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番外編ー弐 兼道の疑問
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「いいえ……謝って頂かなくても良いのです。母上は本当に幸せそうに惟忠の父上の話をされていました。
それに、わたくしは安堵しております。正真正銘のお父上が付いていて下さることは女御さまにとってはこの上ない心丈夫なことでございますゆえ」
「あの…もう少しわかりやすく説明して…、わたくしの本当のとうさまとは…」
要領を得ない女御さまに兼房に云われて改めて感じた似ていると云うことや、桔梗が思い出した撫子の乳母…二人の母君が話していたことを説明して、女御さまが娘…いや息子だと確信したことを伝えた。
「そうですか…ではわたくしは姫さまとも桔梗とも血が繋がっていると云うことなのですね…」
「いや…はい…あの…申しわ…」
「謝らないで下さい。先ほど姉上が申した通りその事実は、わたくしには感謝しかないのです。御方さまには申し訳ないと、謝らなくてはなりませんが、おおらかなお方だったので許して下さることでしょう。……少し複雑な気持ちはありますが…。父上はわたくしにはいつも慈しみの心で優しく接して下さいました。ご自分の子ではないと思っておいでの時でもその態度は変わらず、わたくしはありがたく思っておりました。勿論主上には申し上げますよ?」
「えっ…それは…」
「父上…隠しておくこともできたのにわたくしたちに教えて下さったのは、桔梗やわたくしが安心するからと思ってのことなのでしょう?そんなお優しいお父上のことを誰も咎めたりはしないでしょう」
「…はい」
そうだな…そうなのだ。先日の桔梗の慌てぶりが後宮でのこの姉弟の不安定さを物語っている。
自分の子ではないとわかってからも、東宮の後見のことを別にしても、心穏やかに、幸せに暮らして欲しいと願っていた。
それが本当の子なら尚のこと。
「そう…兼道の…」
「…はい」
帝に飛香舎にお渡り頂き真実を伝えた。
帝はどこか呆れ顔だ。
「これまで以上にこちらのことは心配いらないね」
他には何も仰らずウンウンと頷いて女御さまの手を握り、撫でておられる。
兼房も同席していて、お二人の仲睦まじい姿を初めて見たのか驚いた様子だった。
女御さまは恥ずかしいのか『お止めください…』と小さな声が聞こえ、帝の手の甲をやんわりと叩いた。
それは強い力ではなく撫でるような、留めるような手つきだった。
帝も面白がっておられるご様子で、同席した衛門や日向、桔梗はいつものことなのか知らん顔だ。
弁財天のような穏やかなお顔で、帝と並んで座っておられる姿は綺麗で、その穏やかなお顔を曇らせることが無いように心を砕こうと改めて思った。
「兼道、女御が寧静に過ごせるように頼んだよ」
帝の言葉に深く頷き、息子二人の顔を見た。
☆★☆ ★☆★ ☆★☆
おわり
それに、わたくしは安堵しております。正真正銘のお父上が付いていて下さることは女御さまにとってはこの上ない心丈夫なことでございますゆえ」
「あの…もう少しわかりやすく説明して…、わたくしの本当のとうさまとは…」
要領を得ない女御さまに兼房に云われて改めて感じた似ていると云うことや、桔梗が思い出した撫子の乳母…二人の母君が話していたことを説明して、女御さまが娘…いや息子だと確信したことを伝えた。
「そうですか…ではわたくしは姫さまとも桔梗とも血が繋がっていると云うことなのですね…」
「いや…はい…あの…申しわ…」
「謝らないで下さい。先ほど姉上が申した通りその事実は、わたくしには感謝しかないのです。御方さまには申し訳ないと、謝らなくてはなりませんが、おおらかなお方だったので許して下さることでしょう。……少し複雑な気持ちはありますが…。父上はわたくしにはいつも慈しみの心で優しく接して下さいました。ご自分の子ではないと思っておいでの時でもその態度は変わらず、わたくしはありがたく思っておりました。勿論主上には申し上げますよ?」
「えっ…それは…」
「父上…隠しておくこともできたのにわたくしたちに教えて下さったのは、桔梗やわたくしが安心するからと思ってのことなのでしょう?そんなお優しいお父上のことを誰も咎めたりはしないでしょう」
「…はい」
そうだな…そうなのだ。先日の桔梗の慌てぶりが後宮でのこの姉弟の不安定さを物語っている。
自分の子ではないとわかってからも、東宮の後見のことを別にしても、心穏やかに、幸せに暮らして欲しいと願っていた。
それが本当の子なら尚のこと。
「そう…兼道の…」
「…はい」
帝に飛香舎にお渡り頂き真実を伝えた。
帝はどこか呆れ顔だ。
「これまで以上にこちらのことは心配いらないね」
他には何も仰らずウンウンと頷いて女御さまの手を握り、撫でておられる。
兼房も同席していて、お二人の仲睦まじい姿を初めて見たのか驚いた様子だった。
女御さまは恥ずかしいのか『お止めください…』と小さな声が聞こえ、帝の手の甲をやんわりと叩いた。
それは強い力ではなく撫でるような、留めるような手つきだった。
帝も面白がっておられるご様子で、同席した衛門や日向、桔梗はいつものことなのか知らん顔だ。
弁財天のような穏やかなお顔で、帝と並んで座っておられる姿は綺麗で、その穏やかなお顔を曇らせることが無いように心を砕こうと改めて思った。
「兼道、女御が寧静に過ごせるように頼んだよ」
帝の言葉に深く頷き、息子二人の顔を見た。
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おわり
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