3 / 9
2 本作は過激な性描写のない物語です
しおりを挟む
それから3週間ほど経過した。
「やっほー! 土地神様!」
『来てくれたんだね、ユズカちゃん! 今日は何して遊ぼっか!?』
「一緒にゲームやってみない? パズル一緒に解くなら、土地神様でも一緒に遊べるでしょ? いいアプリ見つけたから落としたんだ!」
『へえ、面白そう! うん、やりたいやりたい!』
私はあの日以降、学校が終わると塾をサボって、すぐに土地神様のもとに遊びに行くようになった。
土地神様は何を見せても楽しそうにしてくれた。
スマホでダウンロードしたゲームは勿論、小さい時に一緒に遊んだおもちゃなどであっても興味深そうに関心を示してくれる。
「ねえ、ここのコマを左に寄せたら勝てるんじゃない?」
『え? ……あ、本当だ! 頭いいね、ユズカちゃん!』
「やったね、土地神様!」
ステージをクリアした後、私と土地神様は楽しそうにハイタッチを行った。
……とはいえ、土地神様には実体がないから、スカッと手はすり抜けてしまうのだが。
その様子を見て、少し土地神様も残念そうな顔をする。
『……その、ゴメンね、ユズカちゃん? あたし、実体がないからパチン! って出来なくて……』
「ううん? そうやって、手を合わせてくれるだけで嬉しいから! ……ほら、こうやってさ?」
そして私は彼女の手にそっと自分の手を重ねる。
感触はないが、互いの姿を重ね合わせるだけで、どこか心が温まるような感触になる。
「私たちはさ? 現世(うつしよ)と幽世(かくりよ)で住む世界は違っても……一緒に、こうやって同じ時間を過ごすことは出来るから……。それだけで私は十分だよ?」
『ユズカちゃん……ありがと、優しいんだね……』
「フフ、私だって大人になったんだから! 一生土地神様と一緒にいたいな……」
『……一生? ……嘘でも嬉しい! ユズカちゃん大好き!』
土地神様はそういって私の胸元に頭をこつんと置いてくれた。……まあ、やはりその感触はないのだが、それでも私の心には今までにない満足感と高揚感が満たされるようだった。
(本当に……あのおじいさんに出会えて良かったな……)
「あ……」
『どうしたの、ユズカちゃん?』
だが、私はその時に気が付いた。
お爺さんから貰った薬がもう残り少ないことを。
飲んでいてわかったが、この薬で霊能力を取り戻せるのは精々一日に数時間だ。
私は土地神様に尋ねる。
「ごめん、土地神様? 次の新月っていつかわかる?」
『え? ……ゴメン、分からないよ。スマホで調べてみたら?』
「うん。……ああ、よかった。明日か……」
その様子を見て、土地神様も私が何を調べていたか察したようだ。
『あ、ひょっとしてユズカちゃん……もう、おじいさんから貰った薬が残り少ないの?』
「うん……だから、新しい薬を貰わないといけないんだよね……」
『けど、確か一瓶10万円だよね? どうするの?』
「……大丈夫。土地神様は心配しないで?」
私はもう、どうやって金を工面するかは決めている。
そして翌日。
私は以前お爺さんと出会った路地に行くと、幸いお爺さんはそこにいた。
彼はどこかうさん臭い笑みを浮かべながら尋ねてきた。
「おや、お嬢ちゃん。また会ったの」
「こんばんは、お爺さん」
「あの薬はどうだったかのう?」
「うん、凄かった! まさかまた土地神様に会えるなんて思わなかったから! ありがと、お爺さん!」
それをいうと、お爺さんは少し驚いたような表情を見せた。
「ほう……まさか、土地神様に会えるとはな……。それでここに来たということは……」
「うん、新しい薬を分けてほしいの!」
そういうと私は10万円を現金で渡した。
それを見てお爺さんは少し目を丸くした。
「なんと……。まさか本当に金子を集めてくるとはな? 『売春』でもしたのか?」
今は売春のことを『パパ活』と呼ぶんだけどな。
まあ、お爺さんも怪異の可能性は高いし、そういう表現を知らないのか。
そう思いながらも私は首を振った。
「ううん。……私なんかがそんな高く売れるとは思えないし……」
「ふむ……まあ、金の出所などワシには関係ないがの。それ、持っていくがいい」
「ありがとう、お爺さん」
私はお爺さんから新しい瓶を受け取った。
(ゴメンね、母さん……)
勿論、このお金はパパ活など行ったわけではない。
かといって私のお小遣いでは10万円もする薬は買うことが出来なかった。
(けど、お母さんもさ。私のお年玉を無理やり預かったんだから、おあいこだよね……)
このお金は、家にあった箪笥から持ち出したものだ。
防災など、いざという時に備えて隠してある、緊急用の蓄えとして家に置いてあるものだ。
どうせ災害が出た時にしかこのお金は使わないだろうから、バレるまでは当分ある。
それまでに私はバイトなりなんなりして、お金を戻しておけば問題ないだろう。
(愛する人のために手を汚すなんて、まるで漫画の主人公みたいだよね……)
……正直家のお金を勝手に持ち出したことは悪いと思った。
だけど、私にとっては初恋の相手である土地神様に会うためにはどんな悪事だって辞さないつもりだ。
私はそんな『悪女』である自分に酔いながら、瓶を大切にしまうとお爺さんに別れを告げて路地を後にした。
「やっほー! 土地神様!」
『来てくれたんだね、ユズカちゃん! 今日は何して遊ぼっか!?』
「一緒にゲームやってみない? パズル一緒に解くなら、土地神様でも一緒に遊べるでしょ? いいアプリ見つけたから落としたんだ!」
『へえ、面白そう! うん、やりたいやりたい!』
私はあの日以降、学校が終わると塾をサボって、すぐに土地神様のもとに遊びに行くようになった。
土地神様は何を見せても楽しそうにしてくれた。
スマホでダウンロードしたゲームは勿論、小さい時に一緒に遊んだおもちゃなどであっても興味深そうに関心を示してくれる。
「ねえ、ここのコマを左に寄せたら勝てるんじゃない?」
『え? ……あ、本当だ! 頭いいね、ユズカちゃん!』
「やったね、土地神様!」
ステージをクリアした後、私と土地神様は楽しそうにハイタッチを行った。
……とはいえ、土地神様には実体がないから、スカッと手はすり抜けてしまうのだが。
その様子を見て、少し土地神様も残念そうな顔をする。
『……その、ゴメンね、ユズカちゃん? あたし、実体がないからパチン! って出来なくて……』
「ううん? そうやって、手を合わせてくれるだけで嬉しいから! ……ほら、こうやってさ?」
そして私は彼女の手にそっと自分の手を重ねる。
感触はないが、互いの姿を重ね合わせるだけで、どこか心が温まるような感触になる。
「私たちはさ? 現世(うつしよ)と幽世(かくりよ)で住む世界は違っても……一緒に、こうやって同じ時間を過ごすことは出来るから……。それだけで私は十分だよ?」
『ユズカちゃん……ありがと、優しいんだね……』
「フフ、私だって大人になったんだから! 一生土地神様と一緒にいたいな……」
『……一生? ……嘘でも嬉しい! ユズカちゃん大好き!』
土地神様はそういって私の胸元に頭をこつんと置いてくれた。……まあ、やはりその感触はないのだが、それでも私の心には今までにない満足感と高揚感が満たされるようだった。
(本当に……あのおじいさんに出会えて良かったな……)
「あ……」
『どうしたの、ユズカちゃん?』
だが、私はその時に気が付いた。
お爺さんから貰った薬がもう残り少ないことを。
飲んでいてわかったが、この薬で霊能力を取り戻せるのは精々一日に数時間だ。
私は土地神様に尋ねる。
「ごめん、土地神様? 次の新月っていつかわかる?」
『え? ……ゴメン、分からないよ。スマホで調べてみたら?』
「うん。……ああ、よかった。明日か……」
その様子を見て、土地神様も私が何を調べていたか察したようだ。
『あ、ひょっとしてユズカちゃん……もう、おじいさんから貰った薬が残り少ないの?』
「うん……だから、新しい薬を貰わないといけないんだよね……」
『けど、確か一瓶10万円だよね? どうするの?』
「……大丈夫。土地神様は心配しないで?」
私はもう、どうやって金を工面するかは決めている。
そして翌日。
私は以前お爺さんと出会った路地に行くと、幸いお爺さんはそこにいた。
彼はどこかうさん臭い笑みを浮かべながら尋ねてきた。
「おや、お嬢ちゃん。また会ったの」
「こんばんは、お爺さん」
「あの薬はどうだったかのう?」
「うん、凄かった! まさかまた土地神様に会えるなんて思わなかったから! ありがと、お爺さん!」
それをいうと、お爺さんは少し驚いたような表情を見せた。
「ほう……まさか、土地神様に会えるとはな……。それでここに来たということは……」
「うん、新しい薬を分けてほしいの!」
そういうと私は10万円を現金で渡した。
それを見てお爺さんは少し目を丸くした。
「なんと……。まさか本当に金子を集めてくるとはな? 『売春』でもしたのか?」
今は売春のことを『パパ活』と呼ぶんだけどな。
まあ、お爺さんも怪異の可能性は高いし、そういう表現を知らないのか。
そう思いながらも私は首を振った。
「ううん。……私なんかがそんな高く売れるとは思えないし……」
「ふむ……まあ、金の出所などワシには関係ないがの。それ、持っていくがいい」
「ありがとう、お爺さん」
私はお爺さんから新しい瓶を受け取った。
(ゴメンね、母さん……)
勿論、このお金はパパ活など行ったわけではない。
かといって私のお小遣いでは10万円もする薬は買うことが出来なかった。
(けど、お母さんもさ。私のお年玉を無理やり預かったんだから、おあいこだよね……)
このお金は、家にあった箪笥から持ち出したものだ。
防災など、いざという時に備えて隠してある、緊急用の蓄えとして家に置いてあるものだ。
どうせ災害が出た時にしかこのお金は使わないだろうから、バレるまでは当分ある。
それまでに私はバイトなりなんなりして、お金を戻しておけば問題ないだろう。
(愛する人のために手を汚すなんて、まるで漫画の主人公みたいだよね……)
……正直家のお金を勝手に持ち出したことは悪いと思った。
だけど、私にとっては初恋の相手である土地神様に会うためにはどんな悪事だって辞さないつもりだ。
私はそんな『悪女』である自分に酔いながら、瓶を大切にしまうとお爺さんに別れを告げて路地を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
ハチミツ色の絵の具に溺れたい
桃本もも
青春
大学生になったばかりの梅若佐保には、ひとつだけ悔やんでも悔やみきれないことがあった。
高校で唯一仲良くしていた美術部の後輩、茜谷まほろが事故に遭うきっかけを作ってしまったことだ。
まほろは一命を取りとめたものの、意識不明がつづいている。
まほろがいない、無味乾燥な日々。
そんな佐保のもとに、入院しているはずのまほろが現れる。
「あたし、やりたいことがあって、先輩のところに来たんです」
意識だけの存在になったまほろとの、不思議なふたり暮らしがはじまる――
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる