1 / 98
それは突然のことでした
01
しおりを挟む
☆★☆ ★☆★ ☆★☆
高い身分の父を持ち、皇族の血を引き身分こそ高いが生活がやっとの母から生まれた。
気まぐれな父は偶にふらりと訪れては半年来ないのは何時もの事だった。
ーーーこの時代の結婚は夫が妻の元に通う『通い婚』が普通でありました。(夫は妻の親が「我が家の婿君」と大事にもてなし、孫を養育します)
かあさまはそれでも明るくて、大人の事情など知らずにわたしは大きくなった。
困ったのはかあさまが亡くなって、しばらく経った時だ。
だんだんと召使いを雇い続ける事が出来なくなってきた。
元からわたしに仕えてくれていたのは数人だったけれど今では、乳姉妹の女房(侍女)の桔梗とその弟の惟忠、どこにも行くところがないから置いてくれと云う女童(召使いの少女)の小百合を残すのみとなってしまった。
桔梗は今までしていなかった台所の仕事を多少…嫌な顔をしながらもわたしに不自由がないように仕えてくれている。
とうさまからは文も何もない。
忘れているのに違いない。別に期待はしていないけれど。
そんな時、綺麗と評判のわたしの元に通ってくれる殿方が現れた。
ーーーその噂は家族や側近の女房などがせっせと流すのだ。
若い人たちは、「どこぞの姫が美人だ」「歌才がある」「慎ましやか」と流される噂に、まだ見ぬ姫に恋心を抱き文を贈るのである。だから、ようやく結婚できても朝を迎えて、「びっくり」と云う事もあると聞く。
けれど、わたしのかあさまも綺麗と評判だったため、本当に噂だけではないのではないかと信憑性があったのかもしれない。
その人の名は源保憲と云う。ちょっと歳上だけど、優しくて、会ってみると顔も好みだった。誠実に毎日のように文をくれて、『大切にする』と約束してくれた。
次の国司に任命されていて経済的にも支援してくれると云う。暇を出していた召使いの他、新しく数人を雇い、明日のご飯の心配をしていたのに急展開に一番喜んだのは乳姉妹の桔梗だった。
そう、一番苦労をかけた。
そんなある日、とうさまから文が来た。
とうさまは、今は右大臣であり今上帝の覚えもめでたいと、前に嫌味のように惟忠が云っていた。
桔梗と午後のひと時を保憲さまから頂いた唐菓子をお供に、お茶を飲んで過ごしていた時だった。
「失礼します」
小百合だ。
「どうしたの?」
「右大臣さまのお屋敷からお使者が来られました。惟忠さんは出かけてますので、どのようにいたしましょう」
「それならば、わたくしが出ます」
迎えたのは桔梗だった。
本来なら雑務他一切を任せている桔梗の弟惟忠が出るのだが、諸用で外出していた。惟忠は若いがしっかりしていて、仕事も抜かりなくしてくれる。
高い身分の父を持ち、皇族の血を引き身分こそ高いが生活がやっとの母から生まれた。
気まぐれな父は偶にふらりと訪れては半年来ないのは何時もの事だった。
ーーーこの時代の結婚は夫が妻の元に通う『通い婚』が普通でありました。(夫は妻の親が「我が家の婿君」と大事にもてなし、孫を養育します)
かあさまはそれでも明るくて、大人の事情など知らずにわたしは大きくなった。
困ったのはかあさまが亡くなって、しばらく経った時だ。
だんだんと召使いを雇い続ける事が出来なくなってきた。
元からわたしに仕えてくれていたのは数人だったけれど今では、乳姉妹の女房(侍女)の桔梗とその弟の惟忠、どこにも行くところがないから置いてくれと云う女童(召使いの少女)の小百合を残すのみとなってしまった。
桔梗は今までしていなかった台所の仕事を多少…嫌な顔をしながらもわたしに不自由がないように仕えてくれている。
とうさまからは文も何もない。
忘れているのに違いない。別に期待はしていないけれど。
そんな時、綺麗と評判のわたしの元に通ってくれる殿方が現れた。
ーーーその噂は家族や側近の女房などがせっせと流すのだ。
若い人たちは、「どこぞの姫が美人だ」「歌才がある」「慎ましやか」と流される噂に、まだ見ぬ姫に恋心を抱き文を贈るのである。だから、ようやく結婚できても朝を迎えて、「びっくり」と云う事もあると聞く。
けれど、わたしのかあさまも綺麗と評判だったため、本当に噂だけではないのではないかと信憑性があったのかもしれない。
その人の名は源保憲と云う。ちょっと歳上だけど、優しくて、会ってみると顔も好みだった。誠実に毎日のように文をくれて、『大切にする』と約束してくれた。
次の国司に任命されていて経済的にも支援してくれると云う。暇を出していた召使いの他、新しく数人を雇い、明日のご飯の心配をしていたのに急展開に一番喜んだのは乳姉妹の桔梗だった。
そう、一番苦労をかけた。
そんなある日、とうさまから文が来た。
とうさまは、今は右大臣であり今上帝の覚えもめでたいと、前に嫌味のように惟忠が云っていた。
桔梗と午後のひと時を保憲さまから頂いた唐菓子をお供に、お茶を飲んで過ごしていた時だった。
「失礼します」
小百合だ。
「どうしたの?」
「右大臣さまのお屋敷からお使者が来られました。惟忠さんは出かけてますので、どのようにいたしましょう」
「それならば、わたくしが出ます」
迎えたのは桔梗だった。
本来なら雑務他一切を任せている桔梗の弟惟忠が出るのだが、諸用で外出していた。惟忠は若いがしっかりしていて、仕事も抜かりなくしてくれる。
34
あなたにおすすめの小説
発情薬
寺蔵
BL
【完結!漫画もUPしてます】攻めの匂いをかぐだけで発情して動けなくなってしまう受けの話です。
製薬会社で開発された、通称『発情薬』。
業務として治験に選ばれ、投薬を受けた新人社員が、先輩の匂いをかぐだけで発情して動けなくなったりします。
社会人。腹黒30歳×寂しがりわんこ系23歳。
特等席は、もういらない
香野ジャスミン
BL
好きな人の横で笑うことができる。
恋心を抱いたまま、隣に入れる特等席。
誰もがその場所を羨んでいた。
時期外れの転校生で事態は変わる。
※エブリスタ、ムーンライトノベルズでも同時公開してます
僕の居場所も、彼の気持ちも...。
距離を置くことになってしまった主人公に近付いてきたのは...。
転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜
たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話
騎士団長とのじれったい不器用BL
人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい
白妙スイ@1/9新刊発売
BL
八架 深都は好奇心から売り専のバイトをしている大学生。
ある日、不眠症の小説家・秋木 晴士から指名が入る。
秋木の家で深都はもこもこの部屋着を着せられて、抱きもせず添い寝させられる。
戸惑った深都だったが、秋木は気に入ったと何度も指名してくるようになって……。
●八架 深都(はちか みと)
20歳、大学2年生
好奇心旺盛な性格
●秋木 晴士(あきぎ せいじ)
26歳、小説家
重度の不眠症らしいが……?
※性的描写が含まれます
完結いたしました!
王子殿下が恋した人は誰ですか
月齢
BL
イルギアス王国のリーリウス王子は、老若男女を虜にする無敵のイケメン。誰もが彼に夢中になるが、自由気ままな情事を楽しむ彼は、結婚適齢期に至るも本気で恋をしたことがなかった。
――仮装舞踏会の夜、運命の出会いをするまでは。
「私の結婚相手は、彼しかいない」
一夜の情事ののち消えたその人を、リーリウスは捜す。
仮面を付けていたから顔もわからず、手がかりは「抱けばわかる、それのみ」というトンデモ案件だが、親友たちに協力を頼むと(一部強制すると)、優秀な心の友たちは候補者を五人に絞り込んでくれた。そこにリーリウスが求める人はいるのだろうか。
「当たりが出るまで、抱いてみる」
優雅な笑顔でとんでもないことをヤらかす王子の、彼なりに真剣な花嫁さがし。
※性モラルのゆるい世界観。主人公は複数人とあれこれヤりますので、苦手な方はご遠慮ください。何でもありの大人の童話とご理解いただける方向け。
【短編】抱けない騎士と抱かれたい男娼
cyan
BL
戦地で奮闘する騎士のキースは疲れ果てていた。仲間に連れられて行った戦場の娼館で男娼であるテオに優しい言葉をかけられて好きになってしまったが、テオの特別になりたいと思えば思うほどテオのことを抱けなくなる。
純愛とちょっとのユーモアでほのぼのと読んでほしい。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
産卵おじさんと大食いおじさんのなんでもない日常
丸井まー(旧:まー)
BL
余剰な魔力を卵として毎朝産むおじさんと大食らいのおじさんの二人のなんでもない日常。
飄々とした魔導具技師✕厳つい警邏学校の教官。
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。全15話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる