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第164話 リレイラの新装備
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~リレイラ~
──東京都千代田区霞ヶ関。ダンジョン管理局本部。
「はぁ……はぁ……」
シィーリア部長の部屋に向かう。後輩のサラに呼び止められるが、それを適当な理由で躱して部長の部屋へ。ノックを3回、部長の声が聞こえた瞬間、急いで部屋に入った。
「部長!! し、新宿に……」
シィーリア部長は人差し指を口元に当ててから手招きした。彼女に着いて奥の扉に入る。その先の部屋で部長が金庫を開け、中から箱を取り出した。なんだあの箱は? なぜ部長はこんな金庫なんかに……。
「ついて来るのじゃ」
「は、はい」
部屋から出て廊下へ。そこからさらに進んで非常扉を出ると、外の街並みが見えた。避難用の階段。彼女はそこに腰を下ろすと私を横目で見た。
「お主、仕事をサボってアイルとヨロイの配信を見ておったじゃろ」
「う……!? そ、そうですが、それどころじゃ……っ!」
「良い。妾も見ておった。何せあの新宿なのじゃから」
シィーリア部長も見ていた? なら、話が早い。
呼吸を整えながら本題に移る。
「新宿に、竜人が現れました」
「ああ。魔法障壁にも異常を検知した。竜人どもが魔法障壁を発動したようじゃ」
その報告メールも確認した。なんとかして探索者達に情報を送らないと彼らの命が……。
部長がすごく悲しそうな顔をする。
「軍から聞いていた新宿迷宮の内容……それは妾達の世界で最難関と言われたダンジョン、悪夢の迷宮だったはずじゃ」
「はい。でも、あれは全く違う物です」
そう、事前に聞いていた情報では悪夢の迷宮だった。探索者達の間で新宿は未開のダンジョンと言われていたが……管理局はおおよその概要だけは軍から伝えられていた。初回攻略完了まで決して詳細を口外してはならないという規定で。
この世界にダンジョンを出現させてから軍は何度も新宿の魔法障壁内へ調査を送っている。その報告書でも「悪夢の迷宮」と確かに書かれていたはず……先ほど過去の報告書を漁ったが、それは全てデータベースから消去されており、今では確認すらできないが。
「軍め、ダンジョンではなく竜人の住まう地域を新宿に転移させておった。今ヨロイ達がいるのは、妾達の世界そのものと言っても過言ではない」
竜人はモンスターではない。魔族と同じ、私達の世界「ルガトリウム」の住人、亜人種の1つだ。
魔族には及ばずともその魔力量、身体能力……全てがこの世界の人間を凌駕している。そんな者達とまともに戦ったら……。
シィーリア部長がぼんやりと街を見つめる。
「妾の知っている魔王様は同族を騙すようなことは決してされないはずじゃ。なぜ、こんなことに……」
シィーリア部長はぶつぶつと独り言を呟く。彼女からビル群へと視線を移す。
私達の目的はダンジョン攻略の情報を集めることだ。その為にはこの世界の探索者にダンジョンへ挑み続けて貰わなければならない。こんな……こんな……イタズラに人を死なせるようなことをする意味が、私には分からない。
「クソッ」
魔王様や軍はこの世界のみんなのことをなんとも思っていないのか!? なら、私達は何の為にいるんだ? 人に寄り添い、サポートする。それが私達の役目のはず。当然、個々によって考えは違うだろうけど……でも、少なくとも、ダンジョン管理局が設置されたのはその為だと、私は思う。
「妾が知っておれば、この12年でもっと探索者を育て、万全の状態で挑ませたのじゃ」
「部長。私は彼らを死なせたく、ないです……」
しかしどうすればいい? 私が彼らに直接助言することはできない。ウォタクのアカウントを使って私達の世界の情報を全面に出せば必ず怪しまれ、特定されるだろう。そうなったら私は……最悪殺されるかもしれない。
「お主が何を考えておるのか分かっておる。だからここに連れて来た」
「え?」
シィーリア部長はゆっくりと顔を上げた。そして、私にしゃがむように言うと真っ直ぐ私の眼を見つめた。
「リレイラ。妾はお主のことを信用しておる。そして、妾と同じく人の子を想う者だと信じておる。だからこそこれを託そう。妾しか存在を知らぬ物を」
部長が先ほどから持っていた箱を差し出して来る。
「これは……」
箱を受け取って開ける。そこには黒い板状の機器が入っていた。
「タブレット端末?」
「お主も使っておるタブレット端末。その次世代型試作機じゃ」
試作機? そんな物使って何を……。
「この試作機は符呪との相性が悪くての。この世界のシステムに歪みを生む。使うたびにある障害が発生するのじゃ」
「障害? どういうことです?」
「その端末を使うとプロバイダ側に残るはずのログが残らんのじゃ。つまり……そこから発信された情報からではいつ、誰が送信したものなのか分からぬ。ここまで言えばもう分かるじゃろ?」
これを使えば私がウォタクとして竜人や異世界の情報を流しても「リレイラである」と特定できないということか。
それを他の魔族の者が見たとしても特定できなければ問題無い。この世界にいる魔族の内、誰かが流しているということしか分からないのだから。
「動く前にお主の端末を妾に貸すのじゃ。仕事の合間にリレイラとしての使用履歴を残しておいてやる」
シィーリア部長がニヤリと笑う。しかし、その顔はどことなく疲れていてジーク君達の事が心配なのだと分かった。
「……妾達を嵌めたヤツらにちょっとでも仕返しせんとな」
きっと、彼女もみんなの事が心配だったんだな……。
「ありがとうございます!」
これなら……これなら私にも何かできる。ヨロイ君やアイル君をただ死なせるようなことにはさせない!
そうだ、情報をまとめるのに掲示板は使えないか? ウォタクとしてスレにいる者達に呼びかけて、名無しとして解説スレを立てて……アイル君達のファンからツェッター経由で彼女達をスレに誘導して貰えば……。
いけるかもしれない。他の探索者の配信もチェックしないと。
待っていてくれヨロイ君、アイル君……みんな。
◇◇◇
~シィーリア~
リレイラが急いで事務所へ戻っていく。よほどヨロイの事を想っておるのじゃろう。それが少しだけ、嬉しい。妾以外にも人にあのような感情を抱く魔族は珍しい。だからこそリレイラは信用できる。あの子も何としても守ってやらねばな。
「……」
それにしても、竜人か。これでハッキリした。なぜハンターシティの賞品に聖剣アスカルオが指定されたのか。
竜人どもの神はあの伝説竜。そして、ハンターシティを終えてからの新宿迷宮開放。全てが都合が良すぎる。聖剣を我等が世界から流した者もいたと言う事じゃ。軍の者どもめ、12年前から今回の件を計画していたな。聖剣アスカルオがこの世界に流れ着くことが新宿開放の鍵だったか。
……魔王様の指示では無いはずじゃ。あの方は土地を掌握した後はその地の者を自らが治める対象とみなす。決して不合理な理由で命を奪ったりはしない。だからこそ、妾にダンジョン管理局を任せて下さったのじゃから。
「ならば、軍の中に魔王様とは異なる思惑の者がおるのか?」
どうもきな臭い。九条につながる裏切り者に今回の一件……妾の知らぬ所で暗躍しておる者がいる。
「……気に入らぬな」
妾達を欺き、大切なジークとミナセの命を奪おうと画策した者……貴様には必ず後悔させてやる。
──東京都千代田区霞ヶ関。ダンジョン管理局本部。
「はぁ……はぁ……」
シィーリア部長の部屋に向かう。後輩のサラに呼び止められるが、それを適当な理由で躱して部長の部屋へ。ノックを3回、部長の声が聞こえた瞬間、急いで部屋に入った。
「部長!! し、新宿に……」
シィーリア部長は人差し指を口元に当ててから手招きした。彼女に着いて奥の扉に入る。その先の部屋で部長が金庫を開け、中から箱を取り出した。なんだあの箱は? なぜ部長はこんな金庫なんかに……。
「ついて来るのじゃ」
「は、はい」
部屋から出て廊下へ。そこからさらに進んで非常扉を出ると、外の街並みが見えた。避難用の階段。彼女はそこに腰を下ろすと私を横目で見た。
「お主、仕事をサボってアイルとヨロイの配信を見ておったじゃろ」
「う……!? そ、そうですが、それどころじゃ……っ!」
「良い。妾も見ておった。何せあの新宿なのじゃから」
シィーリア部長も見ていた? なら、話が早い。
呼吸を整えながら本題に移る。
「新宿に、竜人が現れました」
「ああ。魔法障壁にも異常を検知した。竜人どもが魔法障壁を発動したようじゃ」
その報告メールも確認した。なんとかして探索者達に情報を送らないと彼らの命が……。
部長がすごく悲しそうな顔をする。
「軍から聞いていた新宿迷宮の内容……それは妾達の世界で最難関と言われたダンジョン、悪夢の迷宮だったはずじゃ」
「はい。でも、あれは全く違う物です」
そう、事前に聞いていた情報では悪夢の迷宮だった。探索者達の間で新宿は未開のダンジョンと言われていたが……管理局はおおよその概要だけは軍から伝えられていた。初回攻略完了まで決して詳細を口外してはならないという規定で。
この世界にダンジョンを出現させてから軍は何度も新宿の魔法障壁内へ調査を送っている。その報告書でも「悪夢の迷宮」と確かに書かれていたはず……先ほど過去の報告書を漁ったが、それは全てデータベースから消去されており、今では確認すらできないが。
「軍め、ダンジョンではなく竜人の住まう地域を新宿に転移させておった。今ヨロイ達がいるのは、妾達の世界そのものと言っても過言ではない」
竜人はモンスターではない。魔族と同じ、私達の世界「ルガトリウム」の住人、亜人種の1つだ。
魔族には及ばずともその魔力量、身体能力……全てがこの世界の人間を凌駕している。そんな者達とまともに戦ったら……。
シィーリア部長がぼんやりと街を見つめる。
「妾の知っている魔王様は同族を騙すようなことは決してされないはずじゃ。なぜ、こんなことに……」
シィーリア部長はぶつぶつと独り言を呟く。彼女からビル群へと視線を移す。
