461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

文字の大きさ
223 / 302

第212話 透明な敵

しおりを挟む
 川崎ダンジョン「ラチッタデッラ」を進む。最初こそ独断で動いていたモモチーとユイさんだったけど、戦闘を繰り返す度にコンビネーションが洗練されてきた。


「ギャルオオオオオオ!!!」


 エイブラスの進化系、ヤツらよりも2回りほど大きいモンスター「ルブラス」が両拳を岩石化して叩き付ける。

「ダブルアクアエッジ!!」

 モモチーが両手のショートソードに水の刃を纏わせる。刀身に流れる水流。モモチーはその水流を巧みに使ってルブラスの連続攻撃の軌道を逸らした。

氷結魔法フロスト!!」

「ギャウ!?」

 私が放った氷結魔法が、ルブラスに直撃する。両腕が凍り付いた事で、先ほどまで放たれていた連続攻撃はピタリと動きを止めた。

「キル太!!」
「ブギィ!」

 ユイさんがキル太を蹴り飛ばす。敵に当たる直前、岩のように硬化したキル太がルブラスに体当たりする。悶絶するルブラス。その懐にユイさんが飛び込んだ。

「おらぁ!!」

「グアァ!?」

 ユイさんがルブラスの顔面を蹴り上げる。無防備となったルブラスにモモチーが剣技を放った。

「お逝きなさい!!」

 一閃。その直後、ルブラスの頭部と胴体がスッパリと切断される。バタリと倒れ込んだルブラスから光が溢れ出す。

『レベルポイントを300pt獲得しました』


〈1人300ptだから合計900ptか:wotaku〉
〈強い敵だお!?〉
〈でもコンビネーションが良くなって来たから大丈夫なんだ!〉
〈今の所ほぼ瞬殺だしな〉
〈他のサル達逃げてばっかやんけw〉
〈漆黒に揺れる果実が心を掴んで離さない〉
〈スカジャンからたまに見える果実がヤバいw〉
〈ちょw〉
〈影響受けてるヤツいるぞw〉
〈これだから男は……〉
〈戦闘見ろってwww〉


 雑魚から考えて3倍のレベルポイント……それがさっきから少しずつ顔を出してる。そろそろダンジョンの中心なのかな。



◇◇◇

 それから戦闘を繰り返しながら進んだ。進んだけど、なんだか不気味だ。

 エイブラスとの戦闘に入ると、上位種のルブラスが絶妙のタイミングで現れては仲間達を逃すからだ。雑魚のエイブラスは無傷のまま建物へと消えてしまう。

 戦ってる回数は多いのに、数が減らせない。もしかして私達を消耗させてる?

「……気持ち悪いですわね」

「アタシもだ。なんか変だな」
「ブギッ」


〈果実に元気が無いとは、私も気持ちが悪い〉
〈自己紹介かな?〉
〈失礼で草w〉
〈コイツ、変態紳士だからなぁ……〉
〈ヤンキーちゃんに搾られたい〉
〈また出たw搾られたいおじさんwww〉
〈だから戦闘に集中しろよ〉
〈不気味だお〉
〈全然雑魚が倒せ無いんだ!〉
〈何か狙いがありそう:wotaku〉


 変なコメントはスルーするとして……違和感を感じている人もいるわね。というか改めて思うとモモチー毎回こんなコメント見てるの? ある意味強いな……。

 ……っといけない。集中しないと。

 川崎ダンジョンは高低差がある迷路のような構造だ。それを進む度、道を決めようとする度にエイブラスが現れて戦闘になる。しかも、雑魚のエイブラスを倒せたのは入り口での戦闘でだけ。

 後はルブラスが盾になって逃してしまうから、雑魚のエイブラスは仕留められない。なんだか、どこかに誘い込まれているような気がする。

「嫌な予感がするわ。一度入り口まで引き返した方がいいかも」

「そうですわね。深追いしすぎは……」


 モモチーが戻ろうと歩き出した時。


「ブギィッ!!!」


 キル太がモモチーに体当たりした。


「きゃあ!? 何をするんですの!!」

 それと同時に振動が走る。彼女が戻ろうとした通路に街灯が飛んで来て、地面に深々と突き刺さった。


〈っぶねぇ!?〉
〈心臓止まるかと思ったお!〉
〈街灯が飛んで来るとかヤバすぎぃ!?〉
〈キル太ナイスなんだ!〉
〈おおちおちつけけ。モモモモチーがやられることととなどないいいだろううう〉
〈焦り過ぎてて草〉
〈良かったなマジで〉
〈ボスの攻撃か?:wotaku〉


「……あ、危なかったですわ」

 モモチーの頬に汗が伝う。キル太が突き飛ばしていなかったら、モモチーは今頃あの街灯に潰されていたかも……。

 上を見上げると、入り口で見た透明な歪みがいた。またアイツだ。もしかして、今のもアイツが?


