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滅咒師と金蚕蠱 その3
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「霊力を持つ鳥だ」
「それと院長の奥さんと何か関係あるんですか?」
「八咫烏は呪いを察知して、滅咒師に知らせる霊鳥。
滅咒師のパートナーだ。八咫烏はきっと麗子さんのところにも現れるはず。
ミーは、ずっと前から、八咫烏が現れたら連絡するように、麗子さんにお願いしているんだ」
「八咫烏をどうするつもりですか?」
「それは秘密」
車は軽井沢の森に入った。
人通りの少ない道をひたすら走ると、太い木に囲まれた豪邸が見えて来た。
車はその豪邸の敷地に止まった。
車から降りると、芝生の上の白いテーブルが見えた。
その奥の椅子に眼鏡をかけた白髪の女の人が座っている。
その横に大きな犬がしゃがんでいた。
「奥様~。お久しぶりです」
「あら、小野寺さん。そちらのかたは?」
「腕のいい獣医を連れてきました」
獣医? まあ、いいか。
「まあ、ジローを治してくださるの?」
「はい、さようで。
では、狩嶋先生、ジローちゃんの治療をお願いします」
俺はそのジローっていう犬に近づいた。
するとジローは、ゴロンと横になって、俺に腹を向けた。
「まあ、どうして?」
俺は目を細めて意識を集中し、ジローを見下ろした。
前足の付け根に白い光が見える。
鍼を打ちやすい姿勢になったわけか。と、いうことは、ジローは俺が何をしようとしているのか、わかっているんだな。
俺はいつもポケットに入れているディスポ三番鍼をつまんだ。
これだけ体が大きければ、人間用の鍼でも太すぎるということはない。
俺は白い光が見える点に打鍼した。
鍼先はスルッとツボに届いた。
ここから鍼を右回転させる。枯れた経絡に陽気を送り込む挿気補法だ。
ジローの問題は、病気というよりも、疲労だ。
経絡が気で充実すれば、すぐに元気になる。
朝飲んだ八味地黄丸のおかげで俺の体には陽気が蓄えられてる。
その陽気を少しだけ丹田に集めて、指先に送り、鍼を通してジローの経絡に流し込む。
しぼんだ風船が膨らむように、ジローの経絡が陽気で膨らんで行くのが見える。
俺が鍼を抜くと、ジローはスッと立ち上がった。
さっきまでのグッタリしたようすがウソみたいだ。
「あなた、見えるのね?」
「わかりますか?」
「やはり、そうなのね。でも……」
「でも、なんですか?」
「わたしが感じているものには、あなたは気付いていない」
「どういうことですか?」
「わたしたちの街は邪気に覆われています。しかも邪気はだんだん強くなっているわ。
あなたの腕なら蠱病を治せるでしょうけど、それだけでは終わらないのよ」
「邪気って、どういうものなんですか?」
「呪いが作り出す邪気よ」
「爺ちゃんも同じようなことを言っていたけど」
「滅んだはずの金蚕蠱が復活したのよ」
「どういうことですか?」
「金蚕蠱は中国に古くからある恐ろしい妖魔なの。
平安時代に日本に伝えられたけれど、江戸時代に日本中の金蚕蠱が退治されたのよ。
だけど今ごろになってまた誰かが金蚕蠱を作り出したのよ」
「妖魔を人間が作ることなんてできるんですか?」
「特別な呪術を使えば妖魔でも鬼でも作り出すことができるのよ」
「そんなものを作ってどうするんですか?」
「金蚕蠱は金運を招く霊力を持っているのよ。
金蚕蠱を作る目的はおカネよ。
でもね、金蚕蠱を作った人は、三年に一度、誰かを呪い殺さなければいけないの」
「どうしてですか?」
「それと院長の奥さんと何か関係あるんですか?」
「八咫烏は呪いを察知して、滅咒師に知らせる霊鳥。
滅咒師のパートナーだ。八咫烏はきっと麗子さんのところにも現れるはず。
ミーは、ずっと前から、八咫烏が現れたら連絡するように、麗子さんにお願いしているんだ」
「八咫烏をどうするつもりですか?」
「それは秘密」
車は軽井沢の森に入った。
人通りの少ない道をひたすら走ると、太い木に囲まれた豪邸が見えて来た。
車はその豪邸の敷地に止まった。
車から降りると、芝生の上の白いテーブルが見えた。
その奥の椅子に眼鏡をかけた白髪の女の人が座っている。
その横に大きな犬がしゃがんでいた。
「奥様~。お久しぶりです」
「あら、小野寺さん。そちらのかたは?」
「腕のいい獣医を連れてきました」
獣医? まあ、いいか。
「まあ、ジローを治してくださるの?」
「はい、さようで。
では、狩嶋先生、ジローちゃんの治療をお願いします」
俺はそのジローっていう犬に近づいた。
するとジローは、ゴロンと横になって、俺に腹を向けた。
「まあ、どうして?」
俺は目を細めて意識を集中し、ジローを見下ろした。
前足の付け根に白い光が見える。
鍼を打ちやすい姿勢になったわけか。と、いうことは、ジローは俺が何をしようとしているのか、わかっているんだな。
俺はいつもポケットに入れているディスポ三番鍼をつまんだ。
これだけ体が大きければ、人間用の鍼でも太すぎるということはない。
俺は白い光が見える点に打鍼した。
鍼先はスルッとツボに届いた。
ここから鍼を右回転させる。枯れた経絡に陽気を送り込む挿気補法だ。
ジローの問題は、病気というよりも、疲労だ。
経絡が気で充実すれば、すぐに元気になる。
朝飲んだ八味地黄丸のおかげで俺の体には陽気が蓄えられてる。
その陽気を少しだけ丹田に集めて、指先に送り、鍼を通してジローの経絡に流し込む。
しぼんだ風船が膨らむように、ジローの経絡が陽気で膨らんで行くのが見える。
俺が鍼を抜くと、ジローはスッと立ち上がった。
さっきまでのグッタリしたようすがウソみたいだ。
「あなた、見えるのね?」
「わかりますか?」
「やはり、そうなのね。でも……」
「でも、なんですか?」
「わたしが感じているものには、あなたは気付いていない」
「どういうことですか?」
「わたしたちの街は邪気に覆われています。しかも邪気はだんだん強くなっているわ。
あなたの腕なら蠱病を治せるでしょうけど、それだけでは終わらないのよ」
「邪気って、どういうものなんですか?」
「呪いが作り出す邪気よ」
「爺ちゃんも同じようなことを言っていたけど」
「滅んだはずの金蚕蠱が復活したのよ」
「どういうことですか?」
「金蚕蠱は中国に古くからある恐ろしい妖魔なの。
平安時代に日本に伝えられたけれど、江戸時代に日本中の金蚕蠱が退治されたのよ。
だけど今ごろになってまた誰かが金蚕蠱を作り出したのよ」
「妖魔を人間が作ることなんてできるんですか?」
「特別な呪術を使えば妖魔でも鬼でも作り出すことができるのよ」
「そんなものを作ってどうするんですか?」
「金蚕蠱は金運を招く霊力を持っているのよ。
金蚕蠱を作る目的はおカネよ。
でもね、金蚕蠱を作った人は、三年に一度、誰かを呪い殺さなければいけないの」
「どうしてですか?」
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