461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第150話 シン、少女と出会う。

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 ~探索者 シン~

 僕のスタート地点は新宿歌舞伎町、シネマビルの前だった。

 信号を渡ると、ビルの上に黒い怪獣の顔が見えて心臓が止まりそうになる。目を凝らすと、怪獣の顔のモニュメントがビルの上に設置されている。ダンジョン周辺地区だから一瞬モンスターだと思ったよ……良かった。

 ビルのふもとまで歩いていく。そこでは管理局員が1人と、6人のソロ探索者達がたむろしていた。中でも鯱女王は異彩を放っている。なんだあのガスマスクみたいな装備? ただでさえ威圧感あるのにあんなの付けてたら話しかけられないよ。

 他の探索者達を見ると急に実感が湧いてくる。いざ新宿を目の前にすると不安になるな……。

 落ち着け、お前ならやれる。管理局の担当もそう言ってくれただろ?

 自分を落ち着かせていると、肩を叩かれる。振り返ってみると僕と同じ年くらいの女の子が立っていた。ゴスロリ服を着ていて、ロングヘアーの女の子。人形のように整った顔のすごく可愛い子だった。

「君も新宿迷宮に行くんだよね?」

「え? あ、うん……」

 なんだ? すごくフレンドリーに話しかけられたんだけど。

「君、ランクは?」

「Cランクだけど……」

「なんとなくそれくらいな気がしたの。あの、良かったら……」

 恥ずかしそうな顔をした彼女が何かを言おうとした時、シネマビルの前にいた局員が声を上げた。局員の足元にあるスピーカーから大きな声が響く。

『今から説明を行いますのでこちらへ』

 管理局員の声で女の子が黙ってしまう。何を言おうとしたのか聞こうと思ったが、まずは説明を聞かないと。僕と彼女は管理局員の方へと近付いた。

『5、6、7名……はい、全員揃っておりますね。説明が終わりましたら各自の判断で旧都庁展望台を目指すようお願いします』

 管理局員が注意事項を説明する。内容は簡単な物だった。ダンジョンを覆う魔法障壁へ入った後は全て自己責任。ただし、探索者同士の協力やパーティを組むことは自由らしい。最後に質問があるかを問われると、探索者の1人が手を上げた。

「都庁の展望台は北と南2つあったはずだ。どちらに向かえばいい?」

 そうだ、確か展望台は2つあるってネットに書いてあったな。

『その選択も含めての攻略となります』

「片方ハズレなのかな」

 ゴスロリ女の子がポツリと呟く。苦労した先がハズレとか嫌だな。僕は絶対にボスを倒さなきゃいけないのに……選択は慎重にしないと。

『それでは魔法を発動します』

 管理局員が「承認魔法アプロバル」を発動する。僕達の体に、魔法障壁を突破できる資格である異世界文字が刻まれた。

「この文字久しぶりだな。カッコいい」

 ゴスロリ女の子の声でつい横を見てしまい、反射的に顔を逸らす。彼女の胸元に刻まれた承認魔法の印。彼女はそれを確認する為か胸元を大きく開いてその文字をジッと見つめていた。

「? どうしたの?」

「なんでもない!」

 無防備すぎだって……。

 顔が熱くなる。赤くなってないよな? 胸元見てたなんて思われたら恥ずかしすぎる。

「お、君達はランクの低い探索者か?」

 先程質問していた男の人に話しかけられる。がっしりした体格に使い込まれた鎧。だけどしっかりと手入れはされている。それだけで実力があるの人なのだと分かった。

「はい、Cランクです」

「私も」

 あ、この女の子もCランクだったんだ。だから話しかけて来たのか? 僕ってそんなに低ランクオーラ出してるかなぁ。

「すまない、さっきの会話が聞こえてな。あんまり無茶はするなよ」

「き、気を付けます」
「分かりました」

 女の子と同時に返事してしまう。男の人に肩をバンバンと叩かれる。なんか優しそうな人だな。試験の時にいた人達よりもずっと協調性がありそうだ。

「俺は志村って言うんだ。一応A級。もしダンジョン内で危なくなったら声をかけてくれ」

「ありがとうございます!」

「じゃあな。お互いがんばろうな」

 志村さんに頭を下げる。他の探索者達からも「がんばれ」とか、「ヤバそうなら引き返せよ」といった声をかけられる。男の人も女の人もみんな優しそうで、すごく強そうだ。

『それではよろしいでしょうか? 新宿迷宮攻略を開始して下さい』

 管理局員の声とほぼ同時に鯱女王がスキルを発動して魔法障壁の中へと突入する。それを追うように探索者達が魔法障壁の中へと入っていき、あっという間に探索者は僕とゴスロリ女の子だけになってしまった。

