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結婚相手が決まりました
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☆★☆ ★☆★ ☆★☆
小百合が保憲さまとの文のやり取りをしてくれるようになり分かったことは、撫子姫…わたしに求婚する公達が後を絶たないということだった。
右大臣さまから何も云われないならこちらからは何もできない。何かをするつもりもないけれど。
そしてやはり警護は殊更厳しく、保憲さま曰く、
「姫に夜這いしようと云う不届き者を排除するため」らしい。
なので、保憲さまはもはや警戒の対象であり、日向にも姉上にも誰にも文すらも届かないのである。
それでも小百合が行けない時があるので、下働きの下男を言いくるめて、どうにか文は届くようにした。
…と日向が云った。
そんな手があるなら最初から手を回して欲しかった。やはり自分で動けないのはもどかしい。
今日は観桜の宴である。
十二単衣の正装で寝殿に行く。
わたしの席は北の方や三人の姫さまと几帳で隔てたところを用意してくれているが、いつ、誰に見られるかと思うと気が休まらない。
十分に楽しめるはずもなかった。
南庭に篝火を焚き公達たちが演奏している様は優雅である。
篝火の向こうに見える満開の桜が更に華やかさを演出していて趣がある。
流石三条邸の宴だ。
宴も半分が過ぎようとする頃「失礼します」と小百合が近くに来た。
真剣な顔で日向にボソボソと何かを云っている。
何事かと日向に聞くと「お部屋に戻られてからに致します」と神妙な面持ちだ。
姉上も日向に耳打ちされて、一瞬顔が強張ったけれど「姫さま、素晴らしい笛の音ですね」と今は云ってくれないらしい。
宴もそろそろ終わり頃、どこで誰に鉢合わせてもいけないので早めに部屋に戻る。
何しろお酒が回って宴が進むにつれて、場が和んで無礼講になっていく。
「さっきの小百合の話は何?」
着替えももどかしく日向に聞くと姉上と目配せして『あなたが云ってよ』とでも云いたげに姉上を見た。姉上は躊躇いがちにこちらを見て、云い辛そうにしている。
「桔梗、云って」
「…小百合によりますと、…保憲さまが仰っていた、姫さまに求婚された方々が多く招待されていて、今日の宴での皆さまの話題は姫さまが入内されると云うもので…あっ…姫さま」
今日は最後まで倒れなかった。
そこら辺の公達が通って来る方がよっぽどましだと思っていた。いや、それも困るのだけれど…。
男だとバレても右大臣さまの力でなんとかしてもらうこともできるだろう。
そもそも、結婚話も白紙に戻す事もできるだろうが、帝となると話は別である。
深く考えないようにしていた。
ありていに言えば、逃げていた。
現実逃避である。
次の日、右大臣さまが満面の笑みで部屋を訪れた。
「姫は喜んでくれると思ったけれど、こちらに移られて体調を崩されていたので今まで黙っていました。実は今上帝より直々に女御入内のお話があり、近々正式に決定するので報告をと思いました」
思い返せば、自分の娘相手にやけに丁寧な話し方に態度。三条邸に来る前からこの話は出来上がっていたんだ。
いや、それが目的で姫を呼び寄せたんだ。
小百合が保憲さまとの文のやり取りをしてくれるようになり分かったことは、撫子姫…わたしに求婚する公達が後を絶たないということだった。
右大臣さまから何も云われないならこちらからは何もできない。何かをするつもりもないけれど。
そしてやはり警護は殊更厳しく、保憲さま曰く、
「姫に夜這いしようと云う不届き者を排除するため」らしい。
なので、保憲さまはもはや警戒の対象であり、日向にも姉上にも誰にも文すらも届かないのである。
それでも小百合が行けない時があるので、下働きの下男を言いくるめて、どうにか文は届くようにした。
…と日向が云った。
そんな手があるなら最初から手を回して欲しかった。やはり自分で動けないのはもどかしい。
今日は観桜の宴である。
十二単衣の正装で寝殿に行く。
わたしの席は北の方や三人の姫さまと几帳で隔てたところを用意してくれているが、いつ、誰に見られるかと思うと気が休まらない。
十分に楽しめるはずもなかった。
南庭に篝火を焚き公達たちが演奏している様は優雅である。
篝火の向こうに見える満開の桜が更に華やかさを演出していて趣がある。
流石三条邸の宴だ。
宴も半分が過ぎようとする頃「失礼します」と小百合が近くに来た。
真剣な顔で日向にボソボソと何かを云っている。
何事かと日向に聞くと「お部屋に戻られてからに致します」と神妙な面持ちだ。
姉上も日向に耳打ちされて、一瞬顔が強張ったけれど「姫さま、素晴らしい笛の音ですね」と今は云ってくれないらしい。
宴もそろそろ終わり頃、どこで誰に鉢合わせてもいけないので早めに部屋に戻る。
何しろお酒が回って宴が進むにつれて、場が和んで無礼講になっていく。
「さっきの小百合の話は何?」
着替えももどかしく日向に聞くと姉上と目配せして『あなたが云ってよ』とでも云いたげに姉上を見た。姉上は躊躇いがちにこちらを見て、云い辛そうにしている。
「桔梗、云って」
「…小百合によりますと、…保憲さまが仰っていた、姫さまに求婚された方々が多く招待されていて、今日の宴での皆さまの話題は姫さまが入内されると云うもので…あっ…姫さま」
今日は最後まで倒れなかった。
そこら辺の公達が通って来る方がよっぽどましだと思っていた。いや、それも困るのだけれど…。
男だとバレても右大臣さまの力でなんとかしてもらうこともできるだろう。
そもそも、結婚話も白紙に戻す事もできるだろうが、帝となると話は別である。
深く考えないようにしていた。
ありていに言えば、逃げていた。
現実逃避である。
次の日、右大臣さまが満面の笑みで部屋を訪れた。
「姫は喜んでくれると思ったけれど、こちらに移られて体調を崩されていたので今まで黙っていました。実は今上帝より直々に女御入内のお話があり、近々正式に決定するので報告をと思いました」
思い返せば、自分の娘相手にやけに丁寧な話し方に態度。三条邸に来る前からこの話は出来上がっていたんだ。
いや、それが目的で姫を呼び寄せたんだ。
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