461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第158話 逃走。

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 ~タルパマスター~

「グア! グア!」
「グアアアアアアアア!!!」

 7階で巡回していたリザードマン達に見つかってしまう。追いかけて来る2体のリザードマン。ヤツらの声が聞こえたのか、下の階からもリザードマン達が集まって来た。

「くっ……!」

 階段を飛び降りて夢想魔法レヴァリエを発動。床に大きな熊のぬいぐるみを出してそこに着地する。転がり降りると、ぬいぐるみにリザードマン達の足止めをするよう指示を出した。

 大きなぬいぐるみは、両手を開いてエスカレーターに立ち塞がった。振り返ると、リザードマン達の槍がぬいぐるみを貫いているのが見える。それを見た瞬間、私を逃してくれたシンくんの背中が脳裏をよぎってしまう。

「うっ……」

 視界がジワリと滲み、右手の袖で涙を拭う。泣くな、シンくんが頑張ってるのに何を……。

「グアアアアアアアア!!」

 自分に言い聞かせていた時、突然リザードマンの声が聞こえた。嫌な予感がして飛び退くと、弓矢が目の前を通り過ぎた。

 弓!? 飛び道具まで使うの……っ!?

 後ろを振り向くとリザードマン達が増えている。5、6、7体……ダメだ。私1人で戦うには多すぎる。

 後ろに手を翳してもう一度夢想魔法を発動。大量のぬいぐるみをヤツらに発射する。石のように重くしたぬいぐるみを2体のリザードマンに直撃させる。しかし、残りの5体はすぐに物陰に身を隠して弓矢を放って来た。

「くっ!?」

 1本の弓矢が二の腕を掠めて痛みが走る。歯を食い縛って階段を飛び降りる。着地と同時に転がって衝撃を殺し、次の階段へ。

 背後にぬいぐるみを発射しながら走り抜けると、ヤツらとの距離が開いた。その隙に一気にエスカレーターを駆け降りて駅構内に続く出口へ。ガラス扉を開けると、すぐ右手に「JR新宿駅」と書かれた緑の看板。その先は地下に続く階段があった。

 新宿駅周辺の地図はパソコンで調べた時に見た。地下街サブナードとの連絡通路に行けばきっと……東口の地下通路と地下街サブナードは繋がってる。地下を攻略してる人がいれば、きっといるはず。

 自分を奮い立たせる為に頬を叩いて一気に階段を駆け降りた。

 新宿駅地下を走る。地図を見た時のおぼろげな記憶を頼りに右へ曲がり、再び全力で走る。

 走っていると、また目頭が熱くなってしまう。

 私のせいだ。私が無茶な頼みをしてシンくんを巻き込んだから……。

 情けなくなってくる。何が捕まった人達を助けたいだ……。あんなの、他の探索者達を見捨てる覚悟も無いのに綺麗事言って……シンくんの方がずっと考えてくれてた。

 私達の実力も分かってて、それでもシンくんは私の意見を尊重してくれたんだ。

 その上、助けてもらって1人だけ逃げて……本当、私はみんなからバカにされてた時から何も変わってなくて……使えるように鍛えた夢想魔法もラムルザには全く通じなかった。

 私は……私は……。

 自分を責める声を振り払うように走る。


 地下を走り抜ける。


 突然、通路の影からモンスターが現れた。1メートルほどあるスズメバチのようなモンスター。すぐに魔法を放つ。重くなったぬいぐるみがハチに直撃する。壁に叩きつけられたハチは、グシャリという音と共にレベルポイントの光を溢れさせた。

 しかしその直後、通路の影から10体のハチが現れた。

「嘘……っ!?」

 よく見ると、ハチの触覚のようなものが倒された仲間の方を向いていた。

 アイツら……仲間が死んだことを感知できるの!?

「ブブブッ!!!」


 振り返ると後ろにもハチ型モンスターが飛んでいた。逃げ場が無い。失敗した……あの1体目は倒しちゃダメだったんだ。

 囮……その言葉が頭をよぎる。


「ブブブブブブ!!!!」


 襲いかかって来るハチ達の攻撃を転がって避けて、魔法を放つ。盾になる大きな熊ぬいぐるみを4体召喚。その隙間から手を伸ばして小さな熊ぬいぐるみを発射して攻撃する。

 しかし、2匹のハチに攻撃を突破されてしまう。ハチ達は、盾にしているぬいぐるみに飛び付いてガリガリと顎で削り始めた。

 あまり長くは持たない。どうしたら……!?

