461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第242話 彼らを繋ぐ武器

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 ~461さん~

「ここだ」

 リレイラさんが扉に手をかける。俺は彼女に案内して貰い、武器職人の所へと行った。アイルが約束した竜の逆鱗を渡す為に。

 武器職人は俺を見るなり変な声を上げた。

「その鎧……その剣……あ、アンタ461さんだろ!?」

 店主が俺の手を掴みブンブンと振った。そして捲し立てるように新宿や浅草攻略の話を始める。あまり長居はしていられないな……早めに話を切り出す事にするか。

「アンタの武器を貰いたい。アイルが約束した竜の逆鱗と金だ」

 逆鱗と金をカウンターへ置くと、武器職人はなぜか目を輝かせた。

「ま、マジか……!! 本当に!? 俺の武器を使ってくれるのか!?」

「ああ。連れから話は聞いた。アンタ、アイルに武器の効果も説明してくれたろ? 次の攻略に絶対必要なんだ」

「つ、次の攻略に絶対必要……!?」

 武器職人がプルプルと手を震わせる。彼は逆鱗と金を受け取ると慌てた様子で方内武器店へと向かった。


◇◇◇

 方内武器店から2本の武器を回収してきた職人は、俺の前にそれを差し出した。

「嬢ちゃんには説明したが、もう一度説明しておくよ」

 職人が武器の説明をしてくれる。

 1本目が緩やかに湾曲した刀身を持つクロウダガー。投擲すると風の刃を纏って回転しながら飛んでいく。ダンジョンの壁など固い物にぶつかると反射するように飛ぶ。持ち手を握ってみる。人差し指の所に窪みがあり、握った時にフィットする構造になっていた。

「その反射回数は最大5回。素材になったチャクラムには反射の使用回数制限があったが、俺が取り払った」

 職人が補足説明してくれる。この武器の素材になったアイテム、クロウスラッシャーはスクィジゴブリンが使用するチャクラム状の武器だ。一度投げて敵に直撃すると崩れ去る消費アイテム。

 だが、風の刃や反射といった効果は聞いた事がない。どこかのダンジョンで発見されたレアアイテムなのかもしれないな。

「そしてこっちがブレイジアナイフ。突き刺さって3秒後に剣先から炎を吹き出す。こちらも使用回数制限があったんだが俺が消した」

 このナイフの素材は元々ブレイズナイフという素材で、市場に出回っていた消費アイテムらしい。

 どちらも俺が初めて聞く名前、初めて聞く効果のアイテムを素材にしている。

 だが……。

 クロウダガーとブレイジアナイフを持ってみる。それは俺が長年使用した武器のようにすんなりと手に馴染んだ。なんだ? こんな感覚は初めてだ。

 後ろで俺達の話を聞いていたリレイラさんが顔を覗かせた。

「不思議だろう? 私もどこかで見た気がする武器なんだ」

「……懐かしい気もします」

「アイル君がね、これを見て言ったんだ。『これはヨロイ君が使うべき武器だ』って」

 アイル……。

 シィーリアの話だと九条達は東京パンデモニウムに向かう。その時にアイルを利用するはずだ。アイルの親父さんが死んだという過去を消す為に。

 ……だが、それによってアイルにどんな影響があるか分からない。九条の事情は聞いたが俺は黙って見てられるほどお人好しじゃねぇ。絶対に九条を止めてみせる。

 それに、魔王の姉のこともある。いずれにせよ俺に戦わない選択肢はない。

 武器を見ていると、店主が裏口を叩いた。

「店の裏に練習場がある。試してみてくれ!」

 店主と共に裏口を出ると、そこは小型ダンジョンのようになっていた。部屋は正方形の部屋が1つだけ。その中央に木と金属で作られた人形が置かれていた。


「管理局に申請してさ、小型ダンジョンに隣接する形で工房を作ったんだよ。ここ、モンスター出ないからさ」

「なるほど。それなら性能チェックも容易にできるな」

 リレイラさんが感心したように頷く。俺は店主に使わせて貰うと伝え、元々装備していたダガーとナイフをリレイラさんへと預けた。

「おっと、鞘を渡してなかったな」

 店主が急いで工房に戻って鞘を持ってきた。鎧の武器ホルダーへダガーとナイフの鞘を付ける。クロウダガーは、湾曲した刀身を引き抜く為か、真っ直ぐ引き抜く鞘ではなく横から引き抜く仕様になっていた。革製の鞘。その横部分にスリットがあり、横に引き抜くとダガーが引き抜ける。戻す時もスムーズだ。落ちる心配もなさそうだな。

「クロウダガーと鞘には符呪を施してある。反射したダガーはその鞘を目がけて戻ってくるぜ。ただし、反射した時だけな。壁が無ければ回転が止むと落ちてしまうから気を付けてくれ」

 なるほど、反射をうまく利用すれば擬似ブーメランのように運用できるって事か。


 2人に離れて貰い、ダガーに手をかける。


 ダガーを投げると、湾曲した刀身が回転して縦に投げたチャクラムのように見える。それが風の刃を帯び、人形の脇腹を切断した。

 ダガーが壁を反射して手元へ戻ってくる。回転するダガーの中心部に穴が見えた。タイミングを合わせてそこへ指を入れてみると、ナイフは俺の手元でクルクルと回る。回転を止めてみると、先程の人差し指の窪みが回転時に中心となるように設計されていた。

「確かにチャクラムを元にしただけあるな」

 チャクラムよりもコツはいるが……回転させること自体は難しくない。


 手元でダガーを回転させる。さらに回転を加え、再び投擲。ブレイジアナイフへと手をかけ、人形に投げ付ける。グサリと刺さるナイフ。戻って来たダガーを先程の要領で受け止め、さらに回転を加える。

 そうして再びダガーを投擲すると、背後から職人の声が聞こえた。

「すげ……」

「いい感じだぜ。アンタ腕いいな」

 戻ってきたクロウダガーを受け止め鞘に戻した瞬間、人形に刺さっていたナイフから火柱が上がる。その炎に焼かれ、人形は燃え尽きた。


 ……。


 そこから数度、投擲の練習をして俺達は武器工房を後にした。工房を出た頃には夕方になっており、周囲は暗くなっていた。


「後はアイテム類を準備して浜松町へ向かいます」


 隣を歩いていたリレイラさんがピタリと足を止める。不思議に思って振り返ると、彼女は今にも泣きそうな顔をしていた。


「ヨロイ君……世界に危機が迫っているのに、こんなプレッシャーを与えてしまうのは……申し訳ないのだが……」

 リレイラさんは、唇を噛み締めると俯いてしまった。

「絶対、2人で帰って来て。私は、君達がいない日々なんて嫌だ。アイル君がいて、ヨロイ君がいる日々が私は……大好きだから」

「俺もです。絶対連れて帰って来ます」

 俺に抱き付き、声を上げて泣くリレイラさん。俺は、リレイラさんを抱きしめながらアイルの事を考えた。いつも明るくて、周囲を照らすような彼女の事を。


 アイル、絶対にお前の所へ行くからな。




 次回、東京パンデモニウム突入の為、461さん、タルパマスター、シィーリア、スージニアが簡易パーティを組みます。

 
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