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第169話 異世界エルフ、新宿に現る。
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~鉄塊の武史~
俺達が顔を見合わせていると、トンガリ耳の姉ちゃんは困ったような顔をした。
「カスデノイナラカワガバトコノシタワチタタナア、テシカシモ?」
「なんて言ってるのか分からないのだ~!」
パララもんがブンブンと首を横に振る。すると、彼女は何かを思い付いたように杖を掲げた。彼女の周囲に魔力が渦巻き、何事かを告げる。魔法名か? 考えていると彼女のその口元に、小さな魔法陣が浮かび上がった。
「コホン!」
咳払いをして、エルフの姉ちゃんが微笑みを浮かべる。
「翻訳魔法を使いました。これで伝わりますでしょうか?」
突然、エルフの姉ちゃんが日本語を話し出した。パララもんもポイズン社長も呆気に取られたような顔をする。翻訳魔法? そんな魔法聞いたことないで。あ、でも魔族は日本語話すから俺らの知らんところで使われてるんか? あかん、頭が混乱してきた……。
「私は大樹様のお導きにより旅をするエルフ、フィリナと申します。奇妙な姿の冒険者達よ。貴方達に、感謝を」
「ちょ、ちょい待て! 言葉の意味は分かったが全く分からんで!」
混乱している所に聞き慣れない単語が耳に入って来てさらに混乱してしまう。フィリナという姉ちゃんは不思議そうに首を傾げた。
「意味は分かるが分からない? それは謎掛けでしょうか? もしや貴方達は冒険者ではなく、この森の妖精? 確かに貴方は妖精のようにも見えますね!」
フィリナは意味の分からない事を言うと、突然パララもんを抱き上げクルクルと回り出す。
「なんと可愛らしい妖精でしょう! 貴女のお母様はどの木なの? 私に教えて下さい!」
「ちょ!? ボクは人間なのだ~!!」
フィリナは、しばらくパララもんを抱きしめたまま回り続けた。
……。
彼女を落ち着かせ、俺達は事情を説明した。ここが日本であり、新宿という土地であることを。魔族のことや、ダンジョンのことも含めて全てを。
「まぁ! ではここは魔族の植民地なのですね!」
しょ、植民地って言われるとなんかショックやな……。
だが、俺達の驚きとは裏腹に、彼女はそれほどショックを受けている様子はない。聞けば彼女達エルフや魔族の住む異世界では、別の世界に飛ばされることは珍しいことではないらしい。
魔族や神族、そのほか一部の魔導士は転移魔法を使って様々な世界を渡り歩くのだが、その巻き添えで飛ばされることもあるとか。
……中々酷い世界やと思うのは俺だけか?
「ですが、まさか竜人達の地域ごと飛ばされるとは……ここまで大規模な転移魔法は私も初めて見ました」
「竜人? 地域? なんやそれ?」
「竜人ってリザードマンのことか~?」
「ここはダンジョンのはずなのだ!」
「貴方達は何も知らないのですね。あ、別の世界の人間なので当然かも……助けて頂いたお礼もかねて私が教えて差し上げましょう」
彼女の説明を聞く前に周囲を警戒する。モンスター達がいないことを確認して、俺達は木の陰に腰を下ろした。
フィリナは、ゆっくりと目を閉じてその両手を組んだ。深呼吸して数秒、森の静寂の中で彼女は口を開く。
「まずは我らエルフの誕生から話をしましょう。 あれは今から36万……いえ、1万4000年前でしたか。まぁいいでしょう。大樹様にとってはつい昨日の出来事ですが、貴方達にとっては多分」
「ちょい待て! どれだけ話するつもりや!?」
あとなんでどっかで聞いた言い回しするんや! ……と、喉まで出かかって無理矢理止めた。下手に話を振って脱線したら最悪や。
「どれだけ話すか? 全てを伝えるのに3日ほどでしょうか?」
「3日!? そんなに聞いてられないのだ!」
「俺達干からびちまうって~!」
全員で文句を言うと、フィリナは頬を膨らませた。
「もう! 人間は忍耐力が無いですね!」
「忍耐とかの問題ちゃうわ!」
「仕方ないですね……では要約して30時間にまとめて」
「30分! 長くて30分で頼むで!」
「えぇ!? そんなの一瞬じゃないですか!?」
驚いたような顔をするフィリナ。いや、いくら異世界から来たと言ってもこの会話ペースはないやろ。
「アンタ、人間と話したことないんか?」
「ありませんねぇ」
「エルフ同士で世間話する時どうすんねん!?」
「うぅ~ん……大体1週間ほど話すでしょうか? みんなお喋りが大好きですし」
なんやコイツ……俺のセンサーがヤバいヤツやと警告出しまくっとる。あれか? エルフのせいで時間感覚違いすぎるんか?
というか、ただでさえパララもんと社長の2人でボケは足りとるのにこんな姉ちゃんまで加わったら……。
「30時間ってゲーム1本クリアできるくらいなのだ!」
「そう言えばパララ、家のゲーム機ちゃんと電源切ったよな?」
「あ、待機モードのままで出ちゃったのだ!」
「アレだけ消しとけって言ったろ~!」
「ごめんなのだポイ君~!」
「ゲームとは何ですか?」
「ゲームって言うのは画面の中で遊ぶ機械なのだ!」
「画面? 画面とは何ですか?」
「このスマホみたいなヤツなのだ!」
「ひぃっ!? 板が光った!?」
「異世界のヤツだからスマホ知らないのか~? でも魔族は使えるよなぁ?」
「無知なエルフなのだ!」
「今、私の事を馬鹿にしたでしょう!?」
……。
勘弁してくれ。
◇◇◇
結局、フィリナに俺達が質問することで状況を聞き出した。
ここはダンジョンではなく、竜人達の住む地域そのものが転移して来た場所らしい。12年前、フィリナは竜人達の住む地域の森を調査する為にこの地域に足を踏み込んだ。そして、竜人達に見つかってしまい追いかけ回された。
逃げ続けて、ヤツらを振り切った頃にはすっかり夜に。ちょうど良い木のウロを見付けて夜を明かしたところ、うっかり12年間眠り続けていたらしい。
「12年ってパララでもそこまで寝ないよなぁ」
「う、うるさいのだ! 最近は1人で起きれるようになってきたのだ!」
「静かにしてくれパラポイ兄妹」
「パラポイ兄妹ってなんだよぉ」
「ひどいあだ名なのだ」
呆れる2人を他所に話を続ける。
「そして、フィリナが目覚めたのが昨日で、竜人達にまた見つかって追いかけ回されたってことやな。なんでや?」
フィリナがそっと目を閉じる。なんだか物々しい雰囲気。シンと静まり返る森。ただそよぐ草木の音だけが周囲に響いた。
「彼の者、天空より現れし三つ首を持つ竜王……」
「いや、そういうのええから3分で説明してくれ」
「えぇ!?」
フィリナの壮大な語り口をぶった斬り、急かして残りを聞き出す。すると、竜人達がヤツらの神、「竜王イァク・ザァド」を復活させようとしていること、その為にフィリナや冒険者達からレベルポイントを奪っていることが判明した。
「マジか……じゃあ俺らも捕まったらレベルポイント奪われるんか!?」
「はい。ですが、竜人達を倒さねばここから逃げることはできませんよ? あの魔法陣の色……あの金色は竜人達の発動した証ですから」
「は?」
「のだ?」
「ん~?」
今、外に出られやんって言ったかこのエルフ?
