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第4章
4-8 「奴隷に優しい男」なんて、珍しい存在じゃないんだ
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「あたしが、奴隷として売られた話は知ってる?」
「ああ。確か、暴君の父と意地悪な継母に騙されて、無理やり売られたって話だったな……」
俺がそう伝えると、マルティナは首を振る。
「ううん、まずそこから違うの。……パパとお母さんは優しかったから……ずっとあたしと弟達を食べさせるために一生懸命働いていたんだ……。けど、お金が足りなくて、いつも自分たちは何も食べなくて……見てて辛くてさ」
「え? それじゃあ……」
「うん、あたしから奴隷になるって言い出したの」
詳しく話を聞くと、そもそも父も義母も思いやりが深い人であり、マルティナは、そんな家族のために奴隷になったとのことだ。
マルティナが売られる日には、泣いて謝られたそうだ。
「それで、あたしは奴隷になったんだ。……勿論、生贄として買われたのは知ってたけど……それでもいいと思ってた。あたしが竜に食べられることで、村人が生き延びられるなら、それでも良いかなって……」
「……どうしてそう思ったんだ?」
彼女は生来英雄的……言い換えれば自己犠牲的な性格をしているのは知っている。
だが、普通の感性なら他人のために命を落とそうなんて思わないだろう。
マルティナは懐かしむような表情で答えた。
「……あたしも最初は少し嫌だったけど……村の人たちはさ、凄い優しい人たちばっかりだったんだ。小さな子ども達もあたしと友達になってくれて、みんなと過ごした時間は凄い楽しかったんだ。だから……恩返しっていうのかな。そんな気持ちだったんだ」
「マルティナをいじめるような奴はいなかったんだな?」
「うん……。みんな、あたしを村の一員みたいに扱ってくれたんだ。『君は奴隷なんかじゃない、大切な友達だ!』って何回も言われたし、村の男の子からも、何度も告白されたよ」
まあ、それはそうだと思った。
……この世界は、RPGのようだがゲームの世界じゃない。
『優しくて従順で、可愛い幼女の奴隷』に酷いことをする奴など、現実にはそういない。
そもそも『奴隷少女に優しくしてあげる、素敵な俺』が出るコンテンツが売れるのは、寧ろそういう『美少女の弱者に優しくしたい奴』のほうが多数派だからだ。
実際、この世界で生贄に選ばれるのは、いつだって被害者意識が強く協調性のない、嫌われ者の不細工だった。
それから少しして、マルティナは暗い表情で答える。
「それで数カ月した後……あたしは生贄として運ばれたんだ……。ドラゴンが住むとは思えない、貧相な洞穴にね」
「それって、まさか……」
マルティナの表情から、俺はその後の展開を何となく察した。
それに気づいたのか、マルティナも自嘲するような表情を見せた。
「ハハハ……分かるよね? ……そこはドラゴンの住処なんかじゃなかったんだ。その時のあたしは気づかなかったんだけどね。それから少しして……あたしが少し好きだった村のお兄ちゃんがやってきたんだ……ボロボロの姿でさ……」
「お兄ちゃんか……」
それがマルティナの初恋だったのだろう。
少しだけ胸がチクリと痛むような気持ちになった。
「それでね、お兄ちゃんは言ったんだ。『大好きだったよ、マルティナ……』って。……それだけ言って、お兄ちゃんは死んじゃったんだけどね……」
「…………」
「それであたしは……村に戻ったら……みんな……死んじゃってた」
やはり、か。
そう思いながらも、俺は言葉を失った。
「ドラゴンと刺し違えて……。あたしより、ずっと小さな子どもたちまで弓矢を持って、死んでたんだ……」
「…………」
そういってマルティナは涙ぐんだ目元を手で拭くと、一冊の小さなノートを見せてくれた。
「これは、村長さんが残した日記……。見て、ここ?」
「……ああ……」
そこにはこう書いてあった。
『〇月〇日
息子が私のもとにやってきて叫んだ。
「マルティナのような優しい子を犠牲にしてまで、俺たちは生き延びたいのか?」
と。
幼い孫娘も叫んだ。
「大好きなマルティナさんを犠牲にするなんて嫌だ! 私たちも戦うから、みんなでドラゴンをやっつけよう!」
と。
私も正直同意見だった。
マルティナは自分が買われた日から、自分が生贄になることを知っていた。
それにも関わらず、私たちに恨みごと一つ言わず、我々を責めなかった。
そして子どもたちを……そして、我々のことすらも愛してくれた。
そんな彼女を我々ごときのために犠牲にするわけにはいかない。
そう思いマルティナに秘密で我々は評議を取った。
……結果は、満場一致だった。
「マルティナを生贄に出すことなく、皆でドラゴンと戦おう」
と。
恐らく、この戦いで我らは皆死ぬだろう。
だがマルティナのために、件のドラゴンだけは確実に始末しなければならない。
……そして、マルティナにはこのことは知られるべきではない。
幸い、ドラゴンも知らない秘密の洞穴が村の北東にある。そこにマルティナを連れていき、匿うことにしよう』
「これは……」
俺はその震える筆跡から、村長が相当な覚悟でこの日記を残したことが分かった。
そして最後に書かれていた文言を見て何も言えなくなった。
『我らは、生き延びるために多くの子を生贄に差し出してきた。だからこそ、その償いを受けなければならない。
だが、それにしても、マルティナは素晴らしい若者だった。
彼女の未来を守るために戦い、そしてそのために死ねるのだ。ああ、何と素晴らしい人生の締めくくりなのだろう!』
……日記はそこで終わっていた。
全て読んだ後に顔を上げると、マルティナは力なく笑っていた。
「アハハ……分かったでしょ? ……あたしはさ、みんなに優しくしてもらった『素敵な思い出』しかないんだよ……。あたしも、一緒に戦って死ねれば良かったのに……」
こんなものが素敵な思い出であってたまるか。
俺は正直、村長を少し恨んだ。なぜ、こんな『呪い』になりかねない日記を燃やさなかったのだと。
「あたしが勇者の力に目覚めたのは、この日記を読んだ時で……。それで、ずっと頑張ってきたんだ。死んだ村長さんたちに顔向けするためにね」
マルティナは、俺と出会うまでの間にも、人類を守るために冒険を続けていたことは知っている。
「あたしも皆みたいに、誰かのために戦って、そして死んでいきたいって思って、ずっと戦って来た……けど……」
「けど?」
だが、俺が彼女と出会ったときには一人だったことを思い出した。
「結果はあべこべ。あたしの方じゃなくって……死んじゃったのはみんな、あたしの仲間のほうだったんだ。……みんな、あたしを庇って……」
よっぽど自己中な奴じゃない限り、マルティナのような子どもを犠牲にしてまで、自分が生き残るなんて事態には精神が耐えられないだろう。
それなら寧ろ、自分が死を選ぶ方がマシだ。
そう思う気持ちはよくわかる。
「だから、あたしは誰かに愛されたくなんかないんだ……あたしを愛してくれた人、みんなあたしのために死んじゃうから……」
「……そうだったんだな……」
やはり、マルティナは『ドM』ではなかったのだ。
彼女が自分を蔑ろにすることや、痛めつけられることを望むのは、自分が愛されることへの怖さと、そして何より自分のために命を落とした者たちへの贖罪意識から来るものだったのだ。
だから、グリモアやアリーナのような性格の連中にも嫌な顔をしなかったのだろう。
……そして、俺のような愚か者にも。
「よくわかったよ、マルティナ……」
俺はそうつぶやくと、マルティナが来ていた上着を払って彼女に着せた後、思い切り抱きしめていた。
「ふえ……し、シイル?」
少し困惑するようなマルティナに、俺は呟く。
「俺はもう、マルティナを好きにならないようにする。……お前をモノみたいに扱ってやるから、覚悟しろよ?」
「うん……」
「だから……今は、こうやって暖を取らせてくれ……まだ、傷が痛むから『カイロ』になってくれるか?」
「……勿論……いいよ……後さ」
「なんだ?」
「あたしはさ、シイルのこと大好き。シイルには、あたしのこと、好きになってほしくないけど……あたしがそう思うのは、許して?」
「ああ……」
きっとマルティナは俺を例の『初恋の兄』に重ねているのだろう。
……まあ、それは俺も同じか。彼女に妹のロナの姿を重ねているのは、自覚している。
俺はしばらく彼女の鼓動を感じながら抱き合っていた。
……それからしばらくして。
「おーい!」
セドナの声が遠くから聞こえてきた。
俺たちは、その音を聞いて身体を離して立ち上がる。
「あ、セドナが来たのか」
「みたいだね。……けど、なんか様子が変じゃない?」
そう思って声が聞こえたほうを見ると、強い光が俺たちの目を打つ。
「まぶし!」
「トロッコ?」
遠くからライトを光らせた大きなトロッコが、ものすごい速度で走ってきたのだ。
そこに乗っているのは、セドナ。
そしてもう一人は、ゴーレム。
だが、俺たちが戦ったゴーレムよりも二回りは大きく、またシャープなデザインをしている。その一つしかない瞳……いや、モノアイか……は、まるで発光ダイオードのように淡い光を放ちながら、セドナをロックオンしている。
無機質ながら近未来的な印象すら与えるゴーレム……それを見て、俺は奴が『キング・ゴーレム』ということはすぐに分かった。
「あいつ……まさか!」
「四天王の、フロア・デック?」
猛スピードで走るトロッコの上で、セドナはフロア・デックと交戦していたのだ。
見たところ、あの大型のトロッコがあった場所は、鉱山の中心部から外まで繋がる最重要拠点だったのだろう。
そう考えているうちに、セドナが俺たちの眼前まで迫ってきた。
「どうしたんだ、セドナ!?」
「話はあと! ゴメン、手伝ってほしいんだ! 乗って!」
幸い、俺たちのいるところは上り坂の頂点にあるため、一瞬トロッコの速度が落ちていた。
そこで俺たちは、助走をつけてトロッコに飛び乗る。
幸い、マルティナが蘇生してくれたおかげで今は普通に身体が動く。セドナが先頭、そしてマルティナが俺を守るように前に立ち、戦闘態勢を整えた。
『ホウ……新手カ……面白イ……!』
暗がりの中でそうフロア・デックは橙色のモノアイを光らせながら、ガシャンと岩の肉体を響かせた。
「いくぞ、フロア・デック! マルティナ、頼むぞ! 俺の『剣』になってくれ!」
「勿論! 任せて!」
「ああ。確か、暴君の父と意地悪な継母に騙されて、無理やり売られたって話だったな……」
俺がそう伝えると、マルティナは首を振る。
「ううん、まずそこから違うの。……パパとお母さんは優しかったから……ずっとあたしと弟達を食べさせるために一生懸命働いていたんだ……。けど、お金が足りなくて、いつも自分たちは何も食べなくて……見てて辛くてさ」
「え? それじゃあ……」
「うん、あたしから奴隷になるって言い出したの」
詳しく話を聞くと、そもそも父も義母も思いやりが深い人であり、マルティナは、そんな家族のために奴隷になったとのことだ。
マルティナが売られる日には、泣いて謝られたそうだ。
「それで、あたしは奴隷になったんだ。……勿論、生贄として買われたのは知ってたけど……それでもいいと思ってた。あたしが竜に食べられることで、村人が生き延びられるなら、それでも良いかなって……」
「……どうしてそう思ったんだ?」
彼女は生来英雄的……言い換えれば自己犠牲的な性格をしているのは知っている。
だが、普通の感性なら他人のために命を落とそうなんて思わないだろう。
マルティナは懐かしむような表情で答えた。
「……あたしも最初は少し嫌だったけど……村の人たちはさ、凄い優しい人たちばっかりだったんだ。小さな子ども達もあたしと友達になってくれて、みんなと過ごした時間は凄い楽しかったんだ。だから……恩返しっていうのかな。そんな気持ちだったんだ」
「マルティナをいじめるような奴はいなかったんだな?」
「うん……。みんな、あたしを村の一員みたいに扱ってくれたんだ。『君は奴隷なんかじゃない、大切な友達だ!』って何回も言われたし、村の男の子からも、何度も告白されたよ」
まあ、それはそうだと思った。
……この世界は、RPGのようだがゲームの世界じゃない。
『優しくて従順で、可愛い幼女の奴隷』に酷いことをする奴など、現実にはそういない。
そもそも『奴隷少女に優しくしてあげる、素敵な俺』が出るコンテンツが売れるのは、寧ろそういう『美少女の弱者に優しくしたい奴』のほうが多数派だからだ。
実際、この世界で生贄に選ばれるのは、いつだって被害者意識が強く協調性のない、嫌われ者の不細工だった。
それから少しして、マルティナは暗い表情で答える。
「それで数カ月した後……あたしは生贄として運ばれたんだ……。ドラゴンが住むとは思えない、貧相な洞穴にね」
「それって、まさか……」
マルティナの表情から、俺はその後の展開を何となく察した。
それに気づいたのか、マルティナも自嘲するような表情を見せた。
「ハハハ……分かるよね? ……そこはドラゴンの住処なんかじゃなかったんだ。その時のあたしは気づかなかったんだけどね。それから少しして……あたしが少し好きだった村のお兄ちゃんがやってきたんだ……ボロボロの姿でさ……」
「お兄ちゃんか……」
それがマルティナの初恋だったのだろう。
少しだけ胸がチクリと痛むような気持ちになった。
「それでね、お兄ちゃんは言ったんだ。『大好きだったよ、マルティナ……』って。……それだけ言って、お兄ちゃんは死んじゃったんだけどね……」
「…………」
「それであたしは……村に戻ったら……みんな……死んじゃってた」
やはり、か。
そう思いながらも、俺は言葉を失った。
「ドラゴンと刺し違えて……。あたしより、ずっと小さな子どもたちまで弓矢を持って、死んでたんだ……」
「…………」
そういってマルティナは涙ぐんだ目元を手で拭くと、一冊の小さなノートを見せてくれた。
「これは、村長さんが残した日記……。見て、ここ?」
「……ああ……」
そこにはこう書いてあった。
『〇月〇日
息子が私のもとにやってきて叫んだ。
「マルティナのような優しい子を犠牲にしてまで、俺たちは生き延びたいのか?」
と。
幼い孫娘も叫んだ。
「大好きなマルティナさんを犠牲にするなんて嫌だ! 私たちも戦うから、みんなでドラゴンをやっつけよう!」
と。
私も正直同意見だった。
マルティナは自分が買われた日から、自分が生贄になることを知っていた。
それにも関わらず、私たちに恨みごと一つ言わず、我々を責めなかった。
そして子どもたちを……そして、我々のことすらも愛してくれた。
そんな彼女を我々ごときのために犠牲にするわけにはいかない。
そう思いマルティナに秘密で我々は評議を取った。
……結果は、満場一致だった。
「マルティナを生贄に出すことなく、皆でドラゴンと戦おう」
と。
恐らく、この戦いで我らは皆死ぬだろう。
だがマルティナのために、件のドラゴンだけは確実に始末しなければならない。
……そして、マルティナにはこのことは知られるべきではない。
幸い、ドラゴンも知らない秘密の洞穴が村の北東にある。そこにマルティナを連れていき、匿うことにしよう』
「これは……」
俺はその震える筆跡から、村長が相当な覚悟でこの日記を残したことが分かった。
そして最後に書かれていた文言を見て何も言えなくなった。
『我らは、生き延びるために多くの子を生贄に差し出してきた。だからこそ、その償いを受けなければならない。
だが、それにしても、マルティナは素晴らしい若者だった。
彼女の未来を守るために戦い、そしてそのために死ねるのだ。ああ、何と素晴らしい人生の締めくくりなのだろう!』
……日記はそこで終わっていた。
全て読んだ後に顔を上げると、マルティナは力なく笑っていた。
「アハハ……分かったでしょ? ……あたしはさ、みんなに優しくしてもらった『素敵な思い出』しかないんだよ……。あたしも、一緒に戦って死ねれば良かったのに……」
こんなものが素敵な思い出であってたまるか。
俺は正直、村長を少し恨んだ。なぜ、こんな『呪い』になりかねない日記を燃やさなかったのだと。
「あたしが勇者の力に目覚めたのは、この日記を読んだ時で……。それで、ずっと頑張ってきたんだ。死んだ村長さんたちに顔向けするためにね」
マルティナは、俺と出会うまでの間にも、人類を守るために冒険を続けていたことは知っている。
「あたしも皆みたいに、誰かのために戦って、そして死んでいきたいって思って、ずっと戦って来た……けど……」
「けど?」
だが、俺が彼女と出会ったときには一人だったことを思い出した。
「結果はあべこべ。あたしの方じゃなくって……死んじゃったのはみんな、あたしの仲間のほうだったんだ。……みんな、あたしを庇って……」
よっぽど自己中な奴じゃない限り、マルティナのような子どもを犠牲にしてまで、自分が生き残るなんて事態には精神が耐えられないだろう。
それなら寧ろ、自分が死を選ぶ方がマシだ。
そう思う気持ちはよくわかる。
「だから、あたしは誰かに愛されたくなんかないんだ……あたしを愛してくれた人、みんなあたしのために死んじゃうから……」
「……そうだったんだな……」
やはり、マルティナは『ドM』ではなかったのだ。
彼女が自分を蔑ろにすることや、痛めつけられることを望むのは、自分が愛されることへの怖さと、そして何より自分のために命を落とした者たちへの贖罪意識から来るものだったのだ。
だから、グリモアやアリーナのような性格の連中にも嫌な顔をしなかったのだろう。
……そして、俺のような愚か者にも。
「よくわかったよ、マルティナ……」
俺はそうつぶやくと、マルティナが来ていた上着を払って彼女に着せた後、思い切り抱きしめていた。
「ふえ……し、シイル?」
少し困惑するようなマルティナに、俺は呟く。
「俺はもう、マルティナを好きにならないようにする。……お前をモノみたいに扱ってやるから、覚悟しろよ?」
「うん……」
「だから……今は、こうやって暖を取らせてくれ……まだ、傷が痛むから『カイロ』になってくれるか?」
「……勿論……いいよ……後さ」
「なんだ?」
「あたしはさ、シイルのこと大好き。シイルには、あたしのこと、好きになってほしくないけど……あたしがそう思うのは、許して?」
「ああ……」
きっとマルティナは俺を例の『初恋の兄』に重ねているのだろう。
……まあ、それは俺も同じか。彼女に妹のロナの姿を重ねているのは、自覚している。
俺はしばらく彼女の鼓動を感じながら抱き合っていた。
……それからしばらくして。
「おーい!」
セドナの声が遠くから聞こえてきた。
俺たちは、その音を聞いて身体を離して立ち上がる。
「あ、セドナが来たのか」
「みたいだね。……けど、なんか様子が変じゃない?」
そう思って声が聞こえたほうを見ると、強い光が俺たちの目を打つ。
「まぶし!」
「トロッコ?」
遠くからライトを光らせた大きなトロッコが、ものすごい速度で走ってきたのだ。
そこに乗っているのは、セドナ。
そしてもう一人は、ゴーレム。
だが、俺たちが戦ったゴーレムよりも二回りは大きく、またシャープなデザインをしている。その一つしかない瞳……いや、モノアイか……は、まるで発光ダイオードのように淡い光を放ちながら、セドナをロックオンしている。
無機質ながら近未来的な印象すら与えるゴーレム……それを見て、俺は奴が『キング・ゴーレム』ということはすぐに分かった。
「あいつ……まさか!」
「四天王の、フロア・デック?」
猛スピードで走るトロッコの上で、セドナはフロア・デックと交戦していたのだ。
見たところ、あの大型のトロッコがあった場所は、鉱山の中心部から外まで繋がる最重要拠点だったのだろう。
そう考えているうちに、セドナが俺たちの眼前まで迫ってきた。
「どうしたんだ、セドナ!?」
「話はあと! ゴメン、手伝ってほしいんだ! 乗って!」
幸い、俺たちのいるところは上り坂の頂点にあるため、一瞬トロッコの速度が落ちていた。
そこで俺たちは、助走をつけてトロッコに飛び乗る。
幸い、マルティナが蘇生してくれたおかげで今は普通に身体が動く。セドナが先頭、そしてマルティナが俺を守るように前に立ち、戦闘態勢を整えた。
『ホウ……新手カ……面白イ……!』
暗がりの中でそうフロア・デックは橙色のモノアイを光らせながら、ガシャンと岩の肉体を響かせた。
「いくぞ、フロア・デック! マルティナ、頼むぞ! 俺の『剣』になってくれ!」
「勿論! 任せて!」
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