はるを待ちわび、かずを数える

茉莉花 香乃

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ハルを待ちわび、カズを数える

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藍川がはるちゃんだったとして…いや、もしはるちゃんじゃなかったらどうする?この気持ちを誤解だったと切り捨てられるのか?大体、小さなはるちゃんはいないんだから。

俺も成長した。はるちゃんも大きくなった。はるちゃんじゃなかったらこんな不毛な気持ちは綺麗さっぱり忘れてしまいたい。

じゃあ、はるちゃんなら打ち明けるのか?この恋心を。

…恋?
恋なのか?
固執してるだけかもしれない。

「ああっ!」
「ど、どうしたの?」
「わ、悪い」

つい大きな声を出してしまった。後ろや横の席の奴も顔を向けてどうしたよ?と覗き込む。取り敢えず、このオリエンテーションの間は考えないようにしよう。

いつもは一番と二番は班も何もかもが同じだったけど、今まで話したことない人とも仲良くなるようにとバス以外は全てのカリキュラムで藍川とは離れる。部屋も、食事も、登山も。

ハイキングに毛の生えたような登山がある。天候の都合で変更の可能性もあると説明を受けていたけれど、天気予報は晴れ。予定通り行われるだろう。ダルい。スタミナはあるから俺にしてみたら軽いことだけど、班行動で女子に付き合ってゆっくり進む。それが何より苦痛だ。いっそのこと雨が降れば体育館で何かしらのゲームをするらしいのでそっちの方が良い。藍川の面倒なら喜んで…いやいや、考えないと決めたばかりなのに。

何をしてても、いつも目の前にあった小さな背中を探してしまう。サラサラで触りたいなと思いながら見ていた短めの少し茶色い髪は、割と目立つ。身長が同じくらいの女子に紛れても直ぐに見つけてしまう。

いけないと思い目を逸らす。まさかその逸らした視線を悲しそうに藍川が見ているなんて知らなかった。

「相沢、俺たち次、風呂だって」
「ありがと。行こっか」

着替えとタオルを持って風呂場に向かう。廊下の向こうから藍川が頬をピンクに染めて、いつもはサラサラしている髪を濡らして歩いてくる。目が離せない。

ちゃんと拭かなかったら風邪を引く。拭いてやりたい。でも、声をかけることができなかった。同じ班の奴とたわいない話をしながら横を通り過ぎる。藍川も一人じゃない。会話には入ってないみたいだけど、まるで守られているようにみんなの真ん中にいる。

「ここ女風呂だ。覗けるかな?」
「やめとけ」
「そうだよ。もし、覗けても先生に見つかったら、あと二日ずっと説教だぞ」

…風呂……。
一緒に入れば黒子を確かめることができただろうか?いや、だから!考えないんだろ?

悶々としながら布団に入る。明日は朝食の後、登山だ。いつまでもしゃべってる奴もいたけど、俺は会話には加わらなかった。考えるのは藍川の事ばかり。考えないと決めたのに、ふっと浮かぶのはピンクの頬。ちゃんとみんなに溶け込んでるかな?人見知りみたいだから心配だ。これじゃ、親の心境なのか?

朝食の時、「あい…ってさ…可愛い……風呂……黒子があんなとこ……」コソコソ話す声が俺の後ろから聞こえる。あい?藍川の事なのか?黒子?自然に見えるように後ろを向くと、昨日藍川と一緒に歩いてた奴らだ。藍川はそこにはいない。みんなから遅れて食堂に入ってきた藍川。小走りに近寄り、俺の後ろの席に座った。聞き耳を立てて後ろの話を聞こうとするけど、それから藍川の事も藍川の声も聞くことはできなかった。

「相沢くん、わたしぃ、体力ないから、よろしくね」
「頑張れ」
「なんか、冷たぁい」
「そうか?普通だよ」

俺が素っ気なく返したからか、今度は女子同士で頑張ろうねとか言ってる。本当に頑張れよ。荷物持ったり、手を引いたり…手伝う気なんかないからな。

順番に出発する。全体的になだらかな山だけど、一部で岩肌が剥き出しになってたり、すれ違うのがやっとの細い道もある。一度に大勢だと事故の元だ。俺たちの班は藍川の班の次に出発する。ちょっと、顔色が悪いような気がする。昨日、髪の毛ちゃんと乾かさなかったから風邪でも引いたのか?
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