腕切り、脚切り、ダルマの屍肉

久遠寺遥

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工場からの知らせ

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「朝から帰ってないよ」

 一日中出歩いて何をしている?

「ねえ、達男どうしたのかな」

「知らない。部屋に戻っているかもしれないだろ」

「そうか」

 藤堂は永生賓館の階段を駆け上がって行った。

 俺は待っていたエイミーと一緒に蜀味居に入った。

 相変わらず腐骨肉フグロの患者がいる。

 数えてみると五人。そのせいで店全体の雰囲気が陰気だ。

 テーブルに着くといつものようにエイミーが料理を注文した。

「与沢、まだ帰ってないみたいだ」

「意外ですね。何しているんでしょうね」

「俺が知らないすきにエイミーと会っていたんじゃないのか?」

「そんなことしません。私は実家の手伝いをしていました」

「エイミーの実家はここから近いの?」

「歩いて三十分くらいです」

「実家の手伝いって何してたの?」

「漢方薬を作っていました。薬を煮詰めて丸い形にします」

「その仕事儲かるの?」

「あんまり儲かりません」

 それはそうだろう。地道な仕事なんかしたって稼げない。

「工場のほうは問題ないだろうな?」

「そのことですけど、工場の機械が壊れてあと二日待ってくださいと言われました」

「あと二日? クスリの準備はできてると言ってただろう」

「私もそう言ったんですけど、別のお客さんに売ってしまったそうです」

 俺は思わず舌打ちをした。

「与沢なんか連れて来こなければ間に合ったんだ」

「それは与沢さんが強引に来たいっていうから」

 俺は腹が立ったが、クスリの仕入れはエイミーが頼りだ。
 あまり責め立ててエイミーの気が変わったりしたら元も子もない。

「まあ、与沢のことは仕方ないとして、他に仕入れ先はないのか?」

「他にも作っている所はあると思いますけど私は知りません」

 俺たちは運ばれてきた料理を適当につまみながらビールを飲んだ。

 しばらく上海の話で和やかな会話が続いた。

 エイミーは俺が知っている上海の盛り場の全てに精通していた。

 要するに俺以上に遊び歩いているということだ。

 はっきりとは言わないが、俺の他にも日本人の知り合いはゴマンといるはずだ。
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