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第90話 青い不死鳥
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~リレイラ~
南池袋公園。
「サラ、警備変わって貰えるか?」
「リレイラ課長はゆっくり休んで下さ~い! 不届き者がいたらしっかり私が分からせてやるんで!」
金色のショートカットを揺らしながらサラが敬礼のようなポーズを取る。なぜか敬礼を求められた気がして、軽く額に手を当てて公園の隅へと移動した。恥ずかしかったのでなるべく早く。
公園の中では観客がモニターに向かって熱狂していた。芝生の上で宴会をしている若者もいる。こう見ると平和そのものだな。公園内に設置されたカフェの陰でリュックからスマホとタブレット端末を取り出す。地図アプリを立ち上げるとみんなを表す青、赤、緑、黄の模様が現れた。
ツェッターと掲示板を確認する。そこに管理局のドローンの映像と警備の魔族達の通信を合わせる。すると現状が見えて来る。
ヨロイ君達は西池袋公園からモンスターを倒しながら周辺地域を巡っている。ジーク君達は池袋駅東口からサンシャインシティへ向かっているようだ。だが……直進はしていない。路地を何度も曲がっているな。亜沙山の探索者達と遭遇したのか。
ここまではシィーリア部長の予想通り。後はみんなの力を信じるしかない。
だが……気になる。
不気味なほど九条商会に動きが無い。開始から30分以上経っているのに、だ。
なんだ? ヤツらは何を狙っている?
端末からハンターシティの登録者名簿を見る。しかし、九条商会所属の探索者はいない。シィーリア部長の言っていた通り、裏で協力している魔族がいるのか……。
魔族ならば承認魔法も使用できる。大会に登録することなくどんな者でも魔法障壁の出入りができてしまう。クソッ……何者か知らないがなんてことをしてくれるんだ。
「うおおおおおおおおお!!」
「ヤベェよ461さんと天王洲アイル!!」
「30分で1人400ptって……っ!?」
「1体20ptとしても合計800ptでしょ……もう40体も倒したの!?」
「個体差あるからもっとじゃねぇか?」
歓声が上がる。そうか、ヨロイ君達は活躍しているのか。
大型モニターに映るヨロイ君のヘルム。それを見ると胸がドキドキする。終わったら、さっきみたいに抱きしめてあげたいな……いや、ジーク君達みたいにキ、キ、キス……を。
「ハッ!?」
すぐに我に返って頭をブンブンと振った。最近たるんでいるぞリレイラ。そんなことはみんな無事に返って来てから考えろ。
運営のイベント配信用ドローン映像はどうだ?
運営ドローンはエリア中を周回し、探索者を感知すれば集まるようプログラムされている。これを調べてみれば……。
しかしジーク君達を映した映像がない。シィーリア部長が彼らの周辺をドローン周回エリアから外すよう指示したのか? 亜沙山と遭遇すれば探索者同士の戦いになる。当然と言えば当然か。
「それにしても映像が不鮮明だな」
サンシャインシティ方面のビル街が霧に包まれている。そちらの映像はどうにも見えにくい。
今日の予報ではこんな天気になるはずがない。なんだこの霧は……魔法だろうか? 亜沙山一家でこんなことができる探索者がいるのか?
いずれにせよ全体を目視はできないな。
みんなの顔が浮かぶ。渋谷に挑むまでの日々……シィーリア部長の屋敷で過ごした日々が。
……みんなが戦っているのに、私だけ何もしないなんて嫌だ。運営の中心にいるシィーリア部長は動きたくても動けない。
みんなをサポートできるのは私しかいないんだ。
地図アプリを起動する。良かった……GPSは生きている。あの霧に電波妨害の効果はないみたいだ。ヨロイ君達に情報を共有しておこう。
ヨロイ君は前衛で戦っているかもしれない。アイル君の方が良いだろう。
スマホのメッセージアプリを開き、通話ボタンをタップする。2コールほどでアイル君の声が聞こえた。
『やっほーリレイラ! ちょうど連絡しようと思ってたところよ!』
「すごいじゃないか。こちらのモニターにも活躍映っているよ」
『ヨロイさんがコツ掴めて来たみたいでね、走りながらでも結構モンスター倒せてるわ! ……っと発射!!』
『サンキュー!!』
アイル君の元気な声にヨロイ君がモンスターを倒す音も聞こえる。しばらく待つと戦闘は終わったようで、彼女の声から緊張が解けるのが分かった。
アイル君にジーク君達の様子を伝える。亜沙山の探索者達と遭遇したこと、霧の影響で映像で確認できないことを。
『分かったわ。私達は観客がいる公園を確認しながら東に向かうわ。何かあったらまた連絡して!』
「……気を付けて」
プツリと切れる通話。これで大丈夫のはずだ。東方面を警戒しつつ、ジーク君もサポートできる。
今回は渋谷の時と違う。表立ってみんなに情報を伝えられるからいいな。
もう一度会場の大型モニターを見る。そこには何人もの探索者がモンスターと戦う姿が映っていた。観客はみんな、彼らの様子を見て声援を送る。今のところ、イベントは成功していると言えるだろう。
だが、なんだこの胸騒ぎは?