 そう思った瞬間、首筋に痛みが走る。振り返ると空中を飛んでいたハチが尻尾の先端を私に向けていた。

「ブブッ!!」

 ハチが尻尾から小さな針を発射する。咄嗟に地面に伏せてそれを避けた。

 首筋を触ると針のような物が首に刺さっていた。攻撃を受けてしまった……!? マズイ、早く全部倒さないと……。

「夢想魔──」

 魔法名を告げようとした瞬間、視界がグニャリと曲がる。嘘……もう、毒、が……。

 立ち上がろうとしてもバランスを崩して倒れてしまう。私を守っていたぬいぐるみ達が霧のようにかき消えた。次の瞬間、周囲にいたハチ達が私を取り囲む。ハチ達がその顎をカチカチと鳴らす音が聞こえた。

「ギギギ」

 ダメだ……ダメだ! シンくんが、待ってる、のに……。

 体を起こそうとして倒れてしまう。立たないといけないのに。
 
 助けたい……シンくんを。まだ1日しか経ってないんだよ? 仲間ができて、ここを出たら本当のパーティになろうって約束、したのに……。

 起きなきゃ。起きなきゃいけないのに。

 立ち上がろうとして地面に倒れてしまう。受け身も取れずに床に顔をぶつけて痛みに襲われる。

 どうして私はこんなに弱いの!! 助けたい人も助けられないの!?

 シンくんは私のスキルツリーを見ても笑わなかったんだ! 私と仲間になりたいって言ってくれたんだ!

「ああああああああ!!!」

 上手く話せない。体が動かない。悔しくて悔しくて涙が流れる。言葉にならない想いを、ただハチ達に向かって叫んだ。


「ギギギ」
「ギィギギ」


 ハチ達が目の前にやって来る。私が声しか出せないってアイツら分かってる。


 ごめん……シンくん、ごめんなさい。私のせいで。


 ……。


 お願いです。


 お願いします。


 誰か助けて下さい。


 シンくんを助けて下さい。私の仲間になる人なんです。私のこと、笑わずに真っ直ぐ見てくれた人なんです。


 何でもしますから、お願いします。


「ギギ」

 ハチが大きく口を開ける。私、死ぬの?


 誰か……。
 

 その時。
 

 ハチの顔に剣が突き刺された。


「オラァ!!!」

「ギィイィィィ!!?」


 ハチが悲鳴を上げる。地面を転げ回るハチは、足で踏み付けられてグシャリと潰れた。


「ジーク、ミナセ! 飛行モンスター戦術で行くぞ!!」


 目の前で鎧姿の人が指示を出す。すると、白銀色のスーツを着た男の人と白いマントに金のロッドを持った女の人がハチの群へと飛び込んでいく。

 その様子を見守りながら、ツインテールの女の子が杖に魔力を溜めていた。みんな見たことがある人ばかりだ。確か……ハンターシティにも……。

「大丈夫かにゃ!?」

 猫の着ぐるみを着た人に抱えあげられる。鎧の人がやってきて、私のまぶたに指を当てて目を覗き込む。

「瞳孔が開いている……麻痺反応の1つだ。奴らはジガルビーの亜種らしいな」

「ジガルビーにゃ?」

「獲物を麻痺させて生きたまま食らうモンスターだ。ナーゴ、アンチパラリス麻痺治療薬出してくれ」

「了解にゃ!」

 ナーゴと呼ばれた着ぐるみがゴソゴソと鞄を漁る。鎧の男の人が私の顔をもう一度覗き込んだ。

「もう大丈夫だ。安心しろ」

 低い声。だけど優しい声。ずっと抱いていた焦燥感と不安が消えていく。この人達ならきっと助けてくれる。初めてあった人達なのに、なぜかそう思えた。


 見つけたよシンくん……。


 絶対、この人達を連れて戻るから……もう少しだけ、待ってて。




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