461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第26話 品川ダンジョンへ

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 午前10時30分。

 装備を整え、俺達は品川ダンジョン前に集合した。

「にゃにゃっ! ワガママ言ってゴメンにゃ~」

 ナーゴがクネクネと気持ちの悪い動きで手を合わせる。集合時間はナーゴの強い要望でこの時間になった。なんでもブリッツアンギラは活動時間が決まっているらしい。

 ブリッツアンギラは俺も初めて戦うボス。楽しみだな。

 だが、それにしても……。

「うにゃ? 見つめられると恥ずかしいにゃあ♡」

 ナーゴを見ると、クネクネした動きが高速ウネウネになり、その動きの気持ち悪さに拍車がかかった。

「なぁ。なんでそんな動きしてるんだ?」

「ナーゴはイラ可愛い動きも人気の1つなのよ。普通のゆるキャラには無い魅力とか言って」

「イラ可愛いはショックだにゃ! ナーゴはちゃんと可愛いにゃん♡」

「でもそのおかげでナーゴはおじさん達にも人気あるのよね~?」

「うにゃにゃ~♡ アイルちゃん頭ナデナデしないでにゃあ~♡」

 笑顔のアイルがナーゴの頭を撫でる。その度にナーゴはうにゃうにゃ言いながらクネクネする。


 見ているとなんとなくイラッとするこの感情。これがナーゴの魅力なんだろうか?

 でもそういう魅力もあるんだなぁ。俺にはちょっと分からないぜ。


 木々の生えた道を進み、旧水族館跡を迂回する。しばらく歩くと柵に囲まれた階段が見えた。

「よし。こっからは品川ダンジョンに入るぜ。2人とも気合い入れろよ」

「分かってるわ!」
「分かったにゃん♡」

 階段を登り、俺達は品川ダンジョンへと足を踏み入れた。



◇◇◇

「お、これは本格的だな」

 足を踏み入れて見えたのは石造りの水路。しかし、部屋の奥まで見渡すことはできなかった。

 辺りを見回しても光が差し込むような場所は無い。まるで地下施設のようなダンジョンだな。

「暗いわね……」

 アイルが奥を覗き込むように目を細める。しかし、諦めたのか鞄の中を漁り出した。取り出したのは配信用ドローン。

 彼女がフワリとそれを浮かせると、ナーゴもドローンを飛ばす。2台のドローンのライトが周囲を照らした。

「う~んドローンのライト機能使っても光源としては心許ないわね」

「ナーゴのドローンと合わせてもまだ暗いにゃ」

「俺が照明魔法ルミナスを使う」

 俺の探索用スキル、照明魔法ルミナスを発動すると手のひらから光の球体が現れる。それを掴んで天井に向かって投げる。照明魔法の球体がフワフワと空中を漂い、天井付近でピタリと止まった。

 眩い光を放つ球体がダンジョンのフロアを照らす。真っ暗だった部屋の奥が見渡せるようになった。

「便利だにゃあ」

「実際便利だぜ。応用も利くしな」

「1部屋ごとに光源がいるこの感じ。配信はボス戦だけにするしか無いわねぇ……」


 アイルがキョロキョロと辺りを見回す。照明魔法に照らされ、今の部屋の造形はハッキリと分かった。

 俺達がいるのは六角形のフロア。その至る所に水が貯められており、魚がその中を泳いでいるのが目に付いた。

「にゃ? なんか釣り堀みたい」

「この魚は無害かしら? モンスターじゃない?」

 アイルが杖をちょんちょんと水に浸ける。すると、先ほどまで無害そうだった魚達かキバをギラリと光らせる。その内の1匹がアイルの杖に噛み付いた。

「ギュッ!!」

「ひっ!? やっぱりモンスターじゃない!」

「クランチフィッシュだな。一回噛み付くと中々離れない……代々木にいたバイトフィッシュの仲間だな」

「早く言いなさいよ!?」

 ブンブンと杖を振るアイル。しかし魚は中々離れない。腰からダガーを抜き、クランチフィッシュを突き刺さした。

「ギュギュウ……っ!?」

 息絶えたクランチフィッシュ。杖から口を離して落ちる魚を、ナーゴがヒシっと掴んだ。

「もったいないにゃ。クランチフィッシュはフライにすると美味しいのにゃ」

 背中の革袋に魚を入れるナーゴ。それを見たアイルは困惑したように袋を見た。

「ちょっ、そんな袋に入れてたら腐らない?」

「にゃ? コイツはフリーズブローの浮袋で作ってあるにゃ! 中はヒエヒエ! 鮮度長持ちにゃ!」

「フリーズブローって河豚フグみたいな魚型モンスターだったよな。今度俺も使ってみるか」

「クーラーボックス代わりにオススメにゃ♡」

「変な所で意気投合しないでよ……」


 ……。


 さらに先を進む。1階は水面にさえ近寄らなければ戦闘が回避できたが、2階はそういう訳にはいかなかった。魔法障壁によって壁一面に水が張り巡らせてあるフロア。そこはまるで水族館の透明トンネルのような部屋だった。

「シャアアアアアア!!!」

 水の壁の1つから頭部に剣が伸びているモンスター「ブレイドシャーク」が飛び出してくる。咄嗟にアイルとナーゴを突き飛ばし、ブレイドシャークの頭部をショートソードで弾く。

 軌道を変えられたブレイドシャークは反対側の水壁に吸い込まれる。水中で再び向きを変え、俺達を狙っているのが見えた。

「アイルは氷結魔法の準備しろ!」

「了解っ!」

「な、ナーゴも戦うにゃっ!」

 ナーゴが着ぐるみの両手を上に向けると、その3本の爪がシャキンと伸びる。

 ……ナーゴの武器はクロー系か。

 クロー装備は敵の捕縛能力が高い。なら、ナーゴを使った方が早いな。

「ナーゴ。次ブレイドシャークが出たらクローで止めろ」

「にゃ!? わ、分かったにゃ!」

 水中体勢を変えたブレイドシャークが再び俺達を狙って飛び出した。

「シャアアアアアアアアアアア!!!」

「にゃああああ!?」

 ナーゴが両手を突き出す。クローの隙間。そこにブレイドシャークの剣を絡めとる。そしてその凶暴な牙を押さえながら、なんとかナーゴは鮫の突撃を防いだ。

「シャアアアアア!!!」

「ヒィィィィ!? 怖すぎるにゃあ!?」

 アイルへと視線を送る。彼女は頷くと、「氷結魔法フロスト」を発動する。

「シャッ!? ア゛ッ!?」

 凍りつく鮫。その体目掛けてショートソードを振り下ろす。

「うおおおおおっ!!」

 バギリという音と共に、ブレイドシャークは粉々に砕け散った。

「やった! 倒せたわねヨロイさん!」

 飛び跳ねるアイル。それと対照的にナーゴはヘナヘナと座り込んだ。

「し、死ぬかと思ったにゃあ~」

「今のナーゴの動き中々良かったぜ」

「にゃにゃ!?」

「そうね。私も魔法当てやすかったし」

「そうかにゃ!? いや~照れるにゃあ~」

 ナーゴは照れ臭そうにクネクネ気持ち悪い仕草をすると、急にキリッとした顔付きになった。というか表情変えられるとか無駄に凝った着ぐるみだなコイツ。

「ヨシ! 戦闘はぜ~んぶナーゴに任せておくのにゃっ!」


「調子いい奴だな……」
「可愛い~♡」


◇◇◇

 水中から襲いかかって来る魚型モンスターを倒しながら俺達は目的の地下1階へと辿り着いた。目の前には地下へと続くハシゴ。

「ここがリレイラの言ってた地下への道ね」

「ここからが本番だ。慎重に行こうぜ。まずは深さを……っと」

 転がっていた石を掴むと穴の中へと投げ入れる。


 しかし、すぐには音がしない。


 まだ。


 まだ。


 ポチャン──。


 落ちるまでの時間。その後の反響これは……。

「深いな。この先は結構広いぜ」

「う~ちょっとゾワゾワするわねぇ……ドローンを先に降ろしてカメラで見た方がいいかも」

 アイルがスマホでドローンを操作していると、ナーゴが胸を叩いた。

「ナーゴが先に降りて安全を確認してくるにゃ~」

「大丈夫か? 強いモンスターもいるかもしれないぜ?」

「任せておくにゃ~」

 そう言うと、ナーゴはハシゴにヒョイっと飛び乗り、下へと降りていった。


「ネッコ♪ ネコネコ~ネコナーゴ♪ ネッコ♪ ネコネコ~ネコナーゴ♪」


 変な歌を口ずさみながら。


「なんだあの歌?」

「ネコネコナーゴちゃんねるの主題歌よ。よく歌うからそのまま主題歌にしちゃったらしいわ」

「さっきビビりまくってたのに警戒心なさすぎるだろ」

 などと話していた時。


「フギャアアアアアアアアア!?」


 ナーゴの叫び声が下から聞こえた。

「な、ナーゴに何かあったのかしら!?」

「早く降りるぞ!」

 俺達は、ナーゴの下へと急いだ。


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