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第170話 461さん、先への進み方を模索する。
しおりを挟む~461さん~
──西新宿エリア・コクーンタワー周辺。
「どうするヨロイさん? 今日中にもう一度挑む?」
「う~ん……どうするかな」
アイルの視線の先には道を塞ぐように生えた巨大な植物型モンスターが構えていた。通り抜けようとすると、全身から触手を伸ばし道を塞ぐ厄介なボス。俺達は既に3度ほどヤツと戦っていた。
ジークリードが腰の愛剣を構えてボスを睨みつける。
「俺があのツボミ触手2体の相手をしてもいい」
「ダメだってカズ君! 全部同時に倒さないといけないんだからさぁ~タイムラグ出ちゃうって!」
ジークをミナセが窘める。俺達が話している姿を見て、ナーゴがその眉をカクリと落とした。なんか……着ぐるみの悲しげな顔が余計に物悲しく感じるな。
「にゃあ……不甲斐ないにゃあ……ナーゴがもっと強かったらにゃあ……」
西新宿エリアの広大な森。俺達の進んだルートではこのボスモンスターが道を塞いでいた。地面から伸びた大きな茎。顔には5枚の花弁があり、その中心部には無数の歯が生えた円形の口。地面の根本からはツボミのような顔がついた触手が3本。近付いた者を無差別に襲って来るボス。それに俺達は手を焼いていた。
「はぁ……火炎魔法が当たれば速攻倒せるのに……」
アイルがため息を吐く。3回挑んで分かったのは、あの植物は顔の付け根にあるコアを破壊しなければいけないということだ。しかし、あの花のような頭がそれを守って近付けない。その頭は「物理攻撃無効化」の能力を持っているのが厄介だ。何度も俺とジークで切り落とそうとしたが、一切ダメージを与えられなかった。
だからこそ、あの頭を炎魔法で焼き払いたい所だが、地面から生える3本の「ツボミ触手」がそれを防いでいる。先端にツボミのような顔が付いている触手。全てのツボミに人を捕食できるほどの口があり凶暴だ。倒してもすぐに再生してしまうのに加えて大きな問題がある。
「3本がそれぞれ『反射魔法』を使用しているとはな。これでは波動斬で一気に仕留める事もできない」
「ホント、腹立つ触手だよねぇ」
ジークとミナセは先程の戦闘を思い出したのか苦い顔をした。
あの3本の触手はそれぞれが反射魔法を発動している。その影響であの植物モンスターへの魔法攻撃は全て反射されてしまう。魔法攻撃の要素を持つ波動斬も効かない。
だからこそ、あのモンスターを倒すには一定のプロセスが必要なんだ。
3本の触手を同時に倒し、ヤツの反射魔法を解除する。解除のタイミングを見計らって火炎魔法を放ち、あの花の頭を燃やし尽くす。そして、ヤツの体が再生する前にコアを破壊するというプロセスが。
この3回、ナーゴ1人で3本目の触手を倒そうと試してみたが、今の戦闘技術では厳しそうだ。触手が再生するまでの時間は10秒に満たない。アイルはいつでも魔法放てるように待機して貰わないとキツイな。
触手破壊から魔法攻撃までの間に時間をかけると触手が復活してしまうから。
あの植物全体を燃やし尽くして……とも思ったがダメだった。炎渦魔法はアイルの足元から発生した炎の竜巻が周囲を燃やしながら進む魔法。触手を倒して炎渦魔法を発動しても、本体に到達するまでに倒した触手が再生してしまう。
本体に当てるには遠方から火炎魔法であの花をピンポイントで狙撃するか、0距離から炎渦魔法を打ち込むかだが……いずれにしても触手退治に人手が足らない。
「みんなごめんにゃ……ナーゴのせいで……」
「ナーゴは戦闘以外での主力だぜ? そんなこと気にするなよ」
「ヨロさん……うっ、ありがとにゃ」
ナーゴの目がジワリと潤んだ……気がした。着ぐるみなので本当に涙を流すことは無いはずだが、泣きそうな顔なのは間違いない。
「シン君やタルパちゃんにもうちょっと一緒にいて貰えば良かったにゃ……」
確かにシン、タルパ、ナーゴの3人がかりならあの触手の1本を倒せただろう。だが、過ぎたことを言ってもしょうがない。
「仕方ない。他の方法を考えるか」
……。
地面にボスの配置を書き、ジークと2人で攻略法を考える。ふと背後を見ると、アイル達がスマホを操作しているのが目に入った。ジークが少しムッとした顔になって声を上げる。
「天王洲達もスマホをいじってないで考えるのを手伝ってくれ」
「違うわよ! 今近くに探索者がいないか探してるの!」
「ツェッターを検索してるにゃ♡」
「私達もちゃんと考えてるよ~カズ君?」
ミナセが少し低い声で笑顔を向ける。ジークは、ゴクリと喉を鳴らすと目を泳がせた。
「そ、そうか。それは、助かる……」
「分かればよし♪」
俺が書いた図に目を向けるジーク。なんとなく可哀想な気がして彼の肩を叩くと、ジークは一点を見つめながらポツリと呟いた。
「鎧……分かってくれるか?」
「まぁ、こういう時ミナセのが強そうだもんな」
「その通りだ……」
うんうんと頷くジーク。その様子から普段ジークとミナセがどんな風に接しているのか分かった。恋人ってのは大変なんだな。
そんな事を考えていた時、アイルが大声を上げた。
「ちょっ!? 見てみんな! 見つけたわ!」
全員がアイルの元に集まり、そのスマホを覗き込む。
「ツェッターに呟いてる探索者がいたのかにゃ?」
「違うわ。ツェッターにはそれらしい人はいなかったんだけど……ブギハメくんってファンの子がツェッターのDMで掲示板サイトのリンク送ってくれたの!」
「よくDMのリンクなんて開こうと思ったねアイルちゃん」
ミナセが驚いたように目を見開いた。
「いつもコメントくれる子だったし……ってそんなことは置いておいてこれを見て!」
アイルがスマホ画面を指す。そこに貼られていたのは2つのリンク、その先の掲示板サイトに竜人のことが書き込んであるという説明。最後に「みんな無事に帰って来て欲しいんだ!」というメッセージだった。
「1つの目のリンク先は竜人のこととかすごく詳しく書かれてる。だけど今はもう1つのリンク先を見て欲しいの。恐らく1つ目のリンクである『竜人の事を教えるスレ』が立つ前のやり取りがあったスレッドね」
アイルのスマホ画面に掲示板サイトのスレッドが写し出された。竜人の話から始まり俺のことも書いてある。アイルがそのスレッドをスクロールしていくと、最後の方に探索者らしきヤツが書き込みをしていた。
「ほら! 赤いアイツって名前で書き込んでる人! 探索者の勝者マンって呼んでる人もいるわ!」
「あ、知ってるよ~その探索者。新宿迷宮の突入メンバーに名前あった!」
「俺も聞いたことがある。確か池袋ハンターシティのリザルトにも載っていたな」
ジークとミナセが声を上げる。ハンターシティのリザルト……なら、それなりの力量もありそうだな。
「ほら、スレッドにもコクーンタワーに潜伏してるって書いてある。この近くにいるわよこの人!」
「勝者マンも先に進みたいけど立ち往生してるかもしれないにゃ!」
勝者マン、か。どんなヤツかは知らないが、利害が一致するなら協力も頼みやすいか。
……。
よし。
「探してみるか。勝者マンってヤツを」
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