二度目の冒険は『低レベル縛り』でいきましょう~『自称』ドMの女勇者ちゃんと一緒に、魔王になったヤンデレ妹を討伐します~

フーラー

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第1章

1-3 攻撃アイテムは「もったいない病」の被害者だ

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「フヒヒ……さ、さあ、早く来てよ、青い巨人さん! あたしは『ドM』なんだよ! だからさ! シイルにじゃなくて、あたしにその一撃を振り下ろしてみてよ!」


そういいながら、だらしない笑みを浮かべて剣を構えるマルティナ。


(いや、奴は……多分俺の方に来るはずだ……!)


この世界はゲームの世界に近い。
そのため元の世界ほど年齢や性別で明確な膂力の差はなく、同じレベルならマルティナのほうが俺より戦闘力は上だ。

即ち通常の魔物であれば剣を持つ彼女には目をくれず、非力な俺の方に向かうはずだ。
まして、先ほどファイヤーボールを撃ったのは俺の方なのだ。


「グガ……? グヒヒヒヒ……!」
「そう! あたしのほうに来てよ! 思いっきり戦おう?」


だが、そんな俺の予想に反してレッサー・サイクロプスは、その一言を受けるとともにマルティナの方を向き、棍棒を振り上げた。


(そうか……あれは、マルティナのスキル……!)

この世界には、各人が『固有スキル』を最初から保有している。
そしてマルティナの固有スキルは『挑発(タウント)』だ。

消費MPは0で、使ったターンは自分にターゲットを向けることができる技でもある。
大抵、この手のスキルは物語終盤には使わなくなるので俺は忘れていた。


(なるほど、固有スキルは失っていないのか……そうか、だから……グリモアも……)


グリモアの固有スキルは『即死回避』だ。瀕死状態でさえなければ、致死的な一撃を一度だけHP1で耐えることが出来る。

……レベル1のグリモアが致命傷を避けられたのは、それが理由だ。
決して、HPで耐えたわけではなかったのだ。


(ってことは……まずい、あいつの一撃にマルティナは耐えられない!)


つまり、マルティナは奴の一撃を喰らったらワンパンで殺される。


この世界の蘇生アイテムは、死亡してから30秒以内に使わないと効果がない。
だが、魔王ロナとの戦いで蘇生アイテムは使い果たしている。……つまり、あの一撃を喰らったらマルティナとは永遠のお別れになる。


そのことを最後まで一緒に戦っていたマルティナも当然知っているのだろう、嬉しそうな表情で、こちらを見やる。



「シイル達は今のうちに逃げて! ……冒険、楽しかったよ! 今までありがと!」




やっぱりだ。
マルティナは自分を『ドM』と自称しているが、どちらかといえば『死にたがり』といってもいい。


……けど、ロナを救えなかった俺が、マルティナまで失うなんてごめんだ!


(くそ! 何かないか、なにか……!)


そう思いながら俺は道具袋の中を漁った。
……そして、


(これだ……!)


俺はそう思うと、レッサー・サイクロプスの後ろに回り込む。
その間に、マルティナは剣を抜いてレッサー・サイクロプスに斬りかかる。


「グガがガガガ!」
「こい、化け物! 喰らえ、この!」


マルティナは魔物に向かって思いっきり剣を振り下ろすが、やはりグリモア同様その一撃は軽く非力なものだった。


「グゲゲゲ……グガア!」
「キャア!」


あっさりと弾き飛ばされ、後ろの木に叩きつけられたマルティナは、痛みに顔を歪ませながらも立ち上がる。
……もっとも、その顔は苦痛ではなく悦びによるものだったが。


「フヒヒ……! まだ……足りないよ……! もっと、痛めつけないと……あたしは……みんなに……顔向け、できないから……!」


だが、奴の棍棒をまともに喰らえば、今度こそ確実に命を落とす。

そのことが分かった俺は化け物の後ろから、荷物袋から取り出したアイテム『轟炎のかけら』を取り出して叫ぶ。


「おい、デカブツ! あまり俺たちを舐めるなよな!」


これは、冒険の中盤に手に入れていた非売品の『攻撃アイテム』だ。

貧乏性の俺は、こういうアイテムを『もっと、強い敵が出たら使おう』と思っているうちに荷物袋に死蔵してしまい、アイテム性能が敵の強さに追いつけなくなって腐らせてしまう悪癖があった。


……だが、今この場ではそんな自分の性分に心から感謝していた。


「くらえええええ!」


俺の投げつけた『轟炎のかけら』は、すぐに巨大な炎の槍となり、レッサー・サイクロプスに向かっていく。


「グ……ガアアアアア!?」

勇者マルティナに気を取られていた奴もようやく気が付いたようだが、もう遅い。
この攻撃は『必中』だ。……だからこそ出し惜しみしていたのだが。


「ギャアアアアア!」


その炎の槍は、レッサー・サイクロプスの目を今度こそ貫いた。
ゴオオオオ……という炎の唸りとともに、レッサー・サイクロプスは倒れこむ。


「やったか!」

俺は思わずそう叫んだ。


「……グ……ガアアア……」
「!」


レッサー・サイクロプスはそうわずかに身じろぎをしたのを見て、俺は思わず身構えた。
……だが、それが断末魔だったようだ。

レッサー・サイクロプスの全身からマナがあふれ出てきて、俺に向かってきた。


(……これで、少しは強さを取り戻せるのか……?)


この世界のモンスターは、倒すとマナ……即ち経験値があふれ出る。
それを『倒した人』に吸収され、それが強さとなっていくシステムだ。


俺はその経験値が自分に取り込まれていくのが分かり、戦いが終わったことを感じた。
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