ざまぁ担当の男たちが『アホの子』すぎて自滅ばかりするから、何もしてないのに『最凶の悪役令嬢』にされてるんですけど?

フーラー

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プロローグ 失脚した『天才絵師』、バカヤネン

プロローグ2 見た目が『吊り目』だと『悪役令嬢』と思うよね、みんな

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そしてアンジュは国王に対して向き直り、心配そうな表情で尋ねる。



「ところで……騎士団長……黒薔薇姫殿のご容態はいかがでしょう?」
「ああ。……この山賊どももなかなかの手練れだったようだな……。幸い命に別状はないものの、長期間の療養が必要とのことだ」


その発言に対して、山賊達がせめてものプライドを保とうとしたのか、ニヤリと笑って声を出す。


「当然だ! 我々は、元は他国の騎士団員だからな! いかに騎士団長であろうとも、無傷で済むわけがないだろう!」
「そう、なのね……。けど、命に別状はないみたいね、安心したわ?」


(何を白々しい……てめえがこいつらを操って襲わせたんだろうが……)


彼女のその胸を撫でおろす姿を見ながら、バカヤネンは心の中で毒づいた。
……いや、それは周囲の貴族連中も似たような印象を抱いているようだった。


(心配するふりをして、騎士団長殿が表舞台にいつ戻るかを算段しているのだろう……恐ろしい女だ……奴は……)
(流石は『最凶の悪役令嬢』と言われるだけのことはある……。自分の手を汚さず、敵となるものを同士打ちさせるとは……)
(しかも、何をいっても『私には何もわからない』で通る状況……。一体、彼女の持つ『チート能力』はなんなのだ……そこのしれぬ奴め……)


そんな風に、周囲の貴族はつぶやいていたがアンジュの耳には聞こえていなかった。
そしてバカヤネンは最後に、怨嗟の思いとともにつぶやく。


「俺はここまでか……。だが、いつか表舞台に必ず戻ってくるからな、アンジュ……!」
「ええ、是非。その時には全力で『歓迎』いたしますわね?」
「ぐ……」


だが、顔色一つ変えずにそうニコニコと答えるアンジュに対して、バカヤネンは勿論周囲も恐ろしげに彼女を見つめた。


そして、バカヤネンが兵士によって牢獄に送られるのを見届けた後、アンジュは、


「ごめんなさい、ちょっと体調が悪いので……。私、失礼させていただきますね」


そういって、部屋を出ていった。



その様子を見て、周囲の貴族たちは息を吐いた。


「はあ……なんて恐ろしい女だ、アンジュめ……」
「聴けば彼女は『転移者』とのこと。……あの笑みの裏で何を考えているのか……。私も殺されるかと思いましたわ?」
「ええ。これで何人目だ? 彼女にはめられたのは……!」

この大陸において『転移者』自体は珍しくない。
だが、彼女の残した功績は転移者であることを差し引いても、恐ろしいものだった。

貴族たちは口々に彼女への恐怖をつぶやきながらも、災厄が過ぎ去ったあとのように、安堵の空気が流れていた。




一方。


「はあ……。やっぱり、ああいう場所は慣れないわね……」

アンジュはそう中庭でぼうっとしながら息を吐く。


「黒薔薇姫様も、命に別状がないようで良かったわ。あまりあの方は好きではなかったけど、流石に死なれたら嫌だものね……」


さらに、こうつぶやく。


「それにしてもバカヤネンさん……。私のために、あそこまでしてくれるなんて……本当に優しい人よね……。なんで、この世界の男性たちは……私にこんなに優しくしてくれるんだろうな……」


無論、彼女は本気でそう思っている。
……実際には彼女はこの世界に転移してから、多くの男たちから悪意に晒されてきたし、バカヤネンも彼女を物理的に害しようと思っていた。


だが、この世界の男性は全員『アホの子』なのだ。
彼らがあまりにも『底抜けの馬鹿』のせいで自滅を繰り返し、そのたびに彼女が相対的に地位と名誉を得てきたのだ。


それを彼女はこの世界について、


「男性たちが、自分の身を犠牲にしながら自身を盛り立ててくれている」

と認識している。


「何の能力もなしにこの世界に転移したときにはどうなるかと思ったけど……。みんな優しい殿方ばかりで、寧ろ申し訳なくなるわね……」


彼女転移前に所属していた高校は生徒間・男女間の仲が大変良かったこともあり、彼女はいじめや仲間外れとも無縁だった。

また家庭環境も非常に良好であり、優しくてイケメンの兄に溺愛されていた彼女は、世間知らずで『基本的に周りはみんないい人ばかり』と思っている。


……もし、アンジュがこのまま大学に入ったら、最初に不誠実なチャラ男に標的にされるほどには、彼女は無防備で純真、そして『いい子』だった。


「それにしても、先ほどの場での私の態度、問題なかったのかな……」


実際、先ほどまでニコニコと表情を崩さずに周囲に気を配っていたのは、単に「社交の場で恥をかかないように緊張していた」だけであり、またバカヤネンに対する態度も、黒薔薇姫を心配する言動も、偽りのない本音だった。


……つまり彼女は本気で、バカヤネンのことを「自分が嫌っている騎士団長にお仕置きをしてくれた、やり方は手荒だが自分を大事に思ってくれている人」と思っているのだ。



にもかかわらず、彼女はこの世界では『最凶の悪役令嬢』というあだ名がついている。
その理由は、単に彼女の顔だちだけが原因ではなく、彼らの愚かさにも起因する。


……次の節では、今回の事件の顛末について解説しよう。
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