人口比率が『エルフ80%、人間1%』の世界に、 チート能力もなしで転移した俺が「勇者」と呼ばれるまで

フーラー

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第2章 弓士団としての初仕事

荷物運びの真相

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「はあ……」
馬車を降りてからのセドナ達の足取りは重かった。
言うまでもなく、依頼を完全に達成することが出来なかったためだ。積み荷の一部、とりわけ高価な宝飾品を丸ごと焼失させてしまった責任は重い。
「じゃあ、これから王女様に報告に言ってくるな」
どこか諦観したような表情で、セドナは隊員に伝えた。
「だ、大丈夫だって!今回のは完全な事故なんだから!それに、副隊長のおかげで積み荷の被害は最小限だったじゃねえか!」
「ああ、そうだな。……その話をすれば、お前たちの処分だけでもなくせるように、言ってみるよ」
「……だめ。キミが罰を受けるんなら、私も受けるから。……ううん、そうなったら一緒にこの国を……もが!」
「おい、よせよ、チャロ!」
ただでさえチャロは『天才』であることを疑われており、周囲から警戒されている。
その為、あまり物騒なことを言えば、謀反の恐れあり、とみなされてしまう可能性がある。
その為、リオはチャロの口を強引に閉じた。殴られたことを根に持たないところが、リオらしい。
「それじゃ、な」
そう言うとセドナはロナと王宮に入っていった。

「おや、あの薄汚い人間が戻ってきたそうですね」
謁見室の前でルチル王女の側近は、そう吐き捨てるような口調でつぶやいた。
「そうですね。最初で最後の依頼だとも知らずに……」
同じくもう一人の側近も、そうルチル王女に対して笑いかける。
「そ、そうですわね。……はあ、これで処刑が出来るかと思うと、ワクワクが止まりませんわね!」
ルチル王女は引きつったように笑みを浮かべた。
今回の依頼は、そもそも『セドナに横領の罪をかぶせる』ことが目的だった。
ロナに積み荷の納品書を改ざんさせ、意図的に積み荷の総量と合わなくさせる。
そして、高価な宝飾品が足りないということで、セドナを横領の罪に処す。これで処刑用のスケープゴートにする、と言う算段であった。
これらは側近たちの献策によるものだったが、ルチル王女はあまり気が進むものではなかった。
そもそも『死刑囚を処刑する』以外の方法で、国民の不満をそらす方法があればそれに越したことは無く、かつ食料不足の問題を解決することは最重要事項だからだ。
人間に対する悪感情から、処刑が目的化していることを考え、ルチル王女はあまりいい顔をしなかった。
「エルフ弓士隊、異種族隊副隊長、セドナ、入ります」
「同じくロナ、入ります」
それからすぐに、セドナとロナが現れた。
「おや、セドナ副隊長にロナ隊長。積み荷の輸送、ご苦労でしたわね。納品書を頂けるかしら?」
「は……」
ロナが差し出した納品書をルチル王女は受け取った。
後は、この納品書と実際の総量が合わないことを証明し、セドナを告発するだけだ。
「では、積み荷の方を運んでくださるかしら?」
「それが……」
ロナが口にする前に、セドナが遮るように口を開く。
「俺の不手際で、積み荷の一部が山賊の手に落ち、焼失しました」
「え……?」
ルチル王女は、唖然とした。
そして、セドナは野盗から奇襲を受けたこと、それにより積み荷の一部が燃やされたことを解説した。
なお、睡眠魔法の効果が自分だけ効かなかったことは伏せ、自分が最も周囲を警戒すべき先頭に位置していたことを強調するように伝えた。
むろんこれは、ロナ達の責任を少しでも軽くするためにセドナなりに考えたやり方だ。
だが、ここぞとばかりに側近たちは野次を飛ばす。
「何てこと! やっぱり人間なんか信用したのは間違いでしたね!」
「そうそう! 一体、どう責任を取るつもり?」
「あなたがちゃんとしていれば、こんな事故は起きなかったのでしょう? 処刑台に上ってもらわないと、釣り合わないわね……!」
「……それでチャロやリオ達の咎を許してくれるのであれば、俺はそれで構いません……」
そう言って首を垂れるセドナを見て、側近は笑みを浮かべた。エルフ特有の整った顔も、嗜虐にあふれると醜くゆがむものだ。
「姫様!こいつもそう言ってますし、早速処刑されてはどうですか?」
「お待ちください!」
だが、それを制止したのはロナだった。
「野盗に我々が襲われたのは事実です! ……ですが、セドナに過失はありません!」
「だから何だって言うのよ! 積み荷がここにないことがすべてでしょ?」
「そうです。しかも、話を聴くと宝飾品を守っていたあなたは、煙に巻かれて相当苦しい思いをしたそうじゃないの? それもこれも、セドナのせいじゃないの?」
「……ちょっと待ちなさい」
そこで、ルチル王女はつぶやいた。
「……セドナ副隊長」
「はい」
「確かに、この者たちの言うことももっともですわ。あなたは積み荷を守ることが出来なかった」
「……は」
「けど、山賊に襲われたことについては、仕方のないこと。……これで処刑などしてしまえば、他種族が黙ってはいないでしょう」
「……そうですね」
側近は歯噛みしながらもうなづいた。
そもそも『王女への献上品を横領する』と言う冤罪でもかけないかぎり、他種族と言えで簡単には処刑できない。
だが、幸か不幸か証拠となる納品書自体が積み荷の消失により意味をなさなくなってしまったため、その方法は使えない。
「それに、あなたは自らの危険も顧みず、ロナを助けてくれましたね。もし、ロナを見捨てていれば、宝飾品だけでも回収することが出来たでしょう」
「……はい。このものが助けてくれなければ、私の命もなかったでしょう」
ロナも、隣でうなづいた。
「そこで、あなたに汚名返上の機会を与えますわ」
「え、なんでこんな人間なんかに……」
「黙りなさい」
ルチル王女の一言に、側近は押し黙った。
「それで、あなたは汚名返上に何が出来るのです?」
少し逡巡した後、セドナは自信なさげに答えた。
「は……。それであれば、先ほどの山賊を捕まえに向かいます」
そう答えるセドナに、側近たちは大声で嘲り笑った。何が何でも人間を貶めないといけない呪いでもかかっているのだろうか。
「キャハハハハ!なにバカ言ってんの、人間?」
「そうよ、人間ごときが森林に逃げたエルフを捕まえられるわけないでしょ? 人間って頭悪いのね?」
「……すみません……」
「お二人とも、その辺になさい。……ただ、彼女らの言うことも最もです。森林を駆け巡るエルフを捕まえるのは、人間には出来ないでしょう。野盗たちの討伐隊は、我々エルフの正規軍が結成します。……他にはありますか?」
「であれば……」
そう言うと、セドナはポケットから1枚のバッジを取り出した。
エルフの頭領が逃げたところに落ちていたものだ。恐らく、膝蹴りを見舞ったときに服を引っ張った際、落ちたものだろう。
「このバッジに見覚えはありませんか?」
そのバッジを見て、ロナは顔色を変えた。
「これは……!」
「ええ、知ってますわ。隣にある『ディエラ帝国』の徽章ですわね。これがどうしたのかしら?」
「我々を襲った山賊の頭領と思しきエルフが所持していたものです」
「……で、それがなんなの?」
「ちょっと、俺の考えを聞いてくれますか?」
そう言いながら、セドナは少しずつ話し始めた。
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