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ハルと言えば一、カズと言えば春
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「はるちゃん、話があるんだ」
『どうしたの?』
「うん。二人の事」
『二人?』
「俺とはるちゃんの事」
『えっ?えっ…何?』
途端に声に湿り気が混じる。
「春彦、大丈夫だよ。怖いことは何もないから」
『ホント?』
「本当だよ。だから泣かないで。ああっ、今から行くよ」
何かを察したのか、電話の向こうのはるちゃんは涙声になってた。きっと、二人の仲を反対されたと思ったのだろう。早く抱きしめて不安を取り除いてあげたい。
安心させたかったのに、逆に不安にさせてしまった。失敗した。早く伝えたかったから、焦ってしまった。
出かける時、母さんにはるちゃんに会いに行くと言うと『あらあら』と呆れられた。でも、笑顔で送り出してくれた。階段を二つ飛ばしで駆け上がる。
「かずくん!早かったね」
「そりゃ、俺、陸上部だし?」
はるちゃんは扉の前で待っててくれた。
「ちょっと出られる?ああ、俺が言うよ」
中にいる菜月さんにはるちゃんを連れ出すことを伝えると、不信感いっぱいの目で見られた。なんとか許してもらい近くの児童公園に行く。
少しの遊具とベンチ、走り回れる土の広場。周りを囲う金網が、子供のいない夜の公園を俺たち二人だけの空間にする。
海浜公園で麻里子に見られていたことから、父さんと母さん、兄さんと麻里子に認めてもらったことを伝えた。
あの時父さんはわかったと言ってくれた。
『一登が正直に言ってくれて嬉しかったよ。若いと大切なことを蔑ろにしがちだ。ウザいとかすぐに言うしな。お前たち世代にとって親に付き合いをどうこう言われるのはウザいことなんだろ?それなのに…まあ、後にはなったけど、それでもこうして言ってくれたということは、それだけ春彦くんの事を真剣に考えてるってことだろ?』
はるちゃんはさっきとは違う涙を流す。
「良かった…本当に良かった。もう会うなって言われたのかと、凄く怖かった」
夜の児童公園でキスをした。公園の周りは住宅街で誰の視線があるかわからないから直ぐに離れた。でも手は繋いだまま。
「好きだよ、春彦」
「かずくん…僕も好き」
「一登って呼んで?」
「……一登、好き」
はるちゃんは手を強く握り返した。街灯に照らされた顔は、輝く笑顔だった。
次の休みに、はるちゃんは俺の家族と共にある。
「あの…ごめんなさい」
緊張しているはるちゃんは、リビングに入った途端に頭を下げた。
「あら、春彦くん。謝らなくても良いのよ」
「そうだよ、はるちゃん」
「でも…。僕が一登くんに会わなかったら…」
「春彦くん、一登はあなたに会わなかったら、きっと誰もちゃんと好きにならなかったと思うの。だから、ね?」
「母さん…」
まさかこんなふうに思っててくれてるとは考えてもなかった。
そうかもしれない。はるちゃんと会ってなかったら、いつまででも小さなはるちゃんを想い、目の前の人に全てを預けることができなかったかもしれない。
でも、再会した。
それははるちゃんが会いたいと望んでくれたから。なんだ、俺ははるちゃんの掌の中だったんだ。じゃあ、必然の再会だ。もう離れることはできない。
「一登に愛想尽きたら、春彦くんは俺が引き受けるから」
「ゆう兄!」
「悠太!あなた、何を?」
「ははっ、冗談だよ」
いいや、冗談じゃない。あの目は真剣だった。はるちゃんの事、好みだって言ってたんだ。はるちゃんを抱きしめ兄さんの視界から隠した。
「はるくん、可愛い。真っ赤だよ」
「悠太、悪い冗談なんか言ったらダメじゃないか。ほらほら、母さん、お昼にしよう」
「あら、そうね」
「あっ、手伝います」
「あたしも~」
「俺も~」
「一登は良いわ。キッチンが狭くなる」
なんだよ!俺もはるちゃんと料理したい。母さん、はるちゃん、麻里子の三人はキッチンに立つ。今日の昼飯はなんだろうか?こちらの三人はスマホ片手にテレビを見つつ、ボソボソと会話する。
「ゆう兄、止めてくれよ」
「わかってるって」
「ホントかよ」
兄さんの事はともかくここまで家族に認められて嬉しい。はるちゃんに対する態度が、今までと変わりないのが何より安心した。
