461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第149話 突入、新宿迷宮。

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 ~461さん~

 新宿迷宮は新宿駅から旧都庁までの一帯に広範囲の魔法障壁が展開されている。障壁内は紫のモヤに包まれており、中は見えない。リレイラさんに聞いた話によると、中には異世界の様相が見られるらしい。

「あ、見えてきたわ。魔法障壁」

 新宿三丁目駅で合流した俺達。新宿駅まで間近に迫った時、アイルが上空を指差した。そこにはドーム状に展開された魔法障壁が。ここだけ見るとSFチックな光景だな。

「電車は走ってるんだにゃ。不思議だにゃ~」

 ナーゴの言う通り、時折山手線が走っては魔法障壁へと突っ込んでいく。普通に考えれば障壁に激突しそうだが、障壁は何事も無いように電車を吸い込んでいく。ジークがその様子を見つめ、ポツリと呟いた。

「以前シィーリアに聞いたな。電車が通ると魔法障壁がトンネル状に変化するそうだ」

 そういや山手線に乗ると時々トンネルに入る区間があるけど、そんな仕組みだったのか。

「そう言えばアイルちゃん、ドローンの予備バッテリー持って来た?」

「大丈夫よミナセさん。4セット持ってるし、速雷魔法ラピッド・ショックで充電できるから」

「にゃにゃ!? 速雷魔法って便利だにゃ~」

 ミナセ、アイル、ナーゴは配信の段取りや誰のチャンネルで配信するかを話し合っていた。この辺りは配信者のプライドを感じるな。

 配信はコメントによる情報収集や、俺達の状況を伝えることができる。救出部隊を期待する訳じゃないが、危険なルートに後続の探索者が来ることを防げるだろう。

 ……と3人から力説された。

「なぜそこまで配信にこだわるか分からないな」

「まあいいじゃんジーク。配信抜きにしてもドローンは光源や偵察に使えるし」

 アイル達の配信の話を聞きながら先へと進む。そして魔法障壁の手前までやって来ると、ダンジョン管理局員が立っているのが見えた。

 管理局員にスマホを提示する。俺達の探索者情報を確認した管理局員は俺達に魔法障壁を通過する為の承認魔法アプロバルを発動する。俺達の体に承認魔法の証である異世界文字が浮かび上がったのを確認し、管理局員は口を開いた。

「ここから先は未知の領域。どうかお気を付けて」

「他の探索者達はもう到着してるのか?」

「はい、既にスタート地点に。ダンジョン内でお会いすることもあるでしょう」

 管理局員の説明によると、俺達のいる新宿3丁目が5人、歌舞伎町シネマビルが7人、南新宿駅で6人の探索者がスタートするらしい。武史達やシンは大丈夫だろうか?

「ほら、こういう時にパララもん達が配信してくれてたら無事を確認できるでしょ?」

 得意気にアイルが胸を張る。確かに一理あるか。

「もし配信しているヤツがいれば、そこからモンスターの情報も得られるか」

「でしょ? 休憩の時は私が配信やツェッターで情報集めるからね」

「私も手伝うよ~! SNSから情報集めるの得意だし!」

 気合いを入れるアイルとミナセ。未知のダンジョン攻略もネットでの情報収集が大事か。なんか、時代の変化ってのを感じるな。

「皆さんよろしいでしょうか?」

 局員がそう言った時、クイクイと手を引かれた。振り返るとニコリと笑うアイル。それに、ジークとミナセも何かを期待するように俺のことを見ている。唯一ナーゴだけが、他のメンバーの雰囲気に不思議そうに首を傾げていた。

「はい! みんなビシッとする! じゃ、鎧さん? みんなに一言お願いね♪」

 ミナセが俺にマイクを向けるフリをする。このくだりも懐かしいな。渋谷の時は散々怒られたし、ここはしっかり決めておくか。

 局員に少し待って貰うよう伝え、仲間達の顔を見渡す。

「聞いてくれ。これから挑む新宿迷宮ラビリンスは未開のダンジョンだ。何が待ち受けているのか全く分からない」

 みんな、何も言わずに俺の言葉を聞いてくれている。俺は、深呼吸をして言葉を続けた。

「だが、俺は信じてる。ここにいる一人一人が力を尽くし、協力すれば……必ず攻略できるってよ。だからみんな、俺に力を貸してくれ」

 そう、これは俺がソロでやって来た時とも全く訳が違う。前人未踏の地へと進む本当の冒険なんだ。俺1人でどうにかなると思わないし、思ってはいけない。だからこう言う。力を貸してくれと。

「……と、ちょっとカッコ付けすぎた、か?」


「これよこれ! 461さんも成長したわね~!」
「俺は感動したぞ! 鎧もやればできるじゃないか!」
「ビシッと言われると気合い入るね~!」
「ナーゴもがんばるにゃ!!」


 ふと横を見ると管理局員まで微笑ましいものを見るような顔をしていた。なんか恥ずかしいぞ……。

 しかし、すぐに気合を入れ直す。ここから先は気を引き締めろ。


 「それではただいまより、新宿迷宮ラビリンスの攻略を開始して下さい」


 管理局に促され、俺達は障壁の中へと足を踏み入れた──。



◇◇◇


 障壁の中に入り、地下へと続く階段を降りる。俺達が入ったのは新宿サブナードという地下商業施設。地上からのルートと迷ったが、事前に新宿駅のマップを叩き込んだのは地下からのルートだからだ。ここからJR新宿駅の西口に向かう。

「あれ!?」
「おかしいにゃ!?」

 アイルとナーゴが驚いたような声を上げる。本来であれば地下に潜って直進し、最初の分岐を左折するという最短ルートを考えていた。

 しかし、至る所にレンガ造りの壁が出現しており、直進できなくなっていた。


「うわぁ……渋谷の地下みたいになってるじゃん!」

 ミナセが露骨に嫌そうな顔をする。渋谷の時もかなり苛立っていたしな。出口が分からないタイプは苦手なんだろうな。

「むむむ……壁ばっかだにゃ……これじゃナーゴは役に立てないにゃ……」

「ナーゴは戦闘後の敵の調査から頼む」

 厳密には食えるかどうかの調査。ナーゴにはこれを最優先でやって貰うよう頼んでいる。

「了解にゃ!」

 ナーゴに指示を出した所で最初のモンスターが現れた。人間大のサソリのようなヤツだ。ザベルスコーピオンに似ているがハサミがより大型化されている。進化したヤツか? サソリとの戦闘なら俺の経験からの応用も効くはずだ。

 だが、あくまで慎重に。なにしろ初戦だ。確実に倒せる方法でいこう。

「ミナセは俺とジークに物理攻撃上昇を頼む」

「オッケ~」

 ミナセがクルクルとロッドを回し地面を叩く。俺達の足元に魔法陣が現れ、彼女が物理攻撃上昇魔法インクリィズアタックを発動。俺達は淡い光に包まれた。

「よし。ミナセと俺でヤツのハサミ攻撃を潰す。ヤツが尻尾での攻撃態勢に入ったらジークは継ぎ目を狙ってくれ」

「了解した」

 ジークがバルムンクを構えたタイミングでアイルを振り返る。アイルは既に魔力を溜めていて、左手に速雷魔法ラピッドショックを帯電させていた。指示を出す前に俺の指示を予測していた事に笑ってしまう。

 俺はアイルに頷くと2人と共にサソリへと飛び込んだ。

「シャアアアアアア!!」

 両手のハサミで攻撃するスコーピオン。ヤツの攻撃をラウンドシールドでパリィする。弾かれたハサミにミナセがロッドを叩き付ける。物理上昇した一撃がハサミに亀裂を入れた。

 よし、攻撃上昇していれば甲羅を貫通できるな。

「シャア!!」

 もう一方のハサミでミナセを狙うスコーピオン。アイルが速雷魔法で隙を作り、ハサミの継ぎ目へアスカルオの斬撃を放つ。強化魔法をかけての斬撃で、ヤツのハサミは付け根から切断された。

「シャアアアアアア!?」

 苦しみの声を上げるスコーピオン。ヤツは尻尾を上げ、俺達を攻撃する。

「危ない!」

 想像よりも尻尾攻撃の速度が速い。咄嗟にミナセを突き飛ばし、ラウンドシールドで防ぐ。流石にザベルスコーピオンと同じじゃないか。この速度じゃジークの狙いも定まらないな。

「アイル!!」

「待ってたわ! 発射ショット!!」

 アイルが連続で雷の弾丸……速雷魔法ラピッドショックを発射する。2度の電撃を受けたスコーピオン。ヤツの尻尾が僅かにぎこちない動きになる。その瞬間を狙って、背後からジークが斬撃を放った。

「はぁ!!」

 狙いは胴体と尻尾の継ぎ目。閃光で加速した一撃は、サソリの尻尾を跳ね飛ばす。


「よし! 畳み掛けるぞ!!」


 ……。


 その後、残ったハサミで必死の攻撃を繰り出すサソリを3人で追い詰め、ヤツが魔法を使用する所をアイルの魔法で妨害し、最後は顔面にアスカルオを突き刺してスコーピオンを倒した。

 ヤツの体からレベルポイントの光が溢れ出す。俺達のスマホへと吸収され、アイルのスマホの電子音が鳴った。

『レベルポイントを100pt獲得しました』

「え!? 今のヤツ……サポートの私で100ptも入ったの!?」

 全員の獲得したポイントを見る。俺とジーク、ミナセがそれぞれ200pt。この場にいたナーゴにまで50pt入っている。合計すると750pt。マジか。通常のダンジョンの10倍近くあるんじゃないか?

 今のサソリだけが特別だとは思えない。これは気を抜けないな。

「じゃあ食べられるか調べてみるにゃ~」

 モンスターの死骸をナーゴが調べる。ついでに俺も解体を手伝うことにした。筋肉や体の構造を知っておきたかったから。


 これはヤバそうなダンジョンだな。地上にも強力なモンスターがいそうだ。


 ……。


 ワクワクして来たぜ。




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