「……っ!」


 透明な敵は、また私が見ているのに気付くとどこかへ走り去っていった。

「アイルさんが言っていた透明な敵、またいたんですの?」

「うん、戦闘中にも何回か見かけたよ。すぐ逃げちゃうけど」

 逃げるってなんでだろう? 隙を突いて襲うなら、いつでもできるはずなのに。


〈ウォタクニキ分かる?〉
〈エイブラスの進化系で思い当たるヤツはいる:wotaku〉
〈なんなんだ!?〉
〈教えて欲しいお!〉
〈中途半端な状態で断定はしたくない:wotaku〉
〈マジメw〉
〈下手に情報を与えて探索者を危険に晒す可能性もあるから:wotaku〉
〈コメント見てるからか〉
〈確かに決め付けは危ないよなぁ〉
〈はえ~賢い〉


 モモチーの手を掴んで引き上げる。その様子をユイさんがジッと見つめていた。

「……なんですの?」

「キル太のこと、見直したか?」

「見直すって……」

「キル太は優しいヤツなんだ。そんなキル太を馬鹿にされてムカついたんだよ、アタシも……」

 強気な姿勢から一転して悲しそうなユイさん。彼女はキル太をギュッと抱きしめた。

 モモチーも視線を逸らしながら頬を掻く。

「わ、悪かったですわよ、その、ワタクシ……スライムには嫌な思い出があって、その子に酷いこと言い過ぎましたわ……」


〈なんかあったんかモモチー?〉
〈バブみスライムの事じゃね?〉
〈バブみwwwなんだそれw!?〉
〈おとめ山公園の時かぁ〉
〈気になるんだ!〉
〈検索したけど出て来ないお!〉
〈あのチャンネルアカBANされたからなぁ〉
〈もう見れないとか……〉
〈これでいいのさ。我々は目の前の果実をただ味わうのみ〉
〈カッコ良く言ってるけど変態すぎるんよw〉


 おとめ山公園? アカウントBAN? もしかして、モモチーが誰かとコラボした時にスライムに酷い目に遭わされたって事なのかな。それで修行に……だから同じスライムのキル太に拒否反応を示してたのね。

「その子が私に向かって来た時、未熟な自分を突き付けられた気がして……私の弱さを、その子にぶつけてしまっておりましたわ」

「ま、まぁ? アタシはもう、別に……そっちにも事情があったって分かったし……なぁ? キル太」
「ブギィ……」


 なんだか、モモチーも、ユイさんも、キル太も居心地が悪そうだ。私は空気を変えようと手を叩いた。

「ほら、これでケンカは終わりにしましょ? ここからはダンジョン攻略に集中しないと」

「そうですわね」
「だな」
「ブギィ!」

 私達は、気を取り直して先に進んだ。


◇◇◇

 さらにダンジョンを進む。戦闘を繰り返しながら細い階段を抜けて、円形に掛けられた橋を渡る。どこも横道に入ろうとすると、電灯が飛んで来て道を塞がれてしまう。誘導したいみたいだ。

 そうして歩いていると、ガラスで作られたような透明な円柱が目の前に現れた。塔のように高いその上に、ゆらりと人型の歪みが現れる。


「ブギ、ブギィィィィ!!」


 ユイさんに抱き上げられていたキル太が暴れ出す。それで察した。ヤツらはきっとこの場所に誘い込む為に動いていたんだって。


「塔の上に何かいるわ。ボスのお出ましみたいね」


 思考を切り替えるんだ。ボスの動きを見て、確実に指示を出さないと。自分が1番冷静でいられるくらいに……。


「グオオオオオオオオオオオ!!!」


〈!!?!?!?〉
〈見えないのに声がするんだ!?〉
〈ドローンの映像では判別がつかないか:wotaku〉
〈大丈夫なのかお!?〉
〈みんな死なないでぇ……〉
〈彼女達ならやれるさ〉


 透明な歪みは、よく見ると巨人のような姿をしている。エイブラス達が占拠するダンジョンの構成から見るに、恐らくエイブラスの最上位種、群れのリーダーね。

 周囲を見渡すと、無数のエイブラスやルブラス達が建物の上から私達を見下ろしていた。グルリと一周取り囲むように。


〈!!?!?!?〉
〈囲まれてる!?〉
〈襲いかかって来そうなんだ!?〉
〈ヤババババ!?〉
〈やはりエイブラスのボス、エイブロードか:wotaku〉
〈どんなヤツや?〉
〈怪力、姿を消す、群れを統率して連携攻撃するボス:wotaku〉
〈強そうだお!〉


 コメントが目に入る。連携攻撃に怪力か……攻撃パターンを読まないと。


 モモチーが両腰のショートソードを引き抜く。

「なるほど、あのサル達は私達をここで袋叩きにしようという魂胆みたいですわね」

「まどろっこしい事するヤツらだなぁ」
「ブギブギィ!!」

 道が塞がれたのは……別通路から逃げられ無いようにする為ね。恐らく、通路はここを周回するように残されているみたい。完全に罠に嵌められたってことか。


「グオオオオオオオオオオオアアアア!!」


 透明なボス……エイブロードが雄叫びを上げる。周囲にいる無数のエイブラスとルブラスが私達に襲いかかって来た。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...