気持ちの悪さを振り払うように、タブレット端末に目を向けた。
◇◇◇
~ダンジョン配信者 ポイズン社長~
「はぁはぁ……アイツらどこ行きやがった?」
俺達のモンスター討伐を邪魔した露出狂女……確かモモチーとかいう探索者だったよな。麻痺させたはずなのに、取り巻きの1人が麻痺治療薬を持ってやがった。足止めできたのは数秒程度、その後も執拗に俺達の獲物を狙うからとうとうブチ切れてぶっ倒してやろうと思った。
だけど逃げ足は異常に速いのな、アイツら。
「はぁはぁ……キツイのだ……」
全力で走ったせいで、小柄なパララは肩で息をしていた。オレンジ色の髪の合間から見える苦しそうな顔。ちょっと無理させ過ぎたかも。
「大丈夫かパララ?」
「パ、パララもんは、大丈夫なのだ。それより……はぁ……アイツら許せないのだ。早く見付けて仕返ししてやるのだ!」
ふんと鼻息を鳴らすパララ。この様子なら大丈夫だな。
それにしても……さっきからこの辺り、妙に視界が悪い。
「なんだこれ? 霧か?」
「誰か水魔法でも使っているのだ?」
今回でハンターシティに参加して3年目。Aクラスになって初めてのイベントだったのによ。開始30分でこれじゃいいとこなしだぜ。
うっすら見える家電量販店の看板。それで自分の居場所が分かった。いつの間にか東口に出てたのか。
「もしかしたらあの女達と別エリアに来ちまったのかも。一旦西口の方へ戻るか」
その時。
鳴き声が聞こえた。
「キュオオオオオオオオオオオン!!!!」
「な、なんなのだ? この声?」
「鳥……の声か?」
馬鹿でかい声。こんな鳴き声出すヤツなら相当デカいヤツのはずだ。だけど辺りにそれらしきモンスターの姿は無い。タタタッと走ったパララは、横断歩道の中心で辺りを見回した。
「何にも見えないのだー」
おかしいな。どこにいるんだ?
なんとなく上を見た瞬間、上空から青い鳥型のモンスターが見えた。鳥型モンスターは俺達の上空をグルグルと回ると、狙いを定めたように急降下して来た。
徐々に近付く鳥。青い……炎? 氷? 色は全然違うが、不死鳥みたいな……。
てか、なんだありゃ!? デカすぎる!?
「キュアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「ヤベェ!? 逃げるぞパララ!!」
「ま、待つのだポイ君~!!」
池袋駅東口に向かって走る。あそこの地下なら入って来れねぇはずだ。
「あぐっ!?」
バタリという音に振り返る。見ると、すぐ後ろにいたはずのパララが道路に倒れていた。チクショウ! 逃げるのに必死でパララを置き去りにしちまった!!
助けに行こうとしたところを不死鳥の背中に遮られる。
「わ、わ!? 麻痺魔法!!」
「キュオッ!!」
不死鳥の背中越しにパララが見える。不死鳥は麻痺魔法をステップして躱し、その強靭な脚でパララを蹴り飛ばした。
「うわぁっ!?」
「パララ!?」
吹き飛ばされるパララ。なんて威力の蹴りだよ……。パララのヤツ、大丈夫なのか!?
「キュオッ!」
「のだ!?」
不死鳥がパララの服をクチバシで掴み、ブンブンと振り回す。逃れようとしたパララは腰のダガーを抜いて何度も攻撃を試みるが、攻撃しようとするたびに振り回されて全く攻撃を当てられなかった。
「助けてなのだぁっ……」
てか何惚けてんだ! 俺もボケッとしてる場合じゃねぇだろ!
パララが捕まってんだ。1番威力の出る攻撃でいくしかねぇ!
剣を抜きヤツへ突撃する。武器に猛毒を付与する猛毒魔法を剣に使用する。
ワイバーンすら一撃で昏倒させる魔法剣だ。当てさえすれば!!
「死ねえええぇ!!」
全力で不死鳥の胴体に剣を突き刺す。
が、攻撃が当たる瞬間、奴の胴体を氷の防御壁が包み込んだ。
「なにぃ!?」
氷が突き破れず突きの軌道が逸れる。攻撃が通らねぇだと!?
「キュオッ!」
「うわぁ!?」
不死鳥の蹴りをモロに喰らう。道路の反対側まで吹き飛ばされてビルの外壁にぶつかる。全身に痛みが走って地面に落ちた。
クッソ痛てぇけどなんとか無事だ……防御魔法符呪してて良かったぁ……。
「キュッ」
「ひゃああああ!?」
不死鳥がパララを上空へ放り投げる。そしてヤツは俺に向かって雄叫びを上げた。
「キュアアアアア……ッ!!」
ヤツのクチバシに集まる魔力、それが冷気に変わり……って説明してる場合かよ!? ブレス攻撃か!? 広範囲攻撃が来る!?
「うわああああああああ!!」
立ち上がり、目に入った路地に向かって全力疾走する。ヤベェ! あれはヤベェ臭いがする!? 当たったら死──。
「キュオオオオオオオオオオオオオ!!!」
路地に飛び込むとほぼ同時にブレスが発射される。背後に感じる猛烈な冷気。それは俺を通りすぎ、バキバキと物凄い音を鳴り響かせる。
「ぐううう……っ!?」
ビルの影で丸くなる。暴風のような冷気が収まったタイミングで外を覗くと……。
辺り一面が凍り付いていた。道路からビルから全て。1キロくらい先まで全て氷河期みたいに凍り付いていた。
「な、なんだよこの威力……ただのボスじゃねぇ……」
「わーーーーーーーー!?」
甲高い声と共に落ちてくるパララ。そうだ! パララを助けないと!
「キュオッ」
そう思った矢先、不死鳥が舞い上がり、パララの服をパシリとクチバシで掴んだ。
「パララーーーーーーーーーーー!?」
「助けてなのだーーーーーーーー!?」
不死鳥は、パララを咥えたまま、西の方へ飛んでいってしまった。
南池袋公園。
「サラ、警備変わって貰えるか?」
「リレイラ課長はゆっくり休んで下さ~い! 不届き者がいたらしっかり私が分からせてやるんで!」
金色のショートカットを揺らしながらサラが敬礼のようなポーズを取る。なぜか敬礼を求められた気がして、軽く額に手を当てて公園の隅へと移動した。恥ずかしかったのでなるべく早く。
公園の中では観客がモニターに向かって熱狂していた。芝生の上で宴会をしている若者もいる。こう見ると平和そのものだな。公園内に設置されたカフェの陰でリュックからスマホとタブレット端末を取り出す。地図アプリを立ち上げるとみんなを表す青、赤、緑、黄の模様が現れた。
ツェッターと掲示板を確認する。そこに管理局のドローンの映像と警備の魔族達の通信を合わせる。すると現状が見えて来る。
ヨロイ君達は西池袋公園からモンスターを倒しながら周辺地域を巡っている。ジーク君達は池袋駅東口からサンシャインシティへ向かっているようだ。だが……直進はしていない。路地を何度も曲がっているな。亜沙山の探索者達と遭遇したのか。
ここまではシィーリア部長の予想通り。後はみんなの力を信じるしかない。
だが……気になる。
不気味なほど九条商会に動きが無い。開始から30分以上経っているのに、だ。
なんだ? ヤツらは何を狙っている?
端末からハンターシティの登録者名簿を見る。しかし、九条商会所属の探索者はいない。シィーリア部長の言っていた通り、裏で協力している魔族がいるのか……。
魔族ならば承認魔法も使用できる。大会に登録することなくどんな者でも魔法障壁の出入りができてしまう。クソッ……何者か知らないがなんてことをしてくれるんだ。
「うおおおおおおおおお!!」
「ヤベェよ461さんと天王洲アイル!!」
「30分で1人400ptって……っ!?」
「1体20ptとしても合計800ptでしょ……もう40体も倒したの!?」
「個体差あるからもっとじゃねぇか?」
歓声が上がる。そうか、ヨロイ君達は活躍しているのか。
大型モニターに映るヨロイ君のヘルム。それを見ると胸がドキドキする。終わったら、さっきみたいに抱きしめてあげたいな……いや、ジーク君達みたいにキ、キ、キス……を。
「ハッ!?」
すぐに我に返って頭をブンブンと振った。最近たるんでいるぞリレイラ。そんなことはみんな無事に返って来てから考えろ。
運営のイベント配信用ドローン映像はどうだ?
運営ドローンはエリア中を周回し、探索者を感知すれば集まるようプログラムされている。これを調べてみれば……。
しかしジーク君達を映した映像がない。シィーリア部長が彼らの周辺をドローン周回エリアから外すよう指示したのか? 亜沙山と遭遇すれば探索者同士の戦いになる。当然と言えば当然か。
「それにしても映像が不鮮明だな」
サンシャインシティ方面のビル街が霧に包まれている。そちらの映像はどうにも見えにくい。
今日の予報ではこんな天気になるはずがない。なんだこの霧は……魔法だろうか? 亜沙山一家でこんなことができる探索者がいるのか?
いずれにせよ全体を目視はできないな。
みんなの顔が浮かぶ。渋谷に挑むまでの日々……シィーリア部長の屋敷で過ごした日々が。
……みんなが戦っているのに、私だけ何もしないなんて嫌だ。運営の中心にいるシィーリア部長は動きたくても動けない。
みんなをサポートできるのは私しかいないんだ。
地図アプリを起動する。良かった……GPSは生きている。あの霧に電波妨害の効果はないみたいだ。ヨロイ君達に情報を共有しておこう。
ヨロイ君は前衛で戦っているかもしれない。アイル君の方が良いだろう。
スマホのメッセージアプリを開き、通話ボタンをタップする。2コールほどでアイル君の声が聞こえた。
『やっほーリレイラ! ちょうど連絡しようと思ってたところよ!』
「すごいじゃないか。こちらのモニターにも活躍映っているよ」
『ヨロイさんがコツ掴めて来たみたいでね、走りながらでも結構モンスター倒せてるわ! ……っと発射!!』
『サンキュー!!』
アイル君の元気な声にヨロイ君がモンスターを倒す音も聞こえる。しばらく待つと戦闘は終わったようで、彼女の声から緊張が解けるのが分かった。
アイル君にジーク君達の様子を伝える。亜沙山の探索者達と遭遇したこと、霧の影響で映像で確認できないことを。
『分かったわ。私達は観客がいる公園を確認しながら東に向かうわ。何かあったらまた連絡して!』
「……気を付けて」
プツリと切れる通話。これで大丈夫のはずだ。東方面を警戒しつつ、ジーク君もサポートできる。
今回は渋谷の時と違う。表立ってみんなに情報を伝えられるからいいな。
もう一度会場の大型モニターを見る。そこには何人もの探索者がモンスターと戦う姿が映っていた。観客はみんな、彼らの様子を見て声援を送る。今のところ、イベントは成功していると言えるだろう。
だが、なんだこの胸騒ぎは?
気持ちの悪さを振り払うように、タブレット端末に目を向けた。
◇◇◇
~ダンジョン配信者 ポイズン社長~
「はぁはぁ……アイツらどこ行きやがった?」
俺達のモンスター討伐を邪魔した露出狂女……確かモモチーとかいう探索者だったよな。麻痺させたはずなのに、取り巻きの1人が麻痺治療薬を持ってやがった。足止めできたのは数秒程度、その後も執拗に俺達の獲物を狙うからとうとうブチ切れてぶっ倒してやろうと思った。
だけど逃げ足は異常に速いのな、アイツら。
「はぁはぁ……キツイのだ……」
全力で走ったせいで、小柄なパララは肩で息をしていた。オレンジ色の髪の合間から見える苦しそうな顔。ちょっと無理させ過ぎたかも。
「大丈夫かパララ?」
「パ、パララもんは、大丈夫なのだ。それより……はぁ……アイツら許せないのだ。早く見付けて仕返ししてやるのだ!」
ふんと鼻息を鳴らすパララ。この様子なら大丈夫だな。
それにしても……さっきからこの辺り、妙に視界が悪い。
「なんだこれ? 霧か?」
「誰か水魔法でも使っているのだ?」
今回でハンターシティに参加して3年目。Aクラスになって初めてのイベントだったのによ。開始30分でこれじゃいいとこなしだぜ。
うっすら見える家電量販店の看板。それで自分の居場所が分かった。いつの間にか東口に出てたのか。
「もしかしたらあの女達と別エリアに来ちまったのかも。一旦西口の方へ戻るか」
その時。
鳴き声が聞こえた。
「キュオオオオオオオオオオオン!!!!」
「な、なんなのだ? この声?」
「鳥……の声か?」
馬鹿でかい声。こんな鳴き声出すヤツなら相当デカいヤツのはずだ。だけど辺りにそれらしきモンスターの姿は無い。タタタッと走ったパララは、横断歩道の中心で辺りを見回した。
「何にも見えないのだー」
おかしいな。どこにいるんだ?
なんとなく上を見た瞬間、上空から青い鳥型のモンスターが見えた。鳥型モンスターは俺達の上空をグルグルと回ると、狙いを定めたように急降下して来た。
徐々に近付く鳥。青い……炎? 氷? 色は全然違うが、不死鳥みたいな……。
てか、なんだありゃ!? デカすぎる!?
「キュアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「ヤベェ!? 逃げるぞパララ!!」
「ま、待つのだポイ君~!!」
池袋駅東口に向かって走る。あそこの地下なら入って来れねぇはずだ。
「あぐっ!?」
バタリという音に振り返る。見ると、すぐ後ろにいたはずのパララが道路に倒れていた。チクショウ! 逃げるのに必死でパララを置き去りにしちまった!!
助けに行こうとしたところを不死鳥の背中に遮られる。
「わ、わ!? 麻痺魔法!!」
「キュオッ!!」
不死鳥の背中越しにパララが見える。不死鳥は麻痺魔法をステップして躱し、その強靭な脚でパララを蹴り飛ばした。
「うわぁっ!?」
「パララ!?」
吹き飛ばされるパララ。なんて威力の蹴りだよ……。パララのヤツ、大丈夫なのか!?
「キュオッ!」
「のだ!?」
不死鳥がパララの服をクチバシで掴み、ブンブンと振り回す。逃れようとしたパララは腰のダガーを抜いて何度も攻撃を試みるが、攻撃しようとするたびに振り回されて全く攻撃を当てられなかった。
「助けてなのだぁっ……」
てか何惚けてんだ! 俺もボケッとしてる場合じゃねぇだろ!
パララが捕まってんだ。1番威力の出る攻撃でいくしかねぇ!
剣を抜きヤツへ突撃する。武器に猛毒を付与する猛毒魔法を剣に使用する。
ワイバーンすら一撃で昏倒させる魔法剣だ。当てさえすれば!!
「死ねえええぇ!!」
全力で不死鳥の胴体に剣を突き刺す。
が、攻撃が当たる瞬間、奴の胴体を氷の防御壁が包み込んだ。
「なにぃ!?」
氷が突き破れず突きの軌道が逸れる。攻撃が通らねぇだと!?
「キュオッ!」
「うわぁ!?」
不死鳥の蹴りをモロに喰らう。道路の反対側まで吹き飛ばされてビルの外壁にぶつかる。全身に痛みが走って地面に落ちた。
クッソ痛てぇけどなんとか無事だ……防御魔法符呪してて良かったぁ……。
「キュッ」
「ひゃああああ!?」
不死鳥がパララを上空へ放り投げる。そしてヤツは俺に向かって雄叫びを上げた。
「キュアアアアア……ッ!!」
ヤツのクチバシに集まる魔力、それが冷気に変わり……って説明してる場合かよ!? ブレス攻撃か!? 広範囲攻撃が来る!?
「うわああああああああ!!」
立ち上がり、目に入った路地に向かって全力疾走する。ヤベェ! あれはヤベェ臭いがする!? 当たったら死──。
「キュオオオオオオオオオオオオオ!!!」
路地に飛び込むとほぼ同時にブレスが発射される。背後に感じる猛烈な冷気。それは俺を通りすぎ、バキバキと物凄い音を鳴り響かせる。
「ぐううう……っ!?」
ビルの影で丸くなる。暴風のような冷気が収まったタイミングで外を覗くと……。
辺り一面が凍り付いていた。道路からビルから全て。1キロくらい先まで全て氷河期みたいに凍り付いていた。
「な、なんだよこの威力……ただのボスじゃねぇ……」
「わーーーーーーーー!?」
甲高い声と共に落ちてくるパララ。そうだ! パララを助けないと!
「キュオッ」
そう思った矢先、不死鳥が舞い上がり、パララの服をパシリとクチバシで掴んだ。
「パララーーーーーーーーーーー!?」
「助けてなのだーーーーーーーー!?」
不死鳥は、パララを咥えたまま、西の方へ飛んでいってしまった。
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