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第152話 異変。
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~ジークリード~
順調に探索が進めていたのは初日までだった。翌日、飲食店で一泊した俺達はさらに奥へと進んだ。
進むにつれて商業施設の趣は消え去り、完全に異世界製の石造りの壁一面に覆われた空間に出る。
そこは不思議な雰囲気がある場所だった。静まり返って誰かに見られているような雰囲気をもつ通路。妙な気持ち悪さがある場所だ。
「……視線のようなものを感じるな」
「ちょっと! カズ君驚かせないでよ!」
「ここは安心させる所でしょ!?」
「ホントにゃ! 乙女心が分かって無いにゃ!」
ミナセ達が一斉に怒り出す。乙女心? そんなにひどいことを言っただろうか……?
助けを求めるように鎧を見たが、鎧は周囲の調査に集中しており、俺は女性陣の不満を一身に受け止めることとなってしまった。
……。
複雑になっていく通路をさらに進んだ頃、鎧がスマホを取り出した。何をするのかと思っていたら、スマホの機能である筆記魔法を発動していた。
そのままスマホを壁にかざして「5」と数字を刻んでいる。入り口からずっと数字を付けていたのか。
「目印か?」
「一応な。気になることがあってよ」
……。
途中現れたモンスターを倒し、行き止まりに当たれば引き返して別の道を行く。
スマホで時間を確認する。もう昼前か……。
早朝から探索したのに先に進んでいる実感が全くと言って無い。
……。
本当に出口などあるのかと不安が強くなった頃、やっと大きな門へと辿り着いた。俺達に訪れる安堵。これでこの迷路も終わりなのだと思い、扉を開けるとそこには──
──また、薄暗い通路が続いていた。
先ほどと同じように薄暗い通路が俺達を飲み込むようにポッカリと口を開いている。それを見た瞬間、ミナセが喚き出した。
「もおおおおおお!!!! なんなのこれ!!」
大人しく後をついて来ていたミナセだったが、とうとう我慢の限界に達したようで、ロッドをめちゃくちゃに振り回し始める。
「おい! 危ないだろミナセ!」
「カズ君は平気なの!? 通路は狭い!! 薄暗い!! モンスターばっかり!! こんな所にずーっといたら頭おかしくなっちゃうよ!!!」
周囲に金属音が響く。幸いモンスターは寄って来ていないが……このままだとミナセの精神が不味そうだな。
「み、ミナセさん落ち着いて……」
「うわ~ん!! アイルちゃん~!!!」
ミナセが子供のように天王洲に抱き付いた。これではいつものミナセと真逆だな……。
ミナセは九条商会にいた頃ダンジョンに放り込まれて長期間過ごしたことがある。もしかしたら、そのトラウマを思い出してしまったのかも……。
おいおいと泣く彼女の背中を撫でる。なんと声をかけていいか迷っていると、ナーゴがカラカラと鳴る缶を出した。その中から飴のような物を取り出し、ミナセに渡す。
「ミナセちゃんはこれを食べるといいにゃ」
「ひぐ……っ。何これ?」
「レモンバームのエキスを入れた飴だにゃ。異世界産の食材ではないけど、不安な気持ちを緩和してくれる効果があるにゃ」
「ありふぁとう……」
礼を言う前に既にミナセは飴を口に含む。今まで黙っていた天王洲が急に大声を上げた。
「わーんナゴえもん~! モモチーにいじめられたよー!!」
「しょうがないにゃあアイル君は~! って何やらせるにゃ!!」
天王洲とナーゴがワイワイと騒ぐ。ふざけているように見えるが、彼女達なりにミナセのことを気遣ってくれたのだろう。そのおかげか、ミナセの顔色が少しだけ良くなった。
「2人とも……ありがとね。カズ君も」
天王洲がミナセを見て笑みを浮かべる。仲間想いのヤツだ。ここを抜けたら礼をしないとな……。
「でもミナセさんの気持ちも分かるわ。何だか雰囲気も異様だしね」
「ずっと同じような景色だしにゃあ」
ふと鎧を見ると彼は扉の先の通路へ進んで壁を調べていた。鎧の元へと駆け寄り、何を見ているのかと覗き込んで見る。
そこには……筆記魔法の赤い文字が刻まれていた。壁に刻まれた赤い文字。それが薄暗い中で眩しく光っていた。
「筆記魔法? なぜ未開のダンジョンにそんな物が……」
「違うぜジーク」
鎧が赤い文字をなぞる。書かれているのは「1」と数字が書かれている。これは、鎧が付けていた目印……か?
「……先に進もう。確かめるしかねぇな」
疑問を抱えたまま、俺達は先へ進んだ。
◇◇◇
その後、扉の先へと進み、付けた目印を頼りにさらに奥へ。それで分かったことは、扉の先は俺達の進んだ道そのものだということだった。
「どういう事なのヨロイさん? なんで同じ迷路が……」
「これは……ループ空間だな。前に武史の清澄白河の話を聞いたよな? それと同じ悪夢の重装騎士の仕業だ」
「なんで断定できるのにゃ?」
ナーゴが不思議そうに首を傾げる。鎧は声を潜ませるように言った。
「俺の勘だ。対象をループさせる能力持ちなんてそうそういないからな」
……勘か。普通なら当てにならないような物だが、鎧が言うなら信じられる。鎧がダンジョンに関して適当なことを言うとは思えない。きっと言葉にしていないだけで彼の中で確信に至るロジックがあるのだろう。
悪夢の重装騎士と聞いて、天王洲が困ったような表情を浮かべる。
「アレって……モンスターを見つけたら引き返すってヤツでしょ? こんな広い迷路で引き返すってどこに引き返せばいいの?」
「悪夢の重装騎士は個体によって条件が違う。このループ空間を出るには別の条件を見つけないとダメだ」
「そ、そんなぁ……ヒント無しでどうやって見つければいいのよ!?」
焦った声を出す天王洲。しかし、鎧はそんな彼女とは対照的に落ち着いた様子で言った。
「安心しろ。手品の種が分かれば何とかなる。前にウォタクってヤツのサイトを見せてくれたろ? もう一回見てみろよ」
「ウォタクさんのサイト……?」
天王洲が困惑した様子でスマホを開く。その画面を鎧以外の全員が覗き込んだ。画面に映るダンジョン攻略情報サイト。そこにはモンスター情報が記されていた。
悪夢の重装騎士
幻影騎士から進化したボスモンスター。悪夢領域を展開し、その領域を支配する。領域内はループ空間となっている。閉じ込められた者が脱出する寸前や油断したタイミングで現れ、獲物を捕食する。
悪夢領域は特殊な手順に沿わないと脱出できない。手順は個体により異なる。また、見たことがあるものへ擬態することがある。注意が必要。
「これがどうしたんだ?」
「ジークも最初から分かってるんじゃねぇか?ここのヤツは清澄白河の個体よりも間抜けみたいだぜ?」
「間抜けとはどういうことだ?」
俺の質問には答えず、鎧は大きく伸びをした。
「ま、みんな疲れてるだろ? とりあえず一旦休憩しようぜ。コイツの攻略法ってヤツを教えてやるよ」
鎧は、能天気な声を出した。
順調に探索が進めていたのは初日までだった。翌日、飲食店で一泊した俺達はさらに奥へと進んだ。
進むにつれて商業施設の趣は消え去り、完全に異世界製の石造りの壁一面に覆われた空間に出る。
そこは不思議な雰囲気がある場所だった。静まり返って誰かに見られているような雰囲気をもつ通路。妙な気持ち悪さがある場所だ。
「……視線のようなものを感じるな」
「ちょっと! カズ君驚かせないでよ!」
「ここは安心させる所でしょ!?」
「ホントにゃ! 乙女心が分かって無いにゃ!」
ミナセ達が一斉に怒り出す。乙女心? そんなにひどいことを言っただろうか……?
助けを求めるように鎧を見たが、鎧は周囲の調査に集中しており、俺は女性陣の不満を一身に受け止めることとなってしまった。
……。
複雑になっていく通路をさらに進んだ頃、鎧がスマホを取り出した。何をするのかと思っていたら、スマホの機能である筆記魔法を発動していた。
そのままスマホを壁にかざして「5」と数字を刻んでいる。入り口からずっと数字を付けていたのか。
「目印か?」
「一応な。気になることがあってよ」
……。
途中現れたモンスターを倒し、行き止まりに当たれば引き返して別の道を行く。
スマホで時間を確認する。もう昼前か……。
早朝から探索したのに先に進んでいる実感が全くと言って無い。
……。
本当に出口などあるのかと不安が強くなった頃、やっと大きな門へと辿り着いた。俺達に訪れる安堵。これでこの迷路も終わりなのだと思い、扉を開けるとそこには──
──また、薄暗い通路が続いていた。
先ほどと同じように薄暗い通路が俺達を飲み込むようにポッカリと口を開いている。それを見た瞬間、ミナセが喚き出した。
「もおおおおおお!!!! なんなのこれ!!」
大人しく後をついて来ていたミナセだったが、とうとう我慢の限界に達したようで、ロッドをめちゃくちゃに振り回し始める。
「おい! 危ないだろミナセ!」
「カズ君は平気なの!? 通路は狭い!! 薄暗い!! モンスターばっかり!! こんな所にずーっといたら頭おかしくなっちゃうよ!!!」
周囲に金属音が響く。幸いモンスターは寄って来ていないが……このままだとミナセの精神が不味そうだな。
「み、ミナセさん落ち着いて……」
「うわ~ん!! アイルちゃん~!!!」
ミナセが子供のように天王洲に抱き付いた。これではいつものミナセと真逆だな……。
ミナセは九条商会にいた頃ダンジョンに放り込まれて長期間過ごしたことがある。もしかしたら、そのトラウマを思い出してしまったのかも……。
おいおいと泣く彼女の背中を撫でる。なんと声をかけていいか迷っていると、ナーゴがカラカラと鳴る缶を出した。その中から飴のような物を取り出し、ミナセに渡す。
「ミナセちゃんはこれを食べるといいにゃ」
「ひぐ……っ。何これ?」
「レモンバームのエキスを入れた飴だにゃ。異世界産の食材ではないけど、不安な気持ちを緩和してくれる効果があるにゃ」
「ありふぁとう……」
礼を言う前に既にミナセは飴を口に含む。今まで黙っていた天王洲が急に大声を上げた。
「わーんナゴえもん~! モモチーにいじめられたよー!!」
「しょうがないにゃあアイル君は~! って何やらせるにゃ!!」
天王洲とナーゴがワイワイと騒ぐ。ふざけているように見えるが、彼女達なりにミナセのことを気遣ってくれたのだろう。そのおかげか、ミナセの顔色が少しだけ良くなった。
「2人とも……ありがとね。カズ君も」
天王洲がミナセを見て笑みを浮かべる。仲間想いのヤツだ。ここを抜けたら礼をしないとな……。
「でもミナセさんの気持ちも分かるわ。何だか雰囲気も異様だしね」
「ずっと同じような景色だしにゃあ」
ふと鎧を見ると彼は扉の先の通路へ進んで壁を調べていた。鎧の元へと駆け寄り、何を見ているのかと覗き込んで見る。
そこには……筆記魔法の赤い文字が刻まれていた。壁に刻まれた赤い文字。それが薄暗い中で眩しく光っていた。
「筆記魔法? なぜ未開のダンジョンにそんな物が……」
「違うぜジーク」
鎧が赤い文字をなぞる。書かれているのは「1」と数字が書かれている。これは、鎧が付けていた目印……か?
「……先に進もう。確かめるしかねぇな」
疑問を抱えたまま、俺達は先へ進んだ。
◇◇◇
その後、扉の先へと進み、付けた目印を頼りにさらに奥へ。それで分かったことは、扉の先は俺達の進んだ道そのものだということだった。
「どういう事なのヨロイさん? なんで同じ迷路が……」
「これは……ループ空間だな。前に武史の清澄白河の話を聞いたよな? それと同じ悪夢の重装騎士の仕業だ」
「なんで断定できるのにゃ?」
ナーゴが不思議そうに首を傾げる。鎧は声を潜ませるように言った。
「俺の勘だ。対象をループさせる能力持ちなんてそうそういないからな」
……勘か。普通なら当てにならないような物だが、鎧が言うなら信じられる。鎧がダンジョンに関して適当なことを言うとは思えない。きっと言葉にしていないだけで彼の中で確信に至るロジックがあるのだろう。
悪夢の重装騎士と聞いて、天王洲が困ったような表情を浮かべる。
「アレって……モンスターを見つけたら引き返すってヤツでしょ? こんな広い迷路で引き返すってどこに引き返せばいいの?」
「悪夢の重装騎士は個体によって条件が違う。このループ空間を出るには別の条件を見つけないとダメだ」
「そ、そんなぁ……ヒント無しでどうやって見つければいいのよ!?」
焦った声を出す天王洲。しかし、鎧はそんな彼女とは対照的に落ち着いた様子で言った。
「安心しろ。手品の種が分かれば何とかなる。前にウォタクってヤツのサイトを見せてくれたろ? もう一回見てみろよ」
「ウォタクさんのサイト……?」
天王洲が困惑した様子でスマホを開く。その画面を鎧以外の全員が覗き込んだ。画面に映るダンジョン攻略情報サイト。そこにはモンスター情報が記されていた。
悪夢の重装騎士
幻影騎士から進化したボスモンスター。悪夢領域を展開し、その領域を支配する。領域内はループ空間となっている。閉じ込められた者が脱出する寸前や油断したタイミングで現れ、獲物を捕食する。
悪夢領域は特殊な手順に沿わないと脱出できない。手順は個体により異なる。また、見たことがあるものへ擬態することがある。注意が必要。
「これがどうしたんだ?」
「ジークも最初から分かってるんじゃねぇか?ここのヤツは清澄白河の個体よりも間抜けみたいだぜ?」
「間抜けとはどういうことだ?」
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