これからのことなんてわからない。でも、はるちゃんと離れることは考えられない。
『どうしたの?』
「うん。二人の事」
『二人?』
「俺とはるちゃんの事」
『えっ?えっ…何?』
途端に声に湿り気が混じる。
「春彦、大丈夫だよ。怖いことは何もないから」
『ホント?』
「本当だよ。だから泣かないで。ああっ、今から行くよ」
何かを察したのか、電話の向こうのはるちゃんは涙声になってた。きっと、二人の仲を反対されたと思ったのだろう。早く抱きしめて不安を取り除いてあげたい。
安心させたかったのに、逆に不安にさせてしまった。失敗した。早く伝えたかったから、焦ってしまった。
出かける時、母さんにはるちゃんに会いに行くと言うと『あらあら』と呆れられた。でも、笑顔で送り出してくれた。階段を二つ飛ばしで駆け上がる。
「かずくん!早かったね」
「そりゃ、俺、陸上部だし?」
はるちゃんは扉の前で待っててくれた。
「ちょっと出られる?ああ、俺が言うよ」
中にいる菜月さんにはるちゃんを連れ出すことを伝えると、不信感いっぱいの目で見られた。なんとか許してもらい近くの児童公園に行く。
少しの遊具とベンチ、走り回れる土の広場。周りを囲う金網が、子供のいない夜の公園を俺たち二人だけの空間にする。
海浜公園で麻里子に見られていたことから、父さんと母さん、兄さんと麻里子に認めてもらったことを伝えた。
あの時父さんはわかったと言ってくれた。
『一登が正直に言ってくれて嬉しかったよ。若いと大切なことを蔑ろにしがちだ。ウザいとかすぐに言うしな。お前たち世代にとって親に付き合いをどうこう言われるのはウザいことなんだろ?それなのに…まあ、後にはなったけど、それでもこうして言ってくれたということは、それだけ春彦くんの事を真剣に考えてるってことだろ?』
はるちゃんはさっきとは違う涙を流す。
「良かった…本当に良かった。もう会うなって言われたのかと、凄く怖かった」
夜の児童公園でキスをした。公園の周りは住宅街で誰の視線があるかわからないから直ぐに離れた。でも手は繋いだまま。
「好きだよ、春彦」
「かずくん…僕も好き」
「一登って呼んで?」
「……一登、好き」
はるちゃんは手を強く握り返した。街灯に照らされた顔は、輝く笑顔だった。
次の休みに、はるちゃんは俺の家族と共にある。
「あの…ごめんなさい」
緊張しているはるちゃんは、リビングに入った途端に頭を下げた。
「あら、春彦くん。謝らなくても良いのよ」
「そうだよ、はるちゃん」
「でも…。僕が一登くんに会わなかったら…」
「春彦くん、一登はあなたに会わなかったら、きっと誰もちゃんと好きにならなかったと思うの。だから、ね?」
「母さん…」
まさかこんなふうに思っててくれてるとは考えてもなかった。
そうかもしれない。はるちゃんと会ってなかったら、いつまででも小さなはるちゃんを想い、目の前の人に全てを預けることができなかったかもしれない。
でも、再会した。
それははるちゃんが会いたいと望んでくれたから。なんだ、俺ははるちゃんの掌の中だったんだ。じゃあ、必然の再会だ。もう離れることはできない。
「一登に愛想尽きたら、春彦くんは俺が引き受けるから」
「ゆう兄!」
「悠太!あなた、何を?」
「ははっ、冗談だよ」
いいや、冗談じゃない。あの目は真剣だった。はるちゃんの事、好みだって言ってたんだ。はるちゃんを抱きしめ兄さんの視界から隠した。
「はるくん、可愛い。真っ赤だよ」
「悠太、悪い冗談なんか言ったらダメじゃないか。ほらほら、母さん、お昼にしよう」
「あら、そうね」
「あっ、手伝います」
「あたしも~」
「俺も~」
「一登は良いわ。キッチンが狭くなる」
なんだよ!俺もはるちゃんと料理したい。母さん、はるちゃん、麻里子の三人はキッチンに立つ。今日の昼飯はなんだろうか?こちらの三人はスマホ片手にテレビを見つつ、ボソボソと会話する。
「ゆう兄、止めてくれよ」
「わかってるって」
「ホントかよ」
兄さんの事はともかくここまで家族に認められて嬉しい。はるちゃんに対する態度が、今までと変わりないのが何より安心した。
これからのことなんてわからない。でも、はるちゃんと離れることは考えられない。
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