461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第92話 西口公園襲撃

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 ~シィーリア~


 池袋西口公園。


 開始から1時間ほど経ったが、まだ九条の動きはない。霧のせいで大会の全体像が掴みにくいのぅ……どうなっておるのじゃ。

 各所を観測するように運営用ドローンは決められたルートを周回する。全体を観測しながら探索者を感知すると近寄って撮影するように設定したのに……これじゃ意味ないのじゃ。まぁ、ジークやミナセ達のいるであろうエリアはドローンに近付かぬようにさせたが。


「うおおおおお!!!」
「タルパちゃんかわええ!!」
「ゴスロリやべぇわ。ハマるかもw」
「親切なバッチwww 討伐数タルパちゃんに負けてるじゃんw」
「タルパマスターのぬいぐるみ攻撃結構強いな」
鯱女王オルカ動くまで終わらないでぇ……」
「あー確かに! 鯱女王オルカの戦い見たい!」


 開会式では探索者で埋め尽くされていたステージ前。そこには観客が入り、皆ステージ上の大型モニターを見ては口々に声援を送っていた。

「見て下さいシィーリアさん。探索者達にみなさん熱狂しておりますよ」

 大沼知事がモニターを指す。映っていたのはモンスターと戦闘を繰り広げるゴスロリ服の少女探索者だった。何もない空間から大量の熊のぬいぐるみが現れて攻撃しておる。確か……タルパマスターとか言ったかの。変わったスキルじゃな。

 映像はモヤがありつつも鮮明。ここまで戦闘に近付けば撮影に支障はないのか。

「ほら、コメントもあんなに流れています。他の設営会場でも声援が止まないと聞きますし、今年はいつにも増して盛り上がっておりますねぇ」

 大沼知事が上品そうな笑みを浮かべる。おっとりしておるがちゃんと見ておるの。盛り上がりが悪くなるとドローンの移動ルート変更を要求してくるかもしれぬ……そうなればジーク達のことも映ってしまうかも。気を付けなければいかんな。

 隣に座る鯱女王オルカに視線を移す。彼女は腕を組んで目を閉じ、瞑想めいそうしていた。

 はぁ……コヤツが協力すれば対処しやすいのじゃが。思うように動いてくれん奴じゃなぁ。

 しかし、そのオーラは確かじゃ。絶対的強者のオーラをコヤツはまとっておる。


「……」


 さすがS級。待っておるのだな。己が動く時を。


「……ぐぅ」


 いや、瞑想じゃない!? 眠っておる……っ!? コヤツ、暇だから寝ておるだけなのか? あれだけ参加者達をき付けておいて一体どういう神経しておるのじゃ!

 オルカの顔を覗き込む。真剣にうつむいているようにしか見えぬ……場慣れしておるなコヤツ。あれか? 他県に行った時、行政の式典とかに付き合わされるから編み出した技という訳か?


「……ふひw サーセンwww」


 オルカがニヤリと笑う。少し下品な笑み、先程の気高さすら感じさせる雰囲気とは全く違う寝顔……少し怖いの。

 しかし……どんな夢を見ておるのじゃ?

 そんなことを考えていると、部下が背後から耳打ちしてきた。

「シィーリア部長」

「なんじゃ?」

「大型のモンスターが1体、こちらに向かっているようです」

「何? どんなモンスターじゃ?」

「先程461さんと天王洲アイルとの戦闘で確認しました。ケープスフェニックスかと」

「ケープスフェニックスじゃと?」

 アレはこの世界ではまだ観測されておらんモンスターじゃぞ。サンシャインシティに向かわせた確認班からの報告でもボスは進化しておらんかったはず……一体何が……。

 その時、辺り一面に甲高い鳴き声が響き渡った。


「キュオオオオオオオオオオオオンッ!!!」


「え、何この声?」
「デカくね? 近くからか?」
「お前ビビってんの?」
「び、ビビってねぇし! 魔法障壁あるから平気だって!!」
「演出かもなぁ」
「怖がりすぎ~w」


