2 / 54
ハルを待ちわび、カズを数える
02
しおりを挟む
「大きくなったら、僕のお嫁さんになってね」
「えっ、お嫁さん?」
「そうだよ。はるちゃんは可愛いお嫁さんになるよ。僕のお嫁さんになって?」
「はるでいいの?」
「当たり前だよ。はるちゃんがいい。好きだよ。僕、明日引っ越すけど、毎日遊びに来るから」
そして、俺は引越した。
約束通り、毎日通った。はるちゃんのお母さんは帽子を目深に被り、マスクをしたら俺の家に行っても良いと言ってくれた。相変わらず外では遊ばないでと言われたけれど、アパートの部屋より俺の家の方が広い。新しい家で隠れんぼしたりゲームしたり、楽しい時間だった。
ところが、突然はるちゃんが引っ越した。俺には何も告げずに。
泣きながら母さんにどうしてと聞いた。
「はるちゃんのお姉ちゃんが小学校に上がるから、受け入れてもらえる学校の近くに引っ越したんだって」
俺の家の近くにも勿論小学校はある。理解できない大人の事情は幼い俺を混乱させた。
「お嫁さんになってくれるって言ったのに」
母さんに抱きつき、泣きながら叫んだ。
「一登、はるちゃんと結婚するの?」
「そうだよ!お母さん知らないの?結婚したら、お嫁さんになるんだよ」
「一、はるちゃん、男の子だよ?」
「へっ?」
涙が引っ込み、今の言葉を頭の中で繰り返す。はるちゃんは男の子?
「嘘だ!あんなに可愛いのに!」
「でも、はるちゃんのお母さんに聞いたからね、本当だよ。一登が勘違いしてるかなって思ってたけど、まさか、お嫁さんとは…」
顔は見てないけど、きっと笑ってた。絶対に笑ってたと思う。
俺は引き下がらなかった。
「だって、スカートはいてたじゃない!」
「嫌がってたでしょ?お姉ちゃんのお下がりだから、どうしても女の子の服になるのよ。一登の着られなくなった服もあげたけど、一と遊ぶ時は着てなかったんでしょ」
……そして、俺の初恋はあっけなく終わった。
◆◆◆◆◆
「一登、ぼけっとしてないで準備はできてるの?」
意識を過去に…苦い思い出にタイムスリップさせていた。頭を現実に引き戻す。
「ああ、バッチリ。あとは母さんの厚塗…イッテーな、暴力反対」
「あんたが余計なこと言うからよ」
今日は高校の入学式だ。同じ中学の奴が十人くらいいるから特に緊張とかはしない。
…いや、多少のドキドキはある。中学に入る時も感じたこのドキドキははるちゃんがいたらどうしよう…と言う緊張だ。
男に告るって…俺の汚点でしかない。実は苗字もちゃんとした名前も知らない。『はるき』なのか『つぐはる』なのか。そもそも『はる』と名前に入っているのか?十年以上会わないのに顔を見てわかるわけないだろ?
名前もわからないのなら調べる術はない。俺の名前は知られている。はるちゃんが覚えていればの話だけど…。
なんか、モヤモヤする。覚えてるなよ!お前俺の事好きだったよな?なんてみんなの前で言われてみろ、いい恥さらしだ。あの可愛かったはるちゃんがどんな十年を過ごしたか知らないけど、どうかイケイケの兄ちゃんになってませんように。
…まあ、同じ高校の可能性の方が低い。DVなら父親から逃げて遠くに行ってるだろう。あの時は幼過ぎて理解できなかったけど、外で遊ぶことができなかったり、いつもスカートだったのは父親から逃げるためだ。もし、見つかれば…そう考えると、一歩も外に出したくなかったはずだ。だから、同じところには来ないだろう。
「一登、同じクラスなんてラッキーだな」
「俺はヤダね」
怒る坂口直樹に冗談だよと返しながら、前の席に座る小さい背中を見つめた。俺が一番じゃなかったことは今までない。相沢って苗字は『あ』から始まる苗字の奴がいても『荒木』や『青田』、『浅井』では俺の前にはきてくれない。全国的にみるとあるだろうけど、同じ学校で見たことない。
だから、初めてなんだ、二番。廊下に張り出されていた名簿の一番最初は『藍川 晴彦』はる…そんなわけないよな。
朝、母さんの一言で思い出してしまったから敏感になってるだけ。
「えっ、お嫁さん?」
「そうだよ。はるちゃんは可愛いお嫁さんになるよ。僕のお嫁さんになって?」
「はるでいいの?」
「当たり前だよ。はるちゃんがいい。好きだよ。僕、明日引っ越すけど、毎日遊びに来るから」
そして、俺は引越した。
約束通り、毎日通った。はるちゃんのお母さんは帽子を目深に被り、マスクをしたら俺の家に行っても良いと言ってくれた。相変わらず外では遊ばないでと言われたけれど、アパートの部屋より俺の家の方が広い。新しい家で隠れんぼしたりゲームしたり、楽しい時間だった。
ところが、突然はるちゃんが引っ越した。俺には何も告げずに。
泣きながら母さんにどうしてと聞いた。
「はるちゃんのお姉ちゃんが小学校に上がるから、受け入れてもらえる学校の近くに引っ越したんだって」
俺の家の近くにも勿論小学校はある。理解できない大人の事情は幼い俺を混乱させた。
「お嫁さんになってくれるって言ったのに」
母さんに抱きつき、泣きながら叫んだ。
「一登、はるちゃんと結婚するの?」
「そうだよ!お母さん知らないの?結婚したら、お嫁さんになるんだよ」
「一、はるちゃん、男の子だよ?」
「へっ?」
涙が引っ込み、今の言葉を頭の中で繰り返す。はるちゃんは男の子?
「嘘だ!あんなに可愛いのに!」
「でも、はるちゃんのお母さんに聞いたからね、本当だよ。一登が勘違いしてるかなって思ってたけど、まさか、お嫁さんとは…」
顔は見てないけど、きっと笑ってた。絶対に笑ってたと思う。
俺は引き下がらなかった。
「だって、スカートはいてたじゃない!」
「嫌がってたでしょ?お姉ちゃんのお下がりだから、どうしても女の子の服になるのよ。一登の着られなくなった服もあげたけど、一と遊ぶ時は着てなかったんでしょ」
……そして、俺の初恋はあっけなく終わった。
◆◆◆◆◆
「一登、ぼけっとしてないで準備はできてるの?」
意識を過去に…苦い思い出にタイムスリップさせていた。頭を現実に引き戻す。
「ああ、バッチリ。あとは母さんの厚塗…イッテーな、暴力反対」
「あんたが余計なこと言うからよ」
今日は高校の入学式だ。同じ中学の奴が十人くらいいるから特に緊張とかはしない。
…いや、多少のドキドキはある。中学に入る時も感じたこのドキドキははるちゃんがいたらどうしよう…と言う緊張だ。
男に告るって…俺の汚点でしかない。実は苗字もちゃんとした名前も知らない。『はるき』なのか『つぐはる』なのか。そもそも『はる』と名前に入っているのか?十年以上会わないのに顔を見てわかるわけないだろ?
名前もわからないのなら調べる術はない。俺の名前は知られている。はるちゃんが覚えていればの話だけど…。
なんか、モヤモヤする。覚えてるなよ!お前俺の事好きだったよな?なんてみんなの前で言われてみろ、いい恥さらしだ。あの可愛かったはるちゃんがどんな十年を過ごしたか知らないけど、どうかイケイケの兄ちゃんになってませんように。
…まあ、同じ高校の可能性の方が低い。DVなら父親から逃げて遠くに行ってるだろう。あの時は幼過ぎて理解できなかったけど、外で遊ぶことができなかったり、いつもスカートだったのは父親から逃げるためだ。もし、見つかれば…そう考えると、一歩も外に出したくなかったはずだ。だから、同じところには来ないだろう。
「一登、同じクラスなんてラッキーだな」
「俺はヤダね」
怒る坂口直樹に冗談だよと返しながら、前の席に座る小さい背中を見つめた。俺が一番じゃなかったことは今までない。相沢って苗字は『あ』から始まる苗字の奴がいても『荒木』や『青田』、『浅井』では俺の前にはきてくれない。全国的にみるとあるだろうけど、同じ学校で見たことない。
だから、初めてなんだ、二番。廊下に張り出されていた名簿の一番最初は『藍川 晴彦』はる…そんなわけないよな。
朝、母さんの一言で思い出してしまったから敏感になってるだけ。
11
あなたにおすすめの小説
推し変なんて絶対しない!
toki
BL
ごくごく平凡な男子高校生、相沢時雨には“推し”がいる。
それは、超人気男性アイドルユニット『CiEL(シエル)』の「太陽くん」である。
太陽くん単推しガチ恋勢の時雨に、しつこく「俺を推せ!」と言ってつきまとい続けるのは、幼馴染で太陽くんの相方でもある美月(みづき)だった。
➤➤➤
読み切り短編、アイドルものです! 地味に高校生BLを初めて書きました。
推しへの愛情と恋愛感情の境界線がまだちょっとあやふやな発展途上の17歳。そんな感じのお話。
【2025/11/15追記】
一年半ぶりに続編書きました。第二話として掲載しておきます。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/97035517)
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
もしも願いが叶うなら、あの頃にかえりたい
マカリ
BL
幼馴染だった親友が、突然『サヨナラ』も言わずに、引っ越してしまった高校三年の夏。
しばらく、落ち込んでいたが、大学受験の忙しさが気を紛らわせ、いつの間にか『過去』の事になっていた。
社会人になり、そんなことがあったのも忘れていた、ある日の事。
新しい取引先の担当者が、偶然にもその幼馴染で……
あの夏の日々が蘇る。
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
未完成な僕たちの鼓動の色
水飴さらさ
BL
由人は、気が弱い恥ずかしがり屋の162cmの高校3年生。
今日も大人しく控えめに生きていく。
同じクラスになった学校でも人気者の久場くんはそんな由人に毎日「おはよう」と、挨拶をしてくれる。
嬉しいのに恥ずかしくて、挨拶も返せない由人に久場くんはいつも優しい。
由人にとって久場くんは遠く憧れの存在。
体育の時間、足を痛めた由人がほっとけない久場くん。
保健室で2人きりになり……
だいぶんじれじれが続きます。
キスや、体に触れる描写が含まれる甘いエピソードには※をつけてます。
素敵な作品が数多くある中、由人と久場くんのお話を読んで頂いてありがとうございます。
少しでも皆さんを癒すことができれば幸いです。
2025.0808
【BL】腐れ縁の幼馴染と、キスから始まる恋もある?【幼馴染同士・隠れ執着攻×鈍感受】
彩華
BL
家が近所で、幼馴染。そんな関係の俺たち。
兄弟のように思いながら、途中から弟のように思っていた幼馴染──圭介が、モテ始める。小さい頃、俺のことが好きだと言っていたのが嘘のようだ。
おっと、それは良い。(羨ましいけど)
俺にもきっと、恋の春はやって来る。そう思っていたのに、モテ期はやって来ない。中学、高校を過ぎ。流石に大学では、圭介との腐れ縁も切れるだろうと思っていたのに!!
「遠野さん、この清算をお願いします」
「……分かりました」
どういうわけか、社会人になっても俺と圭介の腐れ縁は続いたままで……────!?
********
外面と顔が良い攻めと、鈍感受け幼馴染BL。
お気軽にコメント頂けると嬉しいです。そこまで長くならないのでは?と思います。あと健全の予定
表紙お借りしました。
本年も宜しくお願い致します。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる