二度目の冒険は『低レベル縛り』でいきましょう~『自称』ドMの女勇者ちゃんと一緒に、魔王になったヤンデレ妹を討伐します~

フーラー

文字の大きさ
4 / 56
第1章

1-2 「この魔法」を知らない読者はいるのかな?

しおりを挟む
「……来るよ!」


そういうとともに、茂みから魔物が現れた。


「ぐがあああああ!」


そこにいたのは、青色で一つ目の化け物。
頭と背中に大きな角があり、それを大きく振り回すように威嚇しながら、手に持った棍棒を振りかざしてきた。


それを見て、グリモアは明らかに拍子抜けしたような顔をした。



「なんだ、レッサー・サイクロプスか……」
「本当ね。これなら私でも勝てるわ? マルティナ、あんたたちの出番はないわ」


アリーナも同様に、緊張を解く。


まあ、それも無理はない。
奴は物語の中盤に出てくるモンスターで、正直レベルでいうと20ほどあれば難なく倒せる。

グリモアとアリーナは加入時点でレベル50、そしてロナのもとに付いたときには70だった。
レッサー・サイクロプス程度なら剣技も魔法もなく通常攻撃だけでワンパンできる。


「よし、折角だし気持ちよくぶった切ってやるか……」


だが、グリモアは魔王ロナにコテンパンにされた怒りがまだ消えていないのだろう。
ニヤリと笑みを浮かべると、必殺技の構えをした。


「あのチビにボコされて、イライラしてるんだよな、俺はさ……だからさ、最強技でぶった切ってやるよ!」


そういうとレッサー・サイクロプスに向けて突撃するグリモア。
……だが、俺はその瞬間猛烈に嫌な予感がした。


「待て、グリモ……!」
「くらいやがれ! 飛燕閃光激!」

グリモアは俺の制止を無視して剣を振り上げる。
……だが。


「な……どうして……!」



やっぱりだ、技が発動しない。


……俺はさっきから自分の体に違和感を感じていた。
俺はこの世界に転生してから、妹のロナを守るため……いや、幸せにするために必死で鍛錬を続けてレベルを上げてきた。

だが、今まで鍛えに鍛えてきた魔力が全身から感じられなくなっているのだ。


(まさか……!)


俺はそう思いながら道具袋に入っている『査定の宝珠』を取り出し、握りしめた。
これは、握ったものの力量……即ちレベルの値に比例して輝きが増すものであり、冒険者なら誰もが無料で手に入れることが出来る。


力いっぱい宝珠を握りしめ、俺は確信した。


(宝珠が光らない……。ということは俺の今のレベルは1……!? くそ、やっぱりか!)


これで文様の謎が解けた。
……恐らくだが、魔王ロナがかけた呪いは『レベルを1に固定するもの』だ。
だが、グリモアはそのことに気が付いていない。

必殺技の未発動を単なる「MP切れ」とでも思ったのだろう、剣を構えてレッサー・サイクロプスを睨みつける。


「くそ、剣技がなくたって、こんな雑魚……!」
「よせ、グリモア! 俺たちは……!」
「黙ってろ、クソが!」


だが、俺の制止を聞こうともせずにグリモアはレッサー・サイクロプスに斬りかかる。


「だああ!」


だが、以前は閃光のように鋭かった一撃は、まるで子どものお稽古ごとのごとき鈍さだった。


「な……なんだ……力が、入らない……!」

そのあまりに軽い一撃を受け、レッサー・サイクロプスはニヤリと笑う。
……まずい、調子づかせたようだ。


「グゲゲゲゲゲ!」

そう叫ぶとともに、奴は棍棒を振り下ろす。


「くそ、こんな一撃受けたって……!」

そういいながら盾を構えるグリモア。
……普段なら、ノーガードでもダメージはかすり傷程度だろう。

だが。


「ぐわああああ!」

そう叫ぶとともに、思いっきり吹き飛ばされ、近くに遭った大木に激突した。



「ああああ! いてえ、いてえよお!」


グリモアは先ほどまでの強気な態度はどこへやら、全身をたたきつけられた衝撃でのたうち回っていた。


(くそ……やっぱりか……!)

この世界に来てモンスターたちと戦って分かったことがある。
俺たちが感じるダメージは「HPがどの程度削られたか」ではなく「最大から何%削られたか」という相対的な数値によって決まる。

つまり、体力1000のキャラが500ダメージを喰らうより、体力200のキャラが190ダメージを喰らうほうがはるかに強烈な痛みが走るということだ。


「た、助けてくれ、もう無理だ! 勝てねえよ……! 回復してくれ、アリーナ!」

グリモアは幼少期から天才的な才能があったのだろう。
だから、魔王ロナとの戦いでも「一撃で体力を9割削られる」ような経験はしなかったはずだ。

その情けないグリモアを見ながらも、焦った様子でアリーナは呪文を唱えるべく杖に魔力を込める。


「う、うん……光の精霊よ、彼のものを癒せ! グランド・ヒール……あれ?」


だが、やはり彼女の魔法も発動しない。
レベルが1に戻されたことで、殆どの魔法がつかえなくなっているのだろう。


「グゲゲゲゲゲ!」


そしてレッサー・サイクロプスは『柔らかくておいしそうな餌』と彼女を判断したのだろう、ニヤリと笑みを浮かべると彼女に向けて棍棒を振り上げた。


「あ、わ……し、障壁を……ダメ! 出ない……助けて!」


アリーナは慌てた様子でバリア系の魔法を使おうとするが、それも当然発動しない。
体力があり重装備であるグリモアと違い、アリーナはあの一撃を喰らったらひとたまりもないことは明らかだ。


(くそ……なら……俺が最初に覚えた魔法……これなら、使えるか!)


そう思い、俺は呪文の詠唱を始めた。


「神より堕天したものルシファー、そのものより与えられし力、我がもとに集え……!」


これは、俺が前世の『現代日本』でゲームをやっていた時に、多くのゲームで出てきた魔法。どこで最初にこの魔法を知ったかは皆知らないのに、なぜか皆知っている魔法。


熟練したファンタジー系のRPGプレイヤーなら『この魔法を使わないゲーマー人生』は、まず歩まないだろう。


……だからこそ、前世でゲームオタクだった俺は、この『魔法の代名詞』ともいえる術を異世界で最初に覚えた時、まさにファンタジーと一体化出来たような感動を感じた。


あの時の感動は今でも微塵も薄れない。


基本にして、原点。
最高にして最古。

もはや『この魔法』は数多のゲームで垣根を超えて伝わる『共通言語』あり、この魔法の知名度はゲーム……否、人類が存在する限り、永遠にトップであり続けるはずだ。


……その魔法の名は……



「喰らえええええええ! 『ファイヤーボール』!」



そう叫ぶと、俺の杖から小さい火球が現れ、それがレッサーサイクロプスの目に向けて飛んでいく。

やっぱりだ、レベル1で覚えたこの魔法は、かろうじて使用できるのだ。



「グエ……! グググ……! ガア!」


だが、その火球は奴の皮膚を焦がしただけで力なく燃え尽きる。
レッサー・サイクロプスはすぐに火球を振り払うと、こちらを睨みつけた。


「ひ、ひい……」
「きゃあああああ! もういやあああああ!」


だがその隙に、アリーナはグリモアの治療を諦め、杖も放り出してその場から逃げ出していった。

はなから利己的なあの二人の助力など期待していない。
……寧ろ、足で惑いでもある彼女を逃がすことが出来ただけ、良しとしよう。


「グガ……ガアアアア……!」


レッサー・サイクロプスは怒りといら立ち交じりの表情でこちらにゆっくりと歩み寄ってくる。
どうやら、ターゲットを俺たちに移したことが分かった。


(くそ……まずいな……! 逃げるか、それとも……)


だが、俺がそんな風に思案をめぐらせている中、隣にいた勇者マルティナは違った。
そんなサイクロプスを見て興奮したような表情で、そのレッサー・サイクロプスの一撃を待ちわびるように剣を握りしめていた。


「う……うひひ……い、いいじゃない……その一撃……! グリモアを瀕死においやるなら、あたしはきっと……フヒヒ……!」


(お、おい……。まじかよ、なんであんなに嬉しそうなんだ……?)


その異様な表情を見せる彼女を見て、マルティナがまだ12才の少女であることを忘れそうになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...