「残されちゃったね。私達も行こうよ」

 女の子が僕の手を取ってグイグイと引っ張って来た。

「え、なんで引っ張るの?」

「さっき言おうとしたこと。即席パーティ組も? C級同士だしさ、協力しようよ」

「だって今出会ったばかりだし、君の名前も知らないし……」

「名前? 私はタルパマスター。タルパかタルパちゃんでいいよ。君の名前は?」

「し、シン」

「シンくんだね。私とパーティ組むのは嫌?」

「なんで僕なんか誘うのさ?」

 オーヴァルさんに追放されたことを思い出す。僕がいると誰かに迷惑かけそうだし……。

「その顔」

「え?」

「不安でしょ? 私も不安。だからさ、お互いフォローしたらちょっとでも先に進める……そう思わない?」

 その言葉にハッとする。確かにそうだ。僕は選べるような立場じゃない。オーヴァルさんのパーティに入ろうとしたのはどうしても新宿迷宮を攻略したかったからだ。

 ……。

「うん、君とパーティ組むよ」

 申し出を受けると、彼女は嬉しそうな顔をした。

「ふふっ。じゃあ行こっ!」

 タルパマスターと名乗る女の子に手を引かれて、僕は障壁魔法の中へと入った。




◇◇◇

 魔法障壁の中は別の世界が広がっていた。新宿の街並みに、所々石造りの建造物が融合したような不安定な世界。先程まで広がっていた青空は消え、うだるような暑さからひんやりとした気候へ。霧が出ているのか、遠くの景色はぼんやりとしていた。

「涼しい~。これなら攻略も快適そう」

 タルパちゃんがゴスロリ服のスカートをパタパタと払う。暑かったんだろうな。真っ黒だし。

 彼女の様子を見ていると、遠くからジャリっと足を踏み締めるような音が聞こえた。

 音の方を見る。石造りの壁とビルが融合した建物からリザードマンが3体。僕らの方へと走って来ていた。

「グルルルルゥゥゥ!!!」

「うわぁ!? いきなりモンスターが出た!」

 走って来るリザードマン達に一瞬逃げそうになってしまう。それを自分の頬を叩いて止めた。

 何やってるんだ僕は! 自分で新宿に挑むって決めただろ! それに……。

 チラリと横を見る。そこには敵を見つめるタルパちゃんが。

 女の子を残して逃げるなんて最低すぎる。ここは僕がなんとかするんだ。

「……下がって。僕がなんとかするから」

「え? いいよ私も」

 戸惑うタルパちゃんの言葉を遮って腰のダガーを引き抜く。やるぞシン……お前はこんな所で死ぬヤツじゃない。そうだろ? 自信を持て。お前のスキルを信じろ。

 敵を見る。3体とも刃こぼれしたロングソードに革の盾の装備。

 奴らの中に魔法職はいない。落ち着け。落ち着けば大丈夫、お前でもやれるはずだ。

「うわあああああ!!!」

「あ!? ちょっと!」

 ダガーを握り締めて3体のリザードマンへと走る。ヤツらは、僕を取り囲むように散開した。

 まずは正面のヤツだ。ヤツを倒したらすぐに動く。いいかシン。人型のモンスターは知能が高い。反面、人と同じ弱点を持つ。ヤツらはお前を侮っている。そんなお前に仲間がやられたのなら必ず思考停止に陥るはずだ。

