12 / 43
第1章 弓士団試験
ルチル姫の謀略
しおりを挟む
「ふふ……これで、準備はばっちりですわ!」
「香炉の確認、終わりました」
側近と思しきエルフは無表情で、香炉のふたを閉じた。
「媚薬入りのキャンディーもばっちりね」
ルチル姫は、キャンディを一つ摘まみ上げた。
「これで、あの人間もイチコロでしょう。次の死刑囚は奴で決まりですね」
「所詮汚らわしい人間なんて、エルフのため以外に生きる価値などないのですから。セドナとやらも、エルフのために死ねるなら本望でしょう」
「え、ええ……」
ニヤニヤと笑みを浮かべる側近の表情とは裏腹に、ルチル姫の表情は暗い。
その様子を見た側近は半ばたしなめるように付け加えた。
「姫様はむしろ、良いことをなさっているのですよ?人間一人ごときの命と引き換えにわれら誇り高き弓士団に何人か雇ってあげたのですから。」
「そ、そんなことは言われなくても分かっていますわ!」
にやり、と笑う側近二人にルチル姫も悩みをかき消すように叫んだ。
ルチル姫は、悩んでいた。
ここ数年ほど続く慢性的な食料不足……飢饉が原因とロナからは聴いている……のせいで、国民の怒りは爆発寸前であった。
このような時には「怒りの発散」がガス抜きになることは、ルチル姫も知っていた。
その為、死刑囚に対し「詐欺」「横領」と言った罪状を捏造した上で「自分たちの直接の敵」と言う認識を持たせたうえで、公開処刑を行っていた。
捏造のいかんに関わらず、死刑を免れない身だ。罪状の捏造については、誰も気づくものはいなかった。
そうやっていくうちに、自分に「首狩り姫」と言うあだ名がついていたことも、皮肉にも「首狩り姫」に対する恐怖心が暴動を遠ざけていたことも知っていた。
むろん、これが間違っていることはルチル姫も知っている。
しかし、食料不足に対する根本的な打開策が見つからない現状では、市民の暴動を抑える方法はこれが一番効率的であった。
だが今月、ついに死刑囚のストックがなくなってしまった。
他に暴動を防ぐ方法が見つからない中、ルチルは側近から、ある提案を行われた。
……犯罪者がいないなら、作ればいい、と。
そして、それはエルフから嫌われている種族であればあるほどいい、と。
「……この謁見でセドナ様が姫様に抱き着こうものなら……」
「そう、それを罪状に処刑することが出来ます。団長が証人なら、冤罪を疑う者もおりません」
「……はあ……」
元々エルフから疎まれている人間であれば、処刑したとしても反発の声は小さい。加えて、栄光ある謁見の場で、こともあろうに姫様に狼藉を働いた、となれば猶更だろう。
即ち弓士団が他種族の雇用を始めた本当の理由は、一人の「治安維持のためのスケープゴート」を作ることが目的だった。
「しかし、団長たちにバレずに進めるのは大変でしたね……」
「ええ。……そなたたちも、他言無用ですわよ」
「存じております」
その為「男性」であり「人間」であり、なおかつ謁見室に招くだけの実力を持つセドナに血塗られた白羽の矢が立ったのである。
むろん、この話は今ここにいる側近の他数名、そしてルチル姫が最も信頼している部下「ロナ」しか知らないことだ。
いずれも、ルチル姫の前であっても人間の悪口ばかり言うほど、人間を嫌っている者たちだ。
彼女たちが人間の公開処刑に異論を唱えることも、情報を漏らすこともない……と、ルチル姫は考えていた。
一通り確認が終わった後、ルチル姫は少し意外そうな表情でつぶやいた。
「けど、本当はセドナ以外の人間を『スケープゴート』にしたかったのですが……妙に受験者が少なくありませんでした?」
「確かに。会場に来るまでは結構人間が居ましたが……。途中で帰ってしまった方が多いようです」
「なんでかしらね。まあ、そこは今度ロナに聴いてみるとしましょう。全く彼女ったら昨日も定時で帰って……。おかげで、準備が大変でしたわ!」
ブツブツと文句を言いながらも、落ち着きのない様子でセドナ姫は足踏みをしていた。
