天才鍼師の俺に治せないビョーキはない…ハズ!

久遠寺遥

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枯れた龍脈

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「おう、伸、ここにいたのか」

「爺ちゃん、やっと来ましたね。待ってたんですよ」

「話は後じゃ。先ずは風水を見る」

 爺ちゃんは羅盤らばんを見ながら庭を歩き始めた。

 羅盤というのは風水師が風水を見るときに使う羅針盤らしんばんだ。

 爺ちゃんの話では、羅盤自体に呪力があって、出来のいい羅盤を使うと、ほんのちょっとした気の流れでも検知できるらしい。

「まさか、信じられん……」

 いつになく、表情が険しい。

「どうかしたの?」

「枯れておる。龍脈りゅうみゃくが枯れておる」

「どういうこと?」

「目には見えぬが、この土地は、気の通り道じゃった。大きな川の流れのような。
 ところが今はほとんど気が流れておらん」

 爺ちゃんはランの鉢を手に取った。

「うかつじゃった。もっと早く気付くべきじゃった。
 ランの育ちを見ただけでもわかったはずなのに……」

「どうしてそんなに残念がってるの?」

「このままでは、間に合わん」

「何が間に合わないの?」

「天眼じゃ。龍脈の気を受けておれば、お前の天眼は、もう開いていたはずじゃ。
 いまだに開かぬから、おかしいとは思っておったが」

「そんなことより、聞きたいことがあったんだ」

「そんなこと、とは、なんじゃ!
 これは大切なことじゃ。一刻も早く手を打たねば」

「俺の話も聞いて下さいよ」

「くだらない話ではなかろうな?」

「すっごく大事なことですって。
 今日、病院に呼ばれて、入院している患者さんに鍼を打ってきたんですけど、様子がヘンなんです」

「どうヘンなのじゃ?」

「見えないんです。ふつうは気持ちを集中させると、ツボが見えるんだけど、ぜんぜん見えなくて、どこに鍼を打ったらいいか、わからなかったんです」

「病気が軽いときは、経絡に反応が出ないこともある」

「軽くなんかありませんよ。あのままじゃ、死んじゃいます」

「死ぬなぞと、おおげさなことを言ってはいかん」

「本当です。体じゅうに黒いイボができて、数が増えているんです。体力も弱っているし」

「いま何と言った?」

「だから、黒いイボが……」

「またか!」

「なにが、またか、なんです?」

「それは、タダの病気ではない。蠱病こびょうじゃ」

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