撫子の華が咲く

茉莉花 香乃

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番外編ー参 藤壺の女御の疑問

01

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☆★☆  ★☆★  ☆★☆


女御として後宮に出仕してからいくつかの季節が過ぎた。

帝は毎日のように飛香舎ひぎょうしゃにいらっしゃるし、約束通り夜にわたしが清涼殿に渡らずともこちらにいらして下さる。
何や彼やと云う声があると聞くが、帝と父上が捩じ伏せているらしい。

恥ずかしさよりもありがたい。
その日の内に動けない時もある…。

朝まで清涼殿に居るよりは帝がいらして下さる方が遥かに気を使わなくてすむ。

姫さまに仕えていた時に比べて動くことが極端に少なくなって、体力が低下しているのではないかと思っている。 
あの頃は、食べることに精一杯で慎ましやかな生活だったけれど、充実した日々だった。

今の生活に不満がある訳ではない。
自分が望んだことだ。
帝の側にいたいと。
そして、その望みは帝に叶えてもらった。


でも、夜に毎日はいらっしゃらない。

わたしの身体を心配して下さっているのは『撫子の身体が一番大事なのだよ』と初めの頃に帝からお聞きした。

最初の事が、帝の中で尾を引いていてわたしを大事にして下さるのはわかっている。女房の噂にも他の女御の影は無いし、帝の『撫子だけだよ』と仰る言葉を信じたい。

信じたいのだけれど…。

「はぁ…」
「女御さま。如何されたのですか?さっきからため息ばかりですよ」
「本当に。近頃物思いが深くていらっしゃるから主上も心配なさって…」
「えっ…主上が?」

朝餉の後に、入内する時に保憲さまが紹介して下さった、女房の右近と弁の君とゆるりと過ごしている時だった。
二人とも父上のお眼鏡にも適う有能な女房で頼もしい。
保憲さまは本当に顔が広い。二人は保憲さまの知り合いの紹介ということにして三条邸へ入ったそうだ。何人もいた女房候補の中から無事に選ばれて、挨拶に来てくれた。
初めて会った時は誰が保憲さまの紹介の女房かわからなかったけれど、桔梗にこっそりと伝えていてくれた。
今ではわたしの良き相談相手だ。

「はい。先日も主上がいらっしゃる直前の女御さまのお顔をご覧になられて……女御さまは主上にお気付きになられたら途端に笑顔になられますが、その…笑顔の下の憂い顔を心配されていらっしゃるのです」
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