「あ、来ましたわ。セドナです」
「団長たちも来たようですね。それでは私たちは下がります」
そう言って、側近たちは下がっていった。
「こんにちは、ルチル姫。本日はお呼びいただき光栄です」
そうさわやかに笑うセドナに、ルチル姫は顔を赤くした。
(な、なんですの、こいつ……。改めてみると、やっぱり……良い顔なのね……)
頭ではそう思いながらも、何とか威厳を保とうとするルチル姫。
「え、ええ、あなたには一番期待しておりますからね」
そう言って、ルチル姫は引きつった笑顔を見せた。
(さあ、この最強の媚薬で、狂うと良いわ……)
香炉の中は、男性にのみ効果を及ぼす、強烈な媚薬が入っていた。それを会話を引き延ばしながら、少しずつ部屋の中に充満させる。
むろん、謁見室にいるエルフは側近も含め全員女性だ。媚薬に巻き込まれないように、理由を付けて男性は遠ざけている。
「それで、あなたはどうして弓士団の試験を受けたのですか?」
質問自体に意味はない。単に時間を引き延ばすための内容だった。だが、セドナはそれを知らず、ほほ笑みながら答えた。
「ええ。……それは、俺の大事な人を守るためです」
「大事な人?」
「俺が困っているときに世話を焼いてくれたチャロ、王国語を教えてくれたおじいさん、それに……」
そこでセドナは一呼吸置いた。
「それに、なんですの?」
「俺たちに機会をくれた、ルチル姫のために、です。……あの、どうされました?」
(……フン!人間の癖に、面白いことをいいますわね!)
まるで、自分が媚薬にあてられたようだ……そんな気持ちを抑えながらも、ルチル姫はセドナの方を見る。
(変ね……。男性であれば、もうとっくに効いているはずなのに……。人間にはこの薬、効かないのかしら?それとも……)
ここで仮説を考えても仕方ないと考えたルチルは、次の手段を試みることにした。
「ところで、あなたもお腹がすいたでしょ?キャンディはいかが?」
これは、万が一香炉が機能しなかったときに備えて用意していた、強力な媚薬入りキャンディだ。
ルチル姫は警戒心を解くために一つ手に取り、それを口にする。
「さ、砂糖がたっぷり入ってて、おいしいわよ?」
この媚薬も、女性には効果がないものだ。相手に差し出したキャンディを自分が食べなければ不自然だから、と薬師に無理を言って作らせたものである。
「ありがとうございます。……しかし、よろしければ、これを頂いてもよろしいでしょうか?」
「え?」
「チャロや、スラム街の子どもたちに差し上げたいと思いますので……」
「ダメダメダメ!それは絶対ダメ!」
「え、どうしてですか?」
媚薬入りのキャンディを他人に食べさせるわけにはいかないから、とは到底言えないルチル姫はあたふたと慌てながら、言葉を選んだ。
「こ、これは新鮮なものだから、夜にでも腐ってしまいますのよ! だから、ここで食べないといけないんです!だから、早く、食べなさい!」
「は、はあ……」
その剣幕に気おされながら、セドナはそれを口にした。
「……はい、おいしいですね。」
「そ、そう? ところで、あなたは昨日、何を食べたんですの?」
必死に場をつなごうとするあまり、おかしな質問をしてしまった、とルチル姫は心の中で恥じた。だが、セドナは特に詮索する様子もなかった。
「昨日は何も」
「え、何も?パンの一つも食べなかったのかしら?」
「パンは、チャロにすべてあげたので」
「…………」
チクリ、とルチル姫の心に良心の呵責が走った。
こんな男をエルフの民のためとはいえ、罠にはめて処刑しようというのだ。
だが、後には引けないと思い、ルチル姫は唇をかんだ。
「そ、そう。……ところで、体が熱くないかしら?」
「そうですね。俺も最近寝るときに体がほてってしまって、困ってるんですよ……」
聞きたいのは、そんな世間話じゃない。だが、その質問で、ルチル姫は気が付いた。
……この男には、媚薬が効いていない。
(ひょっとして、側近が薬を入れ忘れた……?)