「キュオッ!」


 青い体をした不死鳥……ケープスフェニックスがゆっくりと大地へ降り立った。それを見た瞬間、全身に悪寒が走る。このモンスターは……殺気しか持っておらん。

 通常ならモンスターは捕食の為に他者を襲う。必ず対峙した時、他の意図が見える。食欲、警戒、そのような物が。しかしコヤツからは殺意しか……ない。

「鳥型かよ~ビビらすなってw」

 観客の笑い声が聞こえる。この場は魔族の魔法障壁が展開されておる。承認魔法を与えられた者しか入ることはできぬ。もちろんモンスターなどはいれようはずも無い。落ち着け、絶対安全のはずじゃ。

 ……下手に観客を刺激してパニックになった方が危うい。

「デケ~!」
「捕まえたらペットにできそう」
「バカwデカすぎだろwww」
「キュオンて鳴くからキュオちゃん?」
「キュオwwwちゃんwwwww」

 能天気な会話が聞こえる。和やかな雰囲気。なのになぜじゃ? じっとりと嫌な汗がわらわの背を伝う。

 魔法障壁の外にいるケープスフェニックスがピタリと止まり、魔法障壁越しに妾達を見た。その動きが生き物らしくない。気持ちが悪い。


「キュアアアアアアアアアアア……っ!?」


   ケープスフェニックスがそのクチバシを大きく開く、魔力が集約していく。……ブレス攻撃をするつもりか?


「ぶ、部長? 障壁あるから大丈夫ですよね?」

 部下が不安そうな声を出す。それを聞いた瞬間、ケープスフェニックスの額が目に入った。

 ここからでは小さくて見えにくいが……アレは妾達の世界の文字・・・・・・・・。淡く光る文字……それには見覚えがあった。


「承認……魔法、じゃと?」


 ヤツの額には承認魔法が刻まれていた。あり得ない。アレがモンスターにつけられていたら……攻撃が、障壁をすり抜けるではないか。



 観客に、直撃するぞ──。



「キュオオオオオオオ……ッ!!!」



「オルカ! オルカ!」

 オルカの頬を叩く。しかし一向に起きる気配がない。なんでこの状況で起きぬのじゃ!! どんな神経をしておる!?

「あらあら、今年は派手な演出があるのですねぇ」

 観客も、大沼知事もこの状況を演出か何かと勘違いしておる。

 どうする? このままでは人が死ぬぞ……混乱どころか……もしや、これが九条の狙いか? クソ! 妾が本気でヤツの懐へ飛び込んだら風圧で観客も巻き添えにしてしまう。どうすれば……!?


「アアアアア……っ!!!!!」


 放たれる。放たれてしまう……っ!! この状況で全員助けるなど……。



 ──火炎魔法《ブレイズ》!!



「ギュア゛ッ!?」



 不死鳥の顔面が炎に包まれる。苦しそうにもがいた不死鳥。その顔を天へと向けた瞬間、ヤツがチャージしていた魔力が解放され氷結ブレスが発射される。


 上空に発射された氷結ブレスは、周囲にチラチラと雪のように氷の結晶を降らせた。


「た、助かった……のじゃ」


「ゥオラアアアアア!!」

「フレイムエッジ!!」


 不死鳥の足元に2人の探索者が攻撃を仕掛ける。そのうちの1人は鎧の男……妾のよく知るヨロイだった。


「うおおおおおおお!!!」
「天王洲アイルの魔法めっちゃ効いてる!!」
「461さんもいるじゃん!」
「え、あれ……モモチー?」
「なんで協力してんの!?」
「やべ、共闘ボスバトルとか熱すぎぃ!!」
「やっぱり461さんとアイルちゃんはすごいんだ!!」


 熱狂する観客達。観客だけでなく、大沼都知事や屋台の者達までヨロイやアイルに釘付けになる。


 ヨロイが妾を見てコクリと頷いた。その瞬間、目頭が熱くなる。感じていた不安が一気に軽くなる。


 人の子達を守らねばと、ジークとミナセを見届けねばと思っていたが……だが、表立っては動けなくて、妾こそ1人で抱え込んでいたのかもしれない。


 こんなに頼れる仲間達がいるのに……。


 鎧の男とその隣の少女……その背中が、今の妾には何よりも頼もしく見えた。



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