パララもんが恐る恐るといった様子でフィリナに質問する。
「竜人を倒さないと新宿から出られないのだ?」
「はい」
「竜人は強いのだ?」
「はい。並の冒険者では太刀打ちできぬほど」
「最悪そのイァク・ザァドって奴とも戦わないといけないのだ?」
パララもんの顔が徐々に青ざめていく。というか体もめちゃくちゃ震えとるな。
「復活してしまえばそうなりますね」
フィリナの一言でパララもんは頭を抱えて天を仰いだ。
「どうすればいいのだあああああああああああ!?」
森の中にパララもんの悲痛な声が響き渡った。
俺達が顔を見合わせていると、トンガリ耳の姉ちゃんは困ったような顔をした。
「カスデノイナラカワガバトコノシタワチタタナア、テシカシモ?」
「なんて言ってるのか分からないのだ~!」
パララもんがブンブンと首を横に振る。すると、彼女は何かを思い付いたように杖を掲げた。彼女の周囲に魔力が渦巻き、何事かを告げる。魔法名か? 考えていると彼女のその口元に、小さな魔法陣が浮かび上がった。
「コホン!」
咳払いをして、エルフの姉ちゃんが微笑みを浮かべる。
「翻訳魔法を使いました。これで伝わりますでしょうか?」
突然、エルフの姉ちゃんが日本語を話し出した。パララもんもポイズン社長も呆気に取られたような顔をする。翻訳魔法? そんな魔法聞いたことないで。あ、でも魔族は日本語話すから俺らの知らんところで使われてるんか? あかん、頭が混乱してきた……。
「私は大樹様のお導きにより旅をするエルフ、フィリナと申します。奇妙な姿の冒険者達よ。貴方達に、感謝を」
「ちょ、ちょい待て! 言葉の意味は分かったが全く分からんで!」
混乱している所に聞き慣れない単語が耳に入って来てさらに混乱してしまう。フィリナという姉ちゃんは不思議そうに首を傾げた。
「意味は分かるが分からない? それは謎掛けでしょうか? もしや貴方達は冒険者ではなく、この森の妖精? 確かに貴方は妖精のようにも見えますね!」
フィリナは意味の分からない事を言うと、突然パララもんを抱き上げクルクルと回り出す。
「なんと可愛らしい妖精でしょう! 貴女のお母様はどの木なの? 私に教えて下さい!」
「ちょ!? ボクは人間なのだ~!!」
フィリナは、しばらくパララもんを抱きしめたまま回り続けた。
……。
彼女を落ち着かせ、俺達は事情を説明した。ここが日本であり、新宿という土地であることを。魔族のことや、ダンジョンのことも含めて全てを。
「まぁ! ではここは魔族の植民地なのですね!」
しょ、植民地って言われるとなんかショックやな……。
だが、俺達の驚きとは裏腹に、彼女はそれほどショックを受けている様子はない。聞けば彼女達エルフや魔族の住む異世界では、別の世界に飛ばされることは珍しいことではないらしい。
魔族や神族、そのほか一部の魔導士は転移魔法を使って様々な世界を渡り歩くのだが、その巻き添えで飛ばされることもあるとか。
……中々酷い世界やと思うのは俺だけか?
「ですが、まさか竜人達の地域ごと飛ばされるとは……ここまで大規模な転移魔法は私も初めて見ました」
「竜人? 地域? なんやそれ?」
「竜人ってリザードマンのことか~?」
「ここはダンジョンのはずなのだ!」
「貴方達は何も知らないのですね。あ、別の世界の人間なので当然かも……助けて頂いたお礼もかねて私が教えて差し上げましょう」
彼女の説明を聞く前に周囲を警戒する。モンスター達がいないことを確認して、俺達は木の陰に腰を下ろした。
フィリナは、ゆっくりと目を閉じてその両手を組んだ。深呼吸して数秒、森の静寂の中で彼女は口を開く。
「まずは我らエルフの誕生から話をしましょう。 あれは今から36万……いえ、1万4000年前でしたか。まぁいいでしょう。大樹様にとってはつい昨日の出来事ですが、貴方達にとっては多分」
「ちょい待て! どれだけ話するつもりや!?」
あとなんでどっかで聞いた言い回しするんや! ……と、喉まで出かかって無理矢理止めた。下手に話を振って脱線したら最悪や。
「どれだけ話すか? 全てを伝えるのに3日ほどでしょうか?」
「3日!? そんなに聞いてられないのだ!」
「俺達干からびちまうって~!」
全員で文句を言うと、フィリナは頬を膨らませた。
「もう! 人間は忍耐力が無いですね!」
「忍耐とかの問題ちゃうわ!」
「仕方ないですね……では要約して30時間にまとめて」
「30分! 長くて30分で頼むで!」
「えぇ!? そんなの一瞬じゃないですか!?」
驚いたような顔をするフィリナ。いや、いくら異世界から来たと言ってもこの会話ペースはないやろ。
「アンタ、人間と話したことないんか?」
「ありませんねぇ」
「エルフ同士で世間話する時どうすんねん!?」
「うぅ~ん……大体1週間ほど話すでしょうか? みんなお喋りが大好きですし」
なんやコイツ……俺のセンサーがヤバいヤツやと警告出しまくっとる。あれか? エルフのせいで時間感覚違いすぎるんか?
