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公麿の目が悪光りした
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俺は右足に置き鍼をしたまま、左足にも打鍼した。
左右の足三里から陽気が押し寄せ、衛気を助け、腸で炎症を起こしている菌をコテンパンに叩く。
指先に伝わってくる衛気の勝利。ばい菌が降参しているのがわかる。
「痛みがおさまった」
高田さんは大きく深呼吸した。
もうあなたは治っている!
今すぐコッテリ背油トンコツラーメンを食べても問題ない。
「どうです高田さん、鍼も悪くないでしょう?」
公麿の笑顔。目が悪光りしている。何かを企んでいる目だ。
「驚いた。これはスゴイ!
さっきまでの痛みがウソみたいだよ」
「鍼を取り入れたこの治療は、内科部長である私のアイディアです。
この治療を広めるために研究費が必要なのですが、補助金のほう、何とかなりませんか?」
「いくらかかるの?」
「二億円くらいです」
「二億? 高いね」
「医療には、お金がかかるんです。
何しろ、人の命を守るお仕事ですから」
「しかしね、市にも予算というものがあるからねえ……」
「先生のパーティー券、三千万円分買いますよ」
「二億ね、了解。パー券については、秘書から連絡させるから」
「お待ちしております。では、また、のちほど。
狩嶋君、ちょっと」
公麿は俺を部屋の外に連れ出し、部長室に戻った。
「今日の鍼治療、なかなかよかったよ。
だけど、鍼を打つ前の消毒のしかたがダメだね。
もっと練習しときなさいよ」
「わかりました。さっそくですが、代金をください」
「はい、これ」
封筒の中を見ると、三万円しか入っていない。今までは五万だったのに。
「少ないじゃないですか」
「狩嶋ちゃん、君、無免許なんだって?」
「あ、いや、それは……」
「私が保健所に電話したらどうなるかな?」
「それ、汚くないですか?」
「お黙りなさい!
前から言おうと思っていたけど、医療業界では、医師が一番エライってこと、わかってないでしょ?
鍼灸師なんて職業は、医師会のお慈悲で潰されずに済んでるんだよ。
医師の中でもエリート中のエリートのこの私に、無免許鍼師の君が口ごたえするなんて、一万年早いっ!」
「どっちがエライとか、ありえないと思いますけど」
「大アリです! だって、どう考えても、私のほうが君よりエライでしょう」
「そんなことないと思いますけど」
「私が乗ってるのはベンツ、君はボロい自転車。
私は九兵衛の寿司食べ放題、君は贅沢しても、ペヤング大盛り。
私は海外に別荘たくさん持っているけど、君は借家。
私はリゾートでスイス、君は近所を散歩」
悔しいけど事実。やっぱり本業のほうで頑張っておけばよかった。
「わかったら、その領収書にサインして、とっとと帰りなさい」
「領収書の金額は五万円になってますけど?」
左右の足三里から陽気が押し寄せ、衛気を助け、腸で炎症を起こしている菌をコテンパンに叩く。
指先に伝わってくる衛気の勝利。ばい菌が降参しているのがわかる。
「痛みがおさまった」
高田さんは大きく深呼吸した。
もうあなたは治っている!
今すぐコッテリ背油トンコツラーメンを食べても問題ない。
「どうです高田さん、鍼も悪くないでしょう?」
公麿の笑顔。目が悪光りしている。何かを企んでいる目だ。
「驚いた。これはスゴイ!
さっきまでの痛みがウソみたいだよ」
「鍼を取り入れたこの治療は、内科部長である私のアイディアです。
この治療を広めるために研究費が必要なのですが、補助金のほう、何とかなりませんか?」
「いくらかかるの?」
「二億円くらいです」
「二億? 高いね」
「医療には、お金がかかるんです。
何しろ、人の命を守るお仕事ですから」
「しかしね、市にも予算というものがあるからねえ……」
「先生のパーティー券、三千万円分買いますよ」
「二億ね、了解。パー券については、秘書から連絡させるから」
「お待ちしております。では、また、のちほど。
狩嶋君、ちょっと」
公麿は俺を部屋の外に連れ出し、部長室に戻った。
「今日の鍼治療、なかなかよかったよ。
だけど、鍼を打つ前の消毒のしかたがダメだね。
もっと練習しときなさいよ」
「わかりました。さっそくですが、代金をください」
「はい、これ」
封筒の中を見ると、三万円しか入っていない。今までは五万だったのに。
「少ないじゃないですか」
「狩嶋ちゃん、君、無免許なんだって?」
「あ、いや、それは……」
「私が保健所に電話したらどうなるかな?」
「それ、汚くないですか?」
「お黙りなさい!
前から言おうと思っていたけど、医療業界では、医師が一番エライってこと、わかってないでしょ?
鍼灸師なんて職業は、医師会のお慈悲で潰されずに済んでるんだよ。
医師の中でもエリート中のエリートのこの私に、無免許鍼師の君が口ごたえするなんて、一万年早いっ!」
「どっちがエライとか、ありえないと思いますけど」
「大アリです! だって、どう考えても、私のほうが君よりエライでしょう」
「そんなことないと思いますけど」
「私が乗ってるのはベンツ、君はボロい自転車。
私は九兵衛の寿司食べ放題、君は贅沢しても、ペヤング大盛り。
私は海外に別荘たくさん持っているけど、君は借家。
私はリゾートでスイス、君は近所を散歩」
悔しいけど事実。やっぱり本業のほうで頑張っておけばよかった。
「わかったら、その領収書にサインして、とっとと帰りなさい」
「領収書の金額は五万円になってますけど?」
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