どんな男性も確実に虜になる、と薬師から念押しをされたものだ。
(いえ、そんなわけはないと思うけど……。ううん、きっとやせ我慢しているだけですわ!)
そう思ったルチル姫は、思い切って尋ねることにした。
「ねえ、セドナあ……」
「は?はあ……」
本人なりに艶を帯びた声色を出したつもりなのだが、客観的にみて、ただの甘ったるい声にしか聞こえない声。
周囲に居た団長たちも少し眉を顰める様子に、ルチル姫も気が付いていた。
「今、あなたがしてみたいことって何かあるのかしら?私にしてほしいこと、でも良いですわよ?」
これでセドナの理性は崩れ去る……ルチルはそう思っていた。だが、
「そうですか?それでは……。」
セドナは跪き、ルチル姫の手を取りながら、
「夢魔も人間も、すべての人々が笑って過ごせる世界をみんなと一緒に作りたいので、力を貸してください」
そう答えた。
「ほう……」
と、団長が感嘆の声を上げるのを見た。
……通常なら「作ってください」と言うところだが、セドナは「力を貸してほしい」と答えた。
これは「あくまでも何とかするのは自分」と言う強い当事者意識の表れだ、と言うことになる。
「…………」
そこまで聴き、ルチルは自分の期待した回答が恥ずかしくなり、セドナの手を払いのけながら顔をそむけた。
「ど、努力しますわ!……と、とにかく今日はここまでよ!明日から、早速沢山こき使うから、覚悟しておきなさい?」
「はい、いくらでもこの体、使ってください!」
どこまでもさわやかな返答をし、セドナは去っていった。
関係者が居なくなった後で、側近たちは耳打ちした。
「失敗でしたね」
「でも、大丈夫です。次の手はすでに打っていますので……」
「人間など、我々エルフの前では、かごの中の鳥も同然です……。まさか姫様、あのようなものに情を移されたのではないですよね?」
人間への憎しみを隠さずに耳打ちする側近たちに、
「べ、別にそんなわけありませんわ!」
そうルチル姫は相槌を打つのが精いっぱいだった。
「香炉の確認、終わりました」
側近と思しきエルフは無表情で、香炉のふたを閉じた。
「媚薬入りのキャンディーもばっちりね」
ルチル姫は、キャンディを一つ摘まみ上げた。
「これで、あの人間もイチコロでしょう。次の死刑囚は奴で決まりですね」
「所詮汚らわしい人間なんて、エルフのため以外に生きる価値などないのですから。セドナとやらも、エルフのために死ねるなら本望でしょう」
「え、ええ……」
ニヤニヤと笑みを浮かべる側近の表情とは裏腹に、ルチル姫の表情は暗い。
その様子を見た側近は半ばたしなめるように付け加えた。
「姫様はむしろ、良いことをなさっているのですよ?人間一人ごときの命と引き換えにわれら誇り高き弓士団に何人か雇ってあげたのですから。」
「そ、そんなことは言われなくても分かっていますわ!」
にやり、と笑う側近二人にルチル姫も悩みをかき消すように叫んだ。
ルチル姫は、悩んでいた。
ここ数年ほど続く慢性的な食料不足……飢饉が原因とロナからは聴いている……のせいで、国民の怒りは爆発寸前であった。
このような時には「怒りの発散」がガス抜きになることは、ルチル姫も知っていた。
その為、死刑囚に対し「詐欺」「横領」と言った罪状を捏造した上で「自分たちの直接の敵」と言う認識を持たせたうえで、公開処刑を行っていた。
捏造のいかんに関わらず、死刑を免れない身だ。罪状の捏造については、誰も気づくものはいなかった。
そうやっていくうちに、自分に「首狩り姫」と言うあだ名がついていたことも、皮肉にも「首狩り姫」に対する恐怖心が暴動を遠ざけていたことも知っていた。
むろん、これが間違っていることはルチル姫も知っている。
しかし、食料不足に対する根本的な打開策が見つからない現状では、市民の暴動を抑える方法はこれが一番効率的であった。
だが今月、ついに死刑囚のストックがなくなってしまった。
他に暴動を防ぐ方法が見つからない中、ルチルは側近から、ある提案を行われた。
……犯罪者がいないなら、作ればいい、と。
そして、それはエルフから嫌われている種族であればあるほどいい、と。
「……この謁見でセドナ様が姫様に抱き着こうものなら……」
「そう、それを罪状に処刑することが出来ます。団長が証人なら、冤罪を疑う者もおりません」
「……はあ……」
元々エルフから疎まれている人間であれば、処刑したとしても反発の声は小さい。加えて、栄光ある謁見の場で、こともあろうに姫様に狼藉を働いた、となれば猶更だろう。
即ち弓士団が他種族の雇用を始めた本当の理由は、一人の「治安維持のためのスケープゴート」を作ることが目的だった。
「しかし、団長たちにバレずに進めるのは大変でしたね……」
「ええ。……そなたたちも、他言無用ですわよ」
「存じております」
その為「男性」であり「人間」であり、なおかつ謁見室に招くだけの実力を持つセドナに血塗られた白羽の矢が立ったのである。
むろん、この話は今ここにいる側近の他数名、そしてルチル姫が最も信頼している部下「ロナ」しか知らないことだ。
いずれも、ルチル姫の前であっても人間の悪口ばかり言うほど、人間を嫌っている者たちだ。
彼女たちが人間の公開処刑に異論を唱えることも、情報を漏らすこともない……と、ルチル姫は考えていた。
一通り確認が終わった後、ルチル姫は少し意外そうな表情でつぶやいた。
「けど、本当はセドナ以外の人間を『スケープゴート』にしたかったのですが……妙に受験者が少なくありませんでした?」
「確かに。会場に来るまでは結構人間が居ましたが……。途中で帰ってしまった方が多いようです」
「なんでかしらね。まあ、そこは今度ロナに聴いてみるとしましょう。全く彼女ったら昨日も定時で帰って……。おかげで、準備が大変でしたわ!」
ブツブツと文句を言いながらも、落ち着きのない様子でセドナ姫は足踏みをしていた。
「あ、来ましたわ。セドナです」
「団長たちも来たようですね。それでは私たちは下がります」
そう言って、側近たちは下がっていった。
「こんにちは、ルチル姫。本日はお呼びいただき光栄です」
そうさわやかに笑うセドナに、ルチル姫は顔を赤くした。
(な、なんですの、こいつ……。改めてみると、やっぱり……良い顔なのね……)
頭ではそう思いながらも、何とか威厳を保とうとするルチル姫。
「え、ええ、あなたには一番期待しておりますからね」
そう言って、ルチル姫は引きつった笑顔を見せた。
(さあ、この最強の媚薬で、狂うと良いわ……)
香炉の中は、男性にのみ効果を及ぼす、強烈な媚薬が入っていた。それを会話を引き延ばしながら、少しずつ部屋の中に充満させる。
むろん、謁見室にいるエルフは側近も含め全員女性だ。媚薬に巻き込まれないように、理由を付けて男性は遠ざけている。
「それで、あなたはどうして弓士団の試験を受けたのですか?」
質問自体に意味はない。単に時間を引き延ばすための内容だった。だが、セドナはそれを知らず、ほほ笑みながら答えた。
「ええ。……それは、俺の大事な人を守るためです」
「大事な人?」
「俺が困っているときに世話を焼いてくれたチャロ、王国語を教えてくれたおじいさん、それに……」
そこでセドナは一呼吸置いた。
「それに、なんですの?」
「俺たちに機会をくれた、ルチル姫のために、です。……あの、どうされました?」
(……フン!人間の癖に、面白いことをいいますわね!)
まるで、自分が媚薬にあてられたようだ……そんな気持ちを抑えながらも、ルチル姫はセドナの方を見る。
(変ね……。男性であれば、もうとっくに効いているはずなのに……。人間にはこの薬、効かないのかしら?それとも……)
ここで仮説を考えても仕方ないと考えたルチルは、次の手段を試みることにした。
「ところで、あなたもお腹がすいたでしょ?キャンディはいかが?」
これは、万が一香炉が機能しなかったときに備えて用意していた、強力な媚薬入りキャンディだ。
ルチル姫は警戒心を解くために一つ手に取り、それを口にする。
「さ、砂糖がたっぷり入ってて、おいしいわよ?」
この媚薬も、女性には効果がないものだ。相手に差し出したキャンディを自分が食べなければ不自然だから、と薬師に無理を言って作らせたものである。
「ありがとうございます。……しかし、よろしければ、これを頂いてもよろしいでしょうか?」
「え?」
「チャロや、スラム街の子どもたちに差し上げたいと思いますので……」
「ダメダメダメ!それは絶対ダメ!」
「え、どうしてですか?」
媚薬入りのキャンディを他人に食べさせるわけにはいかないから、とは到底言えないルチル姫はあたふたと慌てながら、言葉を選んだ。
「こ、これは新鮮なものだから、夜にでも腐ってしまいますのよ! だから、ここで食べないといけないんです!だから、早く、食べなさい!」
「は、はあ……」
その剣幕に気おされながら、セドナはそれを口にした。
「……はい、おいしいですね。」
「そ、そう? ところで、あなたは昨日、何を食べたんですの?」
必死に場をつなごうとするあまり、おかしな質問をしてしまった、とルチル姫は心の中で恥じた。だが、セドナは特に詮索する様子もなかった。
「昨日は何も」
「え、何も?パンの一つも食べなかったのかしら?」
「パンは、チャロにすべてあげたので」
「…………」
チクリ、とルチル姫の心に良心の呵責が走った。
こんな男をエルフの民のためとはいえ、罠にはめて処刑しようというのだ。
だが、後には引けないと思い、ルチル姫は唇をかんだ。
「そ、そう。……ところで、体が熱くないかしら?」
「そうですね。俺も最近寝るときに体がほてってしまって、困ってるんですよ……」
聞きたいのは、そんな世間話じゃない。だが、その質問で、ルチル姫は気が付いた。
……この男には、媚薬が効いていない。
(ひょっとして、側近が薬を入れ忘れた……?)
どんな男性も確実に虜になる、と薬師から念押しをされたものだ。
(いえ、そんなわけはないと思うけど……。ううん、きっとやせ我慢しているだけですわ!)
そう思ったルチル姫は、思い切って尋ねることにした。
「ねえ、セドナあ……」
「は?はあ……」
本人なりに艶を帯びた声色を出したつもりなのだが、客観的にみて、ただの甘ったるい声にしか聞こえない声。
周囲に居た団長たちも少し眉を顰める様子に、ルチル姫も気が付いていた。
「今、あなたがしてみたいことって何かあるのかしら?私にしてほしいこと、でも良いですわよ?」
これでセドナの理性は崩れ去る……ルチルはそう思っていた。だが、
「そうですか?それでは……。」
セドナは跪き、ルチル姫の手を取りながら、
「夢魔も人間も、すべての人々が笑って過ごせる世界をみんなと一緒に作りたいので、力を貸してください」
そう答えた。
「ほう……」
と、団長が感嘆の声を上げるのを見た。
……通常なら「作ってください」と言うところだが、セドナは「力を貸してほしい」と答えた。
これは「あくまでも何とかするのは自分」と言う強い当事者意識の表れだ、と言うことになる。
「…………」
そこまで聴き、ルチルは自分の期待した回答が恥ずかしくなり、セドナの手を払いのけながら顔をそむけた。
「ど、努力しますわ!……と、とにかく今日はここまでよ!明日から、早速沢山こき使うから、覚悟しておきなさい?」
「はい、いくらでもこの体、使ってください!」
どこまでもさわやかな返答をし、セドナは去っていった。
関係者が居なくなった後で、側近たちは耳打ちした。
「失敗でしたね」
「でも、大丈夫です。次の手はすでに打っていますので……」
「人間など、我々エルフの前では、かごの中の鳥も同然です……。まさか姫様、あのようなものに情を移されたのではないですよね?」
人間への憎しみを隠さずに耳打ちする側近たちに、
「べ、別にそんなわけありませんわ!」
そうルチル姫は相槌を打つのが精いっぱいだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる