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第6章
6-4 バトル中にデメリットを及ぼすアイテムは、フィールドでもそうかな?
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それから数分後。
「……シイル? あれ? ……どうして? なんで動かないの? あたしのことなら、気にしないでいいよ?」
俺はマルティナをギュっと抱きしめたまま、微動だに出来ずに涙を流していた。
「ごめんな、マルティナ……お前に、こんなことさせて……俺が、バカだった……」
「シイル? 野生の護符……効いてないの?」
「ああ……」
そういうと、俺はマルティナを抱きしめた腕を少し緩めて、彼女を解放した。
「言っただろ? この武器の効果は……装備して『戦うと』理性を失うって……」
「あ……! もしかして……」
「戦闘中以外は、誰が装備しても理性は保てるんだ……」
ゲームの世界でも、大抵のデメリット付きの装備品は、フィールドでは効果を発揮しないものが多い。
そもそも野生の護符の効力が戦闘中以外でも有効……つまり、常に理性を失いっぱなしになるのであれば、冒険など出来るわけがない。
もっというと、このアイテムが性行為に利用出来るのであれば、もっとこの世界に普及しているに決まっている。
「……俺はさ。マルティナのことが好きだよ。……もう一人の妹みたいに思ってた」
「うん……。けど、あたしは妹じゃないよね? あたしの身体とか、興味ないの?」
「…………」
ここで「ない」ということも考えた。
だが『妹のような存在』の相手を性的な目で見ない男性など、この世にいるのだろうか。
……俺は正直に答えた。
「……あるよ。……正直、さっきからずっと心臓が高鳴ってる。……聞いてみてくれ」
「……本当だ……」
俺は先ほどから、胸がドキドキと早鐘を打つように高鳴っている。
野生の護符の効果ではない。正直、マルティナを抱きしめている間、何度も理性が負けそうになったが、ロナの顔を思い出して踏みとどまった。
「だけど、俺は……お前を抱けないんだ。ゴメン……」
「どうして? ……別にさ、代わりにあたしと結婚してって言ってるんじゃないよ? あたしは『モノ』だし『ドM』だからさ。見返りなんていらない、シイルが悦んでくれたらいいだけだから」
極端に自分を蔑ろにするマルティナのことだ。
既成事実を作って、結婚を申し込むなんてことはしないことは分かっている。
……だからこそ、猶更ダメだ。そう思って俺は首を振った。
「……それをやったら……ロナに軽蔑される。そうしたら俺は、ロナの兄じゃ居られないからな」
「あの女の?」
「ああ……」
そういえば、マルティナは最初は『ロナちゃん』と言っていたのに、次第にロナのことを『あの女』と呼んでいた。……今思うとマルティナは、ロナに嫉妬していたのだろう。
「俺の人生は、妹が……ロナが全てなんだ。ロナを救えないなら、俺の人生にはなんの意味がない。……だから……あいつに軽蔑されるような男でいたくないんだ。……たとえ、マルティナが望んでいたとしても」
「ロナに軽蔑されたくない、か……」
だが、理由はそれだけじゃない。
「それに俺は、あいつに……いや、この世界の人たち全員に、罪を償わないといけない。俺のせいで多くの人が死んだんだ。……だから、マルティナ。今、お前を抱いて俺だけ幸せになるなんて、許されないだろ?」
「そんなの変だよ!」
そういうと、マルティナは俺の胸にドン! と額を押し付けながら泣き叫ぶような声を出す。
「だって、シイルは……! 別に何も悪くないじゃない! ずっとシイルは、ロナのためにも、世界のためにも頑張ってた! シイルが償わないといけないなんて、考えなくていいよ! もし、誰かがシイルを責めたって、あたしは絶対に悪くないっていうから!」
「……ありがとな、マルティナ……」
そういいながら、俺はマルティナの頭をそっと撫でた。
「シイル……?」
「マルティナがそう言ってくれたから……俺は、ここまで来れたんだ。ずっと、俺の傍に居てくれて、そうやって励ましてくれただろ?」
「別にあたしは……思ったことを言っただけだから……」
「……だから、もう十分だ。これだけマルティナから色々貰ってきたんだ。これ以上マルティナから欲しいものなんて、何もないんだよ」
「…………」
そういうと、マルティナは珍しく嫉妬を明らかにする表情で涙ぐみながら呟く。
「はあ……やっぱり、ロナは大嫌い……。シイルの妹に生まれたってだけで、シイルの心の中心にずっと居続けてるを奪っちゃってるんだから……! あたしの方が、ずっとシイルのこと、思ってたのに!」
「……かもな……」
正直、それは否定できない。俺がここまで来たのは、ロナが妹だからに他ならない。
もし彼女が妹じゃなかったら……俺はこの人生をマルティナのために使っていただろう。
……それだけ、妹という存在は兄にとって大きいものなのだ。
「アハハ……けど、なんかシイルの気持ちが分かって、スッキリしたな……」
そして、どこか諦めた……いや、憑き物が落ちたような笑顔を向けてマルティナは尋ねてきた。
「ねえ、シイル……? もし、さ……シイルが転移者じゃなくて、この世界の住人でさ……。それでロナが魔王にならないで、ただの妹のままだったら……どうなってたかな?」
「……その時は、もう奥さんだよ、マルティナは」
「旦那さんは?」
「……俺だろうな。というか、俺以外であってほしくないな」
これは偽らざる本音だ。
もし、ロナが妹じゃなかったら、俺は小さな村でマルティナとスローライフを送りながら、暖かい家庭を築いていたに違いない。
……そんな素敵な人生はもう来ないのだが。
「フフ……嬉しい……。それが聴けたなら、あたしはもう十分! ……ありがと、シイル! 大好きだからね、ずっと!」
そしてマルティナはいつものような笑顔を見せてくれた。
「ねえ、明日の戦いさ! ……絶対に勝とうね! それでみんなで帰ろう?」
「…………」
だが、俺はその約束は受けられなかった。
……ロナは俺の妹だ。そして、俺はニルバナのいう通り、ロナの犯した罪に責任がある。
RPGの世界のように『全員で魔王を打ち倒して、大団円』というエンディングルートは、すでに絶たれているのだ。
俺は懐に忍ばせた短剣の冷たさを感じながらも、俺は作り笑いを浮かべて、
「ハハ、それが最高のエンディングだよな、マルティナ!」
そう答えるのが精一杯だった。
「……シイル? あれ? ……どうして? なんで動かないの? あたしのことなら、気にしないでいいよ?」
俺はマルティナをギュっと抱きしめたまま、微動だに出来ずに涙を流していた。
「ごめんな、マルティナ……お前に、こんなことさせて……俺が、バカだった……」
「シイル? 野生の護符……効いてないの?」
「ああ……」
そういうと、俺はマルティナを抱きしめた腕を少し緩めて、彼女を解放した。
「言っただろ? この武器の効果は……装備して『戦うと』理性を失うって……」
「あ……! もしかして……」
「戦闘中以外は、誰が装備しても理性は保てるんだ……」
ゲームの世界でも、大抵のデメリット付きの装備品は、フィールドでは効果を発揮しないものが多い。
そもそも野生の護符の効力が戦闘中以外でも有効……つまり、常に理性を失いっぱなしになるのであれば、冒険など出来るわけがない。
もっというと、このアイテムが性行為に利用出来るのであれば、もっとこの世界に普及しているに決まっている。
「……俺はさ。マルティナのことが好きだよ。……もう一人の妹みたいに思ってた」
「うん……。けど、あたしは妹じゃないよね? あたしの身体とか、興味ないの?」
「…………」
ここで「ない」ということも考えた。
だが『妹のような存在』の相手を性的な目で見ない男性など、この世にいるのだろうか。
……俺は正直に答えた。
「……あるよ。……正直、さっきからずっと心臓が高鳴ってる。……聞いてみてくれ」
「……本当だ……」
俺は先ほどから、胸がドキドキと早鐘を打つように高鳴っている。
野生の護符の効果ではない。正直、マルティナを抱きしめている間、何度も理性が負けそうになったが、ロナの顔を思い出して踏みとどまった。
「だけど、俺は……お前を抱けないんだ。ゴメン……」
「どうして? ……別にさ、代わりにあたしと結婚してって言ってるんじゃないよ? あたしは『モノ』だし『ドM』だからさ。見返りなんていらない、シイルが悦んでくれたらいいだけだから」
極端に自分を蔑ろにするマルティナのことだ。
既成事実を作って、結婚を申し込むなんてことはしないことは分かっている。
……だからこそ、猶更ダメだ。そう思って俺は首を振った。
「……それをやったら……ロナに軽蔑される。そうしたら俺は、ロナの兄じゃ居られないからな」
「あの女の?」
「ああ……」
そういえば、マルティナは最初は『ロナちゃん』と言っていたのに、次第にロナのことを『あの女』と呼んでいた。……今思うとマルティナは、ロナに嫉妬していたのだろう。
「俺の人生は、妹が……ロナが全てなんだ。ロナを救えないなら、俺の人生にはなんの意味がない。……だから……あいつに軽蔑されるような男でいたくないんだ。……たとえ、マルティナが望んでいたとしても」
「ロナに軽蔑されたくない、か……」
だが、理由はそれだけじゃない。
「それに俺は、あいつに……いや、この世界の人たち全員に、罪を償わないといけない。俺のせいで多くの人が死んだんだ。……だから、マルティナ。今、お前を抱いて俺だけ幸せになるなんて、許されないだろ?」
「そんなの変だよ!」
そういうと、マルティナは俺の胸にドン! と額を押し付けながら泣き叫ぶような声を出す。
「だって、シイルは……! 別に何も悪くないじゃない! ずっとシイルは、ロナのためにも、世界のためにも頑張ってた! シイルが償わないといけないなんて、考えなくていいよ! もし、誰かがシイルを責めたって、あたしは絶対に悪くないっていうから!」
「……ありがとな、マルティナ……」
そういいながら、俺はマルティナの頭をそっと撫でた。
「シイル……?」
「マルティナがそう言ってくれたから……俺は、ここまで来れたんだ。ずっと、俺の傍に居てくれて、そうやって励ましてくれただろ?」
「別にあたしは……思ったことを言っただけだから……」
「……だから、もう十分だ。これだけマルティナから色々貰ってきたんだ。これ以上マルティナから欲しいものなんて、何もないんだよ」
「…………」
そういうと、マルティナは珍しく嫉妬を明らかにする表情で涙ぐみながら呟く。
「はあ……やっぱり、ロナは大嫌い……。シイルの妹に生まれたってだけで、シイルの心の中心にずっと居続けてるを奪っちゃってるんだから……! あたしの方が、ずっとシイルのこと、思ってたのに!」
「……かもな……」
正直、それは否定できない。俺がここまで来たのは、ロナが妹だからに他ならない。
もし彼女が妹じゃなかったら……俺はこの人生をマルティナのために使っていただろう。
……それだけ、妹という存在は兄にとって大きいものなのだ。
「アハハ……けど、なんかシイルの気持ちが分かって、スッキリしたな……」
そして、どこか諦めた……いや、憑き物が落ちたような笑顔を向けてマルティナは尋ねてきた。
「ねえ、シイル……? もし、さ……シイルが転移者じゃなくて、この世界の住人でさ……。それでロナが魔王にならないで、ただの妹のままだったら……どうなってたかな?」
「……その時は、もう奥さんだよ、マルティナは」
「旦那さんは?」
「……俺だろうな。というか、俺以外であってほしくないな」
これは偽らざる本音だ。
もし、ロナが妹じゃなかったら、俺は小さな村でマルティナとスローライフを送りながら、暖かい家庭を築いていたに違いない。
……そんな素敵な人生はもう来ないのだが。
「フフ……嬉しい……。それが聴けたなら、あたしはもう十分! ……ありがと、シイル! 大好きだからね、ずっと!」
そしてマルティナはいつものような笑顔を見せてくれた。
「ねえ、明日の戦いさ! ……絶対に勝とうね! それでみんなで帰ろう?」
「…………」
だが、俺はその約束は受けられなかった。
……ロナは俺の妹だ。そして、俺はニルバナのいう通り、ロナの犯した罪に責任がある。
RPGの世界のように『全員で魔王を打ち倒して、大団円』というエンディングルートは、すでに絶たれているのだ。
俺は懐に忍ばせた短剣の冷たさを感じながらも、俺は作り笑いを浮かべて、
「ハハ、それが最高のエンディングだよな、マルティナ!」
そう答えるのが精一杯だった。
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