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番外編ー弐 兼道の疑問
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わからないのであれば、撫子の乳母とわたしとの関係は、娘である桔梗には伝えない方が良いだろう。
その日は一度、女御さまに会って、三条邸に戻り三の君に会いに行った。
やはり似ている。
女御さまは近頃落ち着いておられて、帝の寵愛を一身に受け貫禄が出てきた。
…たまに衛門に叱られていたりするけれど。
もともと肝の据わった人なのだろう。頼もしい限りである。
それから数日後のこと、桔梗が会いたいと連絡してきた。
「お殿さま、思い出したことがございますので、お役に立てるかわかりませんが連絡させて頂きました」
「なんだい?」
「はい。母上と二人で過ごす夜に母上はわたくしにはまだ難しいかなと云いながら色々な話をして下さいました」
それは……
『人の心は自在に操ることはできないと知っているけれど、案外自分の心も自在に操ることはできないのよ』
『桔梗が大きくなって撫子姫に仕える時には、一心にお仕えするんだよ。かあさんは御方さまを哀しませてしまった』
『桔梗のとうさまは真面目で穏やかな人だった。惟忠のとうさまは優しくて素敵な人だった』
『惟忠のとうさまはね…躑躅の君と仰った。もうお会いすることは叶わないけれど、今でも愛しいわ。身分の高い方だったけどお優しかったのよ』
………
「惟忠の父上のことを語る母上の話は、全て過去形で語られていたので身罷られたのだなと思っておりました」
言葉が出なかった。
ただ、「女御さまは……わたしの子だよ」とポツリと呟いた。
『躑躅の君』とはわたしのことだろう。
誰にも呼ばれたことのない。
六条の屋敷に籠もりがちなあの人を宇治の別荘に連れ出したことがあった。疲れが出たのか少し熱が出たあの人を別荘に寝かせて、撫子の乳母と近くの寺へ出かけた。
夏の終わり頃だった。
躑躅が満開で二人でゆっくりと満ち足りた時間を過ごした。
そして、宇治から都へ帰ったら、わたしを拒むようになった。
愛しいと思っていてくれたのか?
桔梗に伝えていたのは、わたしとの縁を繋ぐため?二人にしか判らない秘め事のようなそれ。
「女御さま…」
「父上?如何されたのですか?…桔梗?」
人払いして女御さまと桔梗と三人で飛香舎の一室に入った。
何事かと訝しがられるのは仕方ないだろう。
「あの…わたくしも、話が見えていないのですが…こ、いえ、女御さまのお父上が右大臣さまだとは表向きでは無く、本当のお父上と云うことなのでしょうか?と、云うことはわたくしたちの母上とお殿さまとは…」
「すまない…」
その日は一度、女御さまに会って、三条邸に戻り三の君に会いに行った。
やはり似ている。
女御さまは近頃落ち着いておられて、帝の寵愛を一身に受け貫禄が出てきた。
…たまに衛門に叱られていたりするけれど。
もともと肝の据わった人なのだろう。頼もしい限りである。
それから数日後のこと、桔梗が会いたいと連絡してきた。
「お殿さま、思い出したことがございますので、お役に立てるかわかりませんが連絡させて頂きました」
「なんだい?」
「はい。母上と二人で過ごす夜に母上はわたくしにはまだ難しいかなと云いながら色々な話をして下さいました」
それは……
『人の心は自在に操ることはできないと知っているけれど、案外自分の心も自在に操ることはできないのよ』
『桔梗が大きくなって撫子姫に仕える時には、一心にお仕えするんだよ。かあさんは御方さまを哀しませてしまった』
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『惟忠のとうさまはね…躑躅の君と仰った。もうお会いすることは叶わないけれど、今でも愛しいわ。身分の高い方だったけどお優しかったのよ』
………
「惟忠の父上のことを語る母上の話は、全て過去形で語られていたので身罷られたのだなと思っておりました」
言葉が出なかった。
ただ、「女御さまは……わたしの子だよ」とポツリと呟いた。
『躑躅の君』とはわたしのことだろう。
誰にも呼ばれたことのない。
六条の屋敷に籠もりがちなあの人を宇治の別荘に連れ出したことがあった。疲れが出たのか少し熱が出たあの人を別荘に寝かせて、撫子の乳母と近くの寺へ出かけた。
夏の終わり頃だった。
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そして、宇治から都へ帰ったら、わたしを拒むようになった。
愛しいと思っていてくれたのか?
桔梗に伝えていたのは、わたしとの縁を繋ぐため?二人にしか判らない秘め事のようなそれ。
「女御さま…」
「父上?如何されたのですか?…桔梗?」
人払いして女御さまと桔梗と三人で飛香舎の一室に入った。
何事かと訝しがられるのは仕方ないだろう。
「あの…わたくしも、話が見えていないのですが…こ、いえ、女御さまのお父上が右大臣さまだとは表向きでは無く、本当のお父上と云うことなのでしょうか?と、云うことはわたくしたちの母上とお殿さまとは…」
「すまない…」
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