18 / 40
素直じゃないは、正義じゃない
04
しおりを挟む
「あのさ、どうして彼女ができるまでとか思ってたの?」
ようやく涙が止まり、未だ直樹の膝の上。
「だって…出会って一週間で男に告るって、冗談だと思った」
「それは、一目惚れで…」
「うん。僕も、入学式の直前にやられた」
「なんだ…。自分はそうなのに俺の事は違うと思ったの?」
「そんなうまい話、そうそうないだろ?一目惚れした相手から好かれてるなんてさ。それも、男同士だし。でも、それでも良いと思ったから」
「そ、そっか…」
「それに、彼女は『今は』いないって言ったから」
「いや、それは正しいだろ?その時はいないって、二股は掛けてないってことだろ?」
「……ううっ。ごめんなさい。信じてなかったんだね。でも、多分モテるだろうって思ったし、周りの女子の視線は直輝に熱かったから。僕なんかの相手はつまらないだろうからさ、直ぐに飽きるだろうって…」
「最初はそうでも、ずっとそう思ってたの?」
「だって、丸岡さんとの事はずっと聞いてたし、違う子から何回も告白されてるのも噂で聞いてたから…。もう終わりかな、一週間後かなって考えるのは辛かった」
「それでも、俺にくれたんだ…」
…睦己の初めてと耳元で囁かれてブルッと震え、身体の芯が熱くなる。
「うん…。だって、僕の気持ちは直輝だけだから。ずっと優しくしてくれた。初めてのキスも。何もかも直輝が初めて。それでも僕が慣れるまでゆっくり、少しずつ教えてくれた。無理矢理スルこともできたのに…」
「無理矢理なんて、そんなことするわけないだろ?」
「う、うん。今なら、そう思うよ。でも、その時は、不安だったから…。僕なんかに興味を持ってくれるのは、少しの間だけだろうって」
「僕なんかなんて言わないで?睦己は凄く魅力的だよ。何人も睦己の事狙ってる。神崎にも気を付けて」
「神崎って、あの神崎?」
「そう、睦己の席の近くの」
「どうして?」
「あれは、睦己に気があるんじゃないかと思う」
「そんなことないよ。直輝の考え過ぎ」
「だと良いんだけどね」
「何か、直輝、キャラ違う。こんなだった?」
「俺はずっとこんななの。ホントは誰にも見せたくない。俺のだって言いふらしたい」
「ふふっ、嬉しい」
いつまでもトイレに籠っているわけにはいかない。先輩に連れ出されて、教室を離れた時間は交代間近だった。そのため、クラスメイトには然程迷惑はかけていないと思うけれど、交代の挨拶と、謝罪の言葉くらいは必要だろう。
「そんなの、要らない」
「でも…」
「じゃあ、ヨシに連絡するか?」
「財前に?」
「そう。今回のはあいつが全部悪い」
「そんなことないでしょ?」
「いいや!これは、嫌がらせだったんだ。俺が惚気るから…と思う。俺が睦己をちゃんと紹介しないから、嫌がることをして、ついでに睦己の可愛さを確かめるつもりだったんだよ」
「そうかな?でも、これでわかったよね。そんなふうに思ってくれるのは直輝だけ…」
「だから!…まあ、良いか。そう、俺だけ。こんな可愛い睦己は俺だけに見せてくれたら良いから」
財前に電話すれば良いと言われたけれど、着替えは教室に置いてある。このままでは、廊下を歩くのも人目を避けるように歩かなければならない。だから、着替えたいので教室に戻らなくてはならない。
でも、いっぱいのキスで心を復活させた僕は、直輝の隣でニコニコだ。さっきまでと同じ格好で廊下を歩いても、気持ちが違うからか、景色まで違って見える。
今まであった変な緊張や警戒がなくなり肩の力が抜ける。直輝との事をみんなに知られまいと、常に張っていたレーダーをオフにしてしまえば、なんて穏やかな気分でいられるのだろう。
「何でそんなに笑顔なの?」
「そりゃ、嬉しいから」
「何が?」
「何がって…、だって、別れなくてもいいん、で、しょ?」
何か、間違っただろうか?
「そうだけど、そんな可愛い顔は俺の前だけで良いんだけど…」
「ええっ?どんな顔?」
「どんな顔でも…。でも、仕方ないよな。睦己が吉広直志や井尻としゃべってるのは腹立つけど、あんなふうにみんなの中で楽しそうな睦己を見るのも新鮮だった。睦己の世界は睦己のものだしな」
「そんな…、僕は直輝の側に居ればそれで…」
ようやく涙が止まり、未だ直樹の膝の上。
「だって…出会って一週間で男に告るって、冗談だと思った」
「それは、一目惚れで…」
「うん。僕も、入学式の直前にやられた」
「なんだ…。自分はそうなのに俺の事は違うと思ったの?」
「そんなうまい話、そうそうないだろ?一目惚れした相手から好かれてるなんてさ。それも、男同士だし。でも、それでも良いと思ったから」
「そ、そっか…」
「それに、彼女は『今は』いないって言ったから」
「いや、それは正しいだろ?その時はいないって、二股は掛けてないってことだろ?」
「……ううっ。ごめんなさい。信じてなかったんだね。でも、多分モテるだろうって思ったし、周りの女子の視線は直輝に熱かったから。僕なんかの相手はつまらないだろうからさ、直ぐに飽きるだろうって…」
「最初はそうでも、ずっとそう思ってたの?」
「だって、丸岡さんとの事はずっと聞いてたし、違う子から何回も告白されてるのも噂で聞いてたから…。もう終わりかな、一週間後かなって考えるのは辛かった」
「それでも、俺にくれたんだ…」
…睦己の初めてと耳元で囁かれてブルッと震え、身体の芯が熱くなる。
「うん…。だって、僕の気持ちは直輝だけだから。ずっと優しくしてくれた。初めてのキスも。何もかも直輝が初めて。それでも僕が慣れるまでゆっくり、少しずつ教えてくれた。無理矢理スルこともできたのに…」
「無理矢理なんて、そんなことするわけないだろ?」
「う、うん。今なら、そう思うよ。でも、その時は、不安だったから…。僕なんかに興味を持ってくれるのは、少しの間だけだろうって」
「僕なんかなんて言わないで?睦己は凄く魅力的だよ。何人も睦己の事狙ってる。神崎にも気を付けて」
「神崎って、あの神崎?」
「そう、睦己の席の近くの」
「どうして?」
「あれは、睦己に気があるんじゃないかと思う」
「そんなことないよ。直輝の考え過ぎ」
「だと良いんだけどね」
「何か、直輝、キャラ違う。こんなだった?」
「俺はずっとこんななの。ホントは誰にも見せたくない。俺のだって言いふらしたい」
「ふふっ、嬉しい」
いつまでもトイレに籠っているわけにはいかない。先輩に連れ出されて、教室を離れた時間は交代間近だった。そのため、クラスメイトには然程迷惑はかけていないと思うけれど、交代の挨拶と、謝罪の言葉くらいは必要だろう。
「そんなの、要らない」
「でも…」
「じゃあ、ヨシに連絡するか?」
「財前に?」
「そう。今回のはあいつが全部悪い」
「そんなことないでしょ?」
「いいや!これは、嫌がらせだったんだ。俺が惚気るから…と思う。俺が睦己をちゃんと紹介しないから、嫌がることをして、ついでに睦己の可愛さを確かめるつもりだったんだよ」
「そうかな?でも、これでわかったよね。そんなふうに思ってくれるのは直輝だけ…」
「だから!…まあ、良いか。そう、俺だけ。こんな可愛い睦己は俺だけに見せてくれたら良いから」
財前に電話すれば良いと言われたけれど、着替えは教室に置いてある。このままでは、廊下を歩くのも人目を避けるように歩かなければならない。だから、着替えたいので教室に戻らなくてはならない。
でも、いっぱいのキスで心を復活させた僕は、直輝の隣でニコニコだ。さっきまでと同じ格好で廊下を歩いても、気持ちが違うからか、景色まで違って見える。
今まであった変な緊張や警戒がなくなり肩の力が抜ける。直輝との事をみんなに知られまいと、常に張っていたレーダーをオフにしてしまえば、なんて穏やかな気分でいられるのだろう。
「何でそんなに笑顔なの?」
「そりゃ、嬉しいから」
「何が?」
「何がって…、だって、別れなくてもいいん、で、しょ?」
何か、間違っただろうか?
「そうだけど、そんな可愛い顔は俺の前だけで良いんだけど…」
「ええっ?どんな顔?」
「どんな顔でも…。でも、仕方ないよな。睦己が吉広直志や井尻としゃべってるのは腹立つけど、あんなふうにみんなの中で楽しそうな睦己を見るのも新鮮だった。睦己の世界は睦己のものだしな」
「そんな…、僕は直輝の側に居ればそれで…」
51
あなたにおすすめの小説
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き
メグエム
BL
伯爵家次男のユリウス・ツェプラリトは、ずっと恋焦がれている人がいる。その相手は、幼なじみであり、王位継承権第三位の王子のレオン・ヴィルバードである。貴族と王族であるため、家や国が決めた相手と結婚しなければならない。しかも、レオンは女関係での噂が絶えず、女好きで有名だ。男の自分の想いなんて、叶うわけがない。この想いは、心の奥底にしまって、諦めるしかない。そう思っていた。
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
不倫の片棒を担がせるなんてあり得ないだろ
雨宮里玖
BL
イケメン常務×平凡リーマン
《あらすじ》
恋人の日夏と福岡で仲睦まじく過ごしていた空木。日夏が東京本社に戻ることになり「一緒に東京で暮らそう」という誘いを望んでいたのに、日夏から「お前とはもう会わない。俺には東京に妻子がいる」とまさかの言葉。自分の存在が恋人ではなくただの期間限定の不倫相手だったとわかり、空木は激怒する——。
秋元秀一郎(30)商社常務。
空木(26)看護師
日夏(30)商社係長。
永久糖度
すずかけあおい
BL
幼い頃、幼馴染の叶はままごとが好きだった。パパはもちろん叶でママはなぜか恵吾。恵吾のことが大好きな叶の気持ちは、高校二年になった今でも変わっていない。でも、これでいいのか。
〔攻め〕長沼 叶
〔受け〕岸井 恵吾
外部サイトでも同作品を投稿しています。
『聖クロノア学院恋愛譚 』記憶を失ったベータと王族アルファ、封印された過去が愛を試すまで
るみ乃。
BL
聖クロノア学院で、記憶と感情が静かに交差する。
「君の中の、まだ知らない“俺”に、触れたかった」
記憶を失ったベータの少年・ユリス。
彼の前に現れたのは、王族の血を引くアルファ・レオンだった。
封じられた記憶。
拭いきれない心の傷。
噛み合わない言葉と、すれ違う想い。
謎に包まれた聖クロノア学院のなかで、
ふたりの距離は、近づいては揺れ、また離れていく。
触れたいのに、触れられない。
心を開けば、過去が崩れてしまう。
それでも彼らは、確かめずにはいられなかった。
――やがて、学院の奥底に眠る真実が、静かに目を覚ます。
過去と向き合い、誰かと繋がることでしか見えない未来がある。
許し、選びなおし、そしてささやかな祈り。
孤独だった少年たちは、いつしか「願い」を知っていく。
これは、ふたりの愛の物語であると同時に、
誰かの傷が、誰かの救いへと変わっていく物語。
運命に抗うのは、誰か。
未来を選ぶのは、誰なのか。
優しさと痛みが交差する場所で、物語は紡がれる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる