人口比率が『エルフ80%、人間1%』の世界に、 チート能力もなしで転移した俺が「勇者」と呼ばれるまで

フーラー

文字の大きさ
25 / 43
第3章 ディエラ帝国への潜入調査

エルフと言う生き物

しおりを挟む
私は、人間と言う生き物が嫌いだった。
新聞を見ていると、出てくるのは人間が起こした事件ばかり。

日常の会話で聞こえた内容もいつも同じ。
「人間はエルフよりも寿命が短いから、短絡的な事件ばかり起こすものだ」
「エルフは人間よりも思考力が優れているから、人間はそれに嫉妬して怒りを見せるのだ」
そんな風に、私たちエルフを持ち上げ、その踏み台に人間を使うものばかりだった。
そんな生活を送っていた私は、いつしか人間を嫌うことが当たり前になっていたし、人間への優越感を持っていた。

そして40年前、戦争が起きた。
戦争の相手は、今の私の住む国だ。
その時、私たちは多くの敵兵士を手にかけてきた。
いつか、私も殺されることは分かっていた。

……しかし、『その時』はすぐに来た。
ディエラ帝国が私たちの住む砦を放棄し、私たちを切り捨てたからだ。
そして数週間後砦が陥落した。その時には立っていられる兵士はほぼおらず、みな傷病により倒れこんでいた。
当然私も、その一人だ。せめて苦しまずに死ねるなら幸いだ、とも思っていた。……だが、
「急いで、敵兵の救護に当たれ!」
と言う声が聞こえてきた。それが今の夫だった。

次に意識が目覚めた時、私はベッドの上だった。
人間たちは私への敵意を見せながらも、手を止めることなく看護を続けていた。
「なんで、敵兵である私たちを助けるの?」
それを聞くと、人間たちは色々な反応を示した。中には、
「お前たちを捕虜とした方が、和平交渉に有利だからだ」
「お前たちを法の場でさばいてもらうためだ」
そう敵意を込めた口調で言うものもいたが、その言葉の裏には違うものを感じた。
エルフの世界にはないが、どこか暖かい感情。
それが、最初に人間……いや、他種族そのものに興味を持ったきっかけだった。

数年後、私の国は破れ夫の国……今の王国と和平条約を結んだ。
私は傷病所で再会した夫と結婚し、夫の国で働くようになった。
勿論、両親はみな反対した。
人間と結婚しても、すぐに歳をとり、晩年は介護が必要になる。
そんな人生を棒にふるようなことをするんじゃない、と。
みなそう言っていたが、私は夫と結婚して後悔はなかった。
夫の寿命はずっと短いけれど、その短い分の密度で私を愛してくれた。
夫は私以外にも愛情を注いでいた。それが自分にとって損になるような相手でも、だ。
それに『ヒューマニズム』という名前があると知ったのは、結婚してからだった。
私は今でも、その価値観を理解できない。だが、夫のその価値観は、私は好きだった。

30年ほどともに過ごし、夫は少しずつ老いていった。
それでも、私にとっては出会った時のまま、素敵な夫でしかなかった。
私は要職に就くのをやめ、受付嬢として働きはじめた。
別に夫に頼まれたわけではない。……夫と少しでも長くいたいと思ったためだ。
……だが数年前、私は夫に病を患っていることを聞かされた。
私はその時、ようやく夫の「死」を意識した。その時のショックは忘れない。

「……どうした、ロナ? うなされていたぞ?」
「え? ううん、何でもない」
「それなら良いんじゃが……。ロナ、いつもありがとうな」
「気にしないで。私の方が寿命は長いんだから、短命の人間の介護くらい、覚悟してたわ」
「ああ、それもそうじゃが……。そばにいてくれることが、嬉しいんじゃよ」
「どういうこと?」
「ただ、一緒に居て話をして、ご飯を食べて、ゲームで遊んで……そう言う日常が、ありがたいことだって思ってな。……それだけじゃよ」
「そう。……それなら、私もありがと。そばに居て幸せなのは、私も同じよ?」
「そうか……。それなら、よかった」
そう言って、夫はまた眠り始めた。

夫の顔を見ていれば分かる。今も病による激痛と必死に戦っていることを。
そして、寿命がもう残り少ないことも。
だから私は、夫の命が少しでも伸びるなら、何でもする。そのためには、国を裏切ることは何とも思わないし、関係ない人が苦しんでも心は痛まない。

それがエルフと言う生き物なのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...