もっと感じていい。遠慮するな」
彼の声は低く、命令のように甘やかだ。
儀礼衣の紐がほどかれ、布が音もなく滑り落ちる。
肩が露わになり、胸が、腰が、彼の視線にさらされていく。
(見られてるだけなのに……身体が勝手に熱くなる……)
「触れていいか?」
「は、はい……」
許しの言葉と同時に、ライアスの手が頬から首筋へ、鎖骨へと滑っていく。
彼の指先は驚くほど丁寧で、慎重だった。
「震えてるな。……でも、逃げない。偉い」
「……逃げたくないの。あなたに……愛してほしいから」
彼は静かに微笑んだ。
そのまま、胸元に口づけを落とし、舌で弧を描くように柔らかくなぞる。
「……ライアスさま……ぁ……や、あんっ……」
腰を抱かれ、太ももを持ち上げられ、ゆっくりと、深く――彼が入ってくる。
痛みはなかった。
それどころか、氷のように冷たい騎士の愛が、全身を火照らせるほど熱かった。
「全部、俺のものにする。もう、誰にも渡さない」
彼の言葉が、その動きが、まるで誓いのように心に刻まれていく。
レイナの背には、金色の契約紋がゆっくりと浮かび上がっていた。
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