撫子の華が咲く

茉莉花 香乃

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番外編ー参 藤壺の女御の疑問

02

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「お帰りの時、わたくしに『女御は何か悩みでもあるのかな?』とお尋ねになられて…わたくしも女御さまの憂いの原因まではわからないものですから…なんとも返事できなかったのでございます」
「そう…」

帝は心配して下さっていたのか。
わたしの些細な変化を気にして下さり嬉しく思う。

「やはり、男ではね…」

二人に愚痴っても仕方ないのについつい口から出てしまった言葉を慌てて止める。

「ごめん。今のは忘れて…」

この二人も勿論わたしが姫さまの身代わりで、男であることは知っている。
初対面の後、桔梗と一緒に三条邸のわたしの部屋に入ってきて、わたしの近くまでずいっと近寄り「本当に?」と呟いた。
「何が?」と聞くと我に返って距離をとり平伏した。

「申し訳ございません。お綺麗でいらっしゃるから。…あの、惟忠さま?」
「ああ、それは…」
「右近さん、それ以上は云っちゃいけないわ」

桔梗がやんわりと注意すると、二人とも首を大きく縦に振った。


二人は桔梗や日向、衛門同様、気持ち悪いと云わずに帝とのことも受け入れてくれた。

むしろ桔梗や日向よりも好意的で、わたしにあれこれとアドバイスしてくれる。
それは、役立ちそうなものから『  ?  』なものまであるけれど、全てはわたしへの好意だと思ってありがたく聞いている。

途中で恥ずかしくなる時があって、紅くなって俯いていると面白がられてしまうけれど…。

桔梗は昨日から出かけている。姫さまから『京の都に戻って来たので、一度会いたい』と文を貰ったのだ。

保憲さまがお役目で都に用事があるのに一緒に付いて戻って来たらしい。
本当に我儘な姫さまだ。
保憲さまも本当に姫さまには弱い。

一人で動く方がどれ程か簡単なことだろうに…。

良い機会なので父上にも『お会いになられたら如何ですか?』と聞くと『是非』と云うことで対面することになった。

実の娘である。
公にはできなくなってしまっても、元気にしているかは気になるだろう。

対面には桔梗に仲介してくれるように頼んだ。

何せ娘を分捕った男と会うのだ。直接対決に二人だけで会うのは避けたい。
お二人とも穏やかな人なので問題は無いとは思うけれど、『娘が入内していれば皇子が生まれたかもしれないのに…』と心のどこかで思っておいでならば…
ああっ…胸が苦しい。


日向はこのところやけに忙しそうにしている。

今日も朝から姿を見ない。

日向がいなくても他の人たちが抜かりなく仕えてくれるので問題無いのだけれど…、わたしに秘密を持つような人では無いので、何をしているのかを何故云ってくれないのかが気になる。
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