というか、ただでさえパララもんと社長の2人でボケは足りとるのにこんな姉ちゃんまで加わったら……。
「30時間ってゲーム1本クリアできるくらいなのだ!」
「そう言えばパララ、家のゲーム機ちゃんと電源切ったよな?」
「あ、待機モードのままで出ちゃったのだ!」
「アレだけ消しとけって言ったろ~!」
「ごめんなのだポイ君~!」
「ゲームとは何ですか?」
「ゲームって言うのは画面の中で遊ぶ機械なのだ!」
「画面? 画面とは何ですか?」
「このスマホみたいなヤツなのだ!」
「ひぃっ!? 板が光った!?」
「異世界のヤツだからスマホ知らないのか~? でも魔族は使えるよなぁ?」
「無知なエルフなのだ!」
「今、私の事を馬鹿にしたでしょう!?」
……。
勘弁してくれ。
◇◇◇
結局、フィリナに俺達が質問することで状況を聞き出した。
ここはダンジョンではなく、竜人達の住む地域そのものが転移して来た場所らしい。12年前、フィリナは竜人達の住む地域の森を調査する為にこの地域に足を踏み込んだ。そして、竜人達に見つかってしまい追いかけ回された。
逃げ続けて、ヤツらを振り切った頃にはすっかり夜に。ちょうど良い木のウロを見付けて夜を明かしたところ、うっかり12年間眠り続けていたらしい。
「12年ってパララでもそこまで寝ないよなぁ」
「う、うるさいのだ! 最近は1人で起きれるようになってきたのだ!」
「静かにしてくれパラポイ兄妹」
「パラポイ兄妹ってなんだよぉ」
「ひどいあだ名なのだ」
呆れる2人を他所に話を続ける。
「そして、フィリナが目覚めたのが昨日で、竜人達にまた見つかって追いかけ回されたってことやな。なんでや?」
フィリナがそっと目を閉じる。なんだか物々しい雰囲気。シンと静まり返る森。ただそよぐ草木の音だけが周囲に響いた。
「彼の者、天空より現れし三つ首を持つ竜王……」
「いや、そういうのええから3分で説明してくれ」
「えぇ!?」
フィリナの壮大な語り口をぶった斬り、急かして残りを聞き出す。すると、竜人達がヤツらの神、「竜王イァク・ザァド」を復活させようとしていること、その為にフィリナや冒険者達からレベルポイントを奪っていることが判明した。
「マジか……じゃあ俺らも捕まったらレベルポイント奪われるんか!?」
「はい。ですが、竜人達を倒さねばここから逃げることはできませんよ? あの魔法陣の色……あの金色は竜人達の発動した証ですから」
「は?」
「のだ?」
「ん~?」
今、外に出られやんって言ったかこのエルフ?
パララもんが恐る恐るといった様子でフィリナに質問する。
「竜人を倒さないと新宿から出られないのだ?」
「はい」
「竜人は強いのだ?」
「はい。並の冒険者では太刀打ちできぬほど」
「最悪そのイァク・ザァドって奴とも戦わないといけないのだ?」
パララもんの顔が徐々に青ざめていく。というか体もめちゃくちゃ震えとるな。
「復活してしまえばそうなりますね」
フィリナの一言でパララもんは頭を抱えて天を仰いだ。
「どうすればいいのだあああああああああああ!?」
森の中にパララもんの悲痛な声が響き渡った。
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