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裏バイトで稼いでやるっ!
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「バイト代のことなら安心しろ。今日、まとまったカネが入ることになっている。
そのカネが入ったら、今までのバイト代を耳をそろえて払ってやる」
「ホントですか?
とうとう悪いことするんですね?」
「悪いこと?」
「ドロボウ?
オレオレ詐欺?」
「そんなことするわけないだろう。
俺は他人を苦しめてカネを稼ぐようなワルい人間ではない」
「じゃあ、どうやって?」
「裏バイトが入ったんだ。一回で五万円」
「一回で五万円って、すごいですね」
「まあ、それも俺が天才鍼師だからだ。
と、いうことで、今日はもうクローズ。
俺はこれから出かける」
「どこへ?」
「すぐそこ」
「すぐそこって、どこですか?」
「彦坂総合病院」
「病院でバイトですか?」
「まあ、大きな声ではいえないけどな」
「もしかして、薬の実験台ですか?」
「違う。治療だよ、治療!」
「病院で?」
「当たり前だろう」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫に決まってるだろう。俺は天才だぞ」
「だって、狩嶋さん、無免許ですよね?」
「え? なぜそれを?」
「みんな知ってますよ」
「ウソだろ。みんなって誰だ?」
「患者さんとか、うちのパパも知ってますよ」
「マジか?」
「みんなよく捕まらないなって言ってます」
おいおい!
「いいか美織、これから誰かが俺のことを無免許だって言ったら、
狩嶋先生はちゃんと免許を持っているって言ってくれよ」
「嘘を言えばいいんですね?」
「嘘じゃない。ファンタジーだ。
免許はあります、二百回以上見ました。いいな?」
俺は中学生のころから父さんの手伝いで鍼を打っていた。中学生だから、もちろん免許なんかもっていなかった。
俺は鍼を打っているうちに自分の才能に気がついちゃったわけだ。だって経絡もツボもみえるんだから。
あのころのノリで今でも鍼を打っているけど、鍼を打つにはホントウは免許がいるらしい。
少しだけ気になっていたけど、誰にもバレてなさそうだから深く考えたことはなかった。
だけど、美織まで俺が無免許だと知っているとなると、俺が知らないうちに、かなり噂が広がっているようだ。
これはマズいのでは?
でも、深く考えないのが俺流。
「ところで、病院で治療って、誰かに頼まれたんですか?」
「内科部長から頼まれた」
「内科部長って、公麿さん?」
「どうして知ってるんだ?」
「だって彦坂院長はパパの友達だもん。
院長、公麿さんのことでは、ずいぶん悩んでいたみたいですよ」
「悩んでいた? どうして?」
「公麿さん、なかなか医学部に受からなくて……たしか、十浪だったかな」
「いや、そこまでヒドくない。八浪だ。しかも裏口入学。
医師免試験には五回落ちてる。きっと何か悪いことして合格したんだ」
「そっか、たしかに医師免許が取れないって言ってたような……」
「公麿に免許を出すのはマチガイ。
公麿は心臓の数がいくつあるかも知らない。
それくらいのレベルだぞ」
「そんな人が部長なんて、大丈夫なんですか?」
「院長の息子だからこその荒業。
優秀なスタッフを集めて、公麿に診療させないようにしているみたいだ」
「じゃあ、内科部長っていうのは名前だけ?」
「それならいいけど、公麿は自分で診療したがるんだ。しかもなぜか自信満々。
たぶん甘やかされて育ったせいだな」
「患者さんがかわいそう」
「同感。そこで俺が登場するわけさ」
「?」
「公麿が治せない患者を俺がナイショで治療しているわけ。
公麿にもメンツがあるからさ、病院の先生には頼みづらいだろ?
そこで口が堅い俺がこっそり治してやる。
その代わりに、たっぷり代金をいただいている。
そういうわけで、ウチにお客が来なくてもダイジョウブなのだ。
どうだ、驚いたか?」
「本業をおろそかにする人は何をやってもダメだってパパがいつも言ってますよ」
「パパ、パパって、自分の意見を持ちなさいよ。
じゃあ、俺は出かけるから、あとはよろしくな」
俺は白衣を持って外に出た。
そのカネが入ったら、今までのバイト代を耳をそろえて払ってやる」
「ホントですか?
とうとう悪いことするんですね?」
「悪いこと?」
「ドロボウ?
オレオレ詐欺?」
「そんなことするわけないだろう。
俺は他人を苦しめてカネを稼ぐようなワルい人間ではない」
「じゃあ、どうやって?」
「裏バイトが入ったんだ。一回で五万円」
「一回で五万円って、すごいですね」
「まあ、それも俺が天才鍼師だからだ。
と、いうことで、今日はもうクローズ。
俺はこれから出かける」
「どこへ?」
「すぐそこ」
「すぐそこって、どこですか?」
「彦坂総合病院」
「病院でバイトですか?」
「まあ、大きな声ではいえないけどな」
「もしかして、薬の実験台ですか?」
「違う。治療だよ、治療!」
「病院で?」
「当たり前だろう」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫に決まってるだろう。俺は天才だぞ」
「だって、狩嶋さん、無免許ですよね?」
「え? なぜそれを?」
「みんな知ってますよ」
「ウソだろ。みんなって誰だ?」
「患者さんとか、うちのパパも知ってますよ」
「マジか?」
「みんなよく捕まらないなって言ってます」
おいおい!
「いいか美織、これから誰かが俺のことを無免許だって言ったら、
狩嶋先生はちゃんと免許を持っているって言ってくれよ」
「嘘を言えばいいんですね?」
「嘘じゃない。ファンタジーだ。
免許はあります、二百回以上見ました。いいな?」
俺は中学生のころから父さんの手伝いで鍼を打っていた。中学生だから、もちろん免許なんかもっていなかった。
俺は鍼を打っているうちに自分の才能に気がついちゃったわけだ。だって経絡もツボもみえるんだから。
あのころのノリで今でも鍼を打っているけど、鍼を打つにはホントウは免許がいるらしい。
少しだけ気になっていたけど、誰にもバレてなさそうだから深く考えたことはなかった。
だけど、美織まで俺が無免許だと知っているとなると、俺が知らないうちに、かなり噂が広がっているようだ。
これはマズいのでは?
でも、深く考えないのが俺流。
「ところで、病院で治療って、誰かに頼まれたんですか?」
「内科部長から頼まれた」
「内科部長って、公麿さん?」
「どうして知ってるんだ?」
「だって彦坂院長はパパの友達だもん。
院長、公麿さんのことでは、ずいぶん悩んでいたみたいですよ」
「悩んでいた? どうして?」
「公麿さん、なかなか医学部に受からなくて……たしか、十浪だったかな」
「いや、そこまでヒドくない。八浪だ。しかも裏口入学。
医師免試験には五回落ちてる。きっと何か悪いことして合格したんだ」
「そっか、たしかに医師免許が取れないって言ってたような……」
「公麿に免許を出すのはマチガイ。
公麿は心臓の数がいくつあるかも知らない。
それくらいのレベルだぞ」
「そんな人が部長なんて、大丈夫なんですか?」
「院長の息子だからこその荒業。
優秀なスタッフを集めて、公麿に診療させないようにしているみたいだ」
「じゃあ、内科部長っていうのは名前だけ?」
「それならいいけど、公麿は自分で診療したがるんだ。しかもなぜか自信満々。
たぶん甘やかされて育ったせいだな」
「患者さんがかわいそう」
「同感。そこで俺が登場するわけさ」
「?」
「公麿が治せない患者を俺がナイショで治療しているわけ。
公麿にもメンツがあるからさ、病院の先生には頼みづらいだろ?
そこで口が堅い俺がこっそり治してやる。
その代わりに、たっぷり代金をいただいている。
そういうわけで、ウチにお客が来なくてもダイジョウブなのだ。
どうだ、驚いたか?」
「本業をおろそかにする人は何をやってもダメだってパパがいつも言ってますよ」
「パパ、パパって、自分の意見を持ちなさいよ。
じゃあ、俺は出かけるから、あとはよろしくな」
俺は白衣を持って外に出た。
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