 内なる声に従い正面のリザードマンに狙いを定める。他のことを考えるな。今はヤツを仕留めることだけ考えろ。

「グルアアアアアア!!!」

 ロングソードを薙ぎ払うリザードマン。その剣へと向かってまっすぐ突っ込む。

「危ないっ!?」

 タルパちゃんの声が聞こえる。心配してくれてるのかも……だけど大丈夫。僕には「幸運」のスキルがあるから。

 ヤツの切先が当たる寸前……スキル「幸運」が発動する。何かの力に僕は脚を取られ、盛大に地面へと倒れ込んだ。

「だ、大丈夫!?」

「大丈夫だから!」

 痛い。だけどそのまま地面を転がってリザードマンの懐に飛び込む。攻撃が外れて面食らったのか、リザードマンが目を大きく見開く。急いで立ち上がり、ヤツの喉元にダガーを突き刺した。

「グギャアアアァァァァ!?」

 勢いに任せてリザードマンを押し倒す。

「食らえ!!」

 連続でその首筋にダガーを突き刺した。

「グギャア、あ……」

 パタリと地面に落ちるリザードマンの腕。溢れるレベルポイントの光。周囲のリザードマンは困惑したように顔を見合わせた。

 次だ。行け。

 心の声を合図に片方のリザードマンに全力で走る。

「ぐ、グア!!」

 焦ったリザードマンがめちゃくちゃに剣を振り回す。このまま突っ込めば八つ裂きにされそうだ。

 信じろ。お前ならやれる。お前なら……っ!

 剣を振りかぶった手が一瞬だけピタリと止まる。再び幸運が発動したのだと分かる。これで僕の邪魔をする物は無くなった。

「グア?」

 剣を振り下ろせないことでリザードマンが間抜けな声を上げる。

「お前も倒してやる!!」

 生まれた隙でリザードマンへ飛びかかり、その首筋にダガーを深々と突き刺した。

「グアアアアアっ!?」

 よし、レベルポイントの光が溢れてる。もう1体も──。

 そう考えた時、腹部に衝撃が走る。

「ごふっ……っ!?」

 吹き飛ばされて地面に転がる。見ると、最後のリザードマンが先程まで僕がいた場所に立っていた。

「思ってたより速い……!?」

「グァ!! グァ!!!」

 最後のリザードマンが怒り狂い、飛びかかりながら剣を構えた。

「……っ!?」

 またリザードマンの手が一瞬止まり、その隙に体を捩ってヤツの剣撃を避ける。しかし、すぐさま2撃目が放たれる。さっきの衝撃で体が上手く動かない。マズイ……っ! いくら運が良くても回避できなかったら……。

 焦るな。焦らなければ問題無い。お前のスキルを信じろ。

 内なる声が言い聞かせようとするけど、そんなの無理だよ。こんな状況じゃ……っ!?

「グギャギャギャ!!!」

 奇声を上げながら振り下ろされる切先。思わず目を閉じてしまったその時、タルパちゃんの声が聞こえた。
 

夢想魔法レヴァリエ


 魔法名? 聞いたことない魔法だ。

 そう思った直後、リザードマンの頭上に小さな魔法陣が無数に浮かび、その一つ一つからクマのぬいぐるみが飛び出した。

「ギャ!?」

 1体のぬいぐるみが弾丸のように発射され、リザードマンに直撃する。リザードマンがよろけた瞬間、無数のぬいぐるみがリザードマンに発射され、リザードマンは吹き飛ばされてしまった。

「グギャアアアアアア!!?」

 ヤツが地面に転がった後もぬいぐるみはリザードマンに撃ち続けられ、リザードマンの上に山になっていく。やがてヤツは見えなくなり、大量のぬいぐるみの中からレベルポイントの光が現れた。

「はぁ……はぁ……い、今のタルパちゃんがやったの?」

「私の魔法、想像した物を具現化できるの。今のは重くしたぬいぐるみをレールガンで射出したイメージをしてみたよ」

 足元に転がってきたぬいぐるみを手に取ると、彼女の言う通り、石でも詰まっているのかというくらい重かった。

 そのぬいぐるみは、彼女が手を叩くと煙のように消えてしまった。

 本当にイメージを実体化していたのか。むちゃくちゃだ……こんな魔法があるなんて……。

 タルパちゃんが差し伸べた手を取って立ち上がる。

「だからシンくんは無理に守ってくれなくて大丈夫。協力して先に進も?」

 タルパちゃんがふっと笑みを浮かべる。この子、めちゃくちゃ強いじゃん……。

 彼女を守ろうと飛び出したことが、急に恥ずかしく思えてきた。





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