撫子の華が咲く

茉莉花 香乃

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恋の駆け引きなんて知りません

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「歌のお題を…誰か…右近、何か良いお題はないかしら?」

はしゃぐような撫子は飛香舎を更に華やかにする。撫子の笑顔が増えるにつれて基良の機嫌も直った。

「今度、撫子をいじめたら、いくらとうさまでも許さないよ」

仲直りをしたと思っているのだろう。

「分かっているよ」

簡単に仲直り出来るならしたい。
もともと喧嘩などしていないのだから、戻す仲も無い。

良い関係はこれから築かなければならない。

衛門に自分で解決しろと云われたけれど、男と云えどわたしの妃の一人なのだからいっその事、清涼殿の夜御殿よるのおとどに召してしまおうか?
いや…警戒するだろうか?
しかし、わたしにはそれが許されているのだ。
手酷くしてしまった事は後悔している。再びわたしに触れさせてくれるだろうか?抱きしめる事も、口付けも嫌がる事はなかったと思う。抱きしめ返してくれたのだから…。もう無理矢理な事はしたくない。今度こそ優しくしてあげたい。

「基良?」
「何?とうさま」
「撫子は何が好きなのかな?」

『そんな事も知らないの?』と呆れながら、撫子が楽器の演奏が好きな事や、実家さとより持ってきた琴を大事にしていて琴に描かれた鳳凰の絵が好きな事や、明日香とよく絵巻物を見ていると嬉しそうに話してくれた。他にも色々と撫子と過ごした時の話をしてくれて親交の深さが伺える。





飛香舎に仕えている日向が宿下がりしていていないらしい。その前には衛門が宿下がりしていて、まだ出仕はしていない。孫が生まれると嬉しそうに話していたと一条が自分の事のように喜んでいた。

何か不自由は無いかい?と聞いたけれど、お気遣い下さりありがとうございます。桔梗がおりますので、こちらのことは大丈夫ですと云うばかりだ。

「そう?困ったことがあれば直ぐに云うんだよ」
「はい」

何か胸騒ぎがする。

気のせいなら良いのだけれど…。

飛香舎の様子はいつもと変わりないけれど、日向から度々文が来ているようだ。それは、桔梗宛であったり、撫子に宛てたものもあるそうだ。
一条が報告してくれた。
日向自身の用事では無く撫子になにやら頼まれてのことだったのか?
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