撫子の華が咲く

茉莉花 香乃

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恋の駆け引きなんて知りません

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そっと飛香舎に行ってみると、撫子の部屋から桔梗とボソボソと話す声が聞こえた。


『保憲さまはなんと………の?』
『六条の……お屋敷をそのまま維持して下さってい……、三条邸よりそちらの方が………ではないかと。以前知男と云うものが仕え……しょ?あの人の孫が……管理しているそうです。そして落ち着い……、保憲さまの任国へ………』
『知男?誰…』
『まあ、お前忘れたの?いっつもくっ付いて外出していたじゃ……』
『ああ、そう云えば……名前だったな…』
『忘れ……、あんなに良くして……のに』
『ははっ…』
「ねえ…主上のことは……の?』
『お怒りになるかな?…』
『お怒り…と云うか…哀しまれると………』
『そんな事はない……』
『そうかしら?…まあ、良いわ…小百合が待って……。小百合の気持ちは知っ………?』
『な、なんで小百合?』
『本当はあの子も一緒に……来たかったのを姫……が「もう二度と会えなくなるかも………、せめて小百合は行かないで」と……残ったのよ。…主上に日向が宿下がりしてる事、何か………でしょ?決行するの?……』
『決行は……それより、何故小百合の話なんか……今するのさ?』
『だって、小百合に慰めて貰えば良いと……よ』
『そんな……』
『ねえ…今、誰に会いたい……?誰に慰めて欲しいって……?』
『…誰って…』
『今、お前の心に浮かんだ人よ……。正直になってご覧?』
『……だよ』

なんの話だ?保憲?小百合?…決行?いや、それよりも始めの方に…『三条邸よりそちら…』と云っていた。どういう事だ?

六条の屋敷…確か右大臣が六条の別邸で育ったとか云っていたな。
それに今、とても大事な事を云ったと思うけど、聞き取れなかった。

日向が居ないのを怪しむ事はないけれど…幾分長いなとは思った。撫子は男の身を隠すためにか常に四、五人の同じ女房の誰かが側にいる。

今の話では…内裏を出ると云うのか?
この頃やけにはしゃいでいるのを嬉しく思っていたのに。

『ねえさま…』
『他の………辛いのでしょう?苦しいので……?主上に辛いと云ってみる?一度主上と話した方が良いんじゃ………』
『そんな…』
『離れたくない……う?大切……しょう?』
『わたしには……資格はない……』

そんなに悩んでいたのか?
それでも…離れなくたいと云うのが本当なら…大切に思ってくれているのなら、何故わたしの側から離れたいのだろう?
何がそんなに辛く苦しいのか?

『とにかく……今回のことは……右大臣さまにお咎め………祈るしか……』
『そうだね…。里下がり……殿舎のこと……父上にお願いしても駄目………仕方な……。まあ、淑景舎しげいしゃ(桐壺)に移っても女御たちの噂は………聞こえるし……』

女御の事が始まりだったのか。
自分の不甲斐なさが招いた事とは云え、それをわたしに云ってくれない事に哀しくなった。

「撫子!」

思わず飛び出した。

「今の話は本当なのかい?」


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