はるを待ちわび、かずを数える

茉莉花 香乃

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ハルが咲く、向日葵と笑顔カズ知れぬ

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「言いなさいよ!」
「俺はてっきり菜月に会いにここに来てると思ってたから…」
「はあ?一登くんがわたしに?」
「おう。違うのか?」
「今の見たでしょ?」
「そ、そうだな」
「でも、一登くんがわたしに会いに来てると思ってたとして、どうして襲うのよ」
「だって、お前…言っただろ?今は無理って」

どうやら今村は菜月さんに告白して振られたようだ。振られたのに付きまとう。最悪な奴。ストーカーか?

とは言え……、
「菜月さん?」
「何?」
「俺たち邪魔?」
「そんなわけないじゃない」
「俺は邪魔……やっ、ごめん」

デジャブ…。
菜月さんに睨まれて今村は口をつぐんだ。

「わたしに謝る前に、一登くんに謝りなさい」
「…わかったよ。悪かったな」

チラリと俺を見て微かに頭を下げた。おざなりなその態度に、菜月さんはパシリと今村の頭を叩き、叩いた手をさする。

「痛いじゃない!」
「お前が叩いたんだろ?痛いのは俺だよ」
「なっちゃん、今村先輩と何があったの?」
「何でもいいじゃない」
「なっちゃん?」
「俺が告ったんだ、好きだって。そしたら『わたしも好きだけど、今は無理』って返事で。好きだって言われて断られたら、諦めることもできやしない」
「そんなこと、ここで言わなくても良いのに…」
「菜月が言えって言ったんだろ?誰かにしつこくされてて俺に迷惑かけるからかなとか、色々考えて。ここ見てたら、そいつがお前ん家に入ってくから…それも頻繁に。最近じゃ毎日だ。だからてっきり、菜月に…」

はるちゃんは二人の話を聞きながら俺から身体を起こした。怪我をした手首を気にしながらも手は離さなかった。繋がる手にギュッと力を込める。

「なっちゃん、僕のせい?」
「春は関係ないよ。わたしが…」
「僕はなっちゃんにとってお荷物なの?僕が頼りないからお姉ちゃんは恋もできないの?」
「春は関係ないって言ってるでしょ?」
「だって……、かずくんにしたことは許せないけど、今村先輩可哀想……」
「春彦…悪い。…ありがとな。どうして断られたかわかんないけど…俺、待ってるわ。それで良いだろ?菜月。来年受験だし、あまり浮かれるのもダメだしな。たださ、俺を頼ってくれよ。好きなんだ。お前が越して来てから、二年半ずっと。だから、俺の気持ちは菜月だけだ」

菜月さんが今村の事を好きなら、どうして断る?やっぱりはるちゃんの事が心配だからなのか?俺が居るのに。暴走気味な奴だけど、菜月さんの事は真剣みたいだから付き合っちゃえば良いのに。こいつなら菜月さんの弱い部分もわかってるんじゃないかな。

ここ数ヶ月悩まされてた不審者が恋煩いの勘違い野郎で、俺の手首の打ち身だけで済んでひとまず安心だ。はるちゃんに危害を加える心配がなくなってホッとする。

「はるちゃん好きだよ」
「ん?どしたの?僕も大好き」

菜月さんは今村を家まで送って行った。女が男を送るのは変だけど直ぐそこだ。俺たちが二人きりになるにはこの二人を追い出さなければならない。無理やり背中を押してアパートから出てもらった。今村は喜んで菜月さんを連れ出してくれた。

「今度の休みにデートしないか?バイト休める?」
「うん。一週間前に言っとけば。どこか出掛けるの?」
「うん。どこに行こうか?」
「僕はどこでも、かずくんと一緒なら…ほら、この前のホテルでも…」

真っ赤な顔で俺のズボンを掴む。

「それも良いな。でも、今度ホテルなんて行ったら、今度こそはるちゃんを襲ってしまいそうだ」
「僕は…、僕はかずくんになら良いって言ったよ?」
「はるちゃん…、ありがと。嬉しいよ。でも、はるちゃんが大事なんだ」
「うん」
「だから、無理しなくても良いよ」
「無理なんて…」
「嘘だ。怖いだろ?」
「そりゃ、怖いよ。でも…」
「わかった。じゃあ、少しだけ先に進もうか?」
「先って……何?」
「調べたんだろ?男同士のヤリ方」
「う、うん」
「はるちゃんの中に挿入る準備……の練習?」
「う……」

俺に抱きつき頭をグリグリ押し付ける。

「はるちゃんにはいつも笑顔でいて欲しいんだ。大切にするから」
「嬉しい」

顔を上げたはるちゃんは俺が望んだ可愛い笑顔だった。
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