俺が「妖怪の総大将」? スキル「合法侵入」しか持たない俺「ナーリ・フォン」は「ぬらりひょん」として成り上がりを目指します

フーラー

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第4章 鉱山を守る妖怪、だいだらぼっち

4-2 雪女とナーリはキスをするようです

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「ただいま」
「おかえり、ぬらりひょん……どうだった?」


俺はフレアと手の目にことの詳細を説明した。
手の目はそれを聞いて、なるほどなと合点が言ったようにうなづく。


「だいだらぼっち、か……聞いたことはあるな……」
「妖怪同士、上手く話し合いで解決できないか?」
「……ダメだな。あいつは言葉が通じないんだ。妖怪だからって全員が同じ言葉を使うわけじゃないからな」


手の目はそういって首を振る。


「じゃあ、まずはそいつが鉱山から動かない理由を探さないといけないってわけか……」
「ああ。明日から調査を始めてみよう。……ってことで今日は……」
「おう、そうじゃ! バザールでショッピングじゃ!」


待ってましたとばかりに、蛇骨婆はそう笑顔で答えると、バザールに向かって走っていった。

「ははは……俺たちも行こうか」





「さて、まずは何から行くかのう……?」

バザールにつくなり、きょろきょろと落ち着きのなさそうな表情で蛇骨婆は商品を眺めている。

バザールはにぎわっており、また多種多様な人種がここに来ている。そのため、俺たち妖怪や人間がうろついていても特に嫌な顔をされることはなかった。

「おいおい、ジャコ。あまり高いものは買うなよ?」

少しあきれた様子で、蛇骨婆にそう手の目は尋ねた。

「分かっておるわい。……手の目、お主は何が好きじゃ?」
「そうだなあ……やっぱりさ、おいしい獣の骨が売っていたら買いたいな……」
「おお、そうか? ワシは……珍しい卵じゃな! ……そうじゃ、お互いの好物を探して、一緒に後で見せ合いをするのはどうじゃ?」
「いいな、それ! よし、じゃあ俺たちは一度別行動するから、後でここの広場で再開しような!」


そういうと、手の目と蛇骨婆はお互いに身体をドン、と叩き合った後にバザールの奥に消えていった。


「行っちゃったね、二人とも……」
「ああ。あいつらは……ベタベタしないくせに、本当に仲がいいよな。親友みたいだけど両想いってのも、すごいな……」
「ええ……」


そういうと、フレアは少し考え込む様子を見せる。


「恋愛って……まず、友情をはぐくまないと生まれない、のかな……」
「え?」
「だってさ。お付き合いするときも『まずはお友達から』なんて言うでしょ? けど、私とあなたは……友達じゃないじゃない……」

そういう雪女の手を俺は思わずつかんだ。

「確かに、正直俺はフレアを友達とことはないよ」
「……そう……やっぱり……」
「……けど……恋愛の形は様々だと思うよ。友情をすっ飛ばして恋愛に行く人だって珍しくないだろ?」
「え?」
「少なくとも俺は……友情から始まらない恋愛だってあるんだって信じたいな。……フレアと一緒にさ」
「そう……?」


……一瞬フレアはおどろいたような表情を見せた後、顔をうつむけた。
やっぱり、彼女は可愛い。そう思いながらも、俺は答える。


「……それなら、嬉しいわ? ……ねえ、ぬらりひょん?」
「なんだ?」
「腕、組んでもいい?」
「ああ……俺のほうこそ、お願い」
「うん……」


フレアはそういうと、ひんやりとした腕を俺に絡めてきた。
彼女は気を使っているのだろう、べったりと身体をくっつけるような形ではなく、軽く振れる程度にとどめている。

……正直、ちょっと残念な気もしたが。


「……冷たくない?」
「大丈夫……それじゃ、バザールに行こうか?」




バザールの中は大変にぎわっており、色々な商品を見せていた。


「ねえ、ぬらりひょん? あそこの饅頭とか食べてみる?」
「え? ……ああ、そうだな」
「そうそう、そこにある果物もおいしそうよね?」
「ち、ちょっと待ってくれ……」


妖怪は決まったものしか基本的には食べないが、俺は基本的に好き嫌いはない。
……まあ、アカナメの作った料理(?)はさすがに受け付けないのだが。
フレアは俺にどんどんとものを買って食べさせてくるのに対して、さすがに苦言を呈する。


「どうしたの? もしかして、これは嫌い?」
「き、嫌いじゃないけど……正直もう腹いっぱいだからな……」
「そう? それなら、しょうがないわね……」


そういいながら、フレアは財布を仕舞った。

「そ、そうだ? フレアって確か、塩は食えるんだよな? 俺も買わせてくれ!}
「え? いいわよ、別に。だって前氷を買ったときにお金、ずいぶん使ったんでしょ?」

確かに先日購入した氷は高価だった。
だが、それでもフレアに塩を買ってあげられるくらいのことは出来る。

「気にすんなよ。……俺はさフレアの笑顔を見るのが好きなんだから……はい、これなんかどうだ?」
「……あ、ありがと……」

そういって受け取ったフレアの表情が少し困惑していたような気がしたので、俺は思わずフォローを入れる。

「あ、べ、別に無理に笑ってくれってことじゃないぞ? ただ、その……」

だが、うまく言葉が出ない俺の腕を、フレアは強く握ってきた。


「ありがと……ぬらりひょん、大好き……」


そういって、彼女は塩を開くと、まるで映画館でポップコーンを食べるような形で口に含み始めた。
妖怪と人間は身体構造が違うのだろう、食塩を大量に摂取しても特に異常をきたさないようだ。

「美味しいわ。……このお塩……」

そんな彼女の顔を見て、俺はまた以前のように胸が高鳴るのを感じた。
……やっぱりそうだ。彼女がここにいること、そして傍で幸せそうにしてくれることが、俺にとって一番嬉しいことなんだ。


そう感じた俺は、ぽつりとつぶやく。


「フレア……俺も、フレアのこと、好きだよ……」
「……私も……」

そして俺は彼女を抱きしめようとした。……が。


「……ごめん、ぬらりひょん。……待って?」

突然フレアは顔をそむけた。
……いけない、急に抱き着いたら困惑させたか? と思ったが、そうではないようだ。


「どうしたんだ、フレア?」
「……そこ!」

そういうなり、フレアはつららを生み出し、バザールの影にある草むらに投げつけた。


「うお!」
「いってええ!」

……そこには手の目と蛇骨婆がいた。
その様子を見て、フレアは怒りの表情とともに尋ねる。


「ねえ……なんで、こんなところで隠れているの?」
「え? そりゃ、姉御とナーリがどうなるかが気になって、さ……」
「そ、そうじゃ! じゃから、ワシらものぞ……見守っておったのじゃ……」


二人はそういいながら、ベヒーモスの骨とバジリスクの卵をほおばりながら酒を飲んでいた。

……なるほど、俺たちの行動を肴にしながら、二人は仲良く食事会を開いていたということか。


「はあ……まったく、仕方ないわね……ぬらりひょん、ちょっと来て?」
「え? ……ああ……」

そういうと、フレアはぽつりと顔を真っ赤にしながら俺の首に腕を回してつぶやく。


「この状態なら逃げられないでしょ? ……キス、して?」


その発言に、二人は「うお」「うひょ!」と下世話な声を上げてきた。
……なるほど、確かにこの状態では俺は断ることは出来ない。……と言っても、断る気もなかったが。


「ああ……」


そういうと、俺は雪女の唇にそっと軽いキスをした。
ひんやりとしたシャーベットのような感触とともに、胸が熱くなるような気持ちになりながら、俺はその一瞬の感触を楽しむ。

その様子を見た二人は、

「おお、やった!」
「くそ……賭けはワシの負けか……」


そんな風に話していた。
それを聞いて、フレアは少しあきれたように答える。

「あなたたち、私たちがどうなるか、賭けていたのね?」
「そうじゃよ。お主たちがキスまでするかについてな……。わざわざおぬしらを二人っきりにしたのもそのためじゃ」

あの時にバザールに走り出したのが少し不自然だと思ったが、そういう意図があったのか。
少しあきれた表情を見せながら、フレアはため息をついた。


「まったく……あなたたちみたいな関係が、ある意味うらやましいわよ……二人も付き合ってるんでしょ?」
「え? ……い、いや、別にワシらは……」
「そうですよ、姉御! 別にジャコとはそういう感じじゃ……」

二人がそう恥ずかしそうにいうのを見て、少しだけ満足したのか、

「フフ……冗談よ。それより、そろそろバザールも終わるころだから……宿に帰りましょ?」

そんな風に言いながら、俺の手をそっと握ってくれた。
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