撫子の華が咲く

茉莉花 香乃

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結婚相手が決まりました

07

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ーーーわたしが幼かった頃、訪れた屋敷で友だちになった下働きの男の子と仲良くなり、よく遊んでいた。

独楽を回したり、竹馬で騎馬ごっこをしたりするのは姫さまや姉上と遊ぶよりも楽しかった。

ある日、かくれんぼをして遊んでいた時だった。

そのお屋敷は姫さまのお屋敷よりも大きく庭も広くて、遊ぶにはもってこいである。
池には朱塗の高欄をもつ反り橋があり、池のそばにはそれぞれの季節に華が咲くように設えてあり、その時は秋だったか桔梗の紫が一角にあり綺麗だった。

わたしは西の対屋の軒下に忍んで、探して貰うのを待っていた。かくれんぼなんて隠れきっても面白くない。どこかで見つかってまた隠れたり探したりしたい。

その時、
『あんっ…んっ…はん…』

どこかで声がした。

ここはよそのお屋敷なので、遊んでいるのを怒られやしないかと見つかる前に出ようとした。

静かに見つからないように移動する。

『ここがいいんだろう』
『いやっ…んっ…。あん…そこ…』
『……ほら…力を抜いて…』
『…はっ…ん…、奥まで…いい…あっ…もっと…深い』

艶かしい声ではあるが、聞こえてくるのはどちらも男の声である。

おずおずと軒下から出て見てみると、格子は上がっていて隙間から見えるのは…獣のようにまぐわう二人の男だった。

びっくりして、しばらくその場から離れる事は出来なかった。

その間も二人は交わっている。
ぐちゃ、ぬちゃと何だか分からない音が耳に響いた。
男の手が身体のあちこちを撫で回し、唇は背中に吸い付く。
しばらくゆるゆると彷徨っていた手は組み敷いた男の腰を掴んで、自らの腰を激しく動かした。
淫猥な音と喘ぎ声が一層大きくなった。

遊んでいた男の子を探して「用事を思い出してしまった」となんとも大人ぶったことを云ってその屋敷を後にした。大人の言い訳はなんと便利なものかと自分で云っておきながら思ったものだ。

その夜、あの姿と声が瞼に焼き付いて耳によみがえりなかなか眠れなかった。

それから偶にわたしの夢にその時の光景は見られたが、大きくなるにつれてわたしは傍観者ではなくなってしまった。

わたしは…男に組み敷かれて喘いでいるのだ…。


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