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結婚相手が決まりました
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そう云えば、今までほったらかしにしておいて『急に何で?』とあの時に思った。
それならそうと云っておいてくれれば、撫子姫が覚悟を決めてこちらにいらっしゃったであろうに。
よりによって、女御などと。
「お殿さま、姫さまは喜びのあまりお声にならない様子です。今は落ち着いてお話することも出来ないと存じます。詳しいことは日を改めて伺いたいと思いますので、本日はこの辺で…」
日向が右大臣さまに、暗に部屋から出て行くように云ってくれたが、その対応に『失礼な』と怒るでもなく「そうであろう。そうであろう」とご機嫌である。
よほど嬉しいのだろう。ほっておいたら踊り出しそうな勢いだ。
姉上も流石に落ち着きを取り戻したのか、右大臣さまが出て行った後小百合を呼んだ。
緊急会議である。
「右大臣さまに本当のことを云った方が良いんじゃない?」
「でも姫さま、近々正式に決定するということは、内々には話は進んでいて…するともう入内の話は変わらないんじゃないかしら」
日向が冷静に云うけれど、対策を云って欲しい。
「だから、撫子姫じゃないって話だよ」
「それはダメです」
保憲さまが大きな声で云うのを姉上がたしなめる。
「保憲さま、お声が大きゅうございます」
夜になってから保憲さまが忍んでいらした。
もう警護が厳しいからとゆっくりしていられなかったので、呼び付けた。
袖の下を渡した下男に手引きしてもらって、三条邸に入ったのだ。
「世間の噂はどうですの?」
「主上直々のお声掛り…と云うのは噂ではちょっとわかりませんが、一部では確かにその様な話も聞きました。入内の話は先ごろの宴で大々的に広まって周知の事実のようですね。こうなっては、入内の話をなかった事には出来ないでしょう。でも、帝は女御さま方にそれほど愛情を持っておられないと聞いたことがあります。三人も女御さまがいらっしゃるのに、清涼殿でひとり寝が続いているとか。新たな女御さまにも関心があるのかと冷ややかに云う貴族もいると聞きました。まあ、これは右大臣殿に今以上の栄華を羨む声なので話半分でいいかもしれませんが」
では、女御は要らないのではないか?と思うけれど…あんなに乗り気な右大臣さまにこの話をなかったことにはしてもらえないだろう…。
「そうですか。保憲さまの仰った噂に縋るしかないのなかしら…。惟忠が入内しても、夜のお召しが無いのであれば問題ないのでしょう?」
「ねえさま!」
「だって、惟忠…お前の命が危ないのよ。お殿さまを騙したことは姫さまではなくお前に…」
平和なこの時代でも、人一人その辺でのたれ死んでも、人の話の端にも登らない。
都から少し離れただけで、そんな話は沢山ある。
幼い頃、一人で出歩いてはいけないとよく云われていたのは、拐かしにあってはいけないと云うことだった。
右大臣さまがそんな物騒なことはしないとは思うけれど、警衛の侍に命じることもあり得る。
「でも、ねえさま。入内の後にバレたらそれこそ右大臣さまにも害が及ぶよ」
貴族は格付けがしっかりしていて、生まれた身分によって出世するかは決まっているようなものだ。
よほどのボンクラでも位は上がるし、功績があって大抜擢されても、その代限りだったりする。
けれど、政変はあるのだ。
右大臣さまが失脚することも。
いくら話しても善い解決策など見つかるはずもなく、保憲さまは夜も明けきらぬ内にと帰って行った。
保憲さまがしてくれたことは『撫子姫はわたくしが皇后さまより幸せにします』と云う言葉と日向同様、口の固い女房を二人雇ってくれただけだった。
☆★☆ ★☆★ ☆★☆
それならそうと云っておいてくれれば、撫子姫が覚悟を決めてこちらにいらっしゃったであろうに。
よりによって、女御などと。
「お殿さま、姫さまは喜びのあまりお声にならない様子です。今は落ち着いてお話することも出来ないと存じます。詳しいことは日を改めて伺いたいと思いますので、本日はこの辺で…」
日向が右大臣さまに、暗に部屋から出て行くように云ってくれたが、その対応に『失礼な』と怒るでもなく「そうであろう。そうであろう」とご機嫌である。
よほど嬉しいのだろう。ほっておいたら踊り出しそうな勢いだ。
姉上も流石に落ち着きを取り戻したのか、右大臣さまが出て行った後小百合を呼んだ。
緊急会議である。
「右大臣さまに本当のことを云った方が良いんじゃない?」
「でも姫さま、近々正式に決定するということは、内々には話は進んでいて…するともう入内の話は変わらないんじゃないかしら」
日向が冷静に云うけれど、対策を云って欲しい。
「だから、撫子姫じゃないって話だよ」
「それはダメです」
保憲さまが大きな声で云うのを姉上がたしなめる。
「保憲さま、お声が大きゅうございます」
夜になってから保憲さまが忍んでいらした。
もう警護が厳しいからとゆっくりしていられなかったので、呼び付けた。
袖の下を渡した下男に手引きしてもらって、三条邸に入ったのだ。
「世間の噂はどうですの?」
「主上直々のお声掛り…と云うのは噂ではちょっとわかりませんが、一部では確かにその様な話も聞きました。入内の話は先ごろの宴で大々的に広まって周知の事実のようですね。こうなっては、入内の話をなかった事には出来ないでしょう。でも、帝は女御さま方にそれほど愛情を持っておられないと聞いたことがあります。三人も女御さまがいらっしゃるのに、清涼殿でひとり寝が続いているとか。新たな女御さまにも関心があるのかと冷ややかに云う貴族もいると聞きました。まあ、これは右大臣殿に今以上の栄華を羨む声なので話半分でいいかもしれませんが」
では、女御は要らないのではないか?と思うけれど…あんなに乗り気な右大臣さまにこの話をなかったことにはしてもらえないだろう…。
「そうですか。保憲さまの仰った噂に縋るしかないのなかしら…。惟忠が入内しても、夜のお召しが無いのであれば問題ないのでしょう?」
「ねえさま!」
「だって、惟忠…お前の命が危ないのよ。お殿さまを騙したことは姫さまではなくお前に…」
平和なこの時代でも、人一人その辺でのたれ死んでも、人の話の端にも登らない。
都から少し離れただけで、そんな話は沢山ある。
幼い頃、一人で出歩いてはいけないとよく云われていたのは、拐かしにあってはいけないと云うことだった。
右大臣さまがそんな物騒なことはしないとは思うけれど、警衛の侍に命じることもあり得る。
「でも、ねえさま。入内の後にバレたらそれこそ右大臣さまにも害が及ぶよ」
貴族は格付けがしっかりしていて、生まれた身分によって出世するかは決まっているようなものだ。
よほどのボンクラでも位は上がるし、功績があって大抜擢されても、その代限りだったりする。
けれど、政変はあるのだ。
右大臣さまが失脚することも。
いくら話しても善い解決策など見つかるはずもなく、保憲さまは夜も明けきらぬ内にと帰って行った。
保憲さまがしてくれたことは『撫子姫はわたくしが皇后さまより幸せにします』と云う言葉と日向同様、口の固い女房を二人雇ってくれただけだった。
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