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呼び出しの電話
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鍼灸院に戻ると、電話が鳴っていた。
「はい、狩嶋鍼灸院で……」
「早く来なさいっ! 患者さん、治ってないじゃないの!」
「由香里ちゃんのことですか?」
「決まってるでしょ! とにかく、何とかしなさい!
もし治らなかったら、十万円返してもらいますからね」
「五万円でしょう?」
「なに言ってるの!
こっちには、十万円の領収書あるんだから、裁判になったら負けるのは君のほうだよ」
「公麿部長、あなたのやり方は、汚なすぎます」
「だまらっしゃい!
私は常に正しい。つべこべ言わず、すぐに来なさーい!」
電話はぷっつりと切れてしまった。
まあ、いいか。俺の方から病院に行こうと思っていたところだし。
俺は白衣をつかんで、病院めがけて駆け出した。
公麿の部屋には寄らず、直接三階へ。
由香里ちゃんは酸素マスクをしていた。
星野さんが心配そうに見ている。
「由香里ちゃんの様子は?」
「苦しそう。顔色もどんどん悪くなってるし」
酸素マスクをしているのに息が荒い。それに、顔色は真っ白だ。
目をつぶって弱々しく首を振っている。何か怖い夢を見ているのかもしれない。
「とりあえず、応急処置をします。
おなかに鍼を打ちますから、準備してください」
星野さんはカーテンを引いて、由香里ちゃんのパジャマをまくり、おなかを出した。
やっぱり黒いイボができている。
俺はヘソの下を消毒し、気海に皮内鍼を打った。
鍼の上を人差し指で押さえると、俺の体から勢いよく陽気が流れ出し、由香里ちゃんの経絡に吸い込まれて行く。
鍼に触れている指先がピリピリする。まるで静電気が飛ぶような感じだ。
由香里ちゃんの経絡は、真空状態に近かった。
それは、言い方を変えれば、死ぬ寸前だったということだ。
「はい、狩嶋鍼灸院で……」
「早く来なさいっ! 患者さん、治ってないじゃないの!」
「由香里ちゃんのことですか?」
「決まってるでしょ! とにかく、何とかしなさい!
もし治らなかったら、十万円返してもらいますからね」
「五万円でしょう?」
「なに言ってるの!
こっちには、十万円の領収書あるんだから、裁判になったら負けるのは君のほうだよ」
「公麿部長、あなたのやり方は、汚なすぎます」
「だまらっしゃい!
私は常に正しい。つべこべ言わず、すぐに来なさーい!」
電話はぷっつりと切れてしまった。
まあ、いいか。俺の方から病院に行こうと思っていたところだし。
俺は白衣をつかんで、病院めがけて駆け出した。
公麿の部屋には寄らず、直接三階へ。
由香里ちゃんは酸素マスクをしていた。
星野さんが心配そうに見ている。
「由香里ちゃんの様子は?」
「苦しそう。顔色もどんどん悪くなってるし」
酸素マスクをしているのに息が荒い。それに、顔色は真っ白だ。
目をつぶって弱々しく首を振っている。何か怖い夢を見ているのかもしれない。
「とりあえず、応急処置をします。
おなかに鍼を打ちますから、準備してください」
星野さんはカーテンを引いて、由香里ちゃんのパジャマをまくり、おなかを出した。
やっぱり黒いイボができている。
俺はヘソの下を消毒し、気海に皮内鍼を打った。
鍼の上を人差し指で押さえると、俺の体から勢いよく陽気が流れ出し、由香里ちゃんの経絡に吸い込まれて行く。
鍼に触れている指先がピリピリする。まるで静電気が飛ぶような感じだ。
由香里ちゃんの経絡は、真空状態に近かった。
それは、言い方を変えれば、死ぬ寸前だったということだ。
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