461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第285話 時を壊す一撃

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 ~シン~

 タルパちゃんの呼び出した金色のイァク・ザァド。3つ首が放った魔法が時間神エモリアへ直撃し、周囲に煙を巻き上げた。

 シンと静まり返る周囲、僕たちの目の前を大量のコメントが流れていく。


〈決まった……?〉
〈やったか!?〉
〈ひゃだ!?倒したの!?〉
〈おいやめろ!?〉
〈変なフラグ立てんな!!〉
〈どうなんだ……?:wotaku〉
〈ウォタクさんが困惑してるやんけ!〉

 コメントに疑問が流れた瞬間、煙の中からエモリアが現れた。全身ボロボロで、ヒレもほとんど残っていないように見えたけど、ヤツが咆哮を上げると時間が巻き戻り、一瞬にして元の姿へと戻ってしまう。


〈!!?!?!?!?〉
〈やってなかったんだ!?〉
〈だから言っただろ!〉
〈体内にマナを溜めているのか……:wotaku〉
〈どういうことだお!?〉
〈あの魔法に使う元素はヒレから吸収する。普通ならヒレを破壊すれば止まるはずだが、一度防がれた事で体内に溜めているのかも:wotaku〉
〈wotakuさんが長文コメするくらいヤバイ……ってコト!?〉
〈そういやさっきもヒレ破壊されても使ってたような……?〉
〈そんなのどうやって倒すんだよ!?〉



「「「キュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンン!!!!!」」」

「キィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 2体の神が雄叫びを上げて魔法を放つ。黄金に輝くイァク・ザァド。その首の2つが電撃を放ち、プラチナ色のエモリアが時間魔法で魔法攻撃を止め、反撃に次元魔法を放つ。イァク・ザァドの残った首が氷結魔法で巨大な壁を形成し、次元魔法を食い止めた。


〈うおあああああああ!!?〉
〈コメ民が揉めてる間にエライ事に……〉
〈怪獣映画みたいになってるお!?〉
〈どうなってんだよこれ!?〉
〈タルパマスター凄すぎぃ!?〉
〈大迫力なんだ!?〉
〈嫌いじゃないわ!!〉
〈タルパちゃん……がんばってぇ……〉


「タルパがヤツを引きつけてくれてる間に態勢を立て直せ!! ヤツを仕留めるぞ!」

 461さんの声で皆が立ち上がる。彼は、全員に指示を出しながら僕の元へ走って来た。

「今の戦闘を見てたろ? ヤツを力押しで殺し切るのはもう無理だ。時間魔法の発動モーションを潰すのは対策されたからな」

 さっきコメントで言っていたな……ヤツは体内にマナを溜め込むからあのヒレを破壊してもまだ巻き戻しができるって。そうか、僕達の攻撃に対応して……クソッ、もっと早く押し切れていたら……。

 自分の不甲斐なさに悔しくなる。僕がもっと役に立っていればこの状況にはならなかったかもしれないのに……。

「そんな顔すんな。まだこっからだ」

 そう言うと461さんはエモリアの頭部を指差した。

「お前にやって貰いたい事がある。エモリアとイシャルナを分離して欲しいんだ」

 エモリアとイシャルナを分離……?

「お前も時壊魔法で巻き戻しが使えるだろ? 俺達が過去から帰って来てそれほど時間は経ってない。なら、できるんじゃないか?」


 彼の隣にいたアイルさんが口を開く。

「エモリアはイシャルナを核としてこの世界に顕現してるはずよ。その核を抜き取れば、エモリアは一気に弱体化すると思うの。時間魔法の発動もできない。アイツが出現した瞬間を見ていた私達なら……分かるはずよ」

 エモリアが現れた瞬間を思い出す。イシャルナが自分で命を絶って、それを光の球体が包み込んだ。それからあの竜のような姿に……。

「確かに……そうだ。そうだった」

 アイツはそれから初めて時間魔法を発動したんだ。もしイシャルナを取り込む前に時間魔法が使えたのなら、僕達をイシャルナと戦った時まで巻き戻して、それからイシャルナが勝つように仕向けたはずだ。

 エモリアの額を見る。彫像のようになったイシャルナの上半身。461さんは過去から戻って来てからそれほど時間は経っていないと言った。という事は、イシャルナがヤツに取り込まれてからもそれほど時間が経っていないということ……今ならまだ、巻き戻しでイシャルナを分離できるはずだ。

「俺とアイルで考えた作戦でいく。シン、お前がイシャルナを分離して、俺達がエモリアを消滅させる」

 461さんにバンと肩を掴まれる。

「1番危険な役割になっちまうが……頼めるか?」

 461さんのヘルムが真っ直ぐ僕を見つめる。ふとタルパちゃんの方を見ると、彼女も頷いてくれた。僕がみんなのために……。


 ……。


「はい、やります! 絶対にやってみせます!」

「よし! ありがとな。シン!」


 461さんが僕の肩をもう一度叩き、みんなへ作戦を説明に走って行く。


 僕達は、最後の攻撃に出ることにした。




◇◇◇

 ドローンはエモリアとイァク・ザァドを中心に旋回していて、コメントもそれについて流れてる。さっきアイルさんが「シィーリアを撮影対象から外して設定してる」と言ってたから、その影響か。

 ジークリードさん、ミナセさん、それにシィーリアさんと一緒にエモリアに向かう。イァク・ザァドと戦っているエモリアは、まだ僕らには気付いていない。僕は、カバンからナーゴさんの特製ドリンクを飲んで魔力を回復させた。

 ……これで魔力は回復した。後はエモリアの頭部にたどり着いて時壊魔法を使うだけだ。


 ──時壊魔法の「巻き戻し」……他者への巻き戻しは大量の魔力を消費する。魔力を全て使い切るつもりでいけ。

 分かってる。絶対に決めてみせる。


 内なる声の九条にそう告げると、袖をクイクイと引かれている事に気付く。下を見るとシィーリアさんがそこにいて、ニッと笑顔を向けてくれた。

「案ずるなシン。お主は妾達が絶対に送り届けてやるからの」

「ああ、俺とミナセがいれば次元魔法は無力化できる」
「そ! しっかり守ってあげるからね!」

 ジークさんにミナセさんも……みんなが僕を弱気にさせまいと声をかけてくれている。大丈夫。僕は1人じゃない。絶対やり遂げてみせる。

「皆さん……ありがとうございます」


 ──……。


 タルパちゃんのイァク・ザァドが魔法を連続で放ち、エモリアを押し始めた時、シィーリアさんが僕らを横目で見た。

「よし、一気に近付くのじゃ!!」

 4人でエモリアへ駆け抜ける。エモリアに後少しまで迫った時、ヤツの眼がギョロリと僕らを見つめた。流石に気付くよな……ここからが本番か。

「キィアアアアアアアアア!!!」

 エモリアが僕達を近付けさせないように広範囲の次元球を放つ。

「ミナセ!!!」
「分かってる!!」

 ジークさんの声でミナセさんが障壁魔法を展開する。障壁魔法が小型の次元球を防いでいく。

 エモリアの元までやってくると、ミナセさんはエモリアの意識を分散させる為に攻撃へ移り、ジークさんがエモリアの体を蹴って頭部を目指した。

 僕達もジークさんの後に続いてエモリアの体を登り始める。シィーリアさんに手を取られ、その力に引っ張られるように上へ。伝わる浮遊感、その高さに怖がってる暇は無い。僕は僕の役割を果たすんだ。

 エモリアが虹色に輝くヒレで僕達を薙ぎ払おうとする。僕達に襲いかかる2つのヒレ。先行していたジークさんが剣を抜いた。


「今の俺を……魔剣グラムを手にした俺を止められると思うなよ!!!」


 閃光が発動した証、ジークさんの体が青い光を帯びる。彼が剣を振るうと、襲いかかるヒレが真っ二つに切り裂かれた。彼は身を翻して波動斬を放ち、もう一枚のヒレも切断する。

「ギィアアアアアアアアアア!!!?」

 絶叫を上げるエモリア。時間神が残りのヒレを広げ、周囲からマナの吸収を始めた。ヤツの全身から黒い波動が溢れ始める。

「また時間魔法を使う気か……!?」

 ──時止め……このままだとまともに食らうぞ。

 九条の声が脳内に響く。彼の言う通り、黒い波動はエモリアの周囲で増幅され、今にも放たれそうになっていた。


「シン君!!」
「「「キュオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!」」」


 タルパちゃんの声が聞こえたと思った瞬間。イァク・ザァドが突撃し、その3つ首でエモリアの首と、2枚のヒレへ喰らい付いた。


「キィ゛!!?」


鯱女王オルカはそっちのヒレをお願い!!」
「いちいち言わなくても分かってる!!」

 鯱女王が流激爪アクアクロウでヒレを切り裂き、最後のヒレをアイルさんが炎渦魔法ブレイジングストームで燃やし尽くす。


「キィア゛アアアアアアアアアアアアアア!!!??」


 エモリアが絶叫を上げる。ヒレの根本が明滅し、黒い波動が収まっていく。エモリアは、自分の体の再生に時間魔法を集中させたみたいだ。


「皆が時間を稼いでくれた!! 行くのじゃシン!!」
「はい!!!」

 空中でクルリと回転したシィーリアさんが僕を投げ飛ばす。吹き飛ぶように空中に飛び上がり、ヤツの頭上に辿り着く。下を見下ろすと、額に埋め込まれたイシャルナの上半身が見えた。

「アレだ!!!」

 魔力を解放する。アレを時間魔法で巻き戻せば、ヤツは殺せるハズ──


 ──そう考えた瞬間。エモリアは自分の目元へ向けて2つの次元球を放った。


「ギィ゛、ア゛ァ!?」


「アイツ……何を!?」

 ──自分から触角を破壊して思念の流入を止めやがったのか……!!


「ギィアアアアアアアアアアアアァァァァ!!!!」


 血を流しながらエモリアがイァク・ザァドの左の首に喰らい付く。そのまま次元球を放ち、イァク・ザァドの首の1本を消し飛ばしてしまう。仰け反るイァク・ザァド。エモリアが体を回転させて尻尾を薙ぎ払い、攻撃を仕掛けていたみんなは後方に吹き飛ばされてしまった。



〈うわああああああああああ!?〉
〈往生際が悪すぎる!?〉
〈みんな大丈夫なんだ!?〉
〈ミナセちゃんが障壁魔法使ったからなんとか……〉
〈でも体勢立て直されちゃうって!〉
〈触角以外回復しちゃったお!?〉
〈ヤバいって!!〉
〈コメントの効果が……防がれた:wotaku〉
〈461さんどこにいんの!?〉
〈どこにもいないぞ!?〉


 悲痛なコメントが流れていく。そのコメントの奥から、エモリアがギロリと僕を睨み付ける。ヤツは目を血走らせながら口元に魔法陣を浮かび上がらせ、巨大な次元球を出現させた。


「なんだよあのサイズ!?」


 怒りの籠ったエモリアの目。決してイシャルナを奪わせないという強い意志に、背筋が凍るような感覚がした。


「キァアアアアアアアアアア!!!!」


 エモリアの絶叫と共に次元球が放たれる。迫る次元球、逃げ場の無い状況の中で、時間が急激に遅く感じる。


 ダメだ、あのサイズは避けられない……!?


 ──まだだ。まだ手は……ある!!!


 内なる九条の声が聞こえた瞬間。目の前が真っ黒に染まり、僕の意識が後方に吹き飛ばされる。自分の体を客観的に見ているような視界。以前見たことのある視界。僕の体を半透明の黒球体が包んでいて、その内側は時間が止まっているように見えた。


 ──これは……体を奪われた時の!?


 自分の声が内なる九条の声と同じ反響を持つ。これを僕は知っている。九条が僕から体を奪い返した時の現象と同じだ……。


 次元球が僕を包む球体へ直撃する。しかし、次元球は何事もなかったかのように僕達の体をすり抜けた。その直後、漆黒の球体が消え、中から僕のよく知る男が現れる。黒いスーツを着た男。僕が大人になった時の姿……九条アラタが。


「体を入れ替える時、俺達の周囲の空間は時を止める。止まった時間はどんな魔法も傷つけることはできない……これが、奥の手だ」


 ──それで体を入れ替えたのか……。


「ちゃんと返してやるからよ!!! 今だけ使わせろ!!!」


 九条がエモリアの額に落下しながら手を翳し、魔法を発動する。


時壊魔法タイムクラッシュ!!!」


 瞬間、悲鳴のような声が周囲へ響き渡る。時壊魔法の巻き戻しを、エモリアが時間魔法で押し返そうとしてくる。


「ぐ……っ!! まだ抵抗しやがるか……!!」

 九条がエモリアの額に着地する。彼がイシャルナに手を伸ばすけど、その手を拒絶するように押し返される。巻き戻した時間が引き戻される。周囲に響き渡る悲鳴は、女性の叫びのように聞こえた。


 ヤメテ。


 キズツケナイデ!


 ヒテイシナイデ!!


 イジメナイデ!!!


 ダレカアイシテ!!!!


 ワタシタチヲ……ワタシヲ……イッショニイサセテ……。


 悲鳴のような声。それは恐らくエモリアの声ではなく……取り込まれていたイシャルナの声。エモリアは思念を読む。今までの鳴き声は、イシャルナの叫びだったのかも……。


「イシャルナ!!」


 その時、声が聞こえた。声の方を向くと、アイルさんがエモリアの足元まで駆け寄っていて、イシャルナへと声をかけていた。


「私はアナタの事嫌いじゃないわ! だって……最後の瞬間、私に謝ってくれたでしょ?」


 エモリアの尾が彼女へ叩き付けられる。


 ──アイルさん!!


 しかし、その尾は彼女に触れる直前でピタリと動きを止めた。アイルさんは目を逸らさずイシャルナを見つめていて、言葉を続けた。


「アナタがした事は許せない。だけど……私はまだアナタの事を何も知らないわ! 知らないまま倒して終わりなんて、嫌だよ……死んじゃったら、何を考えていたのか分からないから……」

 アイルさんが涙を浮かべる。彼女は、一瞬だけ九条を見た。アイルさんは……お父さんともう話す事ができない彼女だから、そう思ったのかも……。


「だから教えて! アナタに何があったのか……私はアナタの事を知りたいの! だから、自分だけで決め付けないで……」


 アイルさんがそう叫んだ瞬間、イシャルナの時間がゆっくりと巻き戻っていく。全身を覆っていた銀色の液体は、氷が溶けるように流れ落ちていった。九条が取り込まれていたイシャルナを全力で引き上げる。

「賢人、お前の娘は……強いな……俺とは比べ物にならないほどよ……」

 イシャルナが時間神の体から完全に抜け出す。九条が彼女を抱えると、彼を通して僕にもイシャルナの温もりが伝わった。九条の時壊魔法は、自死を選んだイシャルナを死ぬ前まで巻き戻して……この世界に呼び戻したのか……。

 彼は、眠っているイシャルナに向かって寂しげに呟いた。


「アンタも俺も、知らなきゃいけねぇ事があったんだよ。こっからは贖罪だ……お互いな」


 ──九条……。


「体、貸してくれて・・・・・・ありがとな」


 九条がエモリアの体から飛び降りる。ボロボロになったイァク・ザァドが受け止めるように九条を中央の頭に乗せた。

 九条がどこかを見つめる。その視線を追うように頭上へ目を向けると、視線の先──エモリアの頭上には461さんがいて、聖剣アスカルオで僕を襲った次元球を吸収していた。


〈461さん!?〉
〈得意の落下攻撃!!!〉
〈これ狙ってたんかよ!!〉
〈なんかエモリア弱ってるぞ!?〉
〈さっきまでだったらもう回復してたもんな!〉
〈少女の言葉が届いたのだろう。これほど嬉しいトキメキは無い〉
〈なんだか詩的ですわ!〉
〈良い事言うじゃん!!〉
〈!!!?!?!? しししし紳士だからなななな(´・ω・`)シシシンシ〉
〈マスターテンパってて草w〉
〈集中しろよ!〉
〈でも行けるんちゃう!?〉
〈マジ!?倒せる!?〉
〈行け!!〉
〈倒してにゃ!ヨロさん!!〉
〈行けると思う〉
〈倒せえええええええ!!!〉


「俺が言えたギリじゃねぇが……頼む461。俺が彷徨った時間を……ぶっ壊してくれ」


 ポツリと呟く九条。僕らの目の前を膨大なコメントが流れていく。みんな461さんの事を見てる。僕も、アイルさんも、タルパちゃんもそうだ。九条も……。


 みんな461さんがいて、一緒に戦ったり、冒険したからここにいるんだ。みんな461さんの事を応援してる。みんな461さんの事が大好きなんだ。


 ──だから461さん、勝って。



「うおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアア!!!!」


 1人1人が声援を送るコメント。そのコメント達を貫きながら461さんが落下する。


〈461さん来たああああああああああああ!〉
〈っぱ461さんやね!!〉
〈いけるぞおオオオオオオオオ!!!〉
〈これで完全攻略だお!!〉
〈いけるのだ!〉
〈倒せるのだ!!〉
〈決めるのだ!!!〉
〈好きなのだ!!!!〉
〈なんやて!?〉
〈ちょ!?やめろパララ!!!〉
〈名前を出してはいけません!!〉
〈パララもん……そうやったんかwwww〉
〈私は武史が好きよ!!!!〉
〈ヒェ!?え、遠慮するで……〉
〈別の告白がwwww〉
〈ヤバイ!!461さん技使うぞ!?〉
〈461さんがんばるんだお!(^ω^)オッ!〉
〈次元魔法吸収して聖剣が偉い事に……www〉
〈ビームソードかよ!?〉
〈敵の魔法威力高すぎるからねしょうがないね〉
〈頼む!!決めてくれ!!!:wotaku〉


 461さんの雄叫びが響く。最後の力を振り絞ったようにエモリアが461さんに喰らい付こうと牙を向けた。


「キィア゛アアアアアアアア!!!!」


〈!!!?!?!?!?〉
〈うああああああああああああ!?〉
〈まだ攻撃する気かよ!?〉
〈あ、アスカルオあるから大丈夫だよな!?〉
〈物理は防げないって!?〉
〈食われる!?〉
〈誰か止めろ!!〉
〈大丈夫なんだ!!〉
〈何が!?〉
〈適当言うな!!〉
〈あそこにいるからなんだ!!!〉
〈だから何が!?〉


 焦ったコメントが流れる中、大爆発が起こった。巻き起こる爆風。そこから水飛沫が舞い上がり、周囲に雨を降らせる。その中を……両腕を構えた鯱女王が吹き飛んで来た。


「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!!!」


〈!!?!?!!?!?〉
〈鯱女王!!?〉
〈来たアアアアアアアアアアア!!?〉
〈ヤババババババババババババ!!?〉
〈最高かよ!!〉
〈威力ヤバそう!!〉
〈これで勝てる!!!〉
〈461さん……鯱女王……がんばってぇ……〉
〈間に合うんか!?〉
〈間に合え〉
〈間に合え!!〉
〈間に合えええええええええええ!!!!〉
〈ルカさんなら絶対間に合うんだ!!(*^◯^*)シンジテルンダ!〉


 コメントに呼応するように、もう一度巻き起こる水の爆発。鯱女王がさらに加速し、エモリアの腹部に突っ込む。彼女の全力の突撃がエモリアの体に大穴を開ける。461さんを食い殺そうとしていたエモリアの大口は、悲鳴と共に再び開かれた。


「ギャアアアアアアアアアアアアァァァァ!!?」



「行けええええ!!! 461!!!」



 鯱女王が叫ぶ。461さんがエモリアの口内めがけて全力のストルムブレイドを放った。



「ラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」



 次元球を取り込んだ赤い斬撃が、エモリアの体内へ放たれる。



「キィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!?」



 耳をつんざくような悲鳴。エモリアの全身から光が溢れ出す。臨界点を迎えた時間神の体が、爆発し、周囲が白金色に包まれる。やがてそれが収まると、時間神エモリアの体は光の粒子となって空へと舞い上がっていった。


〈!!!?!?!?!??〉
〈うああああああああああああああ!!!〉
〈倒したあああああああああ!!!?〉
〈やべええええええええええ!!!〉
〈やりましたわ!!〉
〈良かった……みんな……〉
〈うにゃあああ~!!やったにゃあああ!!〉
〈勝者ファイ!!〉
〈お祝いなのだ!:8666〉
〈がんばったのだ!:8666〉
〈すごいのだ!:8666〉
〈嫌いじゃないわ!!嫌いじゃないわ!!〉
〈また尻が見れた〉
〈泣けてきたのだぁ……〉
〈しゃあねぇな~〉
〈俺もや!! みんなすごいで!!〉
〈良かったです。本当に……〉
〈感動したお!!(^ω^)オッ〉
〈みんな最高なんだ!(*^◯^*)ナンダ!〉
〈これほどのトキメキは無い(´・ω・`)シンシ〉
〈コテハントリオいて草w〉
〈拡散しないと!!〉
〈俺もツェッターに切り抜き上げて来る!〉
〈同接数……1000万!?〉
〈ヤバババババババババ!!?〉
〈みんな……よく休んでぇ……〉
〈ヨロイ君、アイル君……がんばったな:wotaku〉


「よっしゃあああああああああああ!!!! やったぜえええええええ!!!!」


 461さんが子供のようにはしゃぎ回る。鯱女王も少女のようにピョンピョン飛び跳ねる。そこにアイルさんやジークさん、ミナセさんが飛びかかってシィーリアさんは号泣しながらみんなに抱き付いていた。僕の体はいつの間にか九条から戻っていて、タルパちゃんと2人でみんなの輪の中へ飛び込んで、めちゃくちゃにはしゃぎ回った。

 それをコメントのみんなに見られていて、でも恥ずかしくなくて、最高な気分だって思った。

 周囲を埋め尽くすほどの膨大なコメントが461さんと僕達を包み込む。


 みんなが笑うその景色を、僕は一生忘れない。



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