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華綻ぶは撫子
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特に小百合の話は「もう会ってはいけないよ」と怒ってしまわれた。どうしてそんな事を仰るかはわからなかったけれど、せっかく仲良くなれたのに否やとは云えない。忘れていたのだから、会うつもりもなかったけれど。
ひとしきりお尋ねになった後で「ところで…」と改まってこちらをご覧になった。
「あなたの真の名は?」
「もう、忘れてしまいました」
「教えておくれ」
「…惟忠と申しました。けれど…、わたくしは撫子です。主上の側で生きていきたいのです。撫子でいさせて下さい。…戻れと仰るのですか?」
惟忠としては帝と一緒には居られない。官位を得て参内する事は出来るかもしれないけれど、それは臣下の一人だ。
「違うんだ。落ち着いて」
背中をさすって宥めて下さるけれど…涙が出てしまう。
「ああ、撫子泣かないで。違うんだよ」
「…何が…違うんですか?」
「一度云ってみたかったんだ。…『惟忠、愛しているよ』と」
帝を見ると、満面の笑みでわたしをご覧になって抱きしめて下さった。
「嬉しいです。ありがとうございます。わたくしも愛しております」
先ほどとは違う涙が頬を伝って落ちた。
帝の唇が今までと違う動きでわたしの唇を塞ぐ。優しさには溢れているけれど合わさる直前に見えた帝は、欲を孕んだ瞳でわたしをご覧になり舌先で唇をなぞられた。声が漏れてしまう…。ぞわぞわとくすぐったいような痺れが全身に走り、帝にしがみついた。
「撫子、可愛いよ」
「んっ、恥ずかし…あっ…」
一瞬離れていた唇は再び重なり、喋った事により空いた隙間から帝の舌が口内に入ってきた。
初めての事に驚いて、縋っていた帝の身体から離れようとするけれど力は入らない。
「撫子、愛してる…」
少し哀しそうなお顔でこちらをご覧になり、ご自分の顔を背けるようにわたしを抱き込み囁かれた。
「やはり、男に口付けられるなど嫌なのか?」
一瞬何を仰っているのかわからなかった。けれど、切なそうなお声、背けられたままのお顔でわたしがびっくりして離れようとしたのを『拒絶』と思われたのだとわかった。
「主上、お顔を見せて下さい」
「撫子は…」
「わたくしは主上のことが好きになったと先ほど申しました。その事に嘘偽りはございません。…あの…このような事は…は、初めてで驚いただけなのです…」
ようやくこちらを見て下さった帝のお顔は驚愕に見開かれていた。
「初めてなのか?」
「はい…全て主上が初めてです」
「そうか…」
急に機嫌が直った帝は、
「愛してるよ」
と何度も囁き、わたしの口内を帝の舌かあちこち刺激して、甘い痺れが全身を包んだ。
☆★☆ ★☆★ ☆★☆
ひとしきりお尋ねになった後で「ところで…」と改まってこちらをご覧になった。
「あなたの真の名は?」
「もう、忘れてしまいました」
「教えておくれ」
「…惟忠と申しました。けれど…、わたくしは撫子です。主上の側で生きていきたいのです。撫子でいさせて下さい。…戻れと仰るのですか?」
惟忠としては帝と一緒には居られない。官位を得て参内する事は出来るかもしれないけれど、それは臣下の一人だ。
「違うんだ。落ち着いて」
背中をさすって宥めて下さるけれど…涙が出てしまう。
「ああ、撫子泣かないで。違うんだよ」
「…何が…違うんですか?」
「一度云ってみたかったんだ。…『惟忠、愛しているよ』と」
帝を見ると、満面の笑みでわたしをご覧になって抱きしめて下さった。
「嬉しいです。ありがとうございます。わたくしも愛しております」
先ほどとは違う涙が頬を伝って落ちた。
帝の唇が今までと違う動きでわたしの唇を塞ぐ。優しさには溢れているけれど合わさる直前に見えた帝は、欲を孕んだ瞳でわたしをご覧になり舌先で唇をなぞられた。声が漏れてしまう…。ぞわぞわとくすぐったいような痺れが全身に走り、帝にしがみついた。
「撫子、可愛いよ」
「んっ、恥ずかし…あっ…」
一瞬離れていた唇は再び重なり、喋った事により空いた隙間から帝の舌が口内に入ってきた。
初めての事に驚いて、縋っていた帝の身体から離れようとするけれど力は入らない。
「撫子、愛してる…」
少し哀しそうなお顔でこちらをご覧になり、ご自分の顔を背けるようにわたしを抱き込み囁かれた。
「やはり、男に口付けられるなど嫌なのか?」
一瞬何を仰っているのかわからなかった。けれど、切なそうなお声、背けられたままのお顔でわたしがびっくりして離れようとしたのを『拒絶』と思われたのだとわかった。
「主上、お顔を見せて下さい」
「撫子は…」
「わたくしは主上のことが好きになったと先ほど申しました。その事に嘘偽りはございません。…あの…このような事は…は、初めてで驚いただけなのです…」
ようやくこちらを見て下さった帝のお顔は驚愕に見開かれていた。
「初めてなのか?」
「はい…全て主上が初めてです」
「そうか…」
急に機嫌が直った帝は、
「愛してるよ」
と何度も囁き、わたしの口内を帝の舌かあちこち刺激して、甘い痺れが全身を包んだ。
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