461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第93話 不死鳥を止めろ

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 ケープスフェニックスが西口公園を襲撃する少し前。


 ~天王洲アイル~

 ヨロイさんの後ろを走る。あの不死鳥が九条商会の手先? 信じられないけど、ヨロイさんには確信があるみたい。承認魔法・・・・の異世界文字を見たって言ってたし。

 さっきのブレス攻撃……めちゃくちゃに吐いてただけでとんでもない魔力量だった。アレが魔法障壁を貫通したらとんでもないことになる。



 早くしないと死人が出るかも……。



 「劇場通り」と書かれた大通りを全力で走っていると、いつの間にか聞き覚えのある声が響いた。


「オーホッホッホ!!」


 う、モモチーか。


 横を見ると、高輪ゲートガーディアンズを引き連れたモモチーが私の隣を走っていた。私が横目で見ると、モモチーはハッとした顔をする。

「ハッ!? 調子はどうアイルさんワタクシなんてもう200ptも溜まりましてよでもなぜかポイズン社長とパララもんを怒らせたみたいでずっと追いかけられましてそれがなければ今ごろもっと──」

 早口でまくし立てるようにマウントを取ろうとするモモチー。これは言うセリフ全部考えてたわね……。

 彼女がマウントでしかコミュニケーションを取れない悲しい子だと知らなかったら腹を立てていただろう。最近はちょっと変わった気もするけど。

 ……と、そんなこと考えてる場合じゃないわね。

「ごめんモモチー! 今それどころじゃないの!」

「はぁ? どうしたんですの?」
「ウェイ?
「ウウェイ?」
「ウェ?」

 モモチー達が不思議そうに首を傾げる。モモチーに話して大丈夫かな? でもこのまま着いて来られると巻き込んじゃう。

 不安になってヨロイさんを見る。ヨロイさんはモモチー達をチラリと見たあと私を見て頷いた。それが、私の好きにしていいって言いたいのだと分かる。

 モモチーに九条商会のことを説明する。ヤバい組織で、今回のイベントで不死鳥を使ったテロを画策していることを。ジーク達の件は流石に端折ったけど。

「……ほら、こういう理由だから、西口公園には近づかない方がいいわ。不死鳥は私とヨロイさんでなんとかするから」

「何言っておりますの? 私も行きますわよ」

「話聞いてた? A級のパララもんがやられたモンスターよ。下手をすると……」

 モモチーがため息を吐く。彼女は大袈裟に首を振るとキリッとした顔で私を見た。


親友・・のアイルさんが戦うのに、私が逃げるとお思い? 私も戦いますわ!」


 おめでとう! 天王洲アイルはモモチーの「親友」に進化した!

 
 という文字が頭に浮かび、めまいがしそうになる。親友……? いつの間に私はモモチーと親友になった訳?


 とは言わないでおく。モモチーの顔がいつもの高飛車なものではなかったから。なんとなく、ここで突き放すのは可哀想な気もする。

「ヨロイさん、モモチー達に協力して貰って大丈夫?」

「俺は構わないぜ。ただし……」

 ヨロイさんがモモチー達を見る。彼女達はヨロイさんのヘルムを見ると、ビクリと体を震わせた。怖いのかな? うぅん……今の言葉、確かに声のトーンが低かったかも。でもそれは真剣な時のヨロイさんのクセで、別に怖がらせてる訳じゃないんだけどなぁ。

「モモチーだっけ? お前ら全員俺の指示は聞け。目の前で死なれたら俺の・・パーティメンバーに怒られる」

 もう一度ビクリと体を震わせるモモチー。彼女は高輪さん達の方を見ると若干の涙目で叫んだ。

「わ、分かりましたわ。高輪、品川、田町! 戦闘中はこの殿方の指示を守るのですわよ!」

「「「ウェイ!!!」」」

 ヨロイさんが言っているの、きっとジークの事か。ホント、今回の九条商会の作戦ってジーク潰しよね。

 こんな状況になるって分かっていたら、ジークは絶対ハンターシティのことなんて捨てて観客を守ることに全力を尽くしただろうし……その為にミナセさんを狙ったとしか思えないわ。

「あ」

 ヨロイさんがポツリと声を上げる。

「お前らの中に運転できるヤツいるか?」

「高輪が運転できますわ」

「よし、じゃあ問題ないな」

 運転? 何でそんなこと聞くんだろう?


 まぁいいわ。とにかく、今は急がないと。



 そして時間は進み、現在に至る──。


◇◇◇


 西口公園前では、攻撃を受けた不死鳥が怒り狂っていた。


「キュオオオオオオオ!!!!!」


 不死鳥が私へと狙いをつける。一気に距離を詰める不死鳥。その鉤爪が私を狙った瞬間、速雷魔法ラピッド・ショックを発射する。一瞬だけ止まる不死鳥の脚。鉤爪と地面の隙間へと飛び込み、地面を転がってヤツの狙いから逃げた。

 私のすぐ真上を通りすぎる鉤爪。それがアスファルトに直撃すると、板チョコみたいにアスファルトをバキバキ砕いてしまった。物凄い風圧に襲われて、思わず声を上げてしまう。


「キャアアアアアア!?」


「アイルちゃんビビッてるw」
「C級だしなぁ。怖いのかもwww」
「可愛い~!!」
「明らかに実力より上のモンスターだもんなぁw」
「アイルちゃんはすごいんだ! 笑わないで欲しいんだ!」


 叫んで恐怖を紛らわせる。こうしないと体が動かなくなる。それはダメだ。仲間の役に立てない。動け私、情けない声を出しても戦わなきゃ。


 自分に言い聞かせて杖を向ける。


「火炎魔法《ブレイズ》!!」


 火球を不死鳥の胴体に放つ。私に狙いを向けないと観客が狙われちゃう。

 火炎魔法に気付いてヒラリと交わす不死鳥。だけど、意識が完全に私だけになってる。狙いを私に絞らせるのは成功だ。

〈避けられた!?〉
〈外れたじゃんw〉
〈無理しなくていいよアイルちゃんw〉
〈やられちゃうよ~?〉
〈アイルちゃん! がんばるんだ!〉


「キュオンッ!!!」


 再び放たれる鉤爪攻撃、それが私に向けられた瞬間ヨロイさんが不死鳥の脚にショートソードを叩き付けた。


「ッらああああああああああ!!!」


 全力の攻撃。それが不死鳥にダメージを与えたのか、不死鳥は攻撃を中断して後ろに飛び退いた。不死鳥がバランスを崩したまま無理矢理着地する。

〈461さん来た!〉
〈攻撃効いてる!〉
〈え、アイルちゃんの魔法、もしかしてワザと?〉
〈明らかに自分を狙わせてたよな?〉
〈狙ってやったんだ! 僕にはわかるんだ!〉


「今だモモチー!!!」


「貴方達、いきますわよ!!!」
「「「ウェイ!!!」」」


 ヨロイさんの声でモモチー達が不死鳥のもう1つの脚に切り掛かる。モモチーのフレイムエッジ、高輪さん達の連続剣撃で、不死鳥はさらにバランスを崩し、盛大に地面へと倒れ込んだ。


「ウオオオオオオオ!!!」
「ボスクラスダウンさせたぞ!!」
「ていうかアイツ固くね?」
「もがいてるけどまだ全然元気だもんな」
「さっきのブレスまだ吐けそうw」
「みんなすごいんだ! 前より強いんだ!」


「やりましたわ! ここから追い討ちを……」

「待て」

 ヨロイさんがモモチー達を呼び止める。モモチー達は「なぜ追撃できるのに止めるのか?」という顔をした。


「アイツは完全にキレた。後は引き付けてこの場所から移動させるぞ」

「そ、そうですわね、ここで戦ったら被害出ますものね」

「ウェイ」
「ウェウェ」
「ウェ……イ」

 モモチー達がバツの悪そうに視線を逸らす。あ、あの顔……戦うのに必死で観客のこと忘れてたわね。

「でもヨロイさん。アイツ結構速いからすぐ追い付かれちゃうわよ?」

「この場所によ、ちょうどいいのがあるんだ」

 もがく不死鳥を横目にヨロイさんが走り出す。どこに行くんだろう? 向こうはナーゴ達のいる屋台エリアなのに。ヨロイさんに何か考えがあるの?

 急に立ち止まったヨロイさんは、おもむろに私達の知ってる屋台・・の方へ手を振った。


「マスター!! 軽トラ・・貸してくれ!!」


 軽トラ!? 確かに大会パンフレットにエリア内にある物は使用していいって書いてあったけど……。


 ヨロイさんの視線の先、屋台には猫の着ぐるみ探索者ナーゴと、スキンヘッドの男の人……冒険家Bのマスターが呆気にとられたようにこちらを見ていた。しかし、自分達に言われたと分かると、ナーゴが大きな声をあげた。


「にゃ!? マスターの軽トラ!? 壊れちゃったら機材どうやって持って帰るにゃ!?」


(壊れた時どうするのよヨロイさん!?)

(ま、真面目に弁償するしかないわな)

(そうだけど……っ!)

 ヨロイさんのこと分かるようになったと思っていたけど、これは完全に想定外だわ。


「ギュアアアアア……っ!!!」


 血走った目をした不死鳥が、立ちあがろうと翼を大地につける。

「言ってる場合ですの!? 使える物はなんでも使うべきですわ!」

「そ、そうだけど、そう簡単に……」

 クルリと振り返ったモモチーが取り巻き達に指示を出す。

「高輪は運転! 品川と田町はここに残りなさい!」

「ウェ!?」
「ウェウェ!?」

 モモチが驚く仲間2人の肩を叩く。そして、2人の仲間の目をまっすぐに見つめた。

「いいですの? ワタクシは貴方達を信用して残していくのです。西口エリアは貴方達が守りなさい。何かあったらワタクシに連絡するのですのよ?」

「ウェイ……」
「ウェウェ~」

 号泣する品川さんと田町さん。なんだかんだで、この4人って仲間意識あったのね。


 モモチーが冒険家Bのマスターに向かって叫ぶ。


「お願いしますわお髭のおじ様! ワタクシに車を貸して下さいまし!」


「えぇ!? 誰だにゃ!? ていうかどうするのかにゃマスター!?」


 知らない配信者にも頼まれ面食らうナーゴ。しかしマスターはというと、不敵に笑って軽トラの鍵をモモチーに向かって投げた。


「……っ! ありがとうございますおじ様! 感謝致しますわ!」


「おう! しっかりやってくれモモチー・・・・!」


 大きな声で一言言うと、マスターは背中を向けてヒラヒラと手を振った。

「よし! みんな早く乗れ! アイツが起き上がるぞ!」

 461さんが軽トラへ向かって駆け出す。

「品川、田町! 軽トラに物理防御と魔法防御魔法をありったけかけなさい!」

「「ウェイ!!」」

 到着と同時に軽トラに魔法がかけられる。高輪さんが運転席。モモチーと私とヨロイさんが荷台に乗り込んだ。高輪さんがアクセルを踏み込み、物凄い勢いでバックする。そして、器用にクルリと方向を変えた軽トラは西口公園とは反対方向へ走り出した。


 ヨロヨロと起き上がった不死鳥。そのタイミングで火炎魔法を放つ。放たれた火球が再び不死鳥の顔面に直撃する。炎が消えた瞬間、不死鳥は血走った目でギロリと私達を見た。


「こっちに来やがれ冷凍焼き鳥野郎!!」


 トラックからヨロイさんが叫ぶ。挑発に腹を立てたのか、不死鳥は雄叫びを上げて襲いかかって来た。


「成功ですの! 全速前進ですわ⭐︎!!」



「キュオオオオオオオンッッッ!!!」



 怒る不死鳥を引き連れて、私達は西口公園を後にした──。





























◇◇◇

 ~配信者 ナーゴ~

 軽トラと不死鳥が遠のいていく。帰りの機材どうするにゃ。確かに様子は変だったけど……。

「マスター? なんで軽トラ貸しちゃったのにゃ?」

「ん? そりゃあもちろん常連の頼みだしよ……それとなにより……」

「なんだにゃ?」


推し・・のピンチにゃ協力するのが本当の紳士・・ってもんだぜ!」


 マスター・・・・は白い歯をニカリと見せて笑った。


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