私達の目的はダンジョン攻略の情報を集めることだ。その為にはこの世界の探索者にダンジョンへ挑み続けて貰わなければならない。こんな……こんな……イタズラに人を死なせるようなことをする意味が、私には分からない。
「クソッ」
魔王様や軍はこの世界のみんなのことをなんとも思っていないのか!? なら、私達は何の為にいるんだ? 人に寄り添い、サポートする。それが私達の役目のはず。当然、個々によって考えは違うだろうけど……でも、少なくとも、ダンジョン管理局が設置されたのはその為だと、私は思う。
「妾が知っておれば、この12年でもっと探索者を育て、万全の状態で挑ませたのじゃ」
「部長。私は彼らを死なせたく、ないです……」
しかしどうすればいい? 私が彼らに直接助言することはできない。ウォタクのアカウントを使って私達の世界の情報を全面に出せば必ず怪しまれ、特定されるだろう。そうなったら私は……最悪殺されるかもしれない。
「お主が何を考えておるのか分かっておる。だからここに連れて来た」
「え?」
シィーリア部長はゆっくりと顔を上げた。そして、私にしゃがむように言うと真っ直ぐ私の眼を見つめた。
「リレイラ。妾はお主のことを信用しておる。そして、妾と同じく人の子を想う者だと信じておる。だからこそこれを託そう。妾しか存在を知らぬ物を」
部長が先ほどから持っていた箱を差し出して来る。
「これは……」
箱を受け取って開ける。そこには黒い板状の機器が入っていた。
「タブレット端末?」
「お主も使っておるタブレット端末。その次世代型試作機じゃ」
試作機? そんな物使って何を……。
「この試作機は符呪との相性が悪くての。この世界のシステムに歪みを生む。使うたびにある障害が発生するのじゃ」
「障害? どういうことです?」
「その端末を使うとプロバイダ側に残るはずのログが残らんのじゃ。つまり……そこから発信された情報からではいつ、誰が送信したものなのか分からぬ。ここまで言えばもう分かるじゃろ?」
これを使えば私がウォタクとして竜人や異世界の情報を流しても「リレイラである」と特定できないということか。
それを他の魔族の者が見たとしても特定できなければ問題無い。この世界にいる魔族の内、誰かが流しているということしか分からないのだから。
「動く前にお主の端末を妾に貸すのじゃ。仕事の合間にリレイラとしての使用履歴を残しておいてやる」
シィーリア部長がニヤリと笑う。しかし、その顔はどことなく疲れていてジーク君達の事が心配なのだと分かった。
「……妾達を嵌めたヤツらにちょっとでも仕返しせんとな」
きっと、彼女もみんなの事が心配だったんだな……。
「ありがとうございます!」
これなら……これなら私にも何かできる。ヨロイ君やアイル君をただ死なせるようなことにはさせない!
そうだ、情報をまとめるのに掲示板は使えないか? ウォタクとしてスレにいる者達に呼びかけて、名無しとして解説スレを立てて……アイル君達のファンからツェッター経由で彼女達をスレに誘導して貰えば……。
いけるかもしれない。他の探索者の配信もチェックしないと。
待っていてくれヨロイ君、アイル君……みんな。
◇◇◇
~シィーリア~
リレイラが急いで事務所へ戻っていく。よほどヨロイの事を想っておるのじゃろう。それが少しだけ、嬉しい。妾以外にも人にあのような感情を抱く魔族は珍しい。だからこそリレイラは信用できる。あの子も何としても守ってやらねばな。
「……」
それにしても、竜人か。これでハッキリした。なぜハンターシティの賞品に聖剣アスカルオが指定されたのか。
竜人どもの神はあの伝説竜。そして、ハンターシティを終えてからの新宿迷宮開放。全てが都合が良すぎる。聖剣を我等が世界から流した者もいたと言う事じゃ。軍の者どもめ、12年前から今回の件を計画していたな。聖剣アスカルオがこの世界に流れ着くことが新宿開放の鍵だったか。
……魔王様の指示では無いはずじゃ。あの方は土地を掌握した後はその地の者を自らが治める対象とみなす。決して不合理な理由で命を奪ったりはしない。だからこそ、妾にダンジョン管理局を任せて下さったのじゃから。
「ならば、軍の中に魔王様とは異なる思惑の者がおるのか?」
どうもきな臭い。九条につながる裏切り者に今回の一件……妾の知らぬ所で暗躍